Home / ファンタジー / レティアの虹色の冒険 / 1話 レティアの両親の英雄譚

Share

レティアの虹色の冒険
レティアの虹色の冒険
Author: みみっく

1話 レティアの両親の英雄譚

Author: みみっく
last update Huling Na-update: 2025-06-21 06:00:00

 レティアの父親と母親は共に王国を代表する冒険者だった。父親は王国内でも数少ない「賢者」の称号を持つ者の一人で、その中でも飛び抜けて有能とされていた。母親もまた王国屈指の魔術師として知られ、その実力は多くの人々から敬意を集めていた。

 そんな両親が活躍したのは、魔王が王国を脅かしていた時代。魔王の勢力は日に日に広がり、人々の生活を圧迫していた。父と母が率いる冒険者パーティは魔王を討伐すべく立ち向かい、壮絶な戦いの末、ついに魔王を追い詰め撃退することに成功した。しかし、その戦いの代償はあまりにも大きかった。パーティに生き残ったのは、かつて戦士だった一人だけ。しかし、その戦士も負った深い傷が原因で、王に報告を果たした後命を落としてしまった。この出来事は王国に大きな衝撃を与え、レティアの両親は英雄として語り継がれる存在となった。

 両親から引き継がれた能力と魔法の才能は、彼女の幼いころから顕著に現れた。赤ん坊の頃、感情が高ぶったり恐怖を感じたりする度に、無詠唱で魔法を放つことがあり、その力は周囲にとっても危険なものだった。祖父母は、彼女を守るため、山奥の静かな村でひっそりと育てることを選んだ。

 物心がつくにつれて、レティアは少しずつ感情のコントロールを学び、無意識に魔法を放つことは減っていった。5歳になった頃には、見た目に性格もかわいらしい女の子として村人たちの愛を一身に受けるようになった。淡いブロンドのツインテールが揺れる姿は人々に癒しを与え、その明るい笑顔は誰もを惹きつける力を持っていた。

 山奥の村の朝、陽光が木々の間から差し込み、やさしい風が吹き抜ける中、小さな足音が響く。草原を駆ける小さな少女の姿が目に留まる。淡いブロンドのツインテールは風に揺れ、まるで金色の絹糸が光を纏っているかのように輝いている。その瞳は澄み切ったアクアブルーで、朝露の輝きのような清らかさを宿していた。

 彼女が村へ降りてくると、住民たちの視線が自然と集まる。「レティアちゃん!」という声が飛び交い、村人たちは彼女に微笑みを送る。ふんわりとしたピンクのドレスに、小さなリボンがいくつもつけられた姿は、おとぎ話の小さなお姫様のように愛らしい。嬉しそうに手を振る姿に、村の人々は心が和む。

 彼女の小さな手に、村の花が一輪握られている。「おじさん、これ見て!」と楽しそうに声をかけ、子どもらしい無邪気な笑顔を浮かべる。その一瞬、周囲の空気が彼女によってさらに明るく温かなものになり、自然と笑顔が溢れる。

 しかし、レティアは好奇心旺盛であるだけでなく、両親から能力だけでなく冒険心も引き継いでいた。その血筋は彼女の幼い心の奥底に息づいており、平穏な村での生活にもかかわらず、未知への憧れをかき立てていた。

 村へ降りない日は、家の周りを自分だけの「冒険」として探検し、新たな発見に胸を躍らせるのが日課だった。そんなある日、レティアは草むらに覆われ、大人の目では気づかないほど小さな入口を発見する。それは、どこか秘密めいた空気を漂わせる洞窟への通路だった。

「うぅ~ん……なんだろ? わくわくするなぁ……でも、くらくて、こわーい……」レティアは洞窟の入り口をじっと見つめながら、胸の中で葛藤していた。心の奥底で好奇心が恐怖を押しのけようとしている。

「あ、ちょっとくらいなら……いいよね。」彼女は勇気を振り絞り、洞窟の中へと一歩を踏み出した。

 洞窟の入り口は低く狭い、子どもの体でなければ通れないほどだった。岩肌には苔がびっしりと生え、湿り気を帯びた冷たい空気が漏れ出している。中を覗くと、ただ黒い闇が広がり、光の届かない奥行きがその存在を威圧的に主張している。静寂が耳を包み込み、ときおり滴る水音がその暗闇の奥深さをより際立たせているようだった。まるでそこには、何か未知なる存在が潜んでいるかのような、不気味な気配が感じられた。

 ひんやりとした空気が彼女の頬をなでる中、小さな足で慎重に進む。薄暗い空間の中、少しずつ目が慣れてきたレティアは、目の前に広がる未知の光景に目を輝かせながら、小さな冒険を始めるのだった。

 入口付近は、薄暗いながらもまだ足元が見える程度の光が差し込んでおり、レティアは慎重に歩みを進めた。しかし奥へ進むにつれ、光は徐々に消え、洞窟の中は漆黒の闇に包まれていった。その静寂と暗闇の深さに、レティアの幼い心は次第に不安に囚われていく。

「やっぱり、こわい……」彼女は振り返ろうとしたその瞬間、闇の中に潜んでいた何かの存在を見つけた。それは、行きには気づかなかった、隠された影の中に潜むものだった。

 闇の奥から、ゆっくりと重く響く息遣いが聞こえた。レティアが目を凝らすと、巨大な漆黒の体が動くのが見えた。荒れた鱗が全身を覆い、その間から漏れ出す瘴気が、まるで命そのものを否定するかのように辺りを蝕んでいる。暗闇の中、赤い瞳が一対、鋭く輝き彼女を射抜くように見つめていた。まるで憎悪そのものが具現化したかのようなその目に、レティアの全身が恐怖で震えた。

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • レティアの虹色の冒険   19話 夜遅くまで

     レティアは首を傾げながらも、まるでそれを気にしていないように微笑む。 「んー? 小動物さんだと思うよぅ。大丈夫だって!」 無邪気な笑顔を浮かべつつそう言った瞬間、窓に影が映るのが見えた。「……え!? わっ、なにこれ……。」 ルーシーが立ち上がり、警戒しながら窓の外を覗こうとする。その動きに合わせてレティアも後を追い、二人の気配が急に緊迫したものに変わる。「わぁっ。誰かいるのかなぁ?」 レティアは軽い調子で話しながらも、ノクスたちの気配を探り始める。窓の外には何かが動いている気配があるが、その正体ははっきりと分からない。 その瞬間、ドアの外でノックの音が響いた。 『コンコン』「え? ちょ、ちょっと……この時間に誰よ?」 ルーシーの声は少し上擦り、レティアにしがみつくように立ちすくむ。 レティアは手を空にかざし、虹色の球体を作り出してドアの方に向けた。そして、じっとドアを見つめながら声をかける。 「はぁーい。ど、どなたですかぁー?」 するとドアが静かに開き、そこには小さな動物が姿を現した。シャドウパピーズの小さな狼の一匹が家に戻ってきただけだと分かり、レティアは笑顔で言った。 「あ、シャドウパピーズ! びっくりさせないでよぅ~♪」 ルーシーは肩の力を抜き、大きく息を吐く。 「もう……心臓止まりそうだったわよ……。なんでこんな時間に戻ってくるのよ!」 レティアは悪戯っぽく笑いながらシャドウパピーズを撫で、影に戻るよう促した。緊張が解けた二人は、再び話しを続け明日の予定を話すことにした。   レティアがテーブルに地図を広げて話し始める。地図はレティアの家に長年保管されていた古いもので、少し色褪せているが、細かな地形や森の特徴が丁寧に描かれている。「これ、すごーい! お父さんのパーティーが使ってたやつなの!」 レティアは目を輝かせながら地図を指でなぞり、嬉しそうにルーシーに説明をする。ルーシーはそれに興味深げに頷きながら地図に視線を落とした。「ふむふむ…&he

  • レティアの虹色の冒険   18話 部屋での楽しいひと時

     昼食を終えた後、レティアとルーシーは森の中を散歩しながら会話を楽しんでいた。そんな中、ルーシーがふと周囲を見回して尋ねた。 「そういえば、レティーの契約獣は?」 その質問に、レティアはハッとしたような表情を浮かべた。契約した覚えはないが、ノクスたちは勝手に従ってくれていたし、今は待機しているのだろうと軽く考えていた。 「うぅーん。その辺をうろついていると思うよぉ?」  軽い調子で返事をするレティア。 しかし、その答えにルーシーは呆れ顔を見せた。 「はぁ? あんなのを野放しにしていたら……大ごとになっちゃうでしょ! きちんと管理をしなさいよ……。」 レティアは管理といわれても困惑してしまう。家につれて帰るわけにもいかないし、村から離れている家でも目立ってしまう。そして、最近仲間になったばかりのシャドウパピーズのことを思い出した。「ね、ねぇー普通の狼だったら目立たないかなぁ?」  レティアはルーシーの袖を引っ張りながら、少し不安そうに尋ねた。「ん? 狼? 狼は危険よ。大きいし……凶暴でしょ。まあ……ノクスに比べれば……目立たない……かな……? レティー……他にもいるの? その狼。」  ルーシーは顔を引き攣らせながら聞いてきた。「あー……うん。さっき知り合ったの! ノクスにご飯をあげてたらね……匂いに誘われて近づいてきたのぉ。えっとね、シャドウパピーズって名前をつけたんだぁー♪」  レティアはにぱぁと無邪気な笑顔で答えた。「そう……今度は、魔物じゃないだけマシかな……狼なら犬より大きいけど、まあ……大丈夫じゃない? どんな狼なのよ?」  ルーシーは呆れつつも、真剣な表情で尋ねた。「うーん……ノクスよりね、ちいさくてかわいーよ♪ ノクスを見てね……くぅーん、くぅーんって怯えてたのぉ。」  レティアはその場面を思い出し、笑顔で答えた。「ふーん……可愛いなら良いんじゃないのかな? ……いや、あんたの可愛いは……基準がおかしかったわ……はぁ。見てあげるから、呼んでみなさいよ……。」「おかしくないもんっ。シャドウパピーズー!!

  • レティアの虹色の冒険   17話 おともだちのお泊り

    「レティアが、お友達を連れてくるのは初めてじゃないのかい?」 じぃーじが、優しい笑顔を浮かべながら問いかけた。その言葉にレティアは、満面の笑みで答える。「うん。はじめてだねぇー♪ だって、みんな怖がっちゃってるんだもーんっ。」 レティアはかつての友達とのことを思い返していた。遊びはするけれど、感情を感じ取る力のせいで、相手の怖がる心が伝わってきてしまう。その結果、レティア自身も壁を作り、心の距離が縮まらなかったのだ。 でも、ルーシーは違った。表情はムスッとしていて口調が強くても、彼女から伝わってくる感情は恐れではなく、レティアへの好意だった。そのため、レティアも安心して甘えたり頼ったりすることができた。「そうよね……レティーは、ハチャメチャ過ぎるものね……驚かされてばかりだったわね。あはは……。」 ルーシーは少し照れながら笑い、これまでの出来事を思い返して苦笑いを浮かべる。 その時、何かを思い出したようにルーシーは顔を上げ、持っていた獲物をじぃーじとばぁーばに差し出した。「あ、あのぅ……これ、お土産です……良かったら食べてください。」 緊張した表情でしどろもどろに話す彼女に、レティアはすかさず声を添えた。「あ、それねー。ルーシーが頑張って獲ってくれたんだよぅ♪」「……レティー、うるさいわよっ。」 ルーシーは慌ててレティアを見つめ、恥ずかしそうに言う。「だーって、ホントじゃーん♪」 レティアがからかうように返すと、ルーシーは顔を赤くしながらそっぽを向いた。「恥ずかしいじゃないのっ。ううぅぅ……。」 その様子を微笑ましく見守っていたばぁーばが、柔らかな声で言った。「さっそく調理をして、夕食に食べるかねぇ。じいさんも手伝っておくれ。ルシアスちゃんは好きな部屋を使っておくれ。」 そう言うと、ばぁーばはじぃーじを連れて調理の準備のため

  • レティアの虹色の冒険   16話 おうちに行こー!

    「そうだよねー。後ろから急に現れたらビックリだよねっ。かっこいー♪ わたしも、影からあらわれてみたーいっ!」 レティアは目を輝かせながら、自分の影をじっと見つめて嬉しそうに呟いた。「はぁ、あんた魔物にでもなる気なの!? あ、でも……闇属性の魔法を極めれば……可能なのかも? 聞いたことないけど……。」 ルーシーは少し考え込むような表情を浮かべながら、小声で呟いた。「そーなんだぁ! ノクス、影貸してー♪」 レティアはそう言うなり、ノクスの影に向かって勢いよくジャンプした。地面に着地するはずだった足元は、まるで水に飛び込んだかのように柔らかく、彼女の体はすっと影の中に吸い込まれていった。「わぁ……なに、この真っ暗な世界……? 上に影の形をした明かりが見えるぅ〜。へんなのー♪」 暗闇に包まれたその空間を眺めながら、レティアは不思議そうな顔をしている。そして、上空に映る影の形を見つけると、嬉しそうに微笑んだ。「あの影の形って……ルーシーかなぁ? うふふ……♪ おどろかせちゃおぉ〜っと!」 ワクワクした顔をしながら悪戯を思いついたレティアは、影の中を軽やかに移動し、ルーシーの背後からひょっこり姿を現した。「ルーシー! こっちこっちー!」 背後から突然抱きつきながら声を掛けると、ルーシーは驚きのあまり声を上げた。「わっ!? え!? あんた……まるで魔物じゃないの……何でもありって感じよね……? もう……驚かないわよ。」 ルーシーは呆れた表情を浮かべ、ため息をつきながらも、その驚きが完全には収まらない様子だった。「まっ。心強くて良いんだけれど……」 ルーシーが顔を逸らし、小さな声で呟いた。その様子に気づくことなく、レティアは元気な声で言い放つ。

  • レティアの虹色の冒険   15話 影からの登場と能力の発見

     昼食を終えた後、レティアとルーシーは森の中を散歩しながら会話を楽しんでいた。そんな中、ルーシーがふと周囲を見回して尋ねた。「そういえば、レティーの契約獣は?」 その質問に、レティアはハッとしたような表情を浮かべた。契約した覚えはないが、ノクスたちは勝手に従ってくれていたし、今は待機しているのだろうと軽く考えていた。「うぅーん。その辺をうろついていると思うよぉ?」 軽い調子で返事をするレティア。 しかし、その答えにルーシーは呆れ顔を見せた。「はぁ? あんなのを野放しにしていたら……大ごとになっちゃうでしょ! きちんと管理をしなさいよ……。」 レティアは管理といわれても困惑してしまう。家につれて帰るわけにもいかないし、村から離れている家でも目立ってしまう。そして、最近仲間になったばかりのシャドウパピーズのことを思い出した。「ね、ねぇー普通の狼だったら目立たないかなぁ?」 レティアはルーシーの袖を引っ張りながら、少し不安そうに尋ねた。「ん? 狼? 狼は危険よ。大きいし……凶暴でしょ。まあ……ノクスに比べれば……目立たない……かな……? レティー……他にもいるの? その狼。」 ルーシーは顔を引き攣らせながら聞いてきた。「あー……うん。さっき知り合ったの! ノクスにご飯をあげてたらね……匂いに誘われて近づいてきたのぉ。えっとね、シャドウパピーズって名前をつけたんだぁー♪」 レティアはにぱぁと無邪気な笑顔で答えた。「そう……今度は、魔物じゃないだけマシかな……狼なら犬より大きいけど、まあ……大丈夫じゃない? どんな狼なのよ?」 ルーシーは呆れつつも、真剣な表情で尋ねた。「うーん…

  • レティアの虹色の冒険   14話 ルーシーの料理と対話、そしてそれぞれの特技

    「うさぎだと、何匹必要かなぁ?」 レティアはニコッと笑顔を浮かべながらルーシーに尋ねた。その無邪気な表情に、ルーシーは一瞬考え込んだ後、答えた。 「そーねー、1匹でも良いけど、2匹あった方が満足感があるわよね……パンもないし。料理といっても焼くだけだし。一応、塩はポーチに入っているし。」 ルーシーの腰にあるベルトには、小さなポーチが種類ごとに付いていて、それが非常に実用的でかっこよく見えたレティアは、その姿に感心していた。「二匹ね、えいっ!」 レティアは素早く虹色の球体を作り出し、それを放って草むらに隠れていたうさぎを仕留めた。そして、仕留めた獲物を回収するために軽やかに歩いていく。「ちょ……え? そんなに簡単に仕留められるものなの? そのうさぎ、草むらに隠れていたわよね? どうやって見つけたのよ? あぁ……いいわ。レティーだしね……。」 ルーシーは驚いた様子で目を見開き、少し呆れたようにため息をつきながら、立ち上がった。そして手際よくニコッと微笑みながら解体を始めた。「えっと……そんな高度な魔法を使えるなら、水くらい出せるわよね? お願いね! 肉を洗うのに必要なのよ。」 ルーシーは作業を進めながら、自然にレティアに頼んできた。「水かぁ……うさぎを洗うなら洗い桶が必要だよね……」 レティアは少し考え込んだ後、地面が濡れるのを防ぎ、焚き火を消さないための解決策を思いついた。虹色の能力を使い、洗い桶をイメージし、色をつけて可視化させた。虹色のままだとノクスやシャドウパピーズも見えないことに気づいたからだった。 完成した洗い桶をルーシーの隣に運び、魔法でジャバーっと水を注ぎ込む。「……この桶、どーしたのよ? 持っていなかった……ううん。……なんでもないわ。」 ルーシーは訝しげな表情でレティア

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status