Chapter: 結婚。ボニファティウス国王陛下が亡くなってから、あっという間に1年が過ぎた。この1年は正直言ってとても忙しかった。フィオの王位継承の式典や、バル兄様が壊してしまった(断じて私では無い)王宮の建て替え。そして、トリドール侯爵たちの後始末。今だにやることは山積みだそんな中、今日私達は結婚する。「こんな忙しい時にいいのだろうか。結婚式なんて。」「良いんですよ。それにやっと王宮の建て替えも終わりましたし。結婚式をするのであれば丁度いいのでしょう。」王宮の建て替えは大変だったが自分たちが住みやすい間取りに出来る分、考えるのは1番楽しかったかもしれない。いちばん面倒だったのはトリドール一派の事だ。調べれば調べるほど出てくる余罪。ピリットンは結局誰の子供か分からず、イヴェッタは最後までボニファティウス前国王の息子だと言い続けていた。イベリコは自分は関係ないと叫んでいたが、トリドールの息子である以上の処刑以外の道はなかった。勿論、他の人たちもだ。反乱分子は早いうちに芽を摘んでおいた方がいい。そう考えたフィオは全員を処刑した。その他に変わったことといえば、私がテッサリーニ国に住むようになった事だろうか。ドラウゴン国とテッサリーニ国は友好国となり、国家間の行き来が以前よりも楽になった。そして、なぜかマーヤも一緒に残ってくれている。「マーヤは良いのか?本当はドラウゴン国に戻りたかったんじゃないのか?」「私の居場所はメロライン姫がいる所ですので。それにメロライン姫の近くが1番楽しいですから。」楽しいと言ってはいるが、絶対これは母様からのお目付け役として着いてきたと言った方が正しいだろう。「そ、そうか…。それならいいのだが。今日は確か父様や母様も来
Last Updated: 2025-07-29
Chapter: ボニファティウス・テッサリーニ。「ゴホゴホッ!!オルラフィオか…。」「父上!!」トリドール達が捕まって数日後、ボニファティウス国王陛下が目を覚ました。お城が倒壊してしまった関係で、今はスポレトーレ家にご厄介となっている。フィオが国王陛下の背中を支えて何とか身体を起こすボニファティウス国王陛下。「お前には辛い思いをさせた。ゴホッゴホッ…何もしてやれなくて…ゴホッ…すまなかった…ゴホゴホッ」「父上、無理に話さないでください。」ロオー兄様の話によると、ボニファティウス国王陛下はずっと少量の毒薬を飲まされ続けていたらしい。致死量に届かない量を何年もずっとだそうだ。いくら致死量に届かないといっても身体は毒に蝕まれているし、限界がくる。もう少し遅れていたら間に合わなかっただろうとロオー兄様は言っていた。「すまぬな。お前があのような状態になった時、この国に置いておくのはまずいと思ったのだ。お前まで彼奴に殺される訳にはいかなかった…」2年前。フィオが毒を盛られたことに国王陛下は気づいていたらしい。だが、証拠がなかった。「アドリアーナが亡くなった時、彼奴はお前も狙っていたんだ。オルラフィオを殺されたくなければ言う通りにしろ…とな…。オルフィまで殺されてしまえば、アドリアーナに顔向けできない。そう思った私は仕方なく彼奴の言うことを聞くことにした…」元々、ピリットンを王太子として国全体を自分のものとしたかったトリドール侯爵。しかし、ピリットンを王太子とするのは難しかった。「私は別にピリットンと王太子を交代しても構わなかったんですよ。そしたら命くらいは助かったでしょう。父上だってそんなことにならなかったはずだ…」「フィオ。それは簡単な話だ。」私が話そうとするとボニファティウス国王陛下は片手を上げて止め
Last Updated: 2025-07-29
Chapter: 私の婚約者を嘲笑った皆様には誠心誠意お返しさせていただきます。「バル兄様…これはやり過ぎでは…」バル兄様の元に、トリドール侯爵を連れて行くと、ピリットンは素っ裸のまま、頭を持ってズルズルと引きずられている。「それを言うならメローラも人の事は言えないだろ?」いや、私は扉をノックしたのと開いただけなのですか…。バル兄様は絶対ピリットンの事を壁に向かって投げつけていると思う。もしかしたら?投げた先に、《《たまたま》》壁があっただけなのかもしれないけど。バル兄様と一緒に二人をズルズル引き摺りながら外に出ると後ろから何かがパラパラと崩れる音が聞こえる。「ま、まさか…?」そしてゆっくり後ろを向くと今度は大きな音を立てて城が崩れはじめたのである。「メローラ。急いで逃げるぞ!!」「はぁ…これ絶対後で怒られますよ。全部兄様が悪いんですからね!!私はただノックして扉を引いただけなんですから…」「ふん。どの口が言っているんだ。お前のそのノックが凶器なんだよ。」ノックが凶器なんてそんなことあるわけが無いだろ!バル兄様とどちらが城を破壊したのか言い合っているとフィオたちがこっちに向かって走ってくる。どうやら貴族達を連れて帰ってきたようだ。右からはマーヤが、左からロオー兄様とジーノが歩いてくる。ロオー兄様とジーノが担架を運んできているのを見る限り、何とか国王陛下は息をしているらしい。無事かどうかと問われると難しいところだけど…「それじゃあ、役者も集まったところだし、始めるか。」バル兄様の一言でトリドール、ピリットン、イヴェッタ王妃を目の前にある3本の木に吊るした。城が無くなった事で何事か様子を伺うようにワラワラとたくさんの人が集まってくる。バル兄様が大きな音を立てていたのも人を集めるためだったんだ
Last Updated: 2025-07-29
Chapter: 捕縛。「王宮内に入る前に作戦を伝える。」テッサリーニ国に入るまでは少し緊張しているように見えたフィオも今は王太子の顔をしている。1年間、国を離れていた王太子だと言うのに、赤熱の騎士団の人達の揺るがぬ信頼。帰ってくるか分からない王太子をひたすら待ち続けるのは簡単なことでは無いだろう。それだけ、フィオはこの国の人たちに愛されている。ということだ。アニバル兄様が前に出てきたので静かに耳を傾ける。どうやらテッサリーニ国でもアニバル兄様は有名らしい。「できるだけ少数精鋭で動きたい。メローラは俺と一緒にトリドールとピリットンを捕縛する。ジーノはロオーデリヒを連れて国王陛下の元へ。」的確に指示を出していくアニバル兄様。ロオーデリヒ兄様を国王陛下の所へ連れて行くのは国王陛下の状態を確認するためだろう。ロオー兄様もボァ兄様までは行かないまでも医療に精通している。ロオー兄様もアニバル兄様の言葉を理解したのかこくりと頷いた。「マーヤは赤熱の騎士団員を数名連れてイヴェッタ王妃を捕縛しろ。オルフィはウェインと一緒にお前を嘲笑った奴ら全員連れてこい。わかったな?1人残らずだぞ?」「分かりました。全員連れてまいります。バル義兄上。ウェイン行くぞ。」いつの間にか、フィオがアニバル兄様のことをバル義兄上と呼んでいることにも吃驚したが、それ以上にアニバル兄様があそこまで言うことに驚いた。元々情に厚い人ではあるけど。私達が国の外に出ている間に仲良くなったらしい。「バル兄様があそこまで言うなんて珍しいですね。家族以外にあまり興味を示さないのに…」「何言っているんだ。お前と婚約した以上、オルフィは俺の義弟だ。守るのは当然だろうが!それにこの国はなんだか居るだけで胸糞悪い。メローラ。掃討するぞ。王宮は壊しても構わないと許可は得ているからな。」バル兄様が怒るのも無理は無い。それにしても、王宮を壊しても構わないって…本当かなのか…?フィオ…
Last Updated: 2025-07-29
Chapter: 再び、テッサリーニ国へ。モルガン家のことが片付いてから数日後。私達はテッサリーニ国を目指していた。理由は簡単。テッサリーニ国をトリドール家から取り戻すためである。今回はアニバル兄様を筆頭に、ロオーデリヒ兄様、マーヤ、ウェイン、そしてオルラフィオを合わせた5人だ。本当はミル兄様も来たがっていたのだが、母様から謹慎を言い渡されてしまったのである。夜会の後の母様は鬼の形相でミル兄様を怒っていた。あれを止められる人は恐らくいないと思う。でも誰もそれを止めようとはしなかった。言ってしまえば自業自得だからだ。確かに、パレスティラがラグネリアに毒を盛った事はパレスティナ自身が悪い。ただ、そういう行為に走ってしまったのはミル兄様がパレスティラの縁談を適当に流してしまったことが原因だ。ミル兄様の面倒という気持ちは分からないでもないが、それでも誠意を見せることは大切だろう。「本当はもう少しパレスティラに言いたいことがあったんじゃないか?フィオも…」「あぁ…本当はね。たださ、あの状態を見てしまうとね…それに私よりもラグネリアの方が辛いだろうに許すと言ったんだ。それを聞いたらもういいかなって思ったんだよね。」確かに、あの時のラグネリアはかっこよかった。ウェインが水をかけようとした瞬間、ウェインの手に軽く手を添えて「ウェイン。もういいです。確かに私は辛い目に合いました。ですがそのお陰で見えていなかったものに気付くことが出来たのです。それに友人も出来ました。だから、私は許します。」あの時のラグネリアは女神そのものだった。「それに、私が1番仕返ししたいのはトリドール家とこの2年弱私を蔑み続けた貴族たちだ。今からあいつらがどんな顔するかと思うと楽しみでならないよ。」そうか。色々あったから忘れていたけど、フィオがドラウゴン国に来てから1年くらい経っていたんだな。本当にこの
Last Updated: 2025-07-29
Chapter: ドレッド家の最後。「何もしなくても今全て話してくれたようだぞ。モルガンよ…」可愛がっていた娘が、怒りの余りに全てを話してしまうとはモルガン本人も思っていなかっただろう。「それだけじゃないのよ。その女はね、私からスラッハミール様を奪おうとしたのよ!!」「「え?」」ミル兄様とラグネリアの声が重なる。ミル兄様とラグネリアの婚約は昔会ったと聞いたことはあるがそれは小さい頃の話だ。ラグネリアの母が母様の侍女をしていた時に面白半分で話していたと聞いたことがある。「も、もしかして、ラグネリアの婚約者が…」ミル兄様だと思っているのだろうか。「スラッハミール様なんでしょ?だから私の縁談断られたのよ。全部知っているんだから!!」いや、それ出鱈目もいい所ですよ。パレスティナよ…。「えっと、誰に聞いたか分かりませんが私の婚約者はウェインライト・ガーフィールですよ。先ほど国王陛下も仰ったではありませんか。」「え?」その言葉に皆頷く…「スラッハミール様の婚約者じゃ…」「ありません。」「え…?だ、だ、だってお父様が、お前からスラッハミール殿下を奪ったのは貴女だと…えぇぇぇぇぇええ!!」パレスティナの声が会場内に響き渡る。その後からぽつりぽつりとパレスティナが話し始めた。初めて会った時からミル兄様のことが好きだったこと。でもその隣にはいつもラグネリアが居た。おそらくそれは母様の侍女の娘だからと特別にミル兄様ののころで侍女見習いをさせてもらった時だろうとラグネリアは言っていた。「縁談の話が出た時、とても嬉しかったのです。ですがスラッハミール様
Last Updated: 2025-07-28
Chapter: 永久就職騎士団に入ってから3年が経った。この3年は他の領地にある騎士団が魔物討伐に向かっているため、比較的平和な時間を過ごしていたように思う。騎士団に入ってから知ったことだが、この国では魔物討伐を率いる騎士団は領地ごとで順番になっていたようだ。たまたま私が行った時の魔物討伐部隊を率いていたのが自領のダグワール騎士団だったらしい。「団長、エルヴィール・アルデンテです。失礼いたします。」朝一で団長から呼び出された私は、急いで団長室へ向かう。「あぁ。待っていた。そこに座ってくれ。」団長に促されてソファに腰を掛けると、団長も前のソファに座った。「それで…話とは、何でしょうか?」最近、これといって呼び出されるようなことはしていないと思うのだが…確かに以前は訓練で女だとバカにしてきたやつを片っ端から倒していたが、それもかなり前の話で今は落ち着いている。今でも喧嘩を吹っかけてくるのは新兵くらいだ。「魔物討伐遠征に行くことになりそうなんだ。」「なんだ…そんなことか…また、何かしたのかと思っていたので安心しました。それで次の遠征期間はどのくらいでしょうか。」また5年とかかるのだろうか…それなら父さんたちに伝えてから行かないとまた大変なことになりそうだ。「…次は1年の予定だ。以前のように魔物が活性化しているわけではないし、調査してもし活性化しそうであれば早めに対処しておこうということになった。」1年なら、全然問題なさそうだ。活性化していないということであればそこまで強い魔物もいないだろう。「その、お前は寂しくないのか?ほら、俺に死んでほしくないと…以前言っていたじゃないか。」「なんで寂しくなるんです?それに今回の魔物討伐で死んでしまう予定があるのでしょうか…?」この人は何を言っているんだろうか。私も行くわけだし、寂しいも何もないと思うのだけど…確かに魔物討伐に行くのだ。急に
Last Updated: 2025-04-15
Chapter: 伝説の家族騎士団に入団してから1年が経った。入団してからすぐのころは確かに女だからとバカにされることが多かったが、いつからかバカにされることはなくなっていた。恐らく、アルデンテと家名を伝えれば初めからバカにされることはなかったのだろうと今になっては思う。「バルコ副団長。私のわがままで申し訳ございませんが、家名は伏せておきたいと思っています。」「どうして?エルの家名を伝えればほとんどの人が黙るはずだよ。」「だからですよ…やっぱりこれから長い付き合いになるわけですし、自分自身のことを見てほしいと思いまして…」アルデンテ一家の名前が偉大なのはここ数か月で何となくわかった気がするが、「アルデンテ家だから」と思われるのは少し嫌だったし、やっぱりエルヴィールとして見られたい。そう思ってこの一年はがむしゃらに頑張っていたら、いつの間にか、部隊長にまでなっていたのである…。そして、もう一つ…この一年は団長と約束していた通り、休みの日は一緒に食事をしたり、出かけたりした。この1年間で気づいた事といえば、団長は思っていた以上に抜けていることが多いということだった。仕事の時は皺やシミのない制服をきちんと着飾っているような人が、休みの日になると少しヨレっとした服を着ているという感じだろうか。きっと女性たちはこういったギャップに弱いのだろう。あとは食べ歩きをしているとトマトなどのシミがついてしまうことが多い…そんな姿もかわいいと感じる部分なのかもしれないが…普段のしっかりとした団長を知っている手前、なんだか少し恥ずかしい気持ちになってしまうことが強かった。今日もそんな団長と休みがかぶっているため、一緒に食事に行
Last Updated: 2025-04-14
Chapter: ま、まさかの!?「え?結婚ですか?」就職先がやっと決まり、明日から念願の騎士団で働けると喜んでいたのも束の間、団長が他にも話があると言うので待っていると、まさかの話だった…。「結婚ってあの結婚ですよね?」単刀直入過ぎて頭がショートする。離婚して半年は経ったが、まさか自分が告白されるなんて思っていなかった。いや、告白なのか?好きと言われた訳でもないが…「そうだ。その結婚だ…」もしかして早く結婚でもしろと言われているのだろうか。でも団長ならモテそうだし、女性が放っておかなさそうだが…「なぜ私なのでしょうか。団長でしたら引く手数多でしょう。」私はそのまま疑問に思ったことを直接聞く。バツイチだし、とうが立っているしどこもいい所がないと思うが…「お、お前のことが昔から好きなんだ。」好き!?私を?!昔って喧嘩しかしてなかったけど…。「はぁ。昔って喧嘩しかしていなかったと思いますが…そんな話とかしましたっけ?」「確かに、昔は喧嘩ばかりだったが、喧嘩の理由だってお前のことが多かったんだ。それにお前が楽しそうに喧嘩したり、魔物討伐している姿をみると胸が高鳴るというか…」え…?それはさすがに…「私に殴られたいってことですか?もしかしてそういう趣味をお持ちなんですか?」「ちがう!そうじゃない!ただお前の戦い方は清々しいほど真っ直ぐでかっこいいんだ。お前が戦っている姿を見てさらに惚れた。だから結婚してほしい。」何となく団長が言いたいことは、わかった。兎に角好きだから結婚したいということなのだろう。「私は、1度結婚に失敗しています。なのでもし次結婚するなら失敗はしたくないと思っています。」「あぁ…」結婚してみて思ったが、我慢する生活は良くないとつくづく思った。言いたいこと言ってお互いのことを尊重し合えるようなそんな関係がいい
Last Updated: 2025-04-14
Chapter: やっと…就職先が決まりました!応接室の中で待っているとガチャりと扉が開く音が聞こえる。私はその音が聞こえた瞬間立ち上がった。「待たせたな。」「とんでもないことでございます。こちらこそ、お忙しい中、急遽面接を行って頂きありがとうございます。」一言挨拶をしてから頭を下げる。「いい。頭をあげてくれ。それでは面接を始めようか。」「は…い…?あれ?だ、だ、だんちょう?」頭をあげると目の前には昨日も一緒にお酒を飲んでいたはずの団長が座っていた。「魔物討伐部隊では挨拶をしたが、ここでは初めてだったな。改めてオディロン・ダックワーズだ。ダックワーズ辺境伯領にあるダックワーズ騎士団長をしている。」団長が目の前にいることにびっくりしたが、自分も改めて挨拶しなくてはならないと思い、気を持ち直して挨拶をする。「改めまして。ダックワーズ団長。この度は面接の機会を頂きありがとうございます。私、エルヴィール・アルデンテと申します。先日、名誉なことに騎士爵を賜りました。特技は戦闘全般です。よ、よろしくお願いいたします。」「こちらこそよろしく頼む。仕事内容を話したいので座ってくれ。」いつも団長は鎧を着ていることが多かったからか、スーツを着ているのが少し新鮮だ。「失礼します。」私は団長に言われた通り、ソファに座ると団長も私の前に腰を下ろした。⟡.·*.··································&m
Last Updated: 2025-04-14
Chapter: 面談先は…?「いたたたたた…」昨日途中までは皆で騒いでいたのを覚えているけどいつの間にか寝てしまっていたようだ。椅子で寝てしまったせいか腰と頭がすごく痛い。頭は二日酔いのせいだろう…。周りにもそのまま寝てしまったのかイカつい男たちが店の中で雑魚寝している。少し伸びをしてから立ち上がり首や肩を軽く回すと、隣で眠っていたルエルが目を覚ました。「すまん、起こしたか?」「そんなことないですよ。おはようございます。隊長。」ルエルも横で伸びをする。そろそろ仕込みが始まる時間なのか、父さんたちも起きてきたようだ。「おい、お前らそろそろ起きろ。」「あぁぃぃ。おはようございます。」少し大きい声でみなに聞こえるように声をかけるとのそのそと起き上がる。団長と副団長が居ないところを見ると昨夜のうちに帰ったようだ。「そろそろ開店準備をする時間だから帰れ。」少し眠いのか目が空いていない人や二日酔いで頭を押えているものがいる。「ルエルは大丈夫なのか?」「僕は大丈夫ですよー!隊長こそ、昨日話したこと覚えてますか?」ルエルは昔からやたらと酒が強かった。皆が酔っ払っていてもそれを見ながら笑っているくらいでケロリとしている。「あぁ、準備が出来たら地図のところに向かうよ。」「よろしくお願いしますね!門番に僕の紹介できたことを伝えてもらえれば入れますんで!それじゃあ、そろそろお暇します。」「わかった。こちらこそよろしく頼む。また後でな。」面接の時に会えるか分か
Last Updated: 2025-04-13
Chapter: 仕事が決まってないのは私だけ!?「アドルフの話はこのくらいにしておいて、そろそろ隊長の話を聞きたいです。隊長は仕事決まったんですか?」「わ、わ、私か!?仕事はな…見つかりそうではあるのだが…」4人がこちらを同時にみて「やっぱりまだ見つかっていないのか…」というような顔をしてくる。失礼な奴らだ。今まで全く求職活動をしてこなかったわけではないんだ。ただ、自分に見合う仕事がなかった…というだけのこと。「そうなんですねー。見つかりそうだったならよかったです。もし見つかっていないのであれば、以前お話していたお仕事を紹介しようかなと思っていたんですけど…」ルエルはこちらをチラチラ見ながら話してくる。この顔は本当は紹介してほしいんでしょ?という目だ。「ゴホン。ル、ルエルもしよければ参考までに、その仕事の内容だけでも教えてくれないか?」「えぇ。参考ですか?そんなの面倒くさいですよ!守秘義務というのもありますし、ここではお伝えは難しいですね。それに隊長は仕事見つかりそうなんですよね?でしたら必要ないじゃないですか。」「た、たしかにそうなんだが…な…その…すまない…仕事はまだ決まっていないんだ…」正直言ってルエルが仕事を紹介してくれるというのは渡りに船だった。半年間色々面接は受けたもののうまくいかず、最近では本当に仕事ができるのかさえ不安になってくる始末だ。「最悪、自分で傭兵団を作るのかもありかなと思っていたところだ。」傭兵団に入ることも何度か考えたが、女性が入れる傭兵団は限られておりあまりいい噂を聞かな
Last Updated: 2025-04-13