割り勘夫に、大富豪の娘という正体を明かすそれは、私の娘の内田奈々(うちだ なな)百日祝いの席でのことだった。
夫の内田彰人(うちだ あきと)が連れてきた女性秘書・藤堂紬(とうどう つむぎ)が、平然と彼の腕に手を絡ませながら言う。
「ねえ、見て見て、彰人。ネイル変えたんだ。それに、あなたが買ってくれたダイヤの時計もつけてきたの。
それと、何だか喉が乾いちゃった。でも、ここには私が飲みたいものがないの。彰人、ちょっと買ってきてくれない?」
その場にいた内田家の親族たちは、驚いて彰人を見つめる。
しかし彰人は何ひとつ文句を言わず、紬のために飲み物を買いに席を立った。
その瞬間、私の心の中で何かがぷつりと切れた。
自分の何年も着古した服と、ガサガサになった自分の手を見つめる。
紬のために飲み物を買って帰ってきた彰人が、冷たい声で私に言った。
「妻は夫の顔っていうだろ?それなのに……なんだ?お前のその冴えない様子は。
外で働いて稼ぐわけでもないし、俺の世間体も気にしてくれない。この家に何の役にも立ってないじゃないか。
まあ、そういうことだから、明日から生活費は全て折半にしよう。お前に金を使うくらいなら、投資に回した方が断然いいからな。その方が有意義な使い方だろ?」
私は何も言い返さず、ただ静かに「わかった」と答えた。
そしてそのまま、兄の加藤琉生(かとう るい)に電話をかけた。
「お兄ちゃん、彰人の会社への出資を引き揚げて。
私、もう離婚することにしたから」