耳に残るイントロが欲しかったから、僕はまず
ウルテという存在の“矛盾”に注目した。冷静さと激情、孤独と求愛的な感情が同居するキャラクター像を音で表現するために、作曲プロデューサーは単なるメロディ作りから始めず、先に感情のマップを描いた。物語の重要なシーンや台詞、動きのテンポを読み解いて、どの瞬間に音楽が呼吸を合わせるべきかを明確にしていったのが出発点だ。
次にメロディと和声の土台を作る段階では、短く強いモチーフを繰り返す手法を採用した。ウルテの揺らぎを示すために、メインテーマは短い5音前後のフレーズで構成され、それが曲中で転調したり、リズムを変えて表情を変える。例えば低めの音域で始まる断続的な動機が、クライマックスで高音のホルンや弦楽器に引き継がれていくことで、内側から外側へと感情が膨らむイメージを作っている。キーはマイナーを基調にしつつ異国風のスケールやモードを一部混ぜることで、どこか居場所のない雰囲気を与えている。
編曲と音色選びは、作曲の核以上に物語性を左右する要素になった。生演奏の弦、低域を支えるアコースティックなチェロやベースに、エレクトロニックな質感のシンセサイザーを重ねて、古風さと現代性の融合を狙っている。打楽器はあえて均一なリズムにしないで、不規則なアクセントを入れ、ウルテの不安定さを強調。ボーカルやコーラスを導入する場合は、明瞭な歌詞よりも声自体のテクスチャーを楽器的に使い、リバーブやディレイで距離感を作る処理が目立つ。制作面では、デモ→アレンジ→収録→ミックスの反復を繰り返し、シーンに合わせてテンポ(BPM)や音の密度を微調整していった。
最終的にプロデューサーが目指したのは、テーマ曲が単なるBGMではなくウルテの心象風景を即座に喚起することだった。そのためにモチーフを物語全体に散りばめ、場面ごとに形を変えて現れる“音の記号”に仕立て上げた。こうした手法により、聴けば自然とキャラクターが思い浮かぶような楽曲が完成したと感じる。出来上がった曲は、繰り返し聴くほど細部の工夫が顔を出すタイプで、当初の狙いどおり感情の細かな揺れや成長を音で追えるようになっている。