あのインタビューを読んだとき、制作に対する彼の実直さがすぐに伝わってきた。大江千里はメロディと歌詞の関係を極めて大切にしていて、曲作りを「会話」と捉えているという話が印象的だった。デモ段階でこそ感情の核を探り、アレンジはその核を傷つけないためのものであると繰り返していた。つまり、装飾は引き算で行い、余白を残すことで聴き手に余韻を託すという姿勢が貫かれている。彼は『Kind of Blue』に触発された瞬間を引き合いに出し、空間や間の重要性を語っていたのが印象的だ。
実践面では、まず自分の声やピアノで曲を何度も演奏して検証し、バンドメンバーとはラフな段階から率直に意見を交わすことを重視している。技術や流行に惑わされず、歌が一番良く見える形を追求する。レコーディングは完璧さよりも「今の感情」を録る場だとし、演奏の生々しい揺らぎや呼吸を肯定していたのが心に残った。個人的には、その誠実な姿勢が音楽に透明感を与えていると思うし、制作の過程そのものがアーティストの人格を表すという彼の信念に共感している。