もう二度と、あなたの隣で踊ることはない氷室朔也(ひむろ さくや)の策略によって、私・七瀬舞音(ななせ まね)が二度と踊れない体になってから七年。
偶然にも、私は彼がずっと想いを寄せていたかつてのパートナー、祝華怜(いわい かれん)の結婚式に参列していた。
視線が交差した瞬間、私たちは互いに息を呑んだ。どうして相手の隣に朔也がいないのかと、二人して驚いていたのだ。
「朔也ったら、昔とは別人のようよ。今じゃ名門オペラ座で、エトワールを務めているんだから」
華怜はどこか残念そうに目を伏せた。
「今日の式にも彼を呼んでるの。もし二人の間に何か誤解があるなら、ちゃんと顔を見て話した方がいいわ。
最近、世界中で新しいパートナーを探しているらしいの。トップクラスのダンサーを何人もオーディションしたのに、誰も彼のお気に召さなかったとか。
――きっと、彼はあなたを待っているのよ」
私はふっと笑みをこぼした。心は凪いだ海のように静かだった。
「私?私はもう、とっくの昔に踊れなくなっているのに」
ステージの上で彼の魂の伴侶になりたいと願い、どうにかして彼の世界に足を踏み入れようとしていた、あの頃の痛ましいほどの執着。
それもとうの昔に、跡形もなく消え去ってしまったのだから。