異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️

異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️

last updateLast Updated : 2025-06-17
By:  Ongoing
Language: Japanese
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〝好き〟を思いだすファンタジー。 ブラック労働に疲れ果て絵を描くことを忘れてしまった元美大生の社畜OL、相川るん。いちばん一緒にいたくない元カレと共に事故死し、目覚めた先は…〝魔界〟 そこで魔王から命じられたのは、絵を描くか子を産むことで創造の力を魔界に呼び戻すこと。でも絵はもう描けない。じゃあ婚活…って、元カレとはゼッタイ無理だし…頼りのマッチング業者から紹介されたのは初手からスライム⁉︎ よく考えたらここは魔界。人間なんているはずがない! 犬男に猫男はたまた吸血鬼の伯爵…次々現れる人外のマッチング相手。 でもなんだかノンビリしてて、ちょっとヘンテコな魔界の暮らしも悪くない。 〝好き〟を思い出す、のんびり魔界のスローライフ。ここにゆっくりとスタート。

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Chapter 1

疲れ切った社畜は、やっぱり異世界に転生しがち(前編)

 金曜夜の新宿は、ゴールデンウィーク前の賑わいだ。どこの通りもごった返している。

 雑居ビルの居酒屋で、わたしたち三人は待ち合わせしていた。

 狭く、古いエレベーターがゆっくりと昇っていく、

 地元の高校の同級生、

 そろって上京した三人組だ。

 扉が開くなり、ふたりが手を振ってきた。

「ひさしぶり〜! 二年ぶりだね」

「もうそんなになるんだね〜」

 店内は賑やかだが、わたしたちも仕切り個室で再会の乾杯をした。

「るん、いまもギャラリーの仕事してるの?」

 そう聞かれて、ちょっと気恥ずかしいのには理由がある。

「まあね。社畜だけどね」

「うちらの出世頭だね〜」

「まあ、何をもって出世とするかだけどね……」

 わたしはレモンサワーを一口飲んで、苦笑する。

 アートディレクションという仕事は好きだ。クライアント相手に企画を通してデザインや展示をまとめていくのは、創作に似たやりがいがある。

「ディレクターだって!」

「やっぱ凄そうじゃん!」

「でも、まだサポートだから……要はただの画廊スタッフだよ」

 わたしは苦笑する。要はまだ見習い。十年目の使いっぱしりだ。

 家も帰れば寝るだけのワンルーム。

 慢性的な睡眠不足と、目の奥にじわじわ来ている老眼の兆し。

 そして、おなじ場所の空気を吸うだけで心を錆びつかせる上司の身勝手。

「かっこいい〜」なんて、とてもとても……

 そんな仕事はまだできてないし、三人で思い描いていた生活でもない。

 それでもユッコとちーちゃんは、目を輝かせてくれる。

「るんるんってさ、美大行ってたよね? てことは今も自分で描いてるの?」

「確かに! るんの絵、めっちゃ上手かったもんね!」

「いやいや、もう描いてないよ。今は企画側の仕事だから」

「企画側?」

「うん。ギャラリーの展示のしかたを企画したり……」

「え、なにそれ、やっぱかっこよ……! 展示ってどうやって決まるの?」

 簡単に言うと、どのアーティストの作品を、どう見せるかを決める仕事だ。

 例えば、この前の企画というかサポートした展示は、インド美術の企画展だったんだけど……

「並べるだけじゃなくて、〝見え方〟を工夫するのね」

 たとえば、柔和な微笑みにしなやかなポーズをしたおっとり系お姉さん女神パールヴァティ像を、現代の美少女アニメのフィギュア作品と並べて、腰のひねりや繊細な指先のポーズや笑顔に、時間と空間を超えた表現の可能性や共通性を感じてもらったり──。

「六〇〇年前のインドと現代日本のサブカルチャーが、おんなじような造形物に癒しや美を感じていたんだっておもうと、ふふってなるでしょ?」

 そうすると〝推し〟も信仰の一形態なんだな、とか。

 わたしは微笑む。

 そう。いい作品も、ただあるだけじゃダメなんだ。

 同じモノでも展示の仕方次第で、人が笑ったり、泣いたり、驚いたりする。

 つまり、見に来た人の感情が動く。

 すなわち〝感動〟する。

 そこは、絵を描けなくなったわたしには、今、唯一の表現の場だと言える。

「やだな、ちょっと語っちゃって…… きもかったでしょ。ごめん。」

 わたしは二人に謝った。

 でもちーちゃんもユッコも首をふった。

「でもそれで言うとさ、るんるん、昔は自分で描く側だったじゃん? なんで展示する側になったの?」

 サワーの氷が、音を立てた。

 騒がしいはずの居酒屋に。

「……そっちのほうが向いてたから、かな」

 でもこれは、嘘。

 根が深く、きっと長いイップスだ。

 でも、微笑む。

「忙しくて描いてる時間もないし、ね」

 ちーちゃんは、何かを察してくれたかのようにうなずいた。

「そっか……」

 高校の時からそうだった。

 ちーちゃんには、少しだけいつも、わたしの内側が見えている。

「でもさ、るんるんの絵、私たち好きだったよ。また見てみたいな」

 でも、その言葉はまだ、わたしの中ではちょっとした禁句で、空気を変えるように、ユッコが手を合わせて言った。

「でもさ、像の展示とか、クライアントってどんなお客さんたち?」

「んー、このあいだは六波羅蜜寺に行ったよ。職員さんもお坊さんがいっぱいでさ」

「出会いじゃん、すごー! いいなあー!」

 目を輝かす友人たちに、私は軟骨の串をつまみながら言った。

「でも用があったのは、人間じゃなくて、像だからね」

「像?」

「うん。空也上人の像。ほら、口から、こうやって仏さんが出てるお坊さんの像、見たことない?」

「…。あー!! 資料集で見たかも!」

「ミイラみたいで結構怖かったよね!」

 そのとき、ちーちゃんの携帯が、地震速報みたいなアラート音で鳴った。

「……あ。ハルだ」

 ハルト。

 その名も禁句だ。わたしは胸の奥がざわつくのを感じた。

「ごめんね、なんか今ちょうど出張で東京来てるって言うから……」

 ちーちゃんは申し訳なさそうに上目遣いをした。

 わたしは平静を装う。

「そりゃ、顔くらいだすよね」

 もう十年会っていない幼馴染。

 彼氏……だったこともある。

 それがいま新宿駅に着いたと言うのだ。

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