雪乃はそれを見てすぐにチケットを購入し、彼らの後に付いて行った。
飛行機は離陸した。
虹陽市から立花市までは結構な距離があって、少なくとも3、4時間かかる。
これと同時刻、未央たちはというと。
「未央さん、荷物が届いてますよ」
悠奈が段ボールの箱を持って、急いで未央の前にやって来た。
一年の治療を経て、彼女は今もうあまり心を病むことがなくなっていた。まるで苦痛でしかなかった昔の記憶などは完全に忘れてしまったかのようだった。
未央はその荷物を受け取り、笑顔で「ありがとう」と言った。
悠奈は甘えたように少し不満をこぼした。「未央さんは今超忙しい人になっちゃいましたね。全国から患者さんが未央さんに診てもらうためにやって来るから、一緒にショッピングする時間もないわ」
未央もしょうがないといった様子で言った。「仕方ないわ、切羽詰まった状況も多いし、患者さんのことが心配だもの」
「うんうん、分かってます。ただの冗談ですよーだ」と悠奈はペロッと舌を出した。
するとその時、一本の電話が来た。
「未央、私が送った荷物届いた?あなたが一番好きなクルミ入りクッキーよ。虹陽にあるあの店のが一番美味しいもんね」
瑠莉の声が携帯越しに響いてきた。
未央は瞳に笑みを浮かべた。「ありがと、あの店の味が懐かしかったのよね」
「あの二人、まだ懲りずにあなたのことを探しまわってるみたいよ。最近は大人しくしてるけど、暫くはやっぱり虹陽には戻らないほうがいいわ。何か食べたいものがあったら私が送ってあげるからね」
瑠莉は話し続けた。未央が何か言おうとしたとき、外からドアをノックする音が響いた。
「さあ、二人にアフタヌーンを持ってきたよ」
悠生はビジネスの話し合いを終え、ちょうど病院の前を通るのでちょっと寄ったのだ。
「ほら、君が好きなミルクティーだ。甘さ控えめのね。間違いないよね」
彼はそのうち一杯を未央に手渡した。
彼の低く魅力的な声が同時に電話の向こうへと伝わっていた。
それを聞いた瑠莉はまず驚き、急いで無意識に声のトーンを上げて言った。
「ちょっと未央!一体どういう状況よ!
もしかして、あのあなたを雇った立花の藤崎御曹司?彼ってお金持ちでイケメンの優良物件独身男子だって聞いたわよ。あなた達毎日顔を合わせているんだもの、特別な感情が生まれても不思議じゃないわ