胸が熱くなったのは、あの静かな沈黙が破られた瞬間だった。画面が一瞬止まったかのように見えて、
月代の目だけが光を帯びた──それまで抑えられていた何かが一気に表面化する場面だ。長い蓄積が一撃で花開くような演出、表情の微細な移り変わり、音響がほとんど消えて声だけが残る構図。ファンがスクリーンショットを何度も取り、語り合ったのも納得できる。
感情の起伏を抑えた演出が特に効いている。激しいアクションや大仰なセリフで盛り上げるのではなく、内面の変化を顕微鏡で覗くように見せる作りになっているから、観る側は一瞬の表情に自分の物語を投影する。個人的にはあの場面を見るたび、以前に見た'ベルセルク'のある場面を思い出すことがあるが、月代のそれはもっと繊細で、だからこそ心に残る。
さらにコミュニティでの拡散の仕方もヒットの要因だった。原作ファンがコマを切り取ってSNSに上げ、台詞を短いキャプションにして何度も回されることで、知らない人まで引き込まれた。結局、人気を決定づけたのはその一瞬の“見せ方”と、それを受け取るファンの解釈が重なり合ったことだと思っている。