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まっど↑きみはる
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Novels by まっど↑きみはる

裏庭が裏ダンジョンでした

裏庭が裏ダンジョンでした

 結界で隔離されたど田舎に住んでいる『ムツヤ』。彼は裏庭の塔が裏ダンジョンだと知らずに子供の頃から遊び場にしていた。  裏ダンジョンで鍛えた力とチート級のアイテムと、アホのムツヤは夢を見て外の世界へと飛び立つが、早速オークに捕らえられてしまう。  そこで知る憧れの世界の厳しくも残酷な現実とは……?
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Chapter: キエーウ強襲戦 4
 男は最後に走馬灯を見た、自分を1人で育ててくれた母親。大好きな母親。オークに殺された母親だ。 ある日、治安維持部隊が来て、自分の母親はオークの盗賊団に殺されたと知った。 夜遅く、街の仕事からの帰り道で母親は殺された。悔しくて、寂しくて。 それが、何故だか分からないが、自分は母親に抱きしめられていた。温かい安心する体温が伝わった。「お母さん!!」 安心して泣いてしまっていた。母は頭を優しく撫でてくれる。「寂しい思いをさせてごめんね、ごめんね……」「ムツヤか? こっちは片付いた。すまないがもう一度キエーウの支部へ向かってくれ」 アシノは連絡石でムツヤに話した。「わがりまじだ」と返事があったので任せて問題は無いだろう。 ルーが探知盤で辺りの様子を見たが、反応はない。敵もこれ以上は居ないようだった。 モモは体中の傷も足首も回復薬で元通りになった。そして治ると同時に走ってリースの元へと向かう。 待っているのは残酷な現実だ。リースは下半身と上半身が斜めに切り分けられ、目は見開いたまま死んでいた。 その惨さにユモトは思わずまた口元を抑える。 モモは半ば無意識に2つになったリースを元に戻し回復薬を掛けようとした。「やめろっ!! 回復薬の無駄遣いだ!!!」 黙っていたアシノに一喝されてモモはビクリとする。「あ、アシノ…… そんなふうに言わなくても」 ルーは喋ったが、うまく言葉が見つからずまた黙り込んでしまう。「死んだ人間は生き返らないんだ。たとえ裏の道具を使ったとしてもっ!!!」「あっ、あっ、うぅぅぅ……」 モモは膝から崩れ落ちて泣いていた。悲しさか、悔しさか、虚しさか、それともそれら全てが混ざった感情か。涙が溢れて止まらなかった。 ムツヤはキエーウの支部を目指し風のように走っている。先程の爆風で辺りの木々は倒れ、燃えていた。 心臓がバクバクと鼓動を打っているのが分かる。人を殺めた恐怖が体を支配しそうなのが分かる。 頭を振ってそれらから逃れようとした。今は戦いに集中をしなくてはならない。 探知スキルで近付いているのは分かっていた。あと数分ほどでたどり着くだろう。「敵襲ー!!!」 キエーウの支部である枯れたダンジョンでは蜂の巣をつついたような騒ぎだった。 弓兵と魔道士が外へ出てムツヤの強襲へ備える。 森から何かが空へ飛び出した
Last Updated: 2026-09-15
Chapter: キエーウ強襲戦 3
 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。「リイイイイイィィィース!!!!!!!」 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。「貴様あああああああ!!!!!」 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」「人を殺しておいて何を言う!!」 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」 それを言われてモモはハッとした。「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。「例の死体少女のお出ましってわけか」 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。「ユモト!! ボーッとするな!!」 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。「遅いじゃんな」 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中
Last Updated: 2026-09-10
Chapter: キエーウ強襲戦 2
 しかし、敵もムツヤをまだまだ甘く見ていたようだ。 人間離れした速さで飛び回り豪火を辺りに散らすムツヤを見て「本当に勝てるのか?」といった不安が少しずつ生まれる。「くそっ、なんて奴なの!!」 女召喚術師は次々と砂粒を依代に精霊を呼び続けた。流石に仮面越しの額に汗もかいてくる。「クソックソッ、止まりやがれ!!」 触手でムツヤを捉えようとする男も苦戦をしていた。「やっぱ、一筋縄じゃいかねぇってワケか……」 ムツヤに何らかの方法でトドメを刺そうとしている半円状の刀を持つ男は、しびれを切らし初めていたが、どうすることも出来ないでいた。 そんな何もかもが異次元で無茶苦茶な戦いが5分ほど続いた時、やっと進展があった。ムツヤが地面に着地し、何故か動かなくなったのだ。「しめたっ!!」 そのスキを逃さずに、触手でムツヤの足、そして次に手を拘束する。ムツヤは抵抗の1つもしない。「よっしゃ、後はあいつの首を吹き飛ばすだけだ!!」 ずっと長い刀を握りタイミングを図っていた男は一気に魔力を込めてムツヤ目掛けて弾けるように飛んだ。その姿は青い閃光に見える。 この刀は魔力を込めると、雷が走りありとあらゆる障害物を破壊しながら使用者と共に一直線に飛んでいく裏の道具だ。 ただ、例によって熟練の戦士であるこの男でさえ魔力不足かつ、完璧に使いこなせてはいないので、使用は1度きりだ。2度目は無い。 木をなぎ倒しながらムツヤに近付く閃光。 ムツヤはそれを知ってか知らずか触手に縛られ、小さい精霊が全身にまとわり付いて小さい山のようになっている。「死ねぇ!! 亜人の味方が!!!」 瞬間、小さい精霊の山から光が漏れた。そして起こるのは…… 大爆発だった。 閃光になってムツヤに近付いた男はそれを間近で受けてしまい、吹き飛ばされる。 激しく体を木に打ち付け、手足が吹き飛び、全身の骨が砕け、絶命した。 遺骸は爆発
Last Updated: 2026-08-29
Chapter: キエーウ強襲戦 1
「それじゃあ、作戦を確認するぞ」 朝食が終わり、アシノがそう声を掛けた。ムツヤの能力で周囲に人が居ないことは確認済みだ。 また、念の為音の妨害魔法で家を包んでいる。「まずここから南の枯れたダンジョンに、キエーウの支部がある。ムツヤは人の気配を辿ってその本拠地を叩く」「はい!」 勢いよくムツヤは返事をした。アシノは思う、こいつはアホだが戦いに関しては信用できる。 ただ、人を斬る覚悟だけはまだ出来ていないようだが……「よし、それじゃ私達だ」 まぁムツヤなら殺さず、動けないようにするのは簡単だろうと自分に言い聞かせた。「最強ムツヤ大先生の弱点は私達だ。誰か一人でも人質に取られたらまずい」「そうなのよねー」 ルーだけでなく全員がその点には合点がいく。「だから私達は自分の身を自分達で守ることだけを考えるぞ」 皆が頷いたのを確認してアシノは話を続ける。「現時点でだ、この中でムツヤの次に強いのはヨーリィだ」「私じゃないの!?」「黙ってろ!!」 アシノが立ち上がったルーの頭を引っ叩くと「ぷぺら」と言って椅子に戻った。「中距離近距離の戦いで一番強いのはヨーリィだ。だからヨーリィを一番南に置く」 ヨーリィは「わかった」と短く言った。「次、ヨーリィの援護にルーが付く」「任せちゃってー、ヨーリィちゃんは私が守るわ!」「後の私達は後方で自分の身を守ることだけを考えろ」 ユモトとモモ、リースは返事をする。これでキエーウ強襲戦への布陣は決まった。「それじゃあ行ってきます」「えぇ、どうかご武運を」 ムツヤはモモの言葉を聞き終えると風のように森を駆け抜けていく。「私達も布陣するぞ」―――――――――――――― ムツヤは千里眼を使い、周りの状況を確認しながら森の中を南に向けて走り続
Last Updated: 2026-08-28
Chapter: ここをキャンプ地としよう
 変なことを聞かれ、思わずユモトは吹き出してしまった。「あら、大当たりかしら?」「な、なにを言ってるんですか!? 僕とムツヤさんは男同士ですよ!?」「そういう意味で聞いたわけじゃなくて、仲間としてなんだけどー? やっぱユモトちゃんムツヤっちをそういう目で……」 しまった、罠にかけられたとユモトは思う。「ち、違います、好きじゃありません!!」「じゃあ嫌いなの?」 ユモトを下から覗き込んでルーは尋ねる。「い、いや、嫌いなわけないじゃないですか!! ですからその、好きとか嫌いとかじゃなくて、仲間として好きですけど、あとムツヤさんは強くて魔法も上手で尊敬してますけど」 顔を真っ赤にしてユモトはべらべらと早口で話していた。それを見て満足気にルーは笑っていた。「わかったわかった。からかって悪かったわよ」 うぅー、と言ってユモトは下を向いている。「でもさー、ムツヤっちって不思議よね。人を惹きつけるというか、いい人だけどおバカな所が放っておけないのかしら」 ムツヤに失礼かもしれないと思ったが、妙に的を射る発言に思わずクスクスと笑ってしまった。「えぇ、そうですね。ムツヤさんは優しいですけど」「おバカよね」 ルーがユモトを指差して言った。またハハハとユモトは笑う。「さーて、交代の時間まで魔法のお勉強をしながら見張るわよー!」「はい、今日もよろしくおねがいします!」 交代の時間の10分前、ヨーリィはバチッと目を覚ました。「お兄ちゃん起きて」 魔力の補給のために手を繋いだまま一緒に眠っているムツヤを揺さぶって起こした。「うーん、おはようヨーリィ」 眠そうにムツヤは起きる。テントを出るとユモトが魔法の訓練をしていた。「そう、そこでドピュッと出す感じで!!」「ど、ドピュッてですか!?」 相変わらずルーの教え方は直感的と言うか、下手だった。
Last Updated: 2026-08-27
Chapter: キエーウ強襲戦 3
 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。「リイイイイイィィィース!!!!!!!」 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。「貴様あああああああ!!!!!」 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」「人を殺しておいて何を言う!!」 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」 それを言われてモモはハッとした。「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。「例の死体少女のお出ましってわけか」 ヨーリィが木の杭をビュンビュンと投げるが、男は大鎌を振り回して弾き飛ばす。「ユモト!! ボーッとするな!!」 アシノに言われてハッと我に返り雷の魔法を詠唱した。鉄の武器を持つ者は雷の魔法を武器で弾く事も出来ず、躱すか防御壁を貼るかしか防御の手段がない。「遅いじゃんな」 男は大鎌を持っているとは思えない速さで右へと走り、雷を避ける。アシノもワインコルクをパァンと飛ばすが当たらない。 そんな男をモモは剣を持ち追いかけた。まずいとアシノは思う。「モモ、無理をするな!! そいつは今のお前じゃ歯が立たない!! ルーの加勢を待つんだ!!」 くっと足を止めて仲間の元へ戻るモモ。「逃げるのか? 弔い合戦といこうじゃんよ」 男へ怒りはあったが、理性の方が上回っていた様だ。 煽りも無視して距離を取って剣を構える。そんな中
Last Updated: 2026-08-25
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」  一人の女が赤面しながら男を指差し言う。  そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
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Chapter: 聖女様ファンクラブ
「私はスフィン将軍を起こしに行くわ」「あぁ、頼んだ」 食事が出来上がる頃合いを見て、ラミッタは椅子から立ち上がる。「失礼します。スフィン将軍」 部屋をノックするが、返事がない。だいぶお疲れのようだっだし、まだ眠っているのかとラミッタは思い部屋に入った。 思った通り、スフィンは上品な横画をし、ベッドの上で眠っている。「スフィン将軍、お食事のご用意ができました」 軽く肩を叩いてスフィンを起こす。「ん……。あぁ、ラミッタか……」 寝ている時も警戒心が強いスフィンがここまで隙を晒すなんて、よほど疲労が溜まっていたのだろう。 金色の髪をさらさらと流しながら、スフィンは上体を起こす。「よく寝た」 ベッドから起き上がり、部屋を出ようとすると、未だに目覚めないマッサを見て、その掛け布団をはぎ取る。「んー……。あと5時間……」「寝すぎだ馬鹿者!!」 結局スフィンによって叩き起こされたマッサはあくびをしながら部屋から出て行った。 起きたばかりだが、空腹を感じているスフィンとマッサは、美味そうな匂いに段々と意識がしっかりとし始める。「あっ、聖女様!!」 村の若い女が言うと、残りの村人達の視線もそちらへ向かう。「聖女様!! この度は本当にありがとうございます!!」「いや、大したことはしていない」 そう否定するも、ぶんぶんと若い女は首を横に振った。「そんな事はありません!!」「お前は、確かあの足を治したタカセとかいう男にアザミヤと呼ばれていたな?」 若い女、いや、アザミヤは自分の名前を言われた事に驚く。「せ、聖女様が名前を憶えて下さっていただなんて!!」「いや、職業柄、人の顔と名前を覚えるのは得意な方でな」  スフィンが言う職業とは軍人、将軍の事だったが、アザミヤ達村人の中ではすっかり聖女としてという事になっていた。「流石、聖女様は違いますね」「いや、だから私は聖女では……」「まぁまぁ、飯も用意してもらったし、食べましょうや!!」 マッサが言うと、スフィンも諦め椅子へと座る。 村の野菜や家畜の肉で振舞われた料理は実に美味で、四人はすっかり満足だった。「いやー、ご馳走様!!」「アザミヤ、それに村の方達。美味かったぞ、礼を言う」「い、いえ、お礼だなんて!! あ、そうだ! 村長が皆様とお話をしたいって言ってました!」 王都
Last Updated: 2026-09-15
Chapter: お手て
マルクエン達は空き家に案内された。中を除くと、机も椅子、生活用品はある。「こんな所しかご案内できまぜんがー、どうか使っでぐださい」「いえ、充分です。ありがとうございます」 そう、マルクエンは礼を言って村人を見送った。「はー、疲れたわね……」 ラミッタは独り言をしてから、うーんと背伸びをする。 マッサも椅子に座って机に突っ伏した。「俺はもう限界っすよー……」「ふん、だらしないな」 虚勢を張るスフィンだったが、自分自身も疲労|困憊《こんぱい》だ。「あー、もう寝ますか……。ベッドもありますし」 マッサは自分自身の疲れか、スフィンを気遣ってか、寝ようとしていた。「そうですね、隣の部屋にあるみたいですし……」 隣の部屋をの戸を開けると、ベッドはある事にはあったが、三つだ。「三つか、私はさっきの部屋のソファで寝ます。皆さん使って下さい」「何よ宿敵、気を使っているの?」 ラミッタがむくれて言うと、マルクエンは軽く笑う。「ははは、私はそこまで疲れていないからな」「この体力バカ」「美女二人と同じ部屋で寝られるなんて、幸せ者ですよ俺はぁ」 マッサがそんな事を呟くので、スフィンは怪訝そうな目で見つめた。「こいつは外に放り出そう」「酷くない!? スフィンさん酷くない!?」 結局マッサは左端のベッドに横たわり、真ん中がスフィンで右端がラミッタとなる。 カーテンを閉め、薄暗くなった部屋で、眠気を感じる三人。「ふぅー、やっと休めますぜ」「黙って寝ろ」「はいはい、聖女様ー」「聖女と言うな!!」 そうスフィンが言うと、しばらくの静寂。「でも、やっている事は聖女様ですぜ?」 ポツリとマッサが言うと、スフィンは寝返りを打って背を向ける。「大体、私は軍人だ。この手で|数多《あまた》もの敵を殺してきた。私の手は血で汚れている」「そうですかい……」 うーんと目を閉じるマッサ。「だけど、スフィンさんの手白くて綺麗で柔らかかったなー」「そういう話ではない!!」 ははっとマッサが笑い、その後は会話もなく、いつの間にか眠ってしまう。 そんな部屋の隣でマルクエンは一人寂しくソファで横になっていた。「聖女様……」 スフィンに足を治して貰った男、タカセはそう口にしていた。 元々剣の腕が立ち、運動神経の良かったタカセは足の感覚を取り戻しつつ
Last Updated: 2026-09-10
Chapter: 聖女様
「本当に勇者様だったが、こりゃ失礼しましただ」 その後も話をし、何とか信じて貰えたマルクエン達。男に案内され、村へと向かう。 |鬱蒼《うっそう》とした森を抜けると、集落が広がっていた。「ここが村ですだ」 そのまま村長の家まで連れていかれる。疲れを感じていた一行はすぐにでも休みたかったが、仕方がない。「村長ー、勇者様だー」「勇者様!?」 慌てて老人が軋む体に鞭打って飛び出てきた。「ほ、本当に勇者様だか?」「えぇ」 そう言って自己紹介を始めるマルクエン達。「信じられねぇが、信じるしかないべか……」 村長はポツリと言ってから、笑顔を作る。「ようこそおいでぐださっだ。勇者様。空き家があるんで、そこを使ってくだせぇ」 どうやらこの村に宿屋は無いらしく、空き家を貸してもらえる事になった。「ありがとうございます。ありがたいです」 マルクエンは深々と頭を下げて、その言葉に甘える。「勇者様、一つお願いがあるんだきっとも。勇者様は回復の魔法ってのを使えねーだか?」 回復と聞いて、スフィンはピクリと反応した。「この前魔物がおそっでぎで、村人と雇ってる冒険者が怪我したんで、治して貰えないかっで」 マルクエンはスフィンを見ると、軽く頷く。「この能力の実験には丁度いい。案内してくれ」 スフィンの言葉を聞いて村の男は大いに喜んだ。 そのまま歩くと、とある家の中に着く。中に通されると、怪我人が並んで寝ていた。 怪我人の元にしゃがんで、マッサにしてやった時の様に魔物の爪で切られたであろう太ももの傷に触れるスフィン。 すると、光があふれ、たちまちの内に傷が治っていく。 手当された本人も、見ていた村人も驚いていた。「こ、これが勇者様だべか!?」「いや、私は勇者ではない」「そうそう、聖女様だ」 マッサ
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 能力
「この塔にはもう用はないな」 スフィンがそう言いかけた時、女神の声が二人の脳内に響く。「そうそう、マッサ。あなたにも何か能力を差し上げねばなりませんね」 それを聞いて、待ってましたと言わんばかりにマッサの胸は高鳴る。「あなたには、別の世界の勇者も持っていた能力を与えましょう」「別の世界の勇者の能力……?」「そうです」 何が来るんだと、|勿体《もったい》ぶらせる女神にマッサはソワソワとしていた。「名付けて『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「は?」 女神の言葉にマッサは何を言われたのか理解できない。いや、理解したくない。「ですから、『ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力』です」「いや、何すかその能力!?」 マッサはツッコミを入れた。その後頭をかきむしる。「別の世界の勇者はこの能力で世界を救いました」「噓でしょ!! 絶対嘘でしょ女神様!?」 後ろではスフィンがクククと笑いを堪えていた。「さぁ、行きなさい人の子よ! 世界を救うのです!!」「そんな、もっと別の能力に……」 マッサの訴えも|虚《むな》しく、女神の声は消えて、扉が開く。「全然手応えないわね、準備運動にもならないわ」 塔の外では魔物を蹴散らしながらラミッタが呟く。 マルクエンも同じだった。マッサの心配もしながら、魔物を簡単に斬り捨てている。 その時、塔の扉が開いて、二人は振り返った。 塔の石畳をコツコツと音を鳴らして人が来る。 スフィンの隣を平然と歩くマッサを見て驚くラミッタとマルクエン。「マッサさん、大丈夫ですか!?」 マルクエンが声をかけると、ニッと笑うマッサ。「大丈夫っす、スフィンさんに治してもらいました!」「治したって、どういう事よ!?」
Last Updated: 2026-08-30
Chapter: 選ばれたのは
「それじゃあ、バチバチしちゃうよー?」 ミネスはそう言っておもむろに地面に降り立つ。「食らっちゃいな!」 突き刺さる氷のナイフの表面が溶け出し、そこへ雷の魔法を打ち込む。 ナイフ同士に電気が流れ、一瞬にして襲いかかってきた。「甘いわね」 土混じりの防御壁を巡らせ、ラミッタは防ぐ。 しかし、隙が出来てしまった。「そこで一生そうしてなよ! お二人共お幸せにー!!!」 ミネスは電気を流し、そのままマッサとスフィンの元へと飛んでいく。「まずい、二人を守らねば!!」「って言っても、防御壁崩したら電気地獄で丸焦げよ!?」 ラミッタの言う通りだ。助けようにもこちらが倒れてしまっては元も子もない。「待ってなさい、この程度の魔法、私が相殺してあげるわ」 ミネスはマッサとスフィンの元へと高速で飛び、追い付く。「さぁ、もう逃げられないよ!!」「逃げるのも飽きたな、戦ってやる!!」 スフィンが言って馬を止めて剣を抜いた。「待て、スフィンさん!! 戦うのは試練の塔を突破した後だ!!!」「死んじゃえ」 ミネスは氷のナイフを無数に発射する。 スフィンも手練れなのでそれを剣で弾き、身を守った。「おー、やるね」 余りにも多いナイフに、打ち漏らしが出てきて、顔や足などを|掠《かす》めて血が滲む。「どこまで耐えられるかなぁ?」 ミネスはナイフを出しながら段々と近づいてくる。「スフィンさん、俺が食い止める!!」 マッサがそう言って割り込もうとするが、彼も氷のナイフ達に悪戦苦闘していた。「それじゃそろそろ逝ってみよー」 ミネス自身がナイフを構えてスフィンへ突進してきた。 そのナイフは腹を突き刺す。 だが、スフィンのではない。「かっ、かふっ」 ナイフは割って
Last Updated: 2026-08-29
Chapter: 護衛
 朝を迎え、マルクエンとラミッタが起き出す。 ラミッタは隣にスフィン将軍が居ないことに気付き、しまったと思った。「おはようございますスフィン将軍! 申し訳ありません、将軍より遅くに起きるとは……」「いや、良いんだラミッタ」 怒ってはいない様子なので、ホッとしたラミッタ。続けてマルクエンもテントから出てくる。「おはようございます」「敵が起きているというのにイーヌの兵は随分と不用心なのだな」「いや、まぁ、ははは……」 相変わらずマルクエンに対してはあたりの強いスフィンだ。「おや、おはようございます。飯出来ているんで食べましょうや!」 マッサに言われ、食事を済まし、馬車を走らせ試練の塔へと向かう。「この調子なら明日の朝には着くとおもいますぜー」 荷台に座るスフィンは「あぁ」と短く返し、揺られていた。「あそこに見えるのが試練の塔ですぜー。思ったより早く着きましたなー」「あれが……」 遠くに高くそびえ立つ建造物が見え、スフィンがジッと目を凝らしていた。 そんな時だった。「っ……!! 魔人の気配!!」 ラミッタが突然大きな声で言う。スフィンも膨大な魔力の気配を感じ取っていた。「こりゃ、まずいかもなー」 口調とは裏腹にマッサは真剣な眼差しで空を見る。 遠くからこちらへ飛んでくる影があった。「はぁーい、元気してた?」 奇術師の魔人。ミネスがやってきて、拡声魔法を使って話しかけてくる。「残念ながら元気よ、どこかへ行ってもらえるとありがたいのだけど」 ラミッタがそう返すと、やれやれといったポーズをし、ミネスは話し続けた。「そっちの金髪のおねーさん。ちょっと殺させて貰えないかなー?」 ミネスは自分の事かと剣を引き抜いて構える。「やれ
Last Updated: 2026-08-27
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