頁をめくるごとに登場人物の内面がじわじわと露わになる作り方に惹かれた。俺はまず会話の掛け合い方に注意を向けるタイプで、
柚やの台詞回しは余白を活かしたものが多いと感じる。言葉を削ぎ落とすことで、沈黙や間が意味を持つように仕立てているのが面白い。
絵の特徴としては、細部を省いて要点を強調するミニマリズムがある。視線や指先の動き、呼吸のような間合いを重視するから、読み手は各コマで自分の想像を補いながら物語を組み立てることになる。また、ユーモアと哀愁を同時に運ぶ場面転換が巧みで、『灯りの詩』の短いエピソード群ではその手腕がよく分かる。
テンポ配分の巧妙さも忘れられない要素だ。急がせず、かといってだらだらさせない絶妙なスピード感で読者の集中を保つ。個人的にはその抑制の効いた演出が、作品に深みを与えていると思う。