編集の現場では、
暴言がどこまで許容されるかをめぐる議論が日常茶飯事だ。たとえば'ベルセルク'のように物語世界の暴力や粗野な言葉遣いが作品の表現意図に直結しているケースでは、単純な削除が物語の力を削いでしまう。私は原稿を読むとき、まずその暴言が登場人物の性格付けや物語の緊張感にとって必須かどうかを見極める。必要であれば、語彙の選び方を変えても感情の強さを保てるか、あるいは比喩や描写で置き換えられないかを編集チームと検討する。
次に法的リスクと媒体方針の照合を行う。個人に対する名指しの中傷や、差別的な表現は明確に線引きされるべきで、発行元のコンプライアンス部門や場合によっては外部の法務助言を仰ぐ。ここで私は、著者の意図と読者保護のバランスを取るために、削除ではなく注釈や警告、版の区分(成人向けなど)を提案することが多い。
最終判断は複合的だ。編集方針、法的安全性、販売市場、そして何より読者との信頼だ。私は表現の自由を尊重しながらも、言葉が誰かを傷つける力を持つことを忘れないようにしているし、その結果としての出版可否は慎重に決定するよう努めている。