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烏羽 楓
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Novels by 烏羽 楓

働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜

ブラック企業で心身を擦り減らし、不幸が重なりついに倒れた社畜の俺。 だが目覚めた先は──“ダンジョン”の中!? 気づけば、俺は魔王として転生していた。 魔王? ダンジョン運営? 眷属創造? 闇魔法? ……いいだろう、今度こそ自分の人生を好きに生きてやる。 自由気ままな第二の人生を楽しもうとする俺だが、 ダンジョンを巡る企業の介入、冒険者の襲撃、そして── 世界を救う“勇者”の存在が、俺の“自由”をかき乱していく。 これは、働きすぎた一人の社畜が、魔王となって辿り着く “ちょっと血生臭くて、でも確かに温かい”終着点の物語。
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Chapter: 第35話「執務室は戦場と化す」
 勇者が報告に戻ってから、数週間。 ダンジョンには――いつもの日常が戻ってきて……はいなかった。 新十二階層、魔王城の執務室。 石造りの壁に魔灯が揺れ、机の上では魔力の光が走る管理画面が淡く瞬いている。  俺はリルベアと並んで座り、ダンジョンの細かい調整を進めていた。 カタカタとパネルを叩く音が響く中、隣のリルベアがふいに手を止め、顎をくいっと持ち上げる。  視線の先は、部屋の奥だ。「で、ヴァルトよ。なんじゃ、あれは」「知るか。直接本人に聞けよ」 俺もつられてそちらを見る。  そこでは、美月とレイラが机を挟んで睨み合い、何やら身振り手振りを交えて口論していた。  手の動きは剣を交えるよりも速く、声の強弱は戦場顔負けだ。 美月が報告に帰ってから、またここに戻ってくるまでそう日はかからなかった。  ……というか、あれから毎日のようにやって来ては、食堂で朝食を食べ、昼は訓練場でレイラに勝負を挑み、夜はゼトスとじゃれ合っている――。  今日はその延長で、執務室まで乗り込んできたわけだ。  レイラとの勝負は決着がつかず――剣術、魔法、知識比べ……そして今日はなんだ、料理か? そんな二人をさっさと追い出せと言わんばかりに、視線で訴えながらリルベアは口を開く。 「無理じゃ。わらわは魔王じゃから、勇者が苦手なんじゃ」「そうかー。じゃあ俺も魔王だから無理だわー」 棒読みで返し、俺は再び管理画面に向き直る。 しかし、リルベアはむくれ顔で机をトントンと指で叩き出す。  小さな音なのに、やけに耳につく。「もうっ、なんとかせい! やかましくて集中できんのじゃ。うぬは主じゃろ!」 はぁ……とため息をつき、俺は立ち上がる。  面倒だが、魔王として執務室が戦場になるのは避けねばならない。 「おーい、今度は何の勝負だ?」
Last Updated: 2026-08-05
Chapter: 第34話「鎖に込めた意志」
 魔法陣が完成すると、美月は静かに剣を収め、両手を胸の前で組むようにして構えた。  淡く輝く線光が魔法陣を伝い、空気がわずかに震える。地下の冷気が一層張り詰め、息をするのもためらわれるほどだ。「……始めます」 その声は先ほどまでの軽さを完全に消し去り、儀式に臨む者の静けさと決意が宿っていた。  俺もレイラも、自然と背筋を伸ばして見守る。 床の魔法陣から湧き上がる光が、中央の人形を包み込む。  やがて光は球状に膨らみ、まるで透明な水の中に漂うように人形が浮かび上がった。 外周の光は脈動し、鼓動のように明滅する。「ほぉ……綺麗なもんだな」 思わず口から感嘆が漏れる。  その隣でレイラは腕を組み、表情ひとつ動かさないまま、ただ鋭い眼差しを球体へと注いでいた。「本来、あの人形の位置に自分達が入っていたと考えるとゾッとしますけどね」「……怖いから聞かなかったことにするね?」 光の球の表面に、細い魔力の鎖が一本、また一本と這い始める。  鎖は互いに絡み合い、網のように全体を覆っていく。その動きは遅いが、確実に、逃げ場を塞ぐように絞め上げていく。まるで生き物のようだ。「封印は“力”より“意志”です」  美月は息を整えながら呟く。 「どれだけ強く縛っても、解こうという意志に負ければ意味がない。だから――」 最後の鎖が繋がり、球体全体が淡い白光に包まれた瞬間、美月は低く、しかしはっきりと宣言した。「ここに封じる。我が剣と、我が命にかけて」 音もなく、光が収束し、鎖は硬質な輝きのまま球体を閉じ込めた。  封印は完成した――そう誰の目にもわかる光景だった。地下の空気が少しだけ柔らぎ、緊張が解けていく。「……やるな」 俺が素直に言うと、美月は軽く息を吐き、にこりと笑った。 「これでも勇者ですから」
Last Updated: 2026-08-05
Chapter: 第33話「偽りの封印、真の共謀」
 皆の視線が、一斉に美月へと向けられる。 その中心で、彼女は小さく息を整えると、口を開いた。「……偵察の過程で魔王との戦闘になったことにします。ただ、倒し切ることはできず、封印して無力化した――そういうことにするんです」 その言葉に、レイラが眉をひそめる。「封印、ですか」「はい。そして“魔王は強大で、定期的に術式の再構築と魔力の補充が必要”って、冒険者組合に報告します」 美月がそこまで話した瞬間、頭の中で点と点がつながった。 ……ああ、そういうことか。「つまり、ダンジョンの脅威性を下げたことにして、組合側のレイド作戦を白紙に戻すわけか」「はいっ。それなら、定期調査を名目に私は――遊びに……ごほんっ、“術式の再構築”に来れますし、ヴァルトさん達も大規模戦闘を避けられます!」 ん? 今、途中の部分、遊びにって言ったよな……? ゼトスが「ほう」と唸る。  美月の案は、確かに互いに利益がある。これが叶うなら願ってもない提案だ。 俺はおもむろにリルベアの方を見た。「ふむ、悪くないの。ヴァルトよ、主はうぬじゃ。おぬしが決めよ」「なら、その提案、受けるよ。最初にも言ったけど、別に人間を殺したいわけじゃないしな。穏便にいこう」 俺の答えに、眷属たちは納得したように頷いた。「じゃあ、早いに越したことないですし、さっそく取り掛かっちゃいましょう。このダンジョンって何階層まであるんですか?」「んー、今いるこの階層が十一階層なんだけど、まともに機能してるのは十階層までだな」 美月は少し考え、口を開く。「十階層ってボス部屋でしたよね?だったら、この階層と十階層の間に“コアルーム”に見立てた階層、作れますか?」 やってみようとしたその時――。「できたぞ」「はやっ!? ……てかリルベア、フロア改築まで権限あるのかよ」 ゼトスが「
Last Updated: 2026-08-04
Chapter: 第32話「交わす理の契り」
 「悪だくみ」という言葉に、応接間の空気がピリリと引き締まった。 レイラ、ゼトス、リルベア――全員が一様に警戒の色を浮かべる。 ただ一人――俺だけを除いて。「お? いいねぇ、なにやんの?」 思わずウキウキと身を乗り出してしまった俺の頭に、ゴンッ、と衝撃。「いって……!?」 リルベアが思い切り拳で叩いてきた。「この|虚け《うつけ》! 何度言ったらわかるんじゃ! もうちょい真剣にならんか!」 流石のゼトスも擁護できなかったのか、両手で顔を覆い隠している。「っんだよ、ちゃんとやってるだろ?」「|主《マスター》、失礼ですが明らかに好奇心の方が勝っていました」 レイラにそう言われ、ゼトスもうんうんと頷くのを見て、少しだけ反省。 「わるい、気を付ける……」 リルベアは深いため息を吐き、美月の方を向いた。「はぁ……。勇者よ、すまんが我らと勇者という者達の間には深き溝がある。おいそれと、そちの言葉を信じてやれん。そこで、まずヴァルトと命をかけた契りを結んではくれぬか?」「契り?」 美月が不思議そうに首を傾げる。「別にどちらかが優位になるものではない。契りの内容は三つじゃ」 リルベアは指を三本立て、静かに条件を口にした。 一、互いに何があろうと絶対に嘘はつかない。 二、命の危機があった場合、必ず助け合う。 三、その二つを命をかけて遵守する。「どうじゃ、守れるか?」 いつになく真剣なまなざしで、俺と美月を交互に見つめるリルベア。 ……なんだよ、そんな堅苦しくなることか?と思いつつも、俺は頷いた。「俺は特に問題ないな」「そう、ですね。私も問題ないです。……ふふっ、なんだか結婚式みたいですね」 その一言で、全員の視線が一斉に俺と美月に集中する。 ……心なしかレイラとリルベアからの視線
Last Updated: 2026-08-04
Chapter: 第31話「元社畜と現社畜、企む悪だくみ」
 城の応接間。 赤い絨毯と暖炉の灯りが、場の空気を少し柔らかく見せていた。 そこに集まったのは、俺、勇者、リルベア、レイラ、ゼトス――。 全員が揃って椅子に腰を下ろすと、改めて互いに自己紹介を交わした。「改めて、魔王ヴァルト・ノクスだ。一応、このダンジョンの……まぁ、管理者ってやつだな」「勇者の|神谷美月《かみや みつき》です。……といっても、あまり威張れる立場じゃありませんが」「わらわはリルベア。今はヴァルトの眷属の元魔王じゃ」「第一眷属のレイラです。よろしくお願いします」「第二眷属のゼトスと申します」 軽く頭を下げ合うが、形式ばった空気はすぐに崩れる。「俺は元人間ってのもあって、別に人間を好き好んで襲うつもりはない。あくまで、自衛なんだ」  俺は腕を組み、淡々と話し出す。 「このダンジョンの宝箱だって、少しでも楽しんだり喜んだりしてもらえればと身銭を切って設置している。それを取りに来るやつらが戦って死んでしまうのは……まぁ、仕方ないことだろ。リスクなしで全部得られるなんて、虫が良すぎる話だ」 その言葉に、リルベア、レイラ、ゼトスがうなずく。「|主《マスター》の言う通りです」「まぁ、元来ダンジョンとはそういうとこじゃしの」「同意であります!」 美月は少し考え込むように視線を落としたあと、ふっと笑みを浮かべた。 「……納得できますね。私だって冒険者適性で勇者に選ばれただけで、休みなんてなくて毎日戦い詰め。あっち行けこっち行けでやってられないんですよ。戦わなくていいなら、それに越したことはないですね」「ははっ……出身校が一緒だったのにも驚いたが、境遇まで似てるとはな」「えっ、もしかしてヴァルトさんも……」「「社畜」」 二人同時にハモってしまい、しばし見つめ合った後、堪えきれずに笑い出した。 眷属たちはその光景を、なんとも言えない顔で見ていた。 リルベアはこめかみを押さえ、レイラは
Last Updated: 2026-08-03
Chapter: 第30話「魔王と勇者、意外な共通点」
 わずかな沈黙が落ちた。 お互いの呼吸音と、岩壁に反響する微かな魔力の唸りだけが耳に届く。  勇者の視線は、まるで獲物を見極める猛禽のように俺を射抜いていた。 その奥には、敵意だけでなく測るような光もある。 やがて、彼女はハッとした表情を浮かべ、すっと後方へ跳んだ。 その動きは無駄がなく、間合いを完全に切ることを目的としたものだった。「……迂闊でした。私を油断させる作戦ですか」 いや、違うんだけど。そんな器用な作戦なんて俺にできるわけない。「残念だけど、事実なんだわ」  俺は肩をすくめ、淡々と口を開いた。 「転生する前は黒川陣って名前だった。ハンターズマニアっていうダンジョン配信サイトのシステムエンジニアをやってたんだ」 途端に、勇者の目がわずかに揺れた。  “魔王”という肩書きからは絶対に出てこない単語の連続に、戸惑いを隠せていない。 剣を握る手がほんの僅かに緩み、そのまま固まっている。 まぁ、そう簡単に信じられる話じゃないよな。 正直、戦わずに済むならそれが一番だが――「……出身の学校は?」  勇者が不審そうな顔で、しかし興味を押さえきれない様子で問いかけてきた。「え? 浅間中央高校。ちなみに、58期生な」「え……私、そこの68期生です!」 俺と勇者、同時に目を見開く。 互いに信じられないものを見るような顔になる。  まさか魔王と勇者の母校が同じだなんて、誰が想像するだろう。「……あの校舎、まだ残ってんのか?」 「ええ。外壁は塗り直されましたけど、形は変わってません」 少し懐かしい気持ちになって、俺は続けた。 「もしかして、勇者ちゃんの時代ってまだあの浪平スタイルの禿げ教頭いた? 声が高くて結構口うるさかった人なんだけど」「あー、あの人は校長先生になられましたよ!」
Last Updated: 2026-08-03
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