別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

last updateLast Updated : 2026-04-29
By:  まっど↑きみはるUpdated just now
Language: Japanese
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「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」  一人の女が赤面しながら男を指差し言う。  そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。

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Chapter 1

決闘

On my wedding day, my fiancé, Ryder Conti, cast me aside at the church for his mistress and the bastard in her belly.

Three years later, I returned to the States with my husband. At a private airstrip, I ran into Ryder, who had the gall to offer me a job as a cook for his mistress's son.

He had no idea that the woman he dismissed as a nobody was the most respected Donna in the entire underworld.

A strong wind whipped across the private airstrip.

In the distance, a group of men stood beside a few black SUVs. The man at the front was holding a sign.

The Italian word "Tesoro" was written on it.

It was Zayn's pet name for me, a word he loved to whisper in my ear during our nights in Sicily.

As I got closer, I saw that the person holding the sign was none other than my ex-fiancé, the Conti family's Capo, Ryder.

He and a few of his men, their arms covered in tattoos, were craning their necks to look toward the jet's stairs.

"Boss, isn't that Emilia? The one who cried and begged you not to leave her back then?"

Ryder was stunned for a moment when he saw me, but he quickly composed himself, a smug look spreading across his face.

"I knew it. Sooner or later she'd hit rock bottom and come crawling back."

"This time she held out for quite a while!"

The men erupted in a chorus of jeers. "I thought she had some pride! Turns out she's just come crawling back to kiss the boss's feet, hasn't she?"

"Look at that black dress, not even a brand logo on it. Probably some cheap crap from an outlet mall!"

"I wonder how she even got onto this private airstrip. Maybe she's on the cleaning crew?"

It was no wonder they thought that. In the past, to please Ryder, I would wear short skirts and squeeze my feet into ill-fitting high heels, no matter how cold it was.

But I had no need for that anymore.

Because of my pregnancy, Zayn forbade me from wearing anything restrictive.

This seemingly simple black silk gown was custom-made by a master artisan in Italy.

These clueless goons wouldn't know quality if it slapped them in the face.

But I understood from their words. They had no idea I was the one they were sent to collect.

Seeing me stand still, one of the men, who had once received a favor from me, tried to smooth things over.

"Emilia, good to see you back. To be honest, the boss hasn't completely forgotten you all these years…"

The smile on Ryder's face froze for a second before he cut the man off. "You're back just in time. Carmela's son has been a picky eater lately. He needs a personal cook."

"I know you've always been good in the kitchen, and you should be able to take good care of the boy. The job's yours."

The same condescending look, as if he were bestowing some great charity upon me.

Too bad I was no longer the spineless woman who swallowed every insult and compromised for his sake.

Just as I was about to tell them to get lost, Ryder's phone rang. It was Carmela.

When she heard I was going to be their family cook, she couldn't hide her excitement.

"Emilia, don't you dare blame Ryder. He's only arranging this to take care of you. After all, you disappeared for three years. Who knows what kind of life you've been living?"

"It's better to stay by our side, to have a roof over your head."

"Don't worry, no one will look down on you for taking care of the heir to the Conti and Rossi families."

Three years, and Carmela was still the same spiteful, vicious woman, just as capable of making my stomach turn.

Neither of them had changed one bit. A match made in heaven, truly.

The goons around them immediately started chiming in.

"Emilia, what are you waiting for? Thank the boss! This is a sweet gig with room and board!"

"A chance to walk through the Conti family's door is a damn sight better than living on the streets!"

I touched the family ring hidden beneath my sleeve, about to reveal my identity when Ryder stepped closer.

"Emilia, don't be ungrateful. I made a necessary sacrifice for the Family, and you just abandoned me. Now you come crawling back after hitting rock bottom..."

"You won't grow up if you don't learn the hard way."

My heart clenched at his words.

He still thought I would be overcome with shame, that I would finally bow my head and admit I was wrong.

So, in his mind, promoting his pregnant mistress and kicking me to the curb was just a "necessary sacrifice."

The boy who had once carried me five blocks through a storm to find a pharmacy was long dead.

The Ryder who swore to make me the happiest woman in the world was nothing but a joke.

Fine. Let all those foolish memories die right here.

After all, I was carrying Zayn's second child. Our children were the true legacy.
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決闘
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」 一人の女が赤面しながら男を指差し言う。 そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』に決闘ではなく、結婚を。プロポーズを受けた。 騎士と魔剣士が剣を構え、対峙していた。互いの背には軍勢が半円状に並んでいる。 一人の名は『マルクエン・クライス』と言い王国騎士の男だ。前髪をかき上げた少し長めの金髪に重厚な白い鎧を身に纏っている。 もう一人は『ラミッタ・ピラ』魔剣士の女だ。肩より少し長めで切りそろえた茶髪に白と茶のヘアバンドをし、黒を基調とした軽装備で、左肩に赤い肩当て。 互いに別の国に仕えており、その国同士は戦争の真っ只中だった。 マルクエンとラミッタには誰も近付かない。 いや、近付けないと言う方が正しい。不用意に近付けば戦いに巻き込まれる可能性があるからだ。 二人は幾度も戦場で対峙していたが、その度に邪魔が入っていた。大抵どちらかの軍の撤退により、決着は付かないままだったのだ。 だが、今日は違う。この戦争の最終決戦の日である。「今日こそ、どちらが強いか決めようではないか」 マルクエンが声を張って言うと、ラミッタもニヤリと笑って言葉を返す。「えぇ、そうね。我が宿敵よ!!」 そう言い終わると同時にマルクエンは体の強化魔法を使い、相手の元へと駆け出した。ラミッタは魔法の火の玉を数十発打ち出す。 それらを全て躱して、マルクエンはラミッタを斬りつけるも、剣で弾かれ距離を取られる。 その隙にラミッタは雷の魔法を数発マルクエンに放つ。魔剣士対策で鎧に抗魔の魔法を張っていたので、全身がビリビリとしたが、絶命はしなかった。 ガキンカキンと剣がぶつかる音。魔法の火、雷、風の刃が放たれる音。力強く大剣を振るうマルクエンとは対照的にラミッタは宙を舞うように戦っていた。 周りの兵は戦闘中という事も忘れ、その戦いに見惚れている。永遠に決着が付かぬのではないかと思われたその時、動きがあった。 マルクエンの剣がラミッタの頬を深く斬り裂いた。赤い鮮血が流れ始める。「やるじゃない、流石は我が宿敵ね!!」 次はラミッタの風の刃がマルクエンを襲う。とっさに避けたが、左太ももと右腕に傷を負った。「私は二発よ、どうかしら!!」 ニヤリと笑ってラミッタが言う。
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再会
 女の名がわかった所で、笑顔を作りマルクエンは言う。「シヘンさんですか、よろしくお願いします」「い、いえ、その、マルクエンさんのお国の……」 シヘンは先程言われた国名を忘れてしまい、察したマルクエンがもう一度言う。「あぁ、イーヌ王国です」「そう! イーヌ王国……。ごめんなさい、聞いたことがありません」「そうですか……」 イーヌ王国は決して小さな国ではないので、名を知らぬという事は、よほど遠い地なのか、もしくは本当に死後の世界なのか。「あの、どうしてマルクエンさんは森に?」 シヘンに聞かれ、マルクエンはうーんと悩み言った。「えぇ、とても信じられない話なのですが、気付いたらここに居たのです」「そうなのですか、不思議ですね……。あっもしかして記憶喪失ってやつなのかもしれませんね」 シヘンが言った後に「そうだ」と両手を顔の前で合わせる。「近くの村の冒険者ギルドへ行きませんか? そこならばきっと誰かマルクエンさんの事か、お国の事を知っているかもしれません!」 確かに、このまま森に居ても埒が明かないなと思ったマルクエンはその提案を受け入れることにした。「分かりました。是非ご案内をよろしくお願いします」「はい!」 笑顔を作り、シヘンは元気よく返事を返してくれる。 マルクエンは道中の会話で分かった事がある。この国は『コニヤン』という名であるということ、その中でもここは辺境の土地だということ。 シヘンは駆け出しの冒険者で、薬草集めをしていたら、急に現れたゴブリンの群れに襲われたということ。 後は他愛もない話をしていると、村へと付いた。「あそこがトーラの村です」 シヘンが指差す方を見ると、のどかな村が見えた。家は四、五十ほどあり、人もポツポツと歩いている。「良い村ですね」「ありがとうございます! 私の生まれ故郷なので嬉しいです」 村の中へ行くと、立派な建物が目に入った。どうやらそこが冒険者ギルドらしい。 ギルドの中に入ると、冒険者らしき女がシヘンに声を掛けた。「あれ、シヘンと……。そちらのイイ男はどちら様っすか?」「マルクエンさんです。さっきゴブリンに襲われた所を助けて貰いました!」「ゴブリンだって!? 最近、魔王のせいでこの辺りも物騒になったねー。マルクエンさんか、あざっス!」 女がそう言うと、マルクエンも言葉を
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共闘
「お、お前、生きていたのか!?」 マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」 互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。「お知り合いなんですか?」「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」 ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。「いや、決してそんなものでは」 そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかってきた!!」 その言葉を聞くと、ラミッタは一気に凛とした顔になり、外へと飛び出す。「ま、待てラミッタ!!」 マルクエンもその後を追って村の外へと走っていく。 一緒に付いてきたシヘンとケイはその光景を見て絶望した。「な、なんスかこの数は!!」 思わずケイはそう言う。百にも及ぶゴブリンと、その後ろにはカニや犬、カマキリの魔物が続いていた。 村には衛兵が三人いるが、とても太刀打ちできないだろう。それどころか、村にいる冒険者達を合わせても無理だ。シヘンは杖を強く握ってポツリと言う。「さっきのゴブリンは……、もしかして先遣隊だったのでしょうか」「そうかもしれませんね」 マルクエンが大剣を引き抜いてシヘンの言葉に答える。その正面ではラミッタが魔物の群れと対峙し、振り返らずに言った。「宿敵!! 一時休戦よ!! アイツ等をやるわ!!」「あぁ、分かった!!」 その提案にマルクエンは同意し、二人は魔物の群れに走っていく。「マルクエンさん!! いくらマルクエンさんが強くてもこの数は!!」 シヘンは止めようとマルクエンの背中に叫ぶが、止まらない。 敵に近づいたラミッタは炎の玉を左手から打ち出す。着弾すると、そこを中心に大きな爆発が起きた。吹き飛ぶゴブリン達。続いて雷の魔法で感電させ絶命させる。「うおおおおお!!!」 雄叫びを上げながらマルクエンはまるで小枝を振り回すかのように大剣を振るい、次々とゴブリンと魔物を切り裂いていく。 冒険者も衛兵も、その圧倒的な力を眺めることしか出来なかった。 ものの十分程度で村を襲撃した群れは壊滅してしまう。皆、言葉を失っていたが、ケ
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魔王という存在
「待ってくれ、別の世界? どういう事だ!?」「そのまんまの意味よ。この世界にはルーサもイーヌ王国も存在しないわ。別世界なの」「そんな……、信じられん……」 マルクエンは目を丸くして言う。「私だって、死んだと思ったら生き返って、しかも見知らぬ土地よ。最初は信じられなかったわ」 ラミッタは右手を開いて話すと、そうだと思い出したように続けた。「そう言えば、宿敵。あなたもこの世界に来たということは死んだのかしら?」「あぁ、恐らくな。お前に付けられた傷が原因で高熱を出し、気が付いたらあの森へ居た」 その言葉を聞いてラミッタはニヤリと笑う。「そりゃ十中八九死んでるでしょうね。ならば勝負は引き分けって所かしら?」「あぁ、そうだな」 あっさりとマルクエンは引き分けを認め、つまらなそうにラミッタは前を向く。「私も、正直ラミッタさんのお話は半信半疑でした。ですが、お二人ほどの実力者がつまらない嘘を付いているとは思えない」 ギルドマスターは手を前で組んで言う。「そうだ! 元の世界へと戻る方法は無いのでしょうか?」 マルクエンが尋ねると、ギルドマスターは首を横に振る。「残念ながら……。ですが、古い伝承に、こういった物があります」 ギルドマスターはそう前置きをして、語りだす。「魔王現れる時、異なる世界から勇敢なる戦士が現れるだろう。その者は魔王を討ち滅ぼし、去っていく。と」「魔王? ですか」 いまいちピンときていないマルクエンにラミッタは言い放つ。「居るのよ。魔王」「そんな、魔王なんておとぎ話の世界だろう? 魔物ならともかく……」「居るの。この世界には」 はぁーっとため息をついてラミッタが言った。「本当か!?」「ラミッタさんの言う通りです。ちょうど一年前、魔王が現れました。やがて、魔王は魔物を束ね、人類に仇なすようになりました」 そこまで言ってから、間を置いてギルドマスターは話し続ける。「今回の村への襲撃も、恐らくは魔王配下の者の仕業でしょう」 信じられない事の連続でマルクエンは必死に頭を回す。「と、ともかく。その、伝承が本当であれば、その魔王とやらを倒せば元の世界へと帰れると?」 話に食いつくマルクエンとは対照的に、出された茶を一口飲んでラミッタが言った。「可能性はあるんじゃないかしら?」 そんな熱くなるマルクエ
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ランチタイム 1
「おーい、マルクエンさんこっちっスよー!!」「あ、マルクエンさん」 シヘン達の方へマルクエンは歩き出し、その後ろをラミッタが両手を頭の後ろで組んで付いて行った。「シヘンがマルクエンさんが来るまで待ってようって言うから腹減ったっすよー」「あ、いえ、ご馳走するって約束したので……」「そうですか、悪い事をしました」 朗らかに笑うマルクエンとは対照的にラミッタはムスッとした顔をしている。「あの、ラミッタさんもご一緒にどうですか……?」 シヘンがおずおずと声を掛けると、表情を緩めて返事をした。「それじゃ、座らせて貰おうかしら」 マルクエンはシヘンの隣に座り、ラミッタはケイの隣だ。「マルクエンさんは何かお好きなものはありますか?」「そうですねー、麺料理や揚げ物が好きですね」 言った後、ふとマルクエンは驚いて思わず声が出そうになった。 メニューを見るが、異界の文字なのに何故か読み方と意味が分かったのだ。「マルクエンさん? どうされました?」「あ、いえ、そうですね。私はこのほうれん草のクリームパスタを頂きましょうか」「なーにがクリームパスタよ。騎士様が」 ラミッタはいちいち突っかかっていた。それを「まぁまぁ」とケイがなだめる。「それじゃ、ラミッタさんは何が良いんスか?」「はちみつのパンケーキ」 そう言った瞬間、マルクエンが身を乗り出して大声を出す。「ぱ、パンケーキだと!? お前、倒した野獣の血を啜るのが好きだって聞いていたぞ!? そんなお前がパンケーキ!?」 煽っているわけではなく、本当に驚いて言うマルクエン。それに負けないぐらいにラミッタが反論する。「ば、馬鹿か!! 私がいつそんな事をしたっていうの!?」「だ、だが、私の国では」 そこまで言いかけたマルクエンの頭を殴って小声でラミッタは言う。「馬鹿っ! それは内緒だってさっき言ったばかりでしょ!」「あっ、あぁ、すまない」 そんなやり取りを見てケイがニヤニヤ笑いながら言った。「お二人共、仲がよろしい事で。それじゃ注文するっスね」「別に仲良くなど無いわ!! 誰がこんなヤツ……」 ラミッタはドカッと椅子に座る。「でも、お二人ってお知り合いですよね。どういったご関係なのでしょうか?」 シヘンに尋ねられて、嘘が苦手なマルクエンは視線を左上にずらす。「いや、あの、何ていう
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ランチタイム 2
「そういやさっき、ラミッタさんがマルクエンさんの事を騎士様って呼んでて思い出したんスけど、騎士さんだったんスよね?」 あ、やっちまったとラミッタは一瞬表情が固まるが、すかさず話す。「元騎士様ね、コイツは城の女に手を出しまくって追放されて冒険者になったのよ」「なっ!? 私がいつそんな事をした!?」 マルクエンが言い返すが、ケイはうわーっと引く。ラミッタはべーっと小さく舌を出していた。「気を付けなさい。そいつはド変態卑猥野郎よ」「え、えっ!?」 シヘンは何故か顔を赤くし、マルクエンが言葉に噛みつく。「誰がド変態卑猥野郎だ!!」 マルクエンとラミッタの言い合いは料理が運ばれるまで続いていた。 料理が運ばれると、マルクエンは目を閉じて祈りを捧げる。「神々よ、お恵みに感謝します」 その様子をシヘンとケイは不思議そうに見た。「それは……。お祈りですか?」「えぇ、そうです」 ラミッタは「余計なことするんじゃないわよ!!」と言いたい気持ちを抑え、ケイが笑って言う。「私たちはこうっスね。いただきます!」 シヘンとケイは両手を合わせて言った。これがこの世界の祈りなのだろうかとマルクエンは考える。「神だとかくだらないわ。神が居たらもっと良い世の中になってるわよ」「まー、そうかもしれないっスねー」 ラミッタの言葉にケイはそんな返事をしてハンバーグを口に運んだ。皆も同じ様に食事を始める。「ん! 美味しいですね、このパスタ」 ギルド併設とは思えない完成度にマルクエンは驚く。王都の高級店にも劣らないだろう。「ふふっ、田舎だから食材が新鮮なんですよ」 シヘンは嬉しそうに言った。「本当、良い村ですね」「いっその事住んじゃうっスか? マルクエンさん」 ケイに冗談っぽく言われると、ハハハと笑う。「いえ、まだ私には使命がありますので。ですが、隠居したらのどかな村に住みたいですね」「隠居だとか、何ジジくさい事を言ってんのよ」 パンケーキをもしゃもしゃ食べながらラミッタが口を挟む。「マルクエンさんの使命って何なのでしょうか?」 シヘンに聞かれると、答える。「えぇ、今の所は魔王を倒すことですね」 それを聞いてケイが大きな声で笑い始める。「魔王討伐っすか、そりゃ良いっスね!! 夢はでっかくっ
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ちょっと魔王退治に
「いやいや、魔王討伐なんて勇者のすることっスよ……」「それでも、私は魔王を倒します」 ケイは内心マルクエンさんは記憶喪失のついでに頭もどうかしちまったのかと思っていた。「まずは魔物を狩って、魔人を倒してからよ」「えぇ!? ラミッタさんまで!?」 驚いて裏返った声をケイは上げる。その後はあまり会話もなく、食事が終わった。「その、マルクエンさんは、これからどうするのでしょうか?」 シヘンに尋ねられ、うーんとマルクエンは考える。「そうですね、とりあえず魔人? とやらの情報を集めます」「あ、あの!! 私もお手伝いしても良いでしょうか!?」「ちょっ、ばかっ!!」 思わずケイはシヘンにヘッドロックをキメてマルクエンに背を向けた。「ま、マルクエンさん。私達ちょっとお花を詰んできますわ、オホホホ」 そのままギルドの隅っこまで連れて行く。「馬鹿かシヘン!! マルクエンさんは良い人かも知れないが、魔王や魔人を倒すって言ってんだぞ!? 正気じゃねぇ!!」「で、でも!!」「確かにマルクエンさんとラミッタさんはメチャクチャ強い。だが、そんな二人に付いて行ってみろ! 無事じゃ済まないぞ!」 真っ当な意見を言われ、シヘンは俯いて言葉を失う。「マルクエンさん、ラミッタさん。魔王と魔人の討伐、応援してるっスよ! 何かあったらいつでも村に戻ってきてください!」 すぐにでも出発しようというマルクエン達に、村の出入り口でケイは作り笑顔で、シヘンはしょげた顔で別れを告げた。 シヘンとケイに何があったか察したラミッタは振り返らずに村を出ていく。「シヘンさん、ケイさん、お元気でー!」 能天気なマルクエンを見て、ラミッタがはぁっとため息を付いた。「それで、ラミッタ。どこへ行くんだ?」「ここから西に魔人が現れたって噂があるのよ。そこへ向かって情報を集めるわ」「なるほどな」 少し歩いたぐらいでマルクエンは小さくなった村を振り返る。「村が心配? それともシヘンにでも惚れちゃったかしら?」「なっ、違う! ただ、昨日襲われたばかりで、村は大丈夫なのかと思ってな」「治安維持部隊だけじゃなく、軍も要請したわ。平気よ」 道中、特に会話が思い浮かばずにいた。マルクエンは気まずく、何か話題をと話しかけ続けたが、ラミッタは素っ気なく返すだけだ。 日が暮れ始め、二人は野宿の
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胸の傷
 ラミッタの反応を見て、マルクエンはポカーンとしたが、自分の発言を省みて、あっと声を出す。「ち、違う! ほら、私はその、剣でお前の胸を貫いただろ? その傷が無いかどうか確認がしたいだけだ!」「なっ、そういう事!! 紛らわしいのよ!! バーカバーカ!」 マルクエンは焦りつつも、冷静なもう一人の自分がラミッタにも恥じらいがあるんだなと思っていた。「えっと、それで、どうなんだ? 胸の傷は」「教えない」 すっかり機嫌を損ねたラミッタはそっぽを向く。「や、やっぱりあるのか傷?」 心配そうなマルクエンに対し、ラミッタはふんっとご機嫌ナナメのまま言った。「宿敵に体の心配をされるほど落ちぶれちゃいないわ」 そんなラミッタだったが、何かに気付いてピクリと反応する。そして、先程まで居たトーラ村の方角を見た。「何か、魔物の気配がするわ」「本当か!?」 マルクエンの言葉よりも早く、ラミッタは千里眼を使った。間違いない、また魔物が村へ近付いている。「っ! 付いて来て宿敵!!」「わかった!」 二人は来た道を走って引き返していく。「こんな小さな村に一個中隊が壊滅させられたって聞いたがよー。どこかに生意気な冒険者でもいるんじゃねーのか?」 村は至る所が炎で燃え盛っていた。警備や増援の兵隊たちも倒されてしまっている。 住民も、冒険者たちですらガタガタと震えながらその者を見ることしかできない。「お、お前は……」 ケイがシヘンの前に立ち塞がり宙を飛ぶ者を見て言った。「俺様は魔人コンソ様だ、どうやら雑魚しか居ないみたいだ。わざわざ俺様が来るまでも無かったな。無駄足を踏ませた責任を……」 コンソと名乗る魔人は右手に魔力を集中させる。オレンジ色の光が段々と大きくなっていった。「死を持って償え!!」 もうやられる。ケイがそう思った瞬間だった。「魔法反射!!」 魔力が魔法の防御壁にぶち当たり、反射される。ケイと魔人の間にはラミッタが立っていた。「ラミッタさん!?」 ケイが驚いて言う。それと同じくしてマルクエンも現れ、宙へ飛び上がり魔人に斬りかかった。「ほう、少しは楽しめそうな奴がいるじゃねえか」 魔人コンソはニヤリと笑い、武器である長槍を構えた。どう絶望を与えてやろうかと考えていたが、次の瞬間。思考が止まる。 マルクエンの剣を槍で受け止めたコンソは
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冒険をしよう
「いえいえ、遠慮なさらずに食べて行って下さい!」 シヘンに腕を引かれ、結局食事をごちそうして貰うことになる。 昨日の襲撃があったのにシヘンは笑顔を振りまいていた。マルクエンはそれを見て元気そうで良かったと安堵しているが、ラミッタは違う。「シヘン。辛い時は無理に笑わなくて良いわ」「そ、そんな! 無理だなんて……」 笑顔を続けるシヘンだったが、涙が一筋流れていった。 そして泣き始める彼女を、ラミッタは抱きしめる。そんな事があった後、マルクエンはラミッタに話しかけた。「シヘンさん、元気だと思っていたが、無理をしていたのか」「宿敵、あなたは女心が分かってないわね。モテないわよ」「あぁ、よく言われたよ……」 いよいよ村を旅立つ時だ。燃えて炭になってしまった村の柵を振り返る。 すると、シヘンとケイが駆け寄ってきた。「ラミッタさん! マルクエンさん! 私も、私も旅に連れて行って下さい!」 二人にシヘンは頭を下げる。ケイは心配そうにそれを見つめていた。「えっと、私は良いのですが……。村が大変な時に大丈夫なのでしょうか?」 マルクエンに言われ、シヘンは言葉を返した。「私、私はもっと強くなりたいんです! 村は大変ですが、私がもっと強ければ守れました! 私は大切な場所と人を守れるぐらい強くなりたいんです!」「その気持ちは分かりました。ですが、親御様も心配なさるのでは」 マルクエンが言うと同時に、ラミッタとケイは、しまったと思った。「私、幼い時に両親を魔物によって失いました」 それを聞いてマルクエンは肝を冷やす。「あっ、えっと、その、申し訳ない。考えが足りない発言でした」「いえ、良いんです! そして私は村の人達に育ててもらいました。だから私は村に恩返しがしたいんです」 マルクエンの代わりに今度はラミッタが話す。「それならば、なおさら村に留まって復興を手伝った方が良いんじゃないかしら?」「いえ、今の私じゃ何も出来ないって気付いたんです。だからお二人みたいに強くなりたいんです!」 そうかとラミッタは短く言ってシヘンに背を向ける。「付いていきたいなら好きにして」「はい! ありがとうございます! わかりました!」「ちょ、ちょっと待ってください! シヘンが行くなら私も付いていくっス!」 二人のもとに小走りで向かうシヘンの後を、ケイが追いか
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まずは薬草集めから!
「おはようございます! マルクエンさん」「あぁ、おはようシヘンさん」 一足先にやって来たシヘンに挨拶を返すと、その後ろからラミッタとケイも歩いてきた。「優雅に紅茶かしら。昨日は眠れた? 宿敵」「あぁ、おかげさまで」 突っかかってくるラミッタに苦笑して、マルクエンは紅茶を飲み干し席を立つ。「冒険者ギルドに行く前に、余裕があったらで良いのですが、髭の手入れをしてくれる場所があるとありがたいのですが」  マルクエンが言うとシヘンが尋ねる。「もしかして、マルクエンさん脱毛の魔法が切れてしまったのですか?」「えっ? 脱毛の……魔法ですか?」 驚くマルクエンだったが、それ以上にシヘンとケイの方が驚いていた。「マルクエンさん、もしかして記憶喪失になって忘れたんスか?」 えーっと考えるマルクエンをジロリと見てラミッタは何かを訴えかける。「どうやらその様ですね。言われてみたら何だか思い出してきました。脱毛の魔法」 笑って誤魔化すと、ラミッタがニヤリと笑ってシヘンに言う。「シヘン。脱毛の魔法使えたわよね? 掛けてあげたら?」「そうなんですか。お手数ですが、出来たらお願いできますか?」 それを聞いてシヘンは顔を赤くし、ケイが慌てて言った。「ダメっスよ!! シヘンの脱毛魔法はダメっス!! 全身ツルピカになったムーラガおじさんの悲劇を繰り返してはイケないっス!!」「ぜ、全身ツルピカ……」 マルクエンがシヘンを見ると下を向いて黙っている。心の中で犠牲となったムーラガおじさんの毛を思いつつ、理髪店を探すことにした。 理髪店でヒゲを剃った後に例の脱毛魔法を掛けてもらったマルクエン。顔がさっぱりとし、この世界には生活に特化した便利な魔法があるのだなと思っていた。 元々居た世界では魔法と言ったら、もっぱら攻撃の手段だ。魔法を攻撃以外に応用しているということはこちらの世界の方が文明が進んでいるのだろうかと考える。「皆さん、おまたせしました」「お、マルクエンさんいい男になったっスね! それじゃギルド行きましょうか」 ケイに言われ、少し照れるマルクエン。一行は冒険者ギルドへと向かった。 マルクエンは三人の後ろに付いて行くと、一際大きい建物の前へとたどり着いた。看板に『冒険者ギルド』と書いてあるのでここで間違いないのだろう。 魔王の情報を集めたいが、先立
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