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takasugimomizi
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takasugimomiziの小説

嘘つきに騙された哀れな夫にさよならを

嘘つきに騙された哀れな夫にさよならを

復讐因果応報独立現代離婚一人称
結婚して五年の旦那、理人(まさと)の前に現れた、足の不自由な初恋の人、詩織(しおり)。詩織の巧みな嘘に騙され、裏切りを重ねる夫を捨てて、木香(このか)は再起を図る。
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Chapter: 第十二話(最終話)「新しい門出」
「木香……お前は……どうしたら俺を許してくれる……?」病室の床に膝をついて項垂れたまま、理人は縋り付くように言った。「……」私は理人を見下ろして呟いた。「私が子供を殺された時、あなたが、私を信じてくれていたら……可能性があったかもね」理人には、返す言葉がなかった。私は改めて告げた。「時間を巻き戻して。それ以外に、許す方法はないわ」──離婚の手続きは、宏樹が代行した。詩織は逮捕された。警察に引き渡される時には、すっかり狂人のようになっていたらしい。泣きながら抵抗したが、もうその涙に騙される人は一人もいなかったそうだ。妊婦を拉致し、強制的に堕胎させた凄惨な事件は大々的に報道された。ニュース記事のコメントには、『酷すぎる! この詩織って女、人の心がないの?』『胎児相手でも立派な殺人罪! 司法は然るべき措置を!』『不倫相手をこんなになるまで野放しにした男にも非があるでしょ。奥さんが可哀想』『男特定。有浦グループの社長らしい。報道されてないけど、権力で揉み消そうとしてる?』否定的なコメントばかり集まっていた。理人は、廃人のようになってしまったそうだ。周囲に「妻」と紹介して職場にも連れ込んでいたことが災いして、不倫を内々で片付けることができなくなり、有浦グループもバッシングを逃れられなかった。会社にも姿を表さず、家に籠ってブツブツと何かを呟くことしかできなくなり、離婚の手続きはかなり難航した。あの後、私は大手ファッション会社に、デザイナーとして就職した。ずっと昔に作ったポートレートを少し手直しして提出したところ、すぐに採用された。そして今は、大物歌手の衣装を任されている。「木香さん、次のコンサートに間に合わせられるかしら?」歌手のマネージャーが、スケジュール表を手に、アトリエに入ってきた。「任せて。もうあと少し。現状の写真を撮るわ。確認に回してくれる?」「ありがとうございます……! それにしても……」トルソーに着せられたスカーレットのドレスを見て、マネージャーが呟いた。「こんなに能力のある人が、今まで、非常な夫に飼い殺されていたなんて……世の中って理不尽ね」私はそれを聞いて、微笑んで返した。「いいの。もう終わったことよ」マネージャーは、デザイン図を手に、アトリエを出ていった。入れ違いで入ってきたのは、理人だ
最終更新日: 2026-04-23
Chapter: 第十一話「もう一つのファイル」
確かに、私の端末には、先ほどの映像データの他に、別のファイルが送られてきていた。そのファイルにはロックが掛かっていて、開くことができない。「木香」宏樹は心配そうな顔で言った。「そこにあるのは、君にとってとても辛い事実だ。俺に任せてくれるなら、離婚手続きは全て代行する」「宏樹!」「理人は黙っていろ」宏樹の迫力に、理人はそれ以上何も言えなかった。「ただもし、君の目で全ての真実を知って、自らの手で幕を下ろしたいなら……"かつて君が愛した男"の誕生日を、入力してくれ」私は迷うことなく、理人の誕生日を入力した。『……理人、木香さんはいいの?』最初に聞こえてきたのは、詩織の甘えるような声だった。『ああ、構わない。あいつは仕事もしないで家にいるだけだ。槙原社で立派に働く詩織が優先されるのは当然だ』続いたのは、理人の残酷な言葉だった。これは……別荘のカメラの映像だ。詩織が私を拉致するより、ずっと前の日付が表示されていた。詩織が口を覆って呻いた。「木香、止めろ!」理人は、慌てて私の携帯を取り上げようとした。しかし、宏樹の手が、その手を掴んで止めた。「理人」宏樹の声は鋭かった。「自分が招いた結果だ。受け入れろ」それは、有浦家の……理人の兄としての、威厳が感じられる声だった。「やめろ……やめてくれ……謝るから……俺が間違っていた……」理人のきれぎれの懺悔と共に、音声は流れ続ける。『理人、あなたが欲しいわ』『詩織……ずっと側にいられなくてすまない。突然離婚したら、有浦家の体裁に関わる。辛い思いをさせるが、耐えてくれ』……映像の中の二人は、深く口付け合った。それは、紛れもない、不倫の証拠だった。覚悟は決まっていた。心は冷え切り、もう揺れることはなかった。「木香、違うんだ……俺が愛しているのはお前だけだ……これは……これは間違いなんだ……」理人は耐えきれず、その場に崩れ落ちた。『木香さんより、私を愛してる?』『ああ、愛しているよ』理人が詩織を抱き上げ、ベッドルームに向かった。画面が切り替わると、二人の愛し合う姿が映し出された。「いやあ! もうやめて!」恥辱に詩織は耐えかねて、叫びながら病室を逃げ出してしまった。「いいの? 槙原さんのこと追わなくて」私の嘲笑に反論することなど、今の理人にはできなかった。「違う!
最終更新日: 2026-04-23
Chapter: 第十話「悪女は味方を失う」
「理人……何を言ってるの?」宏樹が口角を上げて立ち上がった。後頭部から血が流れ落ち、首筋を通って、スーツを濡らした。「当然、データは送信済みだよ。木香の端末にも、……理人の端末にも」詩織は目を見開いて、口元を抑えた。「さっきまでの会話の映像も、全てリアルタイムで理人の端末に送っていたんだ。タブレットを壊されるその瞬間まで」詩織は、理人の足元に縋り付いた。「嫌! 違うわ! この狂人が私を嵌めようとしてるの! こいつは木香の協力者よ! 理人のお兄様だから油断してたの……さっきまでの映像も全部フェイクだわ! 理人! 理人は私を信じてくれるわよね!?」詩織の必死な様子を見て、理人の胸は痛んだ。詩織の言葉を信じてしまいたかった。彼女の悲痛な様子は、嘘をついているようには思えなかった。少なくとも、理人の目にはそうだった。理人は屈んで、詩織を抱き上げた。詩織は泣きながら、理人の首に抱きついた。「理人……!」理人は詩織の髪を撫でると、低い声で言った。「戻ろう。全て説明してくれ。……お前を疑うのは辛い」────理人の腕に支えられながら、詩織が戻ってきた。ふらふらとした様子ではあったが、もう車椅子には乗っていなかった。「……槙原さん。芝居はやめたのね」私が冷たい口調で言っても、もう理人は止めなかった。不機嫌そうな顔で、ただ口を結んでいた。詩織が、どさりと椅子に腰を下ろした。「違うの、誤解しないで……あの映像は作られたものよ。宏樹が……木香さんに唆されて、嘘の動画を作ったの……」肩を震わせながら涙を落とす様子は、何も知らない人の目には、無実の罪で虐められているように見えただろう。……理人は、これに騙されてきたんだ。病室のドアが開いた。頭に包帯を巻いた宏樹が、しっかりとした足つきで戻ってきた。「宏樹!」私は思わず声を上げた。「大丈夫だよ」宏樹が笑った。「ところで理人。監視カメラの管理アプリは持ってるだろ?」宏樹にそう言われて、理人ははっとした。長らく別荘を放置していたため、カメラの存在も、それを確認するアプリケーションがあることも、すっかり忘れていたようだ。理人がアプリを起動し、パスワードを入力した。「パスワードまでは忘れてなかったようだね」宏樹が苦笑した。理人の端末には、確かに、宏樹から送られてきたものと同じ
最終更新日: 2026-04-23
Chapter: 第九話「始まる反撃」
「確かめる方法?」その場にいる全員が、宏樹の方を向いた。「ああ……理人。あの別荘には確か、監視カメラがついていたよな?」監視カメラという言葉に、詩織の肩がぴくりと跳ねた。「そういえばそうだ。カメラの映像を見れば、木香、お前が嘘をついていることが分かるぞ」理人は勝ち誇っているが、これは好機だった。そのカメラの映像には、詩織が映っているはずだ。それを見せれば、言い訳はできないだろう。ちらりと見ると、詩織は明らかに青い顔をしていた。「監視カメラのデータを取りに行かないといけないな。俺が行こう。この中で、最も中立に近いだろう?」宏樹が言った。「どうだろうな。宏樹は木香に騙されてる。証拠を消すようなことがあったらどうする?」理人の言葉に、宏樹は笑った。「理人の言う通りなら、カメラの映像を見て決めるさ。データは必ず持ち帰る。行って戻ってくるまでの時間で、改ざんなんて無理だろ?」理人はまだ納得いかないようだったが、詩織の方を見た後、頷いた。「わかった。すぐ行ってきてくれ」詩織は幾分顔色が悪く見えた。自分の悪事の証拠が、これから暴かれようとしているのだから、当然だ。しかし理人は、しおりの顔色の悪さを心配して、ここに残ることを選んだんだろう。「宏樹……」私は宏樹に視線を向けた。正直、行って欲しくなかった。ここにいる私の味方は、宏樹だけだからだ。そんな私を見て、宏樹は私にだけ見えるようにウィンクをした。大丈夫、と口の動きだけで言った。「それじゃあ、行ってくるよ」宏樹が病室を後にした。それに続くように、詩織が言った。「あの……私、少しお手洗いに行ってもいいかしら? 気分が悪いの……」その様子に、私は思わず口を開いた。「逃げるつもりなの?」詩織が何かを言う前に、理人が制した。「木香、いい加減にしろ! 具合が悪い詩織を、手洗いにも行かせないつもりか!?」病院からの連絡さえ無視した理人が言うのだから、滑稽だった。子供を奪われたばかりの私よりも、少し顔色が悪いだけの詩織の方が心配らしい。「詩織、木香の言うことは気にするな。付き添おうか?」「……大丈夫よ。外に赤石が来てくれてるの。理人は、木香さんのそばにいてあげて」「お前……自分が犯人に仕立て上げられそうだと言うのに、木香に気を遣うのか?」「木香さんがこんなことをしたの
最終更新日: 2026-04-23
Chapter: 第八話「捻じ曲げられる真実」
「何を、言っている?」「本当に何も聞いてないのね」私は、口角を上げた。理人が、こんなにも愚かな人だとは思っていなかった。「堕胎薬を打たれたわ。……子供は死んだ。もう摘出されて、バケツの中よ」理人の顔が青くなった。「まさか……」「本当よ。お医者さんに聞いてみたら?」理人は硬直したまま動かない。緊迫した空気が続く中、それを破るように、病室のドアが開いた。そこには、車椅子に乗った詩織の姿があった。「詩織! なぜここに?」理人が振り向いて、詩織に駆け寄った。「木香さんに謝りに来たの……」詩織は、悲しげな顔で言った。「理人さんと、木香さんの時間を邪魔してごめんなさい。私が邪魔だから……木香さんは、こんなことをしたのよね?」詩織が何を言っているのか、分からなかった。地下室に閉じ込めて、堕胎薬を打った、正に犯人だと言うのに。「よく来れたわね」腹が煮え繰り返るようだった。子供を殺した張本人が、のうのうと目の前に現れたからだ。「木香! 何だその言い方は!」「理人。お腹の子を殺したのはそいつよ」その言葉を聞いて、理人は激昂した。「ついに狂ったか!? 詩織はずっと俺といた!」「私が堕胎薬を打たれたのは、あなたが槙原さんと食事をする前よ。あれから私はずっと、地下室にいたわ」すると、詩織は目に涙を浮かべた。「木香さん、やめて。理人との時間を邪魔したのは謝るわ。……だけど、そんな自作自演をしたって、自分の首を絞めるだけよ」自作自演?実際にお腹の子供を殺されて、冷たい地下室に閉じ込められて……それを自作自演だと言ったの?私は、怒りでどうにかなりそうだった。「どうして私が自作自演で、子供を堕ろす必要があるの!?」詩織は、悲しそうに続けた。「ごめんなさい。さっき、車椅子がぶつかって……木香さんの鞄を落としてしまったの。中からこれが出てきたわ」詩織が取り出したのは、……私が打たれた堕胎薬。ご丁寧に、空になった注射器まで一緒だった。「木香、どういうことだ……?」理人の顔が怒りに満ちる。詩織は続けた。「木香さんの鞄から出てきたんだから、自分で打ったんでしょう。嘘をついて……お医者さんを騙したんじゃないかしら」怒りで呼吸がうまくできない。冷静に反論したいと思っても、口から漏れるのは荒い呼吸だった。「木香さん。私を犯人にしよ
最終更新日: 2026-04-23
Chapter: 第七話「非常な現実」
「え……?」私は顔を上げて、宏樹の目を見た。優し気で、真剣な眼差しだった。「辛いことを話してくれてありがとう。……ここには、俺と君しかいない。泣いたって……誰にも馬鹿にされないよ」心の中を全て見通したような言葉に、初めて、涙が溢れてきた。理人には、ずっと、泣いて人の同情を誘うなと言われてきた。有浦に嫁ぐ者として、人前で弱いところを見せるのは恥だと。しかし、その有浦の宏樹から、泣いてもいいと言われた。初めて、許されたような気持ちだった。宏樹は、私が泣き止むまで、黙って側にいてくれた。その時、バン!と音がして、病室のドアが開いた。「木香!」理人だった。声を荒げた様子に、少しは心配してくれたのかと思ったが、そうではないらしかった。「今度は一体何なんだ!? 病院を使ってまでこんな芝居をして……何がそんなに気に入らない!?」「理人」私に詰め寄る理人に、宏樹が鋭く声を掛けた。「……宏樹?」理人の動きが止まる。宏樹の目の奥は、笑っていなかった。「木香がこんな目に遭っているのに、その態度は何だ?」「何で宏樹がここに……!?」「俺の話はいい。木香のことは聞いているのか?」理人は、宏樹の強い口調に一瞬たじろいだが、私の方を一度見て、再び続けた。「こいつがが病院に駆け込んで、俺を呼んだんだろう?」「違う、お前の別荘の地下に、薬を打たれて監禁されていたんだ」「まさか! そんなの、こいつの虚言に決まって……」「俺が見つけた」理人は絶句した。信じられない、という顔をした。おそらく、理人は詩織がやったことを知らない。だとしたら、なぜこんなことになっているか、分からないのは当然だ。「……木香」理人が私の隣に歩み寄った。「本当なのか?」私は、目を赤くして答えた。「あなたは、一度も私を信じてくれないわね」理人は私の顔を見て、驚愕した。もう何年も……理人の前ですら、こんな風に泣いたことはなかったからだ。しかし、理人の言葉はあまりにも冷酷だった。「……その涙で、宏樹を騙したのか」言葉も出なかった。理人は、宏樹のことすら、私が騙していると思っている。どれだけ詩織に対して盲目になれば、こんな言葉が出てくるのだろう。「理人!」宏樹の制止に、理人は食ってかかった。「宏樹、こいつは嘘つきだ。俺と詩織のことを疑い、あの手この
最終更新日: 2026-04-23
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