過去の資料や古典の記録を紐解くと、真打ち昇進は時代ごとに変化してきたプロセスだと見えてくる。私はその変遷を踏まえつつ、現代の修行の具体像を考えるようになった。古典的には長年の二ツ目経験と師匠の推薦が中心だったが、今はメディア露出や寄席以外の実績も重要視される場面が増えている。
修行としては、演目の幅を広げること、実演だけでなく録音や映像で自分を客観視する訓練、若手をまとめるリーダーシップの発揮が求められる。加えて、古典作品の解釈や改作の技能も重宝されるため、研究的な勉強も並行して行うべきだ。判断力を
養う稽古の一環として、例えば『時そば』のような噺で客筋の違いによる語り口の変化を試すことが、自分にとっては有効だった。
最終的には、昇進審査で審査員に「この人なら師匠の看板を守れる」と思わせる総合力が必要になる。私はそのバランスを意識して日々稽古している。