Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 第八話127.第八話 開幕前日 ――女流リーグ開幕前日。「明日着ていく服決まった?」とマナミが部屋(ロフト)から顔を出して聞いてきた。明日はついに女流リーグだ。「えっ? いつも通りじゃダメかなあ」「はー…… これだからカオリは。あのね、今や私たちは特集記事まで書かれた注目新人なのよ? もしかしたら、いや確実に、現代麻雀の記者が明日は私たちを見に来るわよ! それを踏まえて服を選ばないと」「えっ、そうなの?!」「当たり前じゃない、あんたは美人に生まれたという自覚が足りないのよ」「えへへ、そうかなぁ」「照れてる場合か!」《そうですよカオリ。全くもってマナミの言う通りです。あなたはもうプロなんですから。それも次世代のスター候補に選ばれた注目新人。その自覚をした服を着て下さいね》(womanまで…… わかりましたー。って言ってもそんなオシャレなのあるかなぁ)《ありませんよ。少し前の季節ならありましたが、もう暖かくなりました。今の季節に合った服を見に行きましょう》「マナミー。あのさあ……」「服なら買いに行かないわよ。私これからやっとかなきゃなんない課題あるから」 そうなのだ。カオリ達はまだ大学生。学業にプロ活動にアルバイトにと忙しい毎日で他人のショッピングに付き合う時間などないのである。「ちえーー。私、オシャレわかんないんだよなー」「なんでもパソコンで調べなさい。調べれば自分でいいと思うのが見つかるから」《言っておきますが、私にもわかりませんからね》(神様なのに)《私、服を買ったことはありませんので》(それはそうか) こうして、女流リーグ開幕前日に対局用の服を慌てて買いに行くカオリ。 その時までカオリは知らなかったのだ。女流雀士の皆さんは対局用にけっこうな金額の上等なファッション(ドレスなど)で行っていたのだと。 「ウソでしょう? 全然所持金が足りないよ~!!」────── 今日は女流リーグ初日。結局、カオリはマナミの服を借りてごまかした。《全く、カオリったら。麻雀に関係ないことになるとからっきしダメですねえ》(仕方ないじゃん。服の値段があんなにするとは思ってなかったんだもん)《その点マナミはしっかりしてますね、やはり歳の離れた姉(石井奈央)がいるとオシャレへの敏感さは違うということですかね》(いや、大学入る時には2人
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Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 第七話 ピンチヒッター126.第七話 ピンチヒッター 倉住ショウコと浅野間サトコは近頃『グリーン』に通っていた。ここのアイスコーヒーの美味しさにハマったのと、麻雀教室建設計画を聞いて手伝いに来ていたのとあるが、基本的にはコーヒー目的で訪れていた。「……んはーー! 美味しい。なんていうのかな、スッキリする飲みやすさの中に独特のコク? のようなものがあり飲んだ後に広がる後味も良くて……。アイスコーヒーなんてそんなに違いはないだろと思ってる人は絶対にここのコーヒー飲んで欲しい」とショウコが絶賛する。「店長さん、アイスコーヒーおかわりください」と1杯目をあっという間に飲み干して既におかわりを注文するサトコ。「もう飲んだのかい、ははは。そんなに喜んでもらえて嬉しいよ。気分がいいから今日はおかわりは無料にしてあげよう」「えー! ありがとうございます」 アイスコーヒーの値段は本来500円でおかわりからは半額だから250円のサービスだ。まだ高校生であるショウコたちには充分に嬉しいサービスである。「ショウコちゃんもおかわりするかい?」「ええもう、それは勿論です!」と言ってズズッと1杯目を飲み干した。「フフフ、別に急いで飲まなくてもいいんだよ」 美味しいコーヒーを飲みながらだと勉強も捗るようで2人は毎日のように高校、喫茶店、麻雀部、の3か所をグルグル回るような生活が習慣になっていった。 トゥルルルルル… トゥルルルルル… カチャ「はい、お電話ありがとうございます。喫茶グリーンです。…ああ… えっ…… そうか… いや大丈夫。お大事にしてください。…それは大丈夫だから… はい、じゃあまた」 カチャ
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Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 第六話 女流リーグ登録125.第六話 女流リーグ登録 カオリたちは注目の新人として月刊麻雀師団に取り上げられた。その事は意外にも友人知人に知れ渡り、家にも2冊の本が届けられたので両親も雑誌を読んだ。「これ、グリーンの中で取材受けたのか。店内はお父さんが学生の頃から少しも変わらないな。……しかし、うちの子達が注目の新人プロとして特集を受けることになるとはな……。全く、人生は何があるか分からんもんだ」「他の人みたいにBIGタイトル獲得! とか。連覇! とか。そう言う大偉業ではないけどね。やっぱり『姉妹』っていうのが珍しいからじゃないかな」「美人姉妹だしね。特に姉が」とマナミが自ら言う。「む…… マナミは気付いてくれないけど私も最近は髪を伸ばして女性らしくしているのよ」「はいはい、マナミもカオリもどっちも綺麗よ。それにプロリーグ初参加で即昇級だってお母さんみたいな素人から見たら大偉業に聞こえるわよ。誇っていいと思うわ」とお母さんが言ってくれる。 カオリたちの両親はプロ活動を全面的に応援してくれていた。それは離婚や再婚をしたことで子供に引っ越しをさせたり生活環境を変えさせたりを強いてきたことの申し訳なさからの両親なりの謝罪でもあった。 せめて、子供達がやりたいというものを全力でやらせてあげれる親であろうと。それで子供たちが経済的に困るようなことになるとしても、そうなったら必ず支援してやろうと。いつでもこの子たちの一番の味方でありたい。そう考えているのであった。 今日は女流リーグの参加申し込みをする最終日だ。カオリたちは参加するべきかどうかずっと悩んでいた。 プロリーグの参加には参加費がかかる。カオリ達は雀荘でアルバイトしてるとは言え基本は学生であり、月に数十時間しか働けない。それではたいした稼ぎにはならない為、女流リーグまで参加するとなると資金が足りなくなる。貯金を崩してまでやるべきなんだろうか? 今はまだ
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Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 麻雀教室建設計画124.第伍話 麻雀教室建設計画 喫茶『グリーン』にはアルバイト店員が5名と社員が2名それにマスターである斎藤和宏(さいとうかずひろ)さんとオーナー夫婦がいて計10名でやりくりしている。マスターは要するにご両親の作った店を任されている二代目なのだ。オーナー夫婦は全面的に息子に店を任せており、あまり出てこない。しかし、アンがいる時だけは違った。とくに奥様の斎藤光子(さいとうみつこ)さんはアンのことをいたく気に入っており実の孫かのように可愛がった。「ほんと、アンちゃんはいい子ねえ」が口癖な程、目一杯に可愛がってくれるからアンは言い出せないでいた。ここでの仕事は修行だけのつもりで、いずれ東京に出て行こうと思ってる。ということを。 その事をその日来ていたユウに相談していた。「いずれは私たち、麻雀教室をやるでしょ。その、多分東京でやる方がいいのはわかるんだけど、どうしてもここのおばあちゃんが気になっちゃって…… 私自身やめたくないし、でも、ユウさんと夢叶えたいしで、いつどうしたらいいか分からないの……」 すると、実はトイレに入っていた光子さんにその話が全て聞こえていた。「…話は聞いたわ。ごめんなさいね。私が若い子の夢を邪魔してたなんて」「違います! 邪魔なんかしてないの。ただ私が優柔不断なだけで」 すると閃いたように「インターネットを使えばどうかしら」と光子さんが言った。「そうよ、この店はムダに広い駐車場があるからそこに簡易的な施設を用意して麻雀教室を可能にするの! うちのメニューも頼めるようにしたらいいわ。そして、インターネットも繋げてネットで麻雀教室も可能にしたらいいじゃない! そしたら……」(そしたらアンちゃんと離れ離れにならないもの。もう、孫を失うのは二度とごめんよ)「そっ、そんなこと。そもそもお金がすごくかかりませんか?」「だてに長生きしてないわよ。私も旦那も、若い
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Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 第四話 取材123.第四話 取材 財前姉妹は喫茶『グリーン』で取材を受けていた。月刊麻雀師団という見た事も聞いた事もない月刊誌の取材だそうだ。(こんなのがあったのか)と2人とも思ったが、聞いたことない雑誌ではあるけどわざわざ水戸まで出向いてくれたので誠意ある対応をしなければと思った。「師団のプロが働いてる雀荘には置いてると思うんだけど、読んだ事ないですか?」「ごめんなさい、知りませんでした」「私も」「おかしーなー。『ひよこ』なら成田プロがいるから置いてると思ったのに」「まあ、ひよこは本棚が無いからね」「本棚がない?!」「はい、だから『月刊麻雀プロ』も届きますけどいつもマスターが持ち帰ってますし、多分この雑誌も…… 本棚らしきものが沢山あったような跡は床にあるけど今はそこにケータイ充電器が『各種無料です、ご自由に』という形で置いてあります。小さな雀荘ですからね。スペースを大切にしてるんです。新聞ならありますけど」「昔は卓数が少なかったんじゃないかな。待ち席付近の1台だけ最新機種だから。あれを置くために待ち席付近にぐるっとあったであろう本棚を無くして増卓したんじゃない?」「はあ、なるほど。繁盛してるって事ですね、そう言う理由なら仕方ないかー。でも最新号だけでも新聞と一緒に置いて欲しいなあ」「マスターに相談してみますね」「頼むよ」 そう言って記者は一口アイスコーヒーを飲む。「…! うまい! このアイスコーヒーは?!」「そうなんですよ。ここアイスコーヒー美味しいんですよ」 すると店主が声をかけてきた。「ありがとうございます。麻雀雑誌の記者さんですか? ……このアイスコーヒーは昔、千葉県に住んでいた時に働いていた喫茶店で教わったものでね。そこもアイスコーヒーで有名な店でした」「それ、もしかして勝田台の『えにし』じゃないですか!?」
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Chapter: 第1部 一章【財前姉妹】その10 第三話 ラボ122.第三話 ラボ 飯田雪はおぼつかない手つきだった。牌に触れたのは今日が初めてだと言うからそれも仕方ない。「なんか麻雀牌って重いんですね。それに、デザインも描いてるんじゃなくて彫ってあるんですね。素敵だなあ。知らなかったなあ」 そう言いながら飯田はまじまじと自分の手牌を見つめる。「盲牌(モーパイ)って聞いたことないか? あれはさ、指先の(主に親指の)腹だけで何の牌を引いたか当てることなんだよ。この彫りの手触りだけでね」「そっ、そんなこと可能なんですか?!」「出来る人には出来る。おれは苦手だけど」「ふふっ! なんだ、苦手なんですね。凄い! と思って聞いてたのに」 ふふっ! と笑う飯田は笑顔が幼い少女のようでなんだかミサトはキュンときた。 そんなこんなで半荘2回を行いミサトと店長が1回ずつトップを取って終了した。半荘2回を通して飯田を観察したミサトの感想は(飯田さんはとても丁寧に麻雀するなあ…… 鍛えたら強くなりそう。あと、顔がかわいい、髪を伸ばせばもっといいのに)と思ったという。 ゲーム終了後にミサトは思い切って話しかけた。「あ、あのさ。飯田さん。私も今18歳なんだけど、私達お友達になれないかな?」「えっ…… ぜ、ぜひよろしくお願いします。ユキって呼んでください。名前…… 気に入ってるので」「同じ同じ! 私も自分のファーストネームを気に入ってるの! 私のことはミサトって呼んでね、ユキ!」「わかりました…… よろしく、ミサト」(かわいい~!) ミサトの中で何か禁断の扉がバカン! と勢いよく開いたような音がした気がしたが(気のせいだろう)と思うことにした。
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