【麻雀女流名人伝】遅番女子のミズサキ

【麻雀女流名人伝】遅番女子のミズサキ

last updateHuling Na-update : 2025-12-18
By:  彼方Kumpleto
Language: Japanese
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 単線電車しか通らない田舎の駅の商店街。その少し離れた場所に小さな個人雀荘がありました。店の名前は『麻雀こじま』。  そこで働く主人公『ミズサキ』とクラスメイトで雀荘の店主の娘である『涼子』。  これは、正反対の二人が繰り広げる勇気と成長の物語――

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Kabanata 1

その1 第一話 私のアミューズメントパーク

주원영이 자리에서 일어나 창가로 걸어가자, 진천준은 놀란 얼굴로 뒤따랐다.

“주원영 씨, 제발 이상한 생각은 하지 마십시오. 부 대표님이 주원영 씨 안전만큼은 반드시 확인하라고 하셨습니다.”

주원영의 시선은 유리창 너머 건너편 건물 외벽에 걸린 대형 광고판으로 향했다.

맞춤 정장을 입은 부경민은 반듯하고 오만할 만큼 빛났고, 곁에는 성호그룹 외동딸 성청아가 서 있었다.

세상은 두 사람을 두고 재벌가에 어울리는 완벽한 한 쌍이라고 떠들었다.

하지만 부경민의 숨겨진 아내인 주원영의 존재는 누구에게도 알려지지 않았다.

진천준은 창밖에 보이는 광고판을 힐끗 보고는 괜히 목을 가다듬었다.

“주원영 씨, 부 대표님과의 이혼은 형식적인 겁니다. 서류만 정리하는 거라서, 이혼 뒤에도 주원영 씨에 대한 대우는 달라지지 않습니다.”

“성청아 씨와의 일은 전부 회사 상장을 위한 절차입니다. 부 대표님도 말씀하셨습니다. 서명만 해 주시면 보유 지분의 50%를 주원영 씨께 이전하겠다고요.”

주원영은 그 설명을 너무 많이 들었다. 이제는 한 단어도 더 마음에 들어오지 않았다.

“서명할게요.”

주원영이 진천준의 말을 끊었다. 목소리는 잔잔했지만 물러설 틈이 없었다.

진천준은 이번에는 또 무슨 소동이 벌어질지 각오하고 온 듯했다. 뜻밖의 대답에 눈이 커졌고, 곧 안도의 기색이 얼굴에 번졌다.

“주원영 씨, 드디어 마음을 정하셨네요.”

주원영은 펜을 들었다. 손끝이 아주 조금 떨렸다.

펜 하나가 천근만근 무거웠다. 이름 세 글자를 쓰는 동안, 가슴 위를 무딘 칼로 천천히 베어내는 느낌이 이어졌다. 짧은 서명 하나 하는 데 걸린 시간이 한평생처럼 길게 느껴졌다.

마지막 획이 끝나자 진천준은 기다렸다는 듯 서류를 가져갔다.

“그럼 저는 이만 가 보겠습니다.”

문이 묵직하게 닫혔다. 주원영은 실이 끊어진 마리오네트 인형처럼 소파에 주저앉았다.

텔레비전에서는 실시간 경제 뉴스가 흘러나오고 있었다.

“서강시 대표 기업인 부경민 대표가 설립한 지한그룹이 상장 예비 심사를 통과했습니다. 외부 회계감사가 끝나는 대로 한 달 뒤 정식 상장이 예정돼 있으며, 상장 후 기업가치는 약 100억 달러에 이를 것으로 전망됩니다.”

“지한그룹의 부경민 대표는 서강시 최고 자산가 반열에 오를 것으로 보입니다.”

화면이 부경민을 비췄다. 선이 뚜렷한 얼굴, 카메라 앞에서도 흔들리지 않는 여유, 누가 봐도 정상에 선 남자다운 태도였다.

진행자가 물었다.

“부 대표님, 이번 상장을 앞두고 가장 감사한 분이 있다면 누구입니까?”

부경민의 눈가에 따뜻한 감정이 번졌다. 부경민은 몸을 살짝 돌려 성청아를 바라보았다.

“당연히 저의 가장 든든한 파트너, 성청아 씨에게 감사해야죠. 청아 씨가 없었다면 지금의 저도 없었습니다.”

성청아는 부끄러운 듯 눈을 내리깔았다.

진행자가 다시 물었다.

“세간에서는 두 분을 두고 운명적인 커플이라고 합니다. 혹시 성청아 씨와 결혼까지 생각하고 계신가요?”

부경민은 입가에 웃음을 걸고 카메라를 정면으로 보았다.

“그 질문에는 아직 확답드릴 수 없습니다. 청아 씨가 저에게 기회를 줄지, 제가 아직 확신하지 못하니까요.”

방청석에서 뜨거운 환호가 터졌다.

“역시 재벌 대표는 다르네. 고백도 저렇게 당당하잖아.”

“드라마 아니야? 자수성가한 남자와 재벌가 딸이라니, 이 커플 너무 잘 어울려.”

“소문만 무성했는데 진짜였구나. 오늘 제대로 설렜다.”

“...”

말 한마디 한마디가 얼음에 담근 칼처럼 주원영의 가슴을 정확히 찔렀다.

통증은 손끝과 발끝까지 퍼졌다.

기억이 밀물처럼 밀려왔다.

10년 전, 부경민과 주원영은 서로에게 기대어 살았다.

가장 가난하던 때에는 김치볶음밥 한 그릇을 사서 둘이 네 끼로 나누어 먹었다.

부경민이 공부를 계속할 수 있도록 주원영은 대학 진학을 포기하고 세 가지 일을 동시에 했다.

학비를 하루라도 빨리 마련하려고 병원에서 헌혈 아르바이트까지 했다.

몸이 원래 약했던 주원영은 피를 뽑고 나오자마자 길바닥에 쓰러졌다.

소식을 듣고 달려온 부경민은 주원영을 끌어안고 뜨거운 눈물을 쏟았다.

주원영은 부경민의 눈에 흐르는 눈물을 닦아주며 손에 든 돈을 들어 보였다.

“이제 너도 등록금 낼 수 있어.”

풋풋했던 청년은 성공하면 온갖 희생으로 자신을 뒷바라지한 주원영을 반드시 세상 모든 여자가 부러워할 사람으로 만들어 주겠다고 맹세했다.

부경민이 대학을 졸업하고 첫 직장을 구한 날, 두 사람은 구청에 가서 혼인신고를 했다.

“자기야, 이제 우리 고생 끝이야. 앞으로는 네가 이렇게 힘들게 살 필요 없어. 내가 돈 많이 벌면, 네가 꿈꾸던 가장 큰 결혼식부터 올려 줄게.”

그날 밤, 두 사람은 어둠 속에서 조용히 피어나는 감정처럼 서로에게 기대었다.

놓치면 무너질 사람처럼, 서로를 오래도록 끌어안았다.

훗날 부경민의 사업은 거침없이 커졌다.

주원영은 더 이상 돈 걱정을 하지 않아도 됐다. 큰 집에서 살았고, 차가 준비됐고, 집안일을 맡는 사람도 생겼다.

단 하나의 결핍이 있었다. 부경민은 끝내 주원영의 존재를 세상에 공개하지 않았다.

주원영은 기다렸다. 언젠가 부경민이 약속을 지킬 날을...

하지만 꿈꾸던 결혼식 대신 부경민이 직접 준비한 이혼합의서만 반복해서 받았다.

죽음을 앞세워 버텨도 부경민은 물러서지 않았다.

“여보, 형식적인 이혼일 뿐이야. 걱정하지 마. 내가 너를 버리겠다는 뜻이 아니야. 회사 상장에는 성호그룹의 도움이 꼭 필요해. 내가 결혼했다는 사실을 성청아가 알면 안 돼. 네 존재도 알려지면 안 되고.”

부경민은 매번 같은 말만 되풀이했다.

주원영의 몸부림, 반항, 절망은 부경민에게 더 큰 성공을 막는 철없는 고집일 뿐이었다.

화면 속 카메라가 성청아를 비췄다.

성청아는 애정 어린 눈으로 부경민을 보다가 자연스럽게 머리카락을 쓸어 넘겼고, 그 순간에 성청아의 약지에 걸린 커다란 다이아몬드 반지가 드러났다.

“저와 경민 씨의 일에 관심 가져 주셔서 감사해요. 좋은 소식이 생기면 꼭 전할게요.”

다시 박수와 환호가 터졌다.

주원영은 손에 낀 얇은 실반지를 내려다보았다. 쓰디쓴 감정이 목까지 차올랐다.

그제야 알았다. 자신이 원했던 모든 것을, 부경민은 이미 다른 여자에게 주고 있었다.

부경민이 원하는 것은 주원영이 줄 수 없는 것이었다.

두 사람은 이미 오래전에 다른 길 위에 서 있었다.

가짜 이혼 같은 것은 없었다.

이혼했다면, 깨끗하고 완전하게 물러나면 된다.

주원영은 핸드폰을 들고 해외로 전화를 걸었다.

“고모, 저 생각 끝났어요. 해외로 가서 고모랑 살래요.”

수화기 너머 주희애는 놀란 듯 잠시 말을 멈췄다.

[원영아, 정말 마음 정한 거야? 전에는 성공한 남편 옆에 남겠다고 했잖아.]

주원영은 오래 침묵한 뒤 말했다.

“저... 이혼했어요.”

[사실 그런 남편은 없는 편이 낫지. 몇 년씩 너를 숨겨 두고 공식적으로 아내 자리 하나 못 주는 남자라면 마음이 진즉 딴 데 있었겠지. 헤어진 건 잘한 일이야.]

[고모가 너 하나는 충분히 책임져. 마침 다음 달에 국내 상장 예정 기업 감사를 하러 들어가. 일이 끝나면 같이 떠나자.]

“네, 고모.”

주원영의 고모인 주희애는 글로벌 회계법인의 책임 파트너였다. 세계 여러 기업의 상장 감사를 맡는 사람이라 늘 바빴다.

몇 년 전 잃어버린 조카 주원영을 찾았지만, 주희애는 바쁜 일정 탓에 조카사위인 부경민을 만나지 못했다. 이제는 그럴 필요도 없었다.

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91 Kabanata
その1 第一話 私のアミューズメントパーク
1.「ガー ガー」 鋭く響く声で、時に低く喉を鳴らすような音も混じる。リズムは不規則で、短く切れ目なく連なる場合もあれば、間を置いて一声だけ響くこともある。どこか金属的で、荒々しくも力強い、ただひとつわかることは。この子は多分「起きろ!」と言っている。 カラスが今日も私を起こしに来た。「おはよう、カー子。今日もありがと」ジリリリリリリリリ カラスに少し遅れて目覚まし時計が鳴る。カチ 「今日はカー子の勝ちだったねえ」「ガー!」 コチ、コチ、コチ、コチと秒針を進める目覚まし時計がなんとなく悔しそうにしてるように見える。 あたりは夕焼けに染まり人々の一日が終わろうとする中で私の一日が始まる。私は雀荘の遅番。夜に始まり朝終わる。そんな仕事をしている女だ。女性では珍しいことだが、いないわけではない。そんな人間だってこの世界には存在しているのだと知って欲しい。 そのことを、知って欲しくて毎日少しだけ、書き物をしてる。 時は遡って、私がメンバーの真似事をし始めた頃の話から読んでくれますか? ここから先、めくるページは、そう……私の書いたちょっと不思議な自伝の物語―― ◆◇◆◇その1第一話 私のアミューズメントパーク  私は雀荘に対してマイナスのイメージを持ってない。大人が遊ぶ娯楽施設。アミューズメントパークとかの括りだと思ってるから。だって、そでしょ? 好きな遊びをやる。そこに使用料を払う。フツーのことじゃない? なんでこれがアンダーグラウンドな括りにされてしまうのか理解できない。時代は平成ですからね?  そんな風に私と同じ思いをしてる人はこの世界のどこかにいるはずだ。と思いながらこの熱い想いを当時働いてた雀荘の店長に伝えると。「まあ、ミズサキの言い分はわからなくもない。わからないわけでもないが、まずは高校を卒業しろ? 年齢隠して深夜の雀荘でバイトみたいな事してる女子なんてのは世界広しと言えどもさすがにミズサキ1人だけだろうからさ。 うちはテキトーだし郊外でポツンとある店だからそれも可能とは言え、とんでもないことしてるのは間違いないからな?」「う、わかりました……。それはそうか」 この店『麻雀こじま』はド田舎の商店街の端っこ。それも少し商店街から離れた位置にある一応商店街に参加してるよというだけの店。みんなからは『離れ小島』なん
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その1 第二話 待ち確認完了です、リーチ代走入ります!
2.第二話 待ち確認完了です、リーチ代走入ります! ここ『麻雀こじま』で私のやってるのは遅番メンバーの真似事だった。 バイトしてる風だけどお手伝いに過ぎない。 ちなみに、麻雀こじまはクラスメイトの小島涼子(こじまりょうこ)の実家である。なので、設定としては家出少女の私はクラスメイトのお家に泊まらせてもらってて、宿泊費の代わりというつもりでお店のお手伝いをしてる。決してアルバイトとかではない。という言い分で通そうという考えである。まあ、口うるさい人はいないし、警察も来ないしでなんの心配もないんだけど。一応、念の為の設定ね。 涼子とは仲良しだからここに来るのは不自然ではないし、麻雀もあまり打たないで基本的には立ち番。お茶くみや店内清掃。後片付けとか、待ってる人と暇つぶしのお喋りの相手をする仕事をしてる。レートがピン(高い。若い子向けではない額が動く)だからね。卓につく時は覚悟を決めないといけない。私にはまだ早いのよ。でも、相手が強いからって避けてばかりいたら強くなれないでしょ? 胸を借りるつもりでたまに戦わないと。 私は私に対してかなりスパルタな方法を選んだ。最短距離で強くなるような、裏ワザに近いレベル上げ。それがピン雀荘の遅番にもぐりこむ。ということ。 スタートからそんなことしてる女は多分この世で私だけだろうね。「マコト〜! まだ働くつもり? そろそろ寝たらぁ? 私もう寝るからね」「あっ、りょうちゃん。あと少し、あと6分働いたらちょうどいい時間だから。そしたら私も寝るから待っててよう」(あ、マコトって私のことね。私、水崎真琴)  私にタイムカードはない。そのような証拠の残るものはひとつもないが、そこはキチッとさせたい。1時間600円&ゲーム代無料という約束で居させてもらってるのだ。 店長はキチンとしてる人だから15分区切りで給料として計算してくれてる。大ざっぱに30分区切りにしないでくれるのはとてもありがたい。 私は大ざっぱなのは苦手だ。キチキチしてる店長とは馬が合うのでやりやすかった。「おーい、ミズサキちゃん。リーチ代走お願いー」「はい! ……待ち確認完了です。リーチ代走入ります!」 そう言って私はリーチ者の席にある座布団をスッと背もたれの方に上げて姿勢よく座った。お客様の使用してる座布団を使ってはならない。体温が移るのを嫌がる方もいる
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その1 第三話 麻雀との出会い
3.第三話 麻雀との出会い『りょうちゃん』こと小島涼子とは同じ中学校で、高校に入ってから仲良くなった。 同じ中学ということで話しかけられたのがきっかけだった。 中学生の時、親から彼女の家は家族経営の雀荘だと聞いて正直それがなんなのか全然わからなかった。だけど、ニュアンス的にはなんとなく、あまりいいものじゃないから近寄るなという意味合いを含めているのは伝わった。だからというわけではないが中学生の頃は話したこともなかった。まあ、中学の頃はクラスが一緒にならなかったというのもあるが。 高校生になって彼女とクラスが一緒になったのもあり、それで雀荘っていうのが麻雀屋さんだということを初めて知った(雀荘とか雀士とか言われても麻雀と結び付きにくくない? 麻雀の『麻』の部分を略しちゃうんだもん。アタマの文字を略すとか、そんなの珍しいじゃん)。でも、それの何が悪いのかは今でもよく分からない。 確かに店長(涼子のお父さん)は細目のスキンヘッドでおっかない見た目してるけど話してみるとめちゃくちゃ優しいし、ママさん(涼子のお母さん)はキツい脱色キメてるド金髪だけど性格は明るくて一緒にいると楽しいよ。 ……あれ? 見た目だけだとフツーにヤクザ家族だな? 違うの、そうじゃないよってこと言いたかったのに。あ、涼子の見た目は黒髪おさげのメガネ女子でいたって真面目そうよ。そう見えて全然ふざけてるけど。 涼子と仲良くなってから私は麻雀を知った。(これ、面白いな!)と衝撃が走ったわよ。個人的な評価では他に類を見ない面白さだと思った。複雑なのが逆にいいしデザイン的にもオシャレじゃない? 渋すぎる? それはあるかもねえ。もーちょっとパステルカラーとか使えば女子ウケもあるかもとは思ったわ。まあ、私は渋いのが好みなのでこのままで全然いいけど!  で、あっという間にひとりで麻雀にのめり込んで(ゲーム買ってやり込んだり、本読んで勉強したりとかね)気付いた頃には涼子の家に入り浸るようになり今に至るってわけ。 涼子と仲良くなってから、よく彼女の家で夜遅くまで牌を握ってた。 最初はルールを覚えるだけで精一杯だったけど、涼子が「負けても楽しけりゃ勝ち!」って笑うから、気楽にのめり込めたんだよね。店に集まる常連のおじさんたちともたまに遊んでもらって、負けながら考え方を学んだ。あの時のドキドキと笑い声が
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その1 第四話 一人暮らしを始める
4.第四話 一人暮らしを始める 涼子の説得もあってたまには自分の家に帰るようにしてたけど(着替えも持ってこないといけないしね)基本的に私は遅番手伝いをしては少し小遣い稼いでから涼子の部屋で一緒に寝た。 麻雀に負けて給料溶かして働いた意味が無いような日は悔しくて涼子相手に2人麻雀してたっけ。「私を八つ当たりの道具に使ってないか?」と涼子に言われたことがあるが、その通りであった。 そんな生活ではあったけど、学校はなんとか卒業。卒業後は涼子は調理師専門学校に、私は晴れて堂々と雀荘メンバーとなる。 まあ、深夜帯の遅番メンバーに『堂々と』とかいうのは無いんだけどね。私の働いてる時間は法律上『閉店時間』だ。ナイショだよ。 遅番というのは営業時間外も担当している裏仕事なのである(だからと言って深夜手当てなどがあるわけではないのだが)。 その後……。「じゃ、行くわ。今までありがとう」「何かあったら連絡するようにね」「ん、分かった」 一応、親とはちゃんと話してから私は家を出ていった。ド田舎だからね、便利な所を選ばなければ私にも家賃が払える物件はある。どこに行くにも遠いけど、自転車さえあれば行けないことはない。私には自転車も原付きもあるから何とでもなるわ。 親を頼るつもりはなかったけど、実家からさほど遠くない所に引っ越した。まるっきり知らない土地より知ってる所で暮らした方が何かと便利かと思ったし、ちょうどいい物件がたまたま近場にあったから。 2階建てアパートの2階の奥の部屋。風呂トイレ別。出窓付きのロフトあり。大通り沿いにつき騒音はあるが田舎の大通りなんてたいした騒音にはならない。通りを挟んだ向かいには蕎麦屋さんがある、蕎麦好きの私には丁度いい。その横の自動販売機には私の好きなトマトジュースがあり、それも嬉しかった。 (しかしいい部屋ねー、気に入ったわ〜) 緑豊かな山に近いのでちょっと虫は出るかもしれないけど、まあそれくらいは御愛嬌。虫はそんなに苦手じゃないしね。 虫なんてねぇ、しょせん虫でしょう? 恐怖する対象にはなり得ないというか。だって虫けらなんか人間の敵じゃないし。ただ、ムカデとかハチは勘弁して欲しいけど。痛いのだけはちょっとね。ピンポーン(誰だろ?)「はーい」 「遊びに来たよー」「りょうちゃん! 学校は?」「何いってんの、今
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その1 第伍話 虫対策しました!
5.第伍話 虫対策しました! 私が一人暮らしを大通り沿いの部屋に決めたのには理由があった。向かいに蕎麦屋がある(美味かった!)というのも大きいが、騒音が必ずある大通り沿いでも暮らせるという人達なら少しうるさくしても苦情は入らないのではと踏んだのだ。 それはつまりジャラジャラと麻雀牌をかき混ぜるくらいは大丈夫なはず、ということ。 でも、そんな心配は無用だった。なぜなら私の部屋は隣も下も斜め下も空室で音を気遣う必要がまるでなかったのである。「さてさてー。りょうちゃんのおかげで完全に片付けも終わったし! 今日から2人で特訓しよっか!」「ええ? 私もやんの? 私は別にそんな麻雀は特訓してまでやりたいわけじゃないんだけどな」と乗り気じゃない涼子を巻き込んでの麻雀研究が始まった(強制)。 遅番メンバーの私にとって弱いとは生活が成り立たないことを意味する。それはつまりこの仕事を脱落しないといけないという事。 それだけは嫌だった。というか私は仕事をしたくない。私は遊び人になりたいの。 自分の好きなことだけをして暮らせる人になりたい。だったら仕事は麻雀打ちになろうと思い至った。そんな女なの! 私は! 女の子なんだからお嫁さんになって専業主婦になればいいって? バッカじゃない、あれは結局労働してるじゃないの。自分以外の人の家の面倒を見るなんてイヤよ。自分の分だけでもダルいのに。「まぁ、仕方ないから付き合うけどさ。でも毎日は来ないからね? 遊びに来た日だけ特別に付き合ったげるわ」「えー? 毎日やろーよ。なんならロフトに住み着いてもいいからさ」「やーよ。ここ虫出るし」「虫くらい良いじゃない」「よかないわ! たく、次来るまでに虫対策してよ。そしたら多めに遊びに来るからさ」「わ、わかった! ありがと、りょうちゃん!!」 数日後「こんにちはー。遊びに来たよ。ちゃんと虫対策してくれたー?」「うん! ホラこれ買ったから」 そう言って虫取り網を見せる。「……どゆこと?」「えっ、コレあれば侵入してきた蝉とかをヒョイって取れるから大丈夫じゃん?」「侵入させるな! そこからなんだよフツーはさぁ!」「えっでも蝉は食べることもできるしぃ」「食 う な !」「はい……」(ううう、りょうちゃんが怖い……こんな怒ることあるんだぁ~)(ひいいい、親友だと思ってたけ
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その1 第六話 雀士の資質
6.第六話 雀士の資質  最近、カラスがうちの近くに来るようになった。夕方になると必ず私を「ガー ガー」と言って起こしに来る。正直助かってる。この子のおかげで遅刻せずに済んでいるので感謝を込めて『カー子』と命名した。『カー子』がメスかどうかは知らないけど。 「あ、もうこんな時間か。りょうちゃんも起きて。もうすぐで出るから、一緒に行こ」 「ん……いいよ私は〜。ほっといて」 「鍵はどうすんのよ」 「合鍵ないの〜? 2つくらいはあるでしょ」  「あるけど、今からりょうちゃん家に行くってのについてこないってどう言うことよ」 「あは。確かにね〜。でも私はまだ眠いから。もうちょい寝かせて……ムニャ」 (私だってまだ眠いわよ)と思ったが涼子はもう夢の中なので仕方ないな、と思って私は外にいたカラスに話しかけた。 「カー子。あとでこの子のこと起こしてあげて。あんまり暗くなってからじゃ危ないから」 「カー!」 「ありがとう! いってくるね」 「カー! カー!」    あのカラスは何でか知らないけど人語を理解してる気がするので後のことはカー子に任せて私は出勤することにした。   ◆◇◆◇  「ポン」 ミズサキ手牌七八九西西白白(南南南)(北北北) ドラ伍  
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その1 第七話 ミズサキのノート
7.第七話 ミズサキのノート  ミズサキは愛想がいい方ではなかったが聞かれたことにはしっかり答えるし、声もあまりうるさくなく、遅番にはそれが丁度良かった。  雀荘というのは非日常の空間とでも言うのか、何屋かと言えばスリル専門店的な所がある。 その他にも同じ趣味を持つ者同士の会話を楽しむ場という側面もあるが、遅番の時間帯に遊ぶ客はそれを牌で語る方が好きである。 シェイクスピアの言葉に『行動は雄弁※』というのがあるが、打牌選択もある意味会話のような所があり、遅番メンバーは牌の会話で接客するのである。※シェイクスピア『コリオレイナス』より もちろんその次元にまだひよっこのミズサキがなれているわけはないのだが、しかし、当時からこの子にはその才能があると感じた。と店長は後に語ったという。  ◆◇◆◇  その日の仕事が終わり帰宅するとミズサキは今日の麻雀のポイントになる点をノートに書き残した。  ──── 今日のポイント【空切りリセット】  空切りをすることで前巡に通された危険牌が安全にならない。危険牌であり続けることになる。 例えばこの手 七八九西西白白(南南南)(北北北) この小四喜の可能性もある仕掛けに東はおいそれと勝負出来ない。しかし、いま気合いで東を通されてしまった。 その巡目に引いたのは七萬。これをツモ切りしてはならない。 ここでの正解は七萬空切り。こうすることで東はまた危険牌として復活。さっき通ったから今のうち、が出来なくなるのだ。 空切りをくだらないと言うプレイヤーは一定数いる。驚くべきことにプロを名乗る人間にもいたりする。だが、どうだろう。空切りをするしないでこうも展開が変わ
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その1 第八話 青澤
8.第八話 青澤 「ミズサキいるかー」と店に入るなり訊ねてきた男がいた。 男の名は青澤。 青澤はミズサキがお気に入りのようで来る度にミズサキいるか? と気にしている。ロリコンだろうか。いや、ミズサキは年齢こそ若いが見た目はやたら大人びているのでそれは無い……か(そうでなければ高校生を働かせたりは到底無理だ)。  青澤の麻雀は豪快にして緻密。冷静にして大胆なまさに最強のスタイルだった。おそらくこの店に来る客ではナンバーワンだろう。  青澤は同業者かもしくは経験者である様子で、時々それを匂わせる発言をした。  とくに印象的だったのはミズサキが青澤にドリンクのおかわりをするか聞きに回った時だ。 「青澤さん。お飲み物のおかわりはいかがでしょうか〜」 「……コー…ー……」 「えっ、コーホー?」 「…なわけねえし。コーヒーだっつの。おれはロボ超人かよ。まあいい、とりあえず……今はほっといてくれ。タイミングが…悪い」 「あっ、わかりました(よくわかってない)」     しばらくしてゲームが終わり、卓から抜けた青澤がミズサキに話しかけてきた。 「あのな、ドリンクの注文を取るのは店側のタイミングと客側のタイミングが一致した時だけなんだ。どういうことかわかるか?」「?」「おまえも卓に入る人間ならわかるだろ、麻雀してる時の集中を。例えるなら道路の運転中ってとこか。免許はあるか?」 「原付き免
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その1 第九話 裸単騎
9.第九話 裸単騎  今日も私は『離れ小島』で勤務していた。暇なのか涼子も店にいる。店内は1卓だけ稼働していて常連のお客さん4人で仲良くやっている平和な時間だ。これを『1卓丸』と言う。私はとくにやることもないので涼子と2人で軽く店内清掃をしていた。すると   「最近青澤さんと仲良いねー」と涼子が待ち席を清掃してる私に話しかけてきた。あれ? 私はみんな平等に仲良くしてるつもりだが? 「そんなことないよ?」 「あー、たしかにマコトは誰とでも仲良いかー。でもね、青澤さんはそうでもないんだよ。マコトのことを絶対に特別視してると思う。なんだろな、お気に入り? みたいな」 「そっ、そうなの? なんか照れるなぁ……」 「とは言え、あの人は変わってるからね。恋愛対象とかじゃなくて実験動物みたいな感覚で興味もってるだけかもしれないけど」 「実験ってなんのよ?」 「10代で雀荘遅番従業員として活躍中の女なんて普通いないから、それの成長を見てる……とか?」  そう言われて私はたしかにそれはあるかも知れないなと思った。そもそも青澤さんに恋愛対象の目で見られてる感じは一切ない。面倒なことはお断りだからそれでいいんだけど、こんなに美人なのにそれはそれでちょっとおかしくない?? 私のことが好きーって男子は学校にはたくさんいたよ?? まあ、好みの男はその中にいなくて、いつも断ってたけど。   「ポン!」    卓からは間柴さんという80をこえるおじいちゃんの元気な発声が聞こえた。元気とは言え高齢者だ、この半荘かその
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その2 第一話 涼子の一日
10.ここまでのあらすじ ミズサキは高校生の時から雀荘遅番で働く異端の中の異端。それも女の子だというのだから麻雀界の最異端児と言っていいんじゃないだろうか。そんな経歴を持つミズサキとその親友である涼子の日常の物語がここにの〜んびりと繰り広げられる。【登場人物紹介】水崎真琴みずさきまこと雀荘『こじま』の遅番メンバー。麻雀が好きなのと働きたくないのがリンクして雀荘遅番という職業につくことを選んだ現代に生きる遊び人。まだ未熟なため給料を守るのにヒーヒー言ってる新米社員。小島涼子こじまりょうこ雀荘『こじま』の店主の娘でミズサキの親友。とても真面目な見た目と裏腹にかなりふざけた性格をしてる。調理師専門学校生。パズルには弱くてアタマは固いほうなので麻雀はあまり向いてない。柔軟性の化身のようなミズサキ惹かれるものがあるようだ。小島悟こじまさとる雀荘『こじま』の店主で涼子の父。スキンヘッドで細目のいかにもなヤクザスタイルだが正真正銘のカタギでありとっても優しいお父さんである。青澤正克あおさわまさかつ攻めてよし、守ってよしの万能雀士。ミズサキに興味を持ったようで最近ちょくちょくこじまに来店する。その2第一話 涼子の一日 私は小島涼子。田舎の商店街のはずれにある小さな雀荘『麻雀こじま』の店主の娘である。お父さんは私に継いでもらいたいらしいけど、私に麻雀熱はそれほどないし、そういうのは麻雀の才能溢れる親友の水崎真琴とかがやればいいと思う。まあ、あの子に経営とかが出来るとは思わないけども。 私はこの春から専門学校生になったけど、なんだか調理師専門学校って思ってたのと違ったな。これはもう今から学ぶ所じゃなくて、技術がある人たちが調理師免許もらうために通う学校みたいな感じ。ハッキリ言ってついて行けない。かと言って雀荘を継ぐのはむいてないし。どうしたもんか……(ま、なるようになるか。今はまだ考えなくてもいいや) 難しく考えると気持ちが落ち込むだけなので問題を放置して私は今を楽しむことにした。とりあえず店に出ればマコトがいる。マコトと一緒にいるとそれだけで私は楽しいんだ。 単線の電車に揺られながらそんなことを思って少し微睡んだ。(……今日も疲れたな) 出来ないことを1から覚えていくことは本当に疲れる。この生活を2年やると思うと気が滅入るが、まだ始
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