麻雀食堂―mahjong cafeteria―

麻雀食堂―mahjong cafeteria―

last updateHuling Na-update : 2025-10-02
By:  彼方Kumpleto
Language: Japanese
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 東京の下町の商店街のはずれに一軒の小さな定食屋があった。そこは、静かな店内に美人店主がひとり。そしてその一角にはなぜか麻雀卓がある。そこでは様々な世代の麻雀好きが集まり食事と麻雀を楽しんでいた。  その店を偶然見つけた乾春人は次第にその定食屋の常連客となっていく。  店の名前は『あやの食堂』。通称『麻雀食堂』――

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Kabanata 1

その1『出会い 編』第一話 唐揚げと麻雀の昼下がり

青木玲奈(あおき れな)がA国の空港に着いたのは、すでに夜の九時を過ぎていた。

今日は彼女の誕生日だ。

携帯の電源を入れると、たくさんの誕生日メッセージが届いていた。

同僚や友人からのものばかり。

藤田智昭(ふじた ともあき)からは何の連絡もない。

玲奈の笑顔が消えかけた。

別荘に着いたのは、夜の十時を回っていた。

田代(たしろ)さんは彼女を見て、驚いた様子で「奥様、まさか……いらっしゃるなんて」

「智昭と茜(あかね)ちゃんは?」

「旦那様はまだお帰りになってません。お嬢様はお部屋で遊んでいます」

玲奈は荷物を預けて二階へ向かうと、娘はパジャマ姿で小さなテーブルの前に座り、何かに夢中になっていた。とても真剣で、誰かが部屋に入ってきたことにも気付かない様子。

「茜ちゃん」

茜は声を聞くと、振り向いて嬉しそうに「ママ!」と叫んだ。

そしてすぐに、また手元の作業に戻った。

玲奈は娘を抱きしめ、頬にキスをしたが、すぐに押しのけられた。「ママ、今忙しいの」

玲奈は二ヶ月も娘に会えていなかった。とても恋しくて、何度もキスをしたくなるし、たくさん話もしたかった。

でも、娘があまりにも真剣な様子なので、邪魔はしたくなかった。「茜ちゃん、貝殻のネックレスを作ってるの?」

「うん!」その話題になると、茜は急に生き生きとした。「もうすぐ優里おばさんの誕生日なの。これはパパと私からの誕生日プレゼント!この貝殻は全部パパと私が道具で丁寧に磨いたの。きれいでしょう?」

玲奈の喉が詰まった。何も言えないうちに、娘は背を向けたまま嬉しそうに続けた。「パパは優里おばさんに他のプレゼントも用意してるの。明日……」

玲奈の胸が締め付けられ、我慢できなくなった。「茜ちゃん……ママの誕生日は覚えてる?」

「え?何?」茜は一瞬顔を上げたが、すぐにまたビーズを見つめ直し、不満そうに「ママ、話しかけないで。ビーズの順番が狂っちゃう……」

玲奈は娘を抱く手を放し、黙り込んだ。

長い間立ち尽くしていたが、娘は一度も顔を上げなかった。玲奈は唇を噛み、最後は無言のまま部屋を出た。

田代さんが「奥様、先ほど旦那様にお電話しました。今夜は用事があるので、先に休んでくださいとのことです」

「分かりました」

玲奈は返事をし、娘の言葉を思い出してちょっと躊躇した後、智昭に電話をかけた。

しばらくして電話が繋がったが、彼の声は冷たかった。「今用事がある。明日にでも……」

「智昭、こんな遅くに誰?」

大森優里(おおもり ゆり)の声だった。

玲奈は携帯を強く握りしめた。

「何でもない」

玲奈が何か言う前に、智昭は電話を切った。

夫婦は二、三ヶ月も会っていない。せっかくA国まで来たのに、彼は家に帰って会おうともせず、電話一本でさえ、最後まで話を聞く気もなかった……

結婚してこれだけの年月が経っても、彼は彼女にずっとこうだった。冷淡で、よそよそしく、いつも面倒くさそうに。

彼女は実はもう慣れていた。

以前なら、きっともう一度電話をかけ直して、どこにいるのか、帰ってこれないのかを優しく尋ねていただろう。

今日は疲れているせいか、そうする気が突然失せていた。

翌朝目が覚めて、少し考えてから、やはり智昭に電話をかけた。

A国は本国と十七、八時間の時差がある。A国では今日が彼女の誕生日だった。

今回A国に来たのは、娘と智昭に会いたかったのはもちろん、この特別な日に三人で揃って食事がしたいと思ったから。

それが今年の誕生日の願いだった。

智昭は電話に出なかった。

しばらくして、やっとメッセージが届いた。

「用件は?」

玲奈:「お昼時間ある?茜ちゃんも連れて、三人で食事しない?」

「分かった。場所が決まったら教えて」

玲奈:「うん」

その後、智昭からは一切連絡がなかった。

彼は彼女の誕生日のことなど、すっかり忘れているようだった。

玲奈は覚悟していたつもりだったが、それでも胸の奥が痛んだ。

身支度を整え、階下に降りようとした時、娘と田代さんの声が聞こえてきた。

「お母様がいらっしゃったのに、お嬢様は嬉しくないのですか?」

「私とパパは明日、優里おばさんと海に行く約束してるの。ママが一緒に来たら、気まずくなっちゃうでしょう」

「それにママは意地悪よ。いつも優里おばさんに意地悪するもの……」

「お嬢様、玲奈様はあなたのお母様です。そんなことを言ってはいけません。お母様の心が傷つきますよ」

「分かってるけど、私もパパも優里おばさんの方が好きなの。優里おばさんを私のママにできないの?」

「……」

田代さんが何か言ったが、もう玲奈には聞こえなかった。

娘は自分が一手に育て上げた子。ここ二年、父娘の時間が増えてから、娘は智昭に懐くようになり、去年智昭がA国で市場開拓に来た時も、どうしても付いて行きたがった。

手放したくなかった。できれば側に置いておきたかった。

でも娘を悲しませたくなくて、結局認めた。

まさか……

玲奈はその場に凍りついたように立ち尽くし、血の気が引いた顔で、しばらく動けなかった。

今回仕事を後回しにしてA国に来たのも、娘との時間を少しでも多く持ちたかったから。

今となっては、その必要もないようだ。

玲奈は部屋に戻り、本国から持ってきたプレゼントを、スーツケースに戻した。

しばらくして田代さんから電話があり、子供を連れて出かけると言われ、何かあったら連絡してほしいとのことだった。

玲奈はベッドに座ったまま、心の中が空っぽになったような気がした。

仕事を後回しにしてまで駆けつけたのに、誰も彼女を必要としていない。

彼女が来たことは、まるで笑い話のようだった。

しばらくして、彼女は外に出た。

この見知らぬ、それでいて懐かしい国を、あてもなく歩き回った。

お昼近くになって、やっと智昭との昼食の約束を思い出した。

朝聞いた会話を思い出し、娘を迎えに帰るか迷っていた時、智昭からメッセージが届いた。

「昼は用事が入った。キャンセルする」

玲奈は見ても、少しも驚かなかった。

もう慣れていたから。

智昭にとって仕事でも、友人との約束でも……何もかもが妻である彼女より大切なのだ。

彼女との約束は、いつだって気まぐれにキャンセルされる。

彼女の気持ちなど、一度も考えたことがない。

落ち込むだろうか?

以前なら、たぶん。

今はもう麻痺して、何も感じない。

玲奈の心は更に霧の中にいるようだった。

はずんだ気持ちで来たのに、夫からも娘からも、冷たい仕打ちばかり。

気がつくと、以前智昭とよく来ていたレストランの前に車を停めていた。

中に入ろうとした時、智昭と優里、そして茜の三人が店の中にいるのが見えた。

優里は娘と仲睦まじく並んで座っていた。

智昭と話しながら、娘をあやしている。

娘は嬉しそうに足をぶらぶらさせ、優里とじゃれ合い、優里が食べかけたケーキに口をつけていた。

智昭は二人に料理を取り分けながら、優里から視線を離そうとしない。まるで彼女しか目に入っていないかのように。

これが智昭の言う『用事』。

これが、彼女が命を賭けて十月十日の苦しみを耐え、産み落とした娘。

玲奈は笑った。

その場に立ち尽くして、眺めていた。

しばらくして、視線を外し、踵を返した。

別荘に戻った玲奈は、離婚協議書を用意した。

彼は少女時代からの憧れだった。でも彼は一度も彼女を見つめてはくれなかった。

あの夜の出来事と、お爺様の圧力がなければ、彼は決して彼女と結婚などしなかっただろう。

以前の彼女は、頑張りさえすれば、いつか必ず彼に振り向いてもらえると信じていた。

現実は彼女の頬を、容赦なく叩いた。

もう七年近く。

目を覚まさなければ。

離婚協議書を封筒に入れ、智昭に渡すよう田代さんに頼み、玲奈はスーツケースを引いて車に乗り込んだ。

「空港へ」運転手に告げた。

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Rebyu

オウカ
オウカ
下町にある麻雀が出来る食堂で主人公と麻雀が出会うというストーリーですが、読んでいてとにかくお腹が空くほど料理の描写がいいですね 都会の流れと違う、ゆったりとした空気も魅力のひとつで、料理と麻雀が上手く絡みあってとても良い作品です
2025-08-15 08:20:38
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その1『出会い 編』第一話 唐揚げと麻雀の昼下がり
1.その1『出会い 編』第一話 唐揚げと麻雀の昼下がり 昼下がりの商店街、今日は初めて来たこの町のメシ屋で昼を食べようと思う。(ここにするか……) きれいに手入れされた暖簾をくぐりガラガラガラと扉を開くと、そこはなんとも不思議な空間だった。 店内にはカツ丼の油っぽい香りと、どこか懐かしい空気が漂い、カウンターの向こうでは艶っぽい美人がフライパンを振っている。(暖簾には【あやの食堂】とあったな……。彼女が『あやの』なんだろうか) 壁にはメニュー表が貼られ、唐揚げ定食500円、カレーライス450円とある。コンビニ弁当より安いけど、こんな値段でやっていけるのだろうか。 店の奥に目をやると、どっしり構えた全自動麻雀卓が目に入る。 若い男性、年配の女性、カジュアルな服の30代くらいの女性、少し疲れた顔の中年男性。この4人が楽しそうにゲームをしている最中だった。 ボタンを押すと牌がジャラジャラと自動で混ざり、シャーッと配られる軽やかな機械音が響く。 始まる前に、中年男性が「俺、ラス半な」と軽く言ってから牌を手に取る。日曜の昼間から麻雀か、と内心驚きつつ、俺はカウンターに腰を下ろした。「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか」「唐揚げ定食で。ご飯大盛りとかできますか?」「唐揚げ定食ごはん大盛りですね。かしこまりました」 厨房からジュウジュウと油が跳ねる音が聞こえてくる。麻雀卓からは全自動卓の牌がシャーッと配られる音が響く不思議な店内。「ポン」とか「リーチ」なんて声が静かに聞こえてくる。 卓から聞こえる発声や牌の積まれる軽快な音がこの店のBGMみたいで心地いい。  しばらくして、唐揚げ定食が俺の目の前に置かれた。こんがり揚がった唐揚げに、シャキッとしたキャベツと味噌汁がついて、ご飯は確かに大盛りで茶碗から溢れそうなくらいだ。「お待たせしました、唐揚げ定食ごはん大盛りです。ごゆっくりどうぞ」 一口食べてみると、唐揚げは外がカリッと中がジューシーで、シンプルだけど抜群に美味い。昔ながらの味がして、思わず笑みがこぼれる。山盛りになってるごはんも嬉しい。──────「ロン! 24000」「飛びだ、飛び。さて終わるかー」 どうやらゲームは終わったようだ。さっき「ラス半」と言った中年男性が静かに席を立ち、こっちに近づいてきた。「お兄さ
last updateHuling Na-update : 2025-07-21
Magbasa pa
その1 第二話 初めての麻雀
2.第二話 初めての麻雀 商店街を後にして数歩進んだところで、俺はふと立ち止まり、スマホで時間を確認した。さっきの『あやの食堂』のことが頭に浮かぶ。全自動卓のジャラジャラという音、唐揚げの香り、美人店主『あやの』の少し低めの声。あの店、妙な魅力がたくさんあるな。 日曜の昼下がり、商店街は人影もまばらで、シャッターが下りた店が目立つ。それでも、どこか懐かしい空気が漂っていて、都会の喧騒に慣れた俺にはそれもまた心地よくて(『満たされる』とはこう言うことだろうな)なんて思った。◆◇◆◇ 翌週の土曜日、仕事が一段落した俺は、なんとなくまた足をあやの食堂に向けていた。実はここにまた来るつもりでこの1週間は本や動画で自分なりに麻雀を勉強していた。 暖簾をくぐりガラガラガラと扉を開けると、またあの油の香りが鼻をくすぐる。カウンターの向こうでは、先週と同じくあやのが黙々と鍋を振っていた。「こんにちは」「あ、いらっしゃいませ。ちゃんとまた来てくれたのね。嬉しいわ」と、彼女が軽く笑みを浮かべて言う。「唐揚げ定食、ご飯大盛りで」と注文しながら、店内を見回した。奥の全自動麻雀卓には、またあの4人——若い男性、年配の女性、30代くらいの女性、中年男性が陣取っていて、牌がシャーッと配られる音が響いている。「ポン」「リーチです」 4人は勝負に夢中でこちらのことなど気付いてもいないようだった。「はい、唐揚げ定食ご飯大盛り。お待たせしました」と、あやのが皿を置く。こんがり唐揚げと山盛りのご飯。見るからに美味そうだ。 一口頬張ると、カリッとジューシーな味わいが広がり、やっぱり抜群に美味い。黙々と食べてると、麻雀卓から声が飛んできた。「お、兄ちゃん! また来たのか。今度こそ一局どうだ?」 先週と同じ中年男性がニヤッと笑いながらこっちを見てる。俺は唐揚げを飲み込んで答えた。「いいですよ。少し勉強してきましたから」 最後の一口をかっ込んで水を飲むと俺は500円を置いた「ごちそうさま!」「おお、勉強してきたのか! えらいな。よおし! みんな、新入りだ。誰か休憩するか? みんなやるならおれが抜けるが」 全員まだ休憩するつもりはないようだ中年男が抜け番になる。「よし、そしたら兄ちゃんのセコンドにおれがついててやる。ただの遊びだからよ。気楽にやんな」「ありがとうございま
last updateHuling Na-update : 2025-07-22
Magbasa pa
その1 第三話 人生初のアガリ
3.第三話 人生初のアガリ 麻雀卓に座った俺は、初めての手牌に緊張しつつ、メタさんの「気楽にやんな」の言葉で気持ちを落ち着けた。  全自動卓がシャーッと牌を配る音が響き、目の前に並んだ13枚を見つめる。一週間勉強してきたルールを、実戦で試す時が来た。頭の中で基本を反芻しつつ牌を整理し始める。東1局 南家でスタート。メタさんが「まあ好きに打ちなよ」と後ろから言う。 対面北家の若い男性が早々に「チー」と鳴き、上家、親番の年配女性が淡々と牌を切っていく。俺は無難な字牌を捨て、メタさんが「それでいい」と頷く。 数巡進むと、ピンズとソウズが揃い、あと1手替われば聴牌できそうだと気づく。30代女性が「ポン」と鳴いて場の空気が変わった気がしたが、メタさんが「初心者はまずチーポンせずに進めてみ。相手の動きのことは気にすんな」と助言。 結局、下家の女性が「ツモ」と和了り。よくわからないが俺は2000点の失点だった。 俺の手は未完成だったが、実戦のテンポに少し興奮した。東2局 親だ。メタさんが「ここは勝負局だ。メンゼンで形を作って思い切り攻めるといいぞ」と言う。 配牌はまずまずだ。言われた通り鳴かずに進めようと決め6索7索を引き込んで手を進めた。メタさんが(いいぞ、その調子で大きく育てろ)と小声でアドバイスしながら頷く。 すると年配女性が「リーチね」と宣言。後少しでこちらもリーチだったのに先手を取られた。年配女性の捨て牌を確認(端牌字牌の他に5索二萬六萬が切れてるな……)乾手牌二四②③④赤⑤⑥⑦67799 ドラ⑥ ここにリーチを受けて俺が一発目に引いたのは伍萬。 セコンドのメタさんは(ほう、イヌイめ。盤石な形になったな。ここはとりあえず現物の二萬を捨てて完全イーシャンテン)と思ったろう。しかし俺の考えは違う!乾の選択打7(何っ!?) この時に相手の、とくに読みの鋭そうな下家30女性はこれを受けてこう感じたはずだ(親とは言え一発目から7索切りは強いわね。現物待ちでダマ12000なんて可能性もありそうだわ。5索とか特に危ないかも。これは切れない)ってね。 事実、7索切りに危険を感じて30女性は5索のことを警戒。永久不滅の完全安牌である北をここで放す。 また、対面の若い男もこの7索切りには敏感に対応した。彼は(六萬が切りにくくなったなあ。現
last updateHuling Na-update : 2025-07-22
Magbasa pa
その1 第四話 長い旅の始まり
4.第四話 長い旅の始まり 私は髙橋彩乃。定食屋『あやの食堂』の店主よ。 この食堂には雀卓があってそれを目的で来る麻雀好きなお客さんもチラホラ。 私も麻雀は好きなので遠目にお客さんのやる麻雀を眺めてた。自分で言うのもあれだけど、私は麻雀が超上手いの。ほんとよ? 場況を見れば誰が何を考えてるのかくらいお見通しなんだから。乾手牌二四②③④赤⑤⑥⑦67799 伍ツモ ドラ⑥(とりあえず二萬切りね。六萬や5索はリーチの現物だからこっちがテンパイする前に処理されちゃうかもしれないのが懸念されるけど……) と思って見てたんだけど。打7(えっ!!) リーチの一発目なのにここから危険牌を先に切る? 普通できないわよそんな事。でもこれ、知ってる。この戦術。これは私の友人でありプロ雀士である『とある人物』が新人王戦決勝で見せたことで有名になった戦法。『先勝負』という選択だ。(まさか先勝負を使うとは…… この人麻雀のルール先週まで知らなかったはずよね。なんてセンス。驚いたわ) 先勝負という選択は負けるはずの勝負も勝ちにする大技である。どういう事かと言うと、今回のこの手から普通に二萬切りをするとそれはリーチに安全牌を捨てるだけなので他者から見ても何にも感じない。普通の対応だ。つまり無警戒。そうなると他者はここで六萬や5索を捨てるだろう。リーチ者だけを見ていればいいから。 しかし、ここでリーチを無視した7索切りから先に選べばどうなるだろうか。親の彼にも勝負手が来てるのは明確に伝わるし、下手したらもうテンパイしてるかも、と読む。だとすると現物牌が逆に危険となるのでもうリーチ者の現物を捨てることは出来ない。そうして先に処分されてはならない三-六や5-8をキープさせる。しかもそれだけじゃない! その後テンパイしたタイミングで手出しするのは今度はリーチ者の現物である二萬。乾ツモ三打二ダマとなればこれをダマに構えることで(お、オリるか回るかしてくれたかな。それならリーチ者の現物が今なら切れる)と勘違いして先ほどはキープした牌をわざわざ抜き打ってしまうという。つまり、自分の当たり牌を自分がテンパイするまで所持させるという人を操る高等戦術! 「すごいわね……」────(まさかルールを覚えたばかりの素人がこの戦術を使うとは……)と、セコンドについてたメタも驚きを隠
last updateHuling Na-update : 2025-07-22
Magbasa pa
その1 第伍話 犬飼真希と油淋鶏定食
5. 第伍話 犬飼真希と油淋鶏定食 「あー。楽しかったなー」  帰り道、俺は今日の『あやの定食』での事を思い出し、思わず楽しかったと声に出してた。 美味しい唐揚げ定食。それを作る美人店主あやの。そして、麻雀。その後の瓶ビール。全てが最高だった。こんなに人間の欲を一気に満たしてくれる店って他にあるんだろうか。しかもよく見たらカジュアルな格好をしてる30代女性も目つきこそツリ目で鋭いが、とても整った顔立ちをしている美人だった。タレ目美人の店主『あやの』とはまた別の魅力がある。 (彼女の名前は何というのだろう。次も居たら聞いてみよう) 「あー、早く次の週末にならないかなー!」 ──────  そして週末、土曜日。 ガラガラガラ  引き戸を開けるとまだ麻雀は始まっておらず、カウンター席に例の30代(と決めつけてるだけ)の女性がいた。あやのさんはせっせと料理を作っている。「こんにちは」「いらっしゃーい。いま手が離せないから少々お待ち下さいね」「あ、来た、待ってたわよー」「お、待っててくれたの?」俺は笑いながら彼女と1つ間を開けてカウンターに掛けた。30代女性がニコリと笑う。「そりゃあね。あんな麻雀見せられたら。名前、なんて言うんだっけ?」「乾春人。お姉さんは?」「犬飼真希。よろしくね」 犬飼さんの鋭いツリ目が少し柔らかく見えた、ような気がした。やっぱり美人だ。  少しするとあやのさんが料理を運んできた。「はい、マキちゃん。油淋鶏定食おまたせ! イヌイさん待たせてごめんなさいね。ご注文は何に致しますか?」「えっと、どうしよう。じゃあ今日は俺も油淋鶏定食で!」「はい、油淋鶏
last updateHuling Na-update : 2025-07-23
Magbasa pa
その1 第六話 キンキンのコーラと2人麻雀
6. 第六話 キンキンのコーラと2人麻雀  話しの流れでたまたま知ることになったのだが、犬飼真希は意外にも45歳だった。全然そんな風に見えない。 「驚いた! あと15くらいは簡単にサバを読めるよ」と本音を言ったら「ヤダー。そんなの無理に決まってるじゃない。お上手ねぇ! もっと言って!」と、たちまち気に入られてしまった。 本当にそう思ったのだが。女性の年齢は分からないなぁ。 余裕で恋愛対象として見れる健康的な美しさだが、彼女から見たら俺はお子様で対象外なのかもしれない。19も違うもんな。下手したら親子まであるよ。「マキはこう見えて独身のバツなしなのよ。イヌイさん、もし気に入ったならもらってあげてね」「えっ? それホント? おかしいじゃん、こんな綺麗でスタイルもいい人が独身バツなしなんて。なんか罠ないそれ?」と言ったら「罠なんかないよ。おかしいよねえ。私自身がそれを一番感じてるよ。なんでだろねえ」と言って犬飼さんはただでさえ下がってる眉をさらに下げた。吊り目が眉を下げるのって何かかわいいなと思った。親子ほども年齢が離れた女性だとは到底思えない。   卓が稼働していない店内は静かだった。彼女たちと俺しかいない。BGMである牌の音が聞こえないと本当に静かだ。「何か飲み物でも入れようか。私がおごるよ」と犬飼さんは言ったが、おごられる理由がない。「いえ、むしろ俺がおごりますよ」「え、なんで?」「これから麻雀を教えてもらうから。少ないけど、授業料です」「あ……そ。真面目ね。そういうことなら、コーラでもおごってもらおうかな」「すいませーん。コーラ2つ下さい」と注文をすると「あら、私の分はおごってくれないの?」と、いたずらっぽい顔であやのさんが言う。「おごるもなにも、この店の店主はあやのさんでしょ。勝手に好きなの飲めばいいじゃん」「バレたか」
last updateHuling Na-update : 2025-07-24
Magbasa pa
その1 第七話 唐揚げ飽きました
7. 第七話 唐揚げ飽きました  先日、犬飼真希と2人麻雀をした日の帰り際、連絡先を交換する流れになった。 俺の方はこんな美人に連絡先聞くとかもちろん出来ないが犬飼さんの方から「ねえ、連絡先交換してよ」と言われれば話は別だ。そういうことなら「はいよろこんで」てなもんです。「プッ! なにそれ。嬉しいの?」と笑われたが、そりゃ嬉しいに決まってる。自慢じゃないがおれのケータイに登録されてる異性なんて家族しかいないんだから。奥手すぎないかって?  いや、そんなつもりも無いんだがな、けど連絡先交換ってちょっとハードル高くないか? そう言えばあやのさんは「マキのこと気に入ったならもらってやって」と言っていたが、本気の話だろうか。  だとしたら全然オッケーというか。むしろありがたい話だ。 たしかに、犬飼真希の年齢を考えると出産は難しいので子供は望めない。それは俺の両親はがっかりするかもしれないが、そもそも結婚相手がいない俺だ、交際相手を見つけたらそれだけで大いなる躍進と言えないだろうか。  いや、その『交際相手』というものになれると思い込むのは大変危険だ。「もらってやって」と言っていたのはあくまであやのさんであり犬飼さんの言葉ではない。 犬飼さんの年齢は45歳だ。26歳の俺なんかと付き合う気は全く無いという可能性は大だ。 そもそも、俺のことは何歳くらいだと思ってるのだろうか。よく考えてみたら年齢を言った記憶がない。 (え、おれは何歳くらいに見えてんだ……?) 「ま、どうでもいいか! それよりも……」  そう、それよりも。だ。俺はあやの食堂でメシを食べ始めてからというもの美味いものを食べるということに興味がわいていた。それもこれもあの食堂の唐揚げが美味しすぎたから。  どうしたら唐揚げであれほど差
last updateHuling Na-update : 2025-07-25
Magbasa pa
その1 第八話 タンピン冷やし中華
8. 第八話 タンピン冷やし中華  週末だ。気付けばまた俺は麻雀食堂に足を運んでいた。「いらっしゃいませ。ちょうどそろそろ来てくれる頃かなって思ってた所なのよ。うふふふふ」とあやのさんが嬉しそうに笑った。メタさんも先に来てて「やっぱり来たな」と言われてしまった。 なんだか行動が読まれてるみたいで俺はちょっと恥ずかしかった。 恥ずかしさと外が暑かったのもあり顔が赤くなってるような感覚があった。そんな俺のすぐ横の柱に夏場になったことを感じさせる貼り紙があった。そう『冷やし中華はじめました』だ。 「今日は冷やし中華が食べたいです」「あら、唐揚げじゃなくていいの? まあ、暑いしね」「ちょっと、唐揚げは飽きちゃって……」 するとあやのは『ガーーーーン……ショック』と言わんばかりの顔で固まってしまったので、俺はすかさず理由を説明した。 ────── 「……と、いうわけなんです」「なあんだぁ。びっくりした、私の自慢料理が飽きられたのかと思って驚いちゃったわよ」「逆っすよ。美味しさに影響を受けたからこそ食べ飽きちゃっただけ。本当は1つ食べたい気持ちはある」「そういうことね。有り難い話だなあ。行動に影響与えるほどの料理人になれたなんて。料理人冥利に尽きるわ」 するとその時ガラガラガラと扉が開いた。「チワッスー。あ、メタさんもう来てたんだ。イヌイさんも」「俺の名前、よく覚えてたね。えっと……」「おれはカンです。寒いって書いてカン。寒沢ツカサっていうんだけどみんなにはカンって呼ばれてるからそれでよろしく!」「ああ、よろしく。カン」「カンちゃん。唐揚げ定食でいいでしょ?」「うん、もちろ
last updateHuling Na-update : 2025-07-26
Magbasa pa
その1 第九話 手順1つで味は変わる
9. 第九話 手順1つで味は変わる  今日は鳴き判断についてザックリと教えてもらった。「鳴ける=面子完成なわけだから、鳴ける=得と考えてても不思議ではないが、実際のところはそうじゃない。なんでかわかるか?」「んと、なんでだろう。ちょっとわかりません」「よし、じゃあコレどう思う」 そう言うとメタさんは自動卓の牌をひょいひょいと集めて手牌を再現した。 再現手牌三四四④⑤⑥⑦⑧66688 「これ、なんとしても③⑥⑨筒引きしたいと願うか? いま最も必要か?」「……いや、できたらそこは残してテンパイしたいっすね。3面待ちが残ればアガリの可能性が高くなりますから」「だよな。つまり鳴きも同じよ、先に埋めたくない面子というのがある。リャンメンターツなどは最終形として優秀だから残しておきたい。手が進むからと言ってリャンメンから鳴くこと自体感覚がズレてるってことよ」「あっ、なるほど」「同じ食材があるとして同じ料理を作るつもりでも手順1つ違えば味が変わる。それと同じね」とあやのさんが言った。 これは分かりやすい例えだ、料理と麻雀は似ているのかもしれない。 「つまり、まとめるとこういうことっすね。 麻雀は配牌から最終形をイメージするだけでは足らない。配牌からどの順番で手を進めて最終形の待ちをどう残すかというルートまでもイメージしていなければならない。それが出来ていないと鳴きも不可能。と、いうことでよろしいですか」「おまえ……説明の天才か。その通り過ぎて驚いたわ」「サラリーマンっすからね。商品の説明とかすんのは日常茶飯事なんで」「へぇ〜。イヌイさんはどんな仕事してるの?」「や、つまんない仕事なんで、その話はやめましょう。俺はここに仕事を忘れに来てるんで!」「あら、ごめんね。
last updateHuling Na-update : 2025-07-27
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その2『モテ期突入? 編』第一話 愛情たっぷり、麻雀オムライス
10. ここまでのあらすじ  ごく普通のサラリーマンである乾春人はある日昼食をとるために適当に定食屋に入るとそこには美人な店主と麻雀卓があった。そこでは皆が家族のように集まり食事と麻雀を楽しむのだった。 その店の名は『あやの食堂』、別名『麻雀食堂』。  【登場人物紹介】 乾春人いぬいはると  主人公。ごく普通の会社員。ひょんなことから麻雀をやるようになる。ゲームの才能はピカイチだが、麻雀はまだまだ素人な26歳。  髙橋彩乃たかはしあやの  あやの食堂の店主。基本的に1人で店を回している。得意料理は唐揚げ。その抜群に美味い料理と彩乃の美しさに惹かれてか田舎の町はずれにある定食屋にもかかわらず一定数の来客が必ずある。  メタめた  正体不明の中年。乾に親切にしてくれて麻雀も優しく教えてくれる良い人。麻雀の腕は達者なようだが、その実力はまだよく分かっていない。 瓶ビールと冷奴が好き。  犬飼真希いぬかいまき  乾によくしてくれる吊り目の美人。かなり若く見えるが年齢は45歳。「30歳くらいに見える」とお世辞じゃなく本音で言ってくれた乾をとても気に入って連絡先を交換する。麻雀は達者だが麻雀を教えるのは苦手。  寒沢司かんざわつかさ  カンの愛称で親しまれる若者。直感が優れており、そう簡単には放銃しない。あやの食堂の唐揚げ定食が大好き。  
last updateHuling Na-update : 2025-07-28
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