月島明日香は、藤崎樹からのメッセージにすぐさま返信した。
「これからも食べたくなったら、いつでも言ってね。私がまた作ってあげる」
「ありがとう」
佐倉遼一はそのやり取りを見つめ、眉間にしわを寄せた。
明日香が、他の男にこんなにもあっさりと返信する様子を見て、彼の心に小さな棘が刺さったようだった。
なぜだか分からないが、彼の中に漠然とした違和感が生まれた。まるで、自分のものだった何かが、突然他人の手に渡ったかのような感覚だった。
これらの情報は、彼が月島明日香の携帯に密かに仕込んだ監視ソフトを通じて得たものだった。
彼女が入院していた時に、彼は巧みにそのソフトをインストールしていた。
それから月島明日香は藤崎樹と30分ほどチャットを続けた。内容はほとんどが日常の出来事や趣味についてで、
特に面白みもない会話だった。だが、佐倉遼一はすべてをじっくりと読み終えた。
その中で、明日香が以前と何かが違うということを感じずにはいられなかった。
チャットが終わると、彼はふと、自分が無意識に時間を浪費していたことに気付いた。
時計を見ると、すでに夜の8時半を回っていた。まさか明日香のことで1時間以上も費やしているとは、自分でも驚きだった。
月島邸
月島康生は外で接待があると言って出て行き、いつ帰ってくるかはわからないが、月島明日香にはわかっていた。おそらく、彼は今夜は戻ってこないだろう。
彼には外に多くの愛人がいて、どこで夜を過ごすかなんて彼にとっては大して違いはないのだ。
最後のメッセージを送った後、彼女は階段を上がってシャワーを浴びた。
実際、あの栗ケーキはほとんどウメが作ってくれたもので、自分はただ横で粉をこねたり、水を入れたりと、ほんの少し手伝っただけだった。ウメは彼女が傷を痛めないかと心配していたので、手を出させてくれなかった。
前世では、明日香は遼一を喜ばせるために、料理からスイーツまで、ミシュランのシェフに引けを取らない腕前を磨き上げていた。
「男を征服するには、まずその胃を征服しろ」とよく言うが、まさにその通りだった。
佐倉遼一の胃を完璧に掴んだ結果、彼は次第に他の料理に満足できなくなり、外食を嫌がるようになっていった。
彼女が料理を学び始めたのは、遼一が胃の病気を抱えていたからだった。彼が月島家の会社を引き継いだ頃、毎日の