映像の小さな選択が張り詰めた空気を作ると信じている。
現場でしばしば心がけているのは、
暴言そのものを衝撃にするのではなく、その周囲を緊張で満たすことだ。私は台詞が放たれる前後の“間”を設計して、観客の期待値を操作する。具体的にはカメラを少しだけ寄せて表情の細部を見せ、その直前に静かな音を削ぎ落とす。音がすっと薄くなった瞬間、言葉の重みが増す。演技の指示は単純に「大声で」ではなく、感情の起伏や蓄積を積み上げるための身体の動きや視線を細かく作り込む。
また、編集段階で暴言のリズムを調整するのも私の常套手段だ。短いカットを重ねてテンポを速めると攻撃性が増し、逆にワンカットで長回しにすると言葉の余韻が観客の内部に残る。照明や色調を抑えることで画面全体を冷たくし、台詞が温度差を生むようにも仕立てる。『セブン』のような作品で見受けられるように、暴言は暴力の一要素として扱うとき、他の映像要素と連携させることで最大の効果を発揮する。最後に、役者に信頼関係を作っておくこと。私が信頼する演者は、言葉を投げる余地と受ける余地を同時に感じさせられる。それが一番の緊張の源になると感じている。