3 回答
遊牧民的な暮らしを三年続けて気づいたのは、『所有』の概念が変わることだ。家具も家も持たない代わりに、空の広さや時間の豊かさを手に入れる。移動中に読んだ『ノマド』という本がきっかけで、必要最低限の装備だけでアラスカを旅した。
不便さは確かにある。洗濯物が乾かない日が続いたり、突然の車両故障で予定が狂う。それでも、路上で知り合った人々が助けてくれることが多い。定住社会では得られない助け合いの連鎖が生まれる。特に面白いのは、地元のマーケットで食材を調達する時で、その土地ならではの調理法を教わるのが楽しみの一つになっている。
デジタルノマドとして各国を転々とする生活には、仕事と旅行の境界が曖昧になる面白さがある。昨日までカフェで作業していた街が、今日は観光地に変わる。ただし、ビザの取得や税金の処理が複雑で、専門家の助けが必要な場面も少なくない。
移動が多いと、ふと『帰る場所』が欲しくなる瞬間がある。そんな時は長期滞在型のゲストハウスを利用し、仮のコミュニティを作るようにしている。スペインで出会った陶芸家とは今でも作品の写真を送り合う仲だ。決まった住所がないからこそ、心の拠り所となる人間関係を大切にするようになった。
現代の遊牧生活には、自由と冒険が詰まっている。定住しないことで、季節ごとに違う風景に出会えるのが最大の魅力だ。例えば、春は桜の名所でキャンプをし、夏は涼しい高原に移動する。毎日が新しい発見で、人間関係も固定化されず、様々な文化に触れられる。
しかし、不安定さは常につきまとう。天候や災害に左右されやすく、医療や教育へのアクセスが難しい。インターネット環境も場所によっては不安定で、リモートワークに支障が出ることも。それでも、このライフスタイルを選ぶ人たちは、『制約こそが創造を生む』と語る。荷物を最小限に絞る過程で、本当に必要なものを見極める力が養われるのだ。