もう私の世界に現れないで私・長瀬舞子(ながせ まいこ)は有馬陽介(ありま ようすけ)と七年間付き合ってきた。
しかし、彼はいつまで経っても結婚しようとしなかった。
私がしつこく迫って、ようやく彼は結婚してくれると言った。
ところが結婚式の前日、家に帰ると、トイレから女の甘い声が聞こえてきた。
「あなたの奥さんが帰ってきたわ。早く放してよ」
陽介が低く呻く。
「急ぐなよ、もうすぐだ」
すりガラスに、二つの手のひらが重なって映る。
耐えがたい音が、私の心臓をナイフでえぐるようだった。
私は絶望のあまり、陽介を問い詰めた。
「どうしてこんなことをするの?」
体中にキスマークを残した彼は、ワイシャツのボタンをはめながら言った。
「お前はどこも悪くない。でも、明日からお前に一生縛られるのかと思うと、なんだか面白くないな。
まだ結婚する前だし、最後に一度くらい遊んでもいいだろ」
私はその場に立ち尽くし、頬は涙の跡でいっぱいだった。
頭の中で何度も思い描いてきた結婚式の光景は、この瞬間、完全に粉々に砕け散った。