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メロディーの記憶力に惹かれることが多い。強いフックがあって、一度耳にすると頭の中でループしてしまうような曲は、サントラにおける“ヒット曲”だと感じる。音だけで物語を補完できる曲は、単体で聴いても成立するし、物語の中で鳴るとさらに深みを増す。
その意味で、楽曲が映像のリズムにぴたりと合っているか、テンポやダイナミクスの変化が場面に寄り添っているかを重視している。『新世紀エヴァンゲリオン』のように、音が場面の重さを引き受ける作品では、曲が場面を超えて自分の心象風景を作ってくれるから評価が高くなる。
曲を選ぶときにまず重視するのは、その楽曲が場面とどう結びついているかという点だ。ドラマの瞬間を思い出させる旋律やコード進行があると、音だけで一瞬にして情景が立ち上がるから、つい何度も聴き返してしまう。イントロの一音で「あの回だ」とわかる曲は特別な価値がある。
聴き手としての自分が感情の舵をとられる瞬間――例えば『カウボーイビバップ』のある曲がそうで、音が流れるだけでキャラクターの距離感や哀愁が蘇る。アレンジの妙、楽器の使い方、そしてミックスのバランスまでが揃って初めて“好き”に落ちる。遮断された音の空間、余韻の残し方、歌が入るかどうかも選択の決め手だ。
アルバム全体の流れで好きな一曲を決めることもある。単曲でかっこいいものと、アルバムの流れの中で輝く曲は違うから、冒頭から終盤までを通して聴いて“この一曲が核だ”と感じられたらそれがベストの選択肢になる。曲順やインスト間のつなぎが物語を語ってくれるケースだ。
また、歌詞の有無が好みを左右する場面もある。言葉が入ると情緒が限定される反面、メッセージ性が増すこともある。『メイドインアビス』のように雰囲気重視で楽曲全体が世界観を構築している作品では、アルバムとしての完成度を重視する傾向がある。
作曲者の個性やテーマの反復性にも強く惹かれる。作家性が一貫していて、その上で毎回新しい切り口を見せてくれると、自分の好みがより明確になる。モチーフの再利用や変奏が効果的だと、その曲は何度でも再発見があって飽きない。
実用的には、イントロの数小節で“聴き続けたいかどうか”が決まることが多い。『進撃の巨人』のサウンドトラックに見られるように、壮大さと繊細さを同時に持つ曲は、場面を問わず刺さる力が強い。最終的に、自分の感情を引き出してくれる一曲を大切にしている。
音の細部を聴き分ける習慣が身についているため、編曲や音色の選択が好き嫌いを大きく左右する。例えば弦楽器の使い方が斬新か、電子音と生音の融合が生きているか、サビ前のビルドアップの仕方が秀逸かどうか、そうした技術的な要素に心が動く。
けれども最終的には“心を動かすかどうか”がすべてで、テクニックはその手段にすぎない。『鬼滅の刃』の特定の曲は、和楽器の入れ方とリズムの取り方が独特で、聞くたびに身体が反応する。ライブでの再現性やアレンジ違いを聴くのも楽しみで、同じメロディーが別の編成でどう生きるかを比べるのが習慣になっている。