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雨音休
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Novels by 雨音休

RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~

RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~

会社をクビになり、所持金も底を突いたユウマが辿り着いたのは、ゲーム内通貨で宿代を支払えるVRMMO《VALORIUM》。 だがこの世界では、モンスターは金を落とさない。代わりに報酬を決めるのは、行動の「評価」だった。 効率だけを追い、最短で稼ごうとするユウマ。 一方、彼の使い魔ウミは、人助けにこだわる少女だった。 食べ物すら奪い合う過酷な世界で、効率か、意義か。 今日の宿代を稼ぐため、価値観の違う二人のサバイバルが始まる。
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Chapter: 第11話 守るための力
 ――ベラミー。 植物のツルが絡み合う人型のモンスターだった。顔の部分には赤い花弁が大きく咲いている。目は無い。紫色の唇がグロテスクに揺れた。「ぎょほほほほぅっ!」 口から黄色い花粉を放出している。死ぬほど臭いがデバフ効果は無さそうだ。 ボスモンスターは真っ直ぐにこちらへと泉を歩いてくる。水面がざわざわと揺れていた。小さな波が地面へと押し寄せる。 可愛いは正義勢:ウミちゃん子供を連れて逃げて! 俺最強LV99:初心者の村の森にこんなボスいたか? トウマはすぐに指示した。「ウミ、ドーラ君を抱えて下がれ!」「分かりましたっ!」「な、何だよこいつ!」 ドーラはベラミーを指さしている。使い魔が少年の腹を抱き上げて、後ろの茂みへと後退した。 植物の化け物が右手を振り上げて薙ぐ。その長い手がムチのようにしなる。 トウマは杖で防御した。バチンと音がして、水しぶきが体にかかる。「くっ」「ぎょふふふぅ」 気味の悪い笑い声だった。今度ボスは両手を振り上げる。二本の長い手が高速で伸びた。 トウマは腰を低くして後ろに下がる。 背中に一発もらってしまい、HPが激しく減少する。「ちっ」 とりあえず、ボスを陸に上げないとウミの攻撃が届かない。 泉からだいぶ距離を取ったところでトウマは振り返る。 ベラミーが追いかけて来ており、水面をざぶんざぶんと波立たせて地面に上がったところだった。 隣にウミが駆けつける。「ご主人様!」「ウミ、ドーラ君は?」「避難させました」「ナイスだ。あのボスをやるぞ!」「どうやって倒しますか?」「俺が奴をひきつける。ウミはバックアタックだ」「それ、大丈夫ですか?」「いいからやるぞ!」 トウマが走り出す。植物モンスターのわきをすり抜けて奥へ行こうとした。「ぎょふふううっ!」 ボスが両手を振るう。トウマの体がバチンバチンと叩かれた。HPが大きく削れる。 しかし移動には成功した。 距離を取ったところでトウマは振り向いた。ウミと挟み撃ちの構図になる。 ベラミーがこちらへと歩いてくる。その歩行速度は遅い。 これならやれる。 トウマは杖を振って魔法弾を飛ばしつつ呼んだ。「ウミ!」「わ、分かりました!」 フレイムウェポンのバフはお互いにすでにかかっている。使い魔が両手に剣を構えて化け物の背中をメッタ斬りに
Last Updated: 2026-04-17
Chapter: 第10話 自分の手で届けたい
 道具屋からほど近い民家を訪ねていた。 その村人にダニスン家の所在を聞いて、村の西側へと移動する。情報通りなら、ここで当たりが引けるはずだ。木造りの家の中に入ると、母親らしき人物がコトコトとスープを煮ているところだった。「ごめんください」「はい。どうしました?」「あの、お宅のドーラ君に用事があるのですが」「ああ、息子なら、いま外に出ていますよ」「どこにいますか?」「最近、あの子は村の外に出るようになってねえ。モンスターが出るって言うのに、困ったもんさ」「村の外にいますか?」「ええ。危険なところには行かないように言い聞かせていますけど」「分かりました。ありがとうございます」「あの、うちの子に何かご用事が?」「いえ、大したことでは無いんで」 トウマは振り返った。ウミが小首をかしげている。猫耳の上に疑問符を浮かべていた。はっきりとした二重をパチクリとさせる。「行くぞ、ウミ」「ドーラ君を探しに行くのです?」「ああ」「それはどうしてでしょう?」「良いから着いて来い」 ダニスン家を二人で出た。西側の出口から外へと行く。村の外周を回って歩いた。 ドーラは子供である。モンスターと遭遇する場所にはいないだろう。 ……村の近辺にいるはずだ。 ふと、五列に並んだお花畑が見えてきた。季節の白と紫の花が咲き誇っている。そこに小さな少年がうずくまっていた。頭上のHPバーに目を向ける。 少年、ドーラ。 ドンと音がした。 ――突発クエスト、セティアの花を採ってくる。 トウマが少年に近づく前に、使い魔が小走りで駆けて行った。両手を太ももに当てて膝をかがめる。「君、しゃがみ込んでどうしたの?」「この畑には、セティアの花が咲いて無いんだ」 ドーラの力の無い声が響く。「ふーん。そっか、セティアの花が欲しいの?」「うん。妹が、絵本で見たって言うんだ。セティアの花言葉は、健康だからさ。だけど、ここには、その花が咲いて無いんだ」「妹さんはどこにいるの?」「村の病院だよ。入院してる」「ごめんね。立ち入ったことを聞いちゃって」「いいよ」「ねえ、君はその花を妹さんにプレゼントしたいの?」「そうだよ。だけど、やっぱり森の泉にしか咲いて無いんだ」「森の泉にならあるの?」「うん。お医者さんが教えてくれたんだ。だけど、絶対に一人で行っちゃダメって
Last Updated: 2026-04-16
Chapter: 第9話 情報は金で買う
 あれから、草原をいくら歩き回ってもクエストは発生しなかった。 フェアウルフを何頭も倒した。だが金は落ちない。石ころだけは落とす。売っても3ヴァルだ。金を落とさなければレベルもスキルもアップできない。つまり時間の無駄だ。 いま、情報を求めて村の道具屋に来ていた。持っている金は300ヴァルほど。8個集めていた石ころは全て売っぱらった。  ポーション 50ヴァル。 解毒剤   300ヴァル。 梅おにぎり 200ヴァル。 帰還石   3000ヴァル。(最寄りの村や町へワープできる。使用制限あり、一日一度まで) 下位ラピス 1000ヴァル。 そしてこれはアイテムでは無いが、 ――クエストの発生情報。 道具屋のカウンターにもたれかかり、品物の整理をしていたネズミの亜人女性に話しかける。「あの、すいません」「はい。プレイヤー様、何をお買い求めですか?」 店員が手を止めてこちらに向き直った。「あの、金を稼ぎたいんだが、どこへ行けばクエストが発生するのかを教えて欲しい」「情報ですねぇ……命よりも高いことがありますぜ、お客さぁん」 ネズミの女性が声をひそめる。「一つにつき、250ヴァルですぜ」「高い。下げてくれ」 トウマも声のトーンを落とした。「駄目です。値切るようなら、値上げしますぜ」「……分かった、ポーションを一個買ってやる。教えろ」「先払いです。ポーション込みで300ヴァルをいただきやす」 ほぼ全財産だった。 心の中でひいひいと喘ぎながらステータス画面を彼は出した。アイテム欄から300ヴァルを取り出す。金の入った革袋を差し出した。「姉さん、教えてくれ。それとポーションを一つくれ」「はい、毎度どうも」 棚からポーションの小瓶を一つ取り、お姉さんがカウンターに置いた。真っ赤な液体の小瓶だった。まるで血の色である。「それではとびきりの奴をお教えしましょう」 亜人女性がほくそ笑む。小声で言葉を紡いだ。「お兄さん、実は、最近この辺でPKがあったらしいですよ。殺された者が激ヤバなレアアイテムを落としたらしいです。だけど、レアアイテムが拾われたような噂はありません」「ほ、ほお」「誰が拾ったと思います? 答えは、殺した人ではありません。ということは? この村にいる誰かです。NPC、いや、これは私の推測なんですがねえ。大人なら、
Last Updated: 2026-04-15
Chapter: 第8話 優しさなんて、関係ない
 森の道へと入った。 木の葉からこぼれる太陽の日ざし。茶色い羽をした小鳥が木枝から飛び立った。落ち葉の多い地面。空気は澄んでおり、森林浴にはもってこいだ。 森の奥へと使い魔はどこまでも逃げて行く。その背中をテラーウルフが追いかける。そのまた後ろをトウマが追跡するという構図だ。  可愛いは正義勢:ウミちゃん逃げて! 古参ニキ:死んだと思ったらまだ生きてる。 開けた大地にたどり着くとトウマは唱えた。安っぽい木の杖を構える。「グラヴィティライン」 彼の杖から青黒いロープが伸びた。テラーウルフの足に巻き付いて拘束する。「がうばうっ!」 走っていたボスモンスターは前のめりにつまずいた。 さて、拘束は何秒持つだろうか?「ご主人様!」 ウミが戻って来て剣を構えた。漆黒の魔物を斬りつけようとする。 そこでトウマが声を上げた。「ウミ、ちょっと待て」「どうしてですか?」「ぐあるるるぅ!」 狼がロープから抜けだそうとしてもがいている。青黒いロープが引き裂かれるのは時間の問題と思えた。 スキルの再使用にはクールタイムがある。 トウマは左手を顔に当てる。|一縷《いちる》の望みをかけて唱えた。「フィールドハック」 視界が赤に染まる。 サイは投げられた。 Cut down the nearby trees. Fall toward the enemy. Is this fine?「Sure!」 猫耳娘は焦っているようで眉をひそめる。「トウマ、私はどうすれば良いんですか?」「ウミ、そこにある木の根元を切れ」 トウマが左手で指し示す。 一本の杉の木がゆらゆらと揺れていた。今にも折れそうである。フィールドハックの影響で倒れやすくなっているようだ。使い魔は怪訝な表情で近づく。「この木を切るんですか? 幹が太いですぅ」「いいから切れ」 トウマは言葉を短く切る。 ぶつりと音がして、漆黒のウルフが青黒いロープをついに引きちぎった。自由になり、体を反転させてこちらに顔を向ける。「ガアルルウゥゥウ!」「ご主人様、敵が!」「ウミ、早くしろ!」「わ、分かりましたけどっ」 ちびっ子が木のそばに寄る。その根元を剣で叩き始めた。その間にもボスモンスターがトウマに突進する。 彼はバックステップを踏んで避けようとした。しかし敵の突進の勢いは止
Last Updated: 2026-04-14
Chapter: 第7話 効率も意義も通じない
 草原の中心に、黒い渦を巻いて漆黒のウルフが出現する。残忍な顔つき、巨大な白い牙、その圧倒敵な存在感に、トウマの背筋から冷や汗が伝った。黒い狼が高々と吠える。 「ガアルルルゥゥッ!」  ドンと音がして空中に文字が表示された。 クエスト、テラーウルフの撃破。 「ボスだ、逃げろ!」「俺は死ぬ訳に行かないのにー!」「私はせっかくレベル3に上がったんだからね!」  使い魔がすぐに反応した。  その表情は恐怖に彩られており、モフモフとした尻尾がピンと立っている。勢いよくこちらを振り向いた。 「ご主人様、どうすれば!?」「ウミ、動くな」  状況を冷静に分析する。二人はレベル1である。  戦っても勝てない。他人を助けるなんてもってのほかだ。  死ねばデスペナルティ。  トウマの下した決断は、 「逃げるしかない」「でも、みんなが困っています!」「他人よりも自分の命が優先だ!」「見捨てられません!」「落ち着けウミ」「これが落ち着いていられますか!」  逃げ惑うプレイヤーたち。  その中には勇敢に立ち向かっている姿もある。  しかしテラーウルフの噛みつき攻撃に遭い、  それらのHPバーはどんどんと削れている。  やがて、プレイヤーの一人が地面に崩れた。  うっすらと透明になって消失する。 「私、行きますっ!」「馬鹿!」  ウミが飛び出した。両手に剣を構えて漆黒のウルフに突撃していく。 :ウミちゃんやばいって!:戦う前にヴァルでレベルを上げた方が良いよ!  トウマは猫耳娘の背中を追いかける。  しかし立ちすくんだ。巨大なモンスターに近づきたくても近づけない。 「行っくぞおぉぉお!」  ウミが魔物の横っ腹を剣で斬りつける。  彼女の攻撃力はバフ効果により上昇している。  すぐにボスのターゲットが移った。 「がるるぅあああっ!」  テラーウルフが使い魔に噛みつく。その一撃でHPの三分の一が減った。 「キャアッ!」  それでも彼女は負けん気である。狼の牙を振り払い、攻撃を再開する。 「ぐっ、このおぉぉおおお!」 :おい主人、ウミちゃんを早く助けろ!:使い魔を見捨てるとか草。:どうする? どうする?:ウミちゃんここでスマイルチャージだ。  トウマは苦々しく吐息をついた。  周囲を見渡す。少し離れたと
Last Updated: 2026-04-13
Chapter: 第6話 助けたのに
 村の北出口から外へと出る。 草原地帯があった。ところどころには岩がある。そこにいる魔物はフェアウルフの一種類。灰色の毛並みをした狼であり鋭い牙を誇っている。大型犬ほどのサイズだ。 狩りをしているプレイヤー数は多く、必死の形相でモンスターと戦っていた。「俺の、俺の宿代をー!」「私はまだ朝食も食べていないんだからね!」「や、やべえやべえ、こいつら強えぞ!」 トウマは顔をしかめた。このゲームのプレイヤーはみんな無職なのだろうか? 分からない。(そう言えば、俺も朝食を食っていない) ドンと音がして、頭上に文字が表示された。 ――クエスト、フェアウルフの撃破。 隣にいる猫耳娘がこちらに顔を向ける。その表情はわなわなと震えていた。心配した様子である。「トウマ、みんなが困っています。助けに行かないと!」「無駄だ。それよりもフェアウルフを狩るぞ」「ダメですぅ。情けは人のためならず、ですよ!」「馬鹿お前、行くな!」 トウマの伸ばした手は空を切った。 他プレイヤーの助太刀にウミが参上する。その頭に赤い剣のマークが灯った、フレイムウェポンを唱えたのだろう。続けて彼女がつぶやいた。右手をピースにして目元に掲げる。「スマイルチャージ」 その場にいる全員の顔に笑みが刻まれた。特にバフ効果は無いようである。 ……何だ今のスキルは? 空中にコメントが流れる。:ウミちゃん行ったー。:おせっかいである可能性を物ともしない行動にしびれるぅ。:このクエスト久しぶりに見た。:クエストは貴重だから、ここは評価Sで頼む。 いつの間にか視聴者数が増えているようだった。暇人である。 本当は独自でフェアウルフを狩りたいところだった。ただウミを放っておくわけにはいかない。トウマはそのちびっ子の背中を追った。 ウミのそばでは男性プレイヤーが尻餅をついている。フェアウルフの攻撃を受けすぎたせいで瀕死だった。「ひ、ひいぃぃ」「こんにちは! 貴方、下がってください!」 猫耳娘が両手に剣を構えてプレイヤーの前に立つ。守るように立ちはだかった。 二頭の狼が凶暴に吠える。「「がるぅぅ!」」「私にかかってきなさい!」 茶色い尻尾をモフモフと振ってウミが剣を振り下ろす。 刃がフェアウルフの顔面を斬り裂いた。HPバーがちょこんと減少する。 しかしもう一方のモンス
Last Updated: 2026-04-12
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