深夜、高級なプライベートヴィラの前に一台の車が停まる。
光莉はハンドルを握ったまま、しばらく降りようとしなかった。
コツン。
窓がノックされ、彼女はようやく窓を開ける。
窓の外では、高峯が笑みを浮かべて立っていた。
「来たんだな。ずいぶん待ったよ」
そう言いながら、彼はまるで紳士のように車のドアを開けた。
だが、光莉は知っている。
この男が、どんな顔をして笑っているのか。
彼女はバッグを手に取り、車を降りる。
高峯が手を差し出した。
「持ってやるよ」
「いらない」
彼を無視して、光莉はヴィラの中へと足を向けた。
高峯は軽い足取りで彼女の後を追いながら、何気なく問いかける。
「夕飯は食べたか?」
「食べた」
「夜食は?」
「いらない」
光莉は相手にするつもりもなく、まっすぐ階段を上がっていく。
そして二人が寝室へ入ると、彼女はバッグを適当に置き、無言で服を脱ぎ始めた。
高峯は腕を組み、その様子をじっと見つめる。
途中で、光莉は冷たく言った。
「何ボーッとしてるの?さっさと脱ぎなさいよ。終わったら帰るから」
「こんな時間に?帰ってどうする」
高峯は彼女に歩み寄り、優雅な手つきで外套を脱がせ、シャツのボタンを外していく。
「今夜はここにいろよ。明日の朝、一緒に朝食でもどうだ?」
彼は光莉の服を一枚ずつ脱がせると、そのまま抱き上げ、ベッドへと横たえた。
そして、唇を重ねようと顔を近づける。
だが、その瞬間、光莉は彼の口を手で塞いだ。
「......私のネックレスは?返して」
高峯は枕の下からチェーンを取り出し、目の前で軽く振る。
「これか?」
光莉はすぐに手を伸ばしたが、高峯はさっとそれを避ける。
「慌てるな。俺がつけてやる」
彼は片手で彼女の後頭部を支え、もう一方の手でネックレスをかけようとした。
だが、光莉は力強く振りほどいた。
「自分でできる。さっさと終わらせなさい。用が済んだら帰るから」
高峯は手にしたネックレスを握りしめ、光莉の両手を強く押さえつけた。
「今夜は帰るな」
「......命令してる?」
光莉は冷たく言い放つ。
高峯は穏やかに微笑みながら、彼女の頬に手を這わせた。
「ただ、お前にいて