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第766話

Aвтор: リンフェイ
しかし、それは理仁自身のことだ。彼がそのようにするとしたのなら、隼翔も何も言うことはない。彼はただ理仁の親友であるだけなのだから。

「そういうことか」

隼翔はカートに積まれている物を見て、理仁の奥さんは彼の実家で年越しするのをとても重要視しているのだと思った。買ったものはどれも良い商品ばかりだった。

「陽君」

隼翔はいつもと同じく陽と遊ぼうとした。

陽は頭を傾けて隼翔から伸びてきた手を躱し、唯月のほうへ顔を向けて抱っこのサインを出した。

唯月は息子が隼翔を怖がっているのがわかっているので、息子を抱き上げた。

「陽、東おじちゃんがこの前風車をあなたにあげたでしょ。どうしてまだ怖がっているの」

陽は両手を母親の首に巻きつけ、頭を唯月の肩に置いて隼翔を見ないようにしていた。

ただ風車をプレゼントしただけですぐ懐くだって?

東おじさんは僕を簡単に落とせるとでも思ってるの?

だったら、僕を甘く見過ぎだぞ。

「陽君、おいでよ。おじちゃんが抱っこしてもっといろんな風車を買いに行ってあげるよ」

隼翔は唯月から陽を自分のほうへ抱き寄せようと試みた。

陽は必死になって叫んだ。「やだ、ママがいい。おじたんはいらない、ふうしゃもいらない」

この東おじさんが彼にあげた風車はすぐに彼が遊んでいるうちに壊してしまい床に捨てられていた。母親が掃除をしている時に、その壊れた風車も掃除してしまった。

一度風車で遊んでしまったら、それは陽にとってもう魅力的なおもちゃではなくなったのだ。

唯月は気まずくなって、隼翔に言った。「東社長、すみません。陽ったらまだあなたを怖がってるみたいで」

隼翔は毎回この親子にたまたま会った時、はじめて彼の車をうっかり傷つけてしまった時であろうと、いつも彼は悪意など向けてこなかった。それなのに、陽はいつも隼翔のことを怖がってしまう。

だから彼から抱っこされるのは嫌なのだ。

隼翔はたまらず自分の顔にある傷を触り、唯月に尋ねた。「この傷を怖がっているのかな?母さんからもこの傷があったら、外で子供に泣かれるぞと言われたんだ」

彼はその言葉を信じていなかったが、陽からこのような反応をされるので、ショックだった。

この傷が本当に小さな子供を怖がらせるのか。

傷をつけてからもうだいぶ時間が経っているので、彼の顔にあるその切り傷は当初ほどはっき
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