レティアの虹色の冒険

レティアの虹色の冒険

last updateLast Updated : 2025-08-08
By:  みみっくUpdated just now
Language: Japanese
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レティアは祖父母に育てられた幼い少女。ある日、偶然にもかつて両親を奪った魔王を討伐してしまい、レベルが異常に上昇する。強大な力に戸惑いながらも、周囲に迷惑をかけぬよう魔法の制御を試みるレティア。やがて彼女は、自ら創り出した虹色の魔法生物と心を通わせ、敵すらも仲間にする力と優しさを身につけていく――これは、静かな森の奥で芽生える、無垢なる少女の冒険と成長の物語。

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Chapter 1

1話 レティアの両親の英雄譚

 レティアの両親は、王国を代表する冒険者だった。父親は王国内でも数少ない「賢者」の称号を持つ中でも傑出した存在として知られ、母親もまた王国屈指の魔術師として多くの人々から尊敬を集めていた。

 そんな両親が活躍したのは、魔王が王国を脅かしていた時代だ。魔王の勢力は日増しに拡大し、人々の生活を圧迫していた。父と母が率いる冒険者パーティは、魔王討伐のために立ち向かい、壮絶な戦いの末、ついに魔王を追い詰め撃退することに成功した。しかし、その代償はあまりにも大きかった。パーティで生きて帰れたのは、元戦士だった一人だけ。彼もまた、負った深い傷が原因で、王への報告を果たした後、命を落としてしまう。この出来事は王国に大きな衝撃を与え、レティアの両親は英雄として語り継がれる存在となった。

 両親から受け継いだ能力と魔法の才能は、彼女が幼い頃から顕著に現れた。赤ん坊の頃、感情が高ぶったり恐怖を感じたりするたびに、無詠唱で魔法を放つことがあり、その力は周囲にとって危険なほどだった。祖父母は、彼女を守るため、山奥の静かな村でひっそりと育てることを選ぶ。

 物心つくにつれて、レティアは少しずつ感情のコントロールを学び、無意識に魔法を放つことは減っていった。5歳になる頃には、見た目も性格も可愛らしい女の子として、村人たちの愛を一身に受けるようになる。淡いブロンドのツインテールが揺れる姿は人々に癒しを与え、その明るい笑顔は誰もを惹きつける力を持っていた。

 山奥の村の朝、陽光が木々の間から差し込み、優しい風が吹き抜ける中、小さな足音が響く。草原を駆ける小さな少女の姿が目に留まった。淡いブロンドのツインテールは風に揺れ、まるで金色の絹糸が光を纏っているかのように輝いている。その瞳は澄み切ったアクアブルーで、朝露の輝きのような清らかさを宿していた。

 彼女が村へ降りてくると、住民たちの視線が自然と集まる。「レティアちゃん!」と声が飛び交い、村人たちは彼女に微笑みかける。ふんわりとしたピンクのドレスに、小さなリボンがいくつもつけられた姿は、まるでおとぎ話の小さなお姫様のように愛らしい。嬉しそうに手を振る彼女の姿に、村の人々は心が和む。

 彼女の小さな手には、村の花が一輪握られている。「おじさん、これ見て!」と楽しそうに声をかけ、子どもらしい無邪気な笑顔を浮かべる。その一瞬、周囲の空気が彼女によってさらに明るく温かいものになり、自然と笑顔が溢れ出す。

 しかし、レティアは好奇心旺盛であるだけでなく、両親から能力だけでなく冒険心も引き継いでいた。その血筋は彼女の幼い心の奥底に息づいており、平穏な村での生活にもかかわらず、未知への憧れをかき立てていた。

 村へ降りない日は、家の周りを自分だけの**「冒険」として探検**し、新たな発見に胸を躍らせるのが日課だった。そんなある日、レティアは草むらに覆われ、大人の目では気づかないほど小さな入口を発見する。それは、どこか秘密めいた空気を漂わせる洞窟への通路だった。

「うぅ~ん……なんだろ? わくわくするなぁ……でも、暗くて、怖ーい……」レティアは洞窟の入り口をじっと見つめながら、胸の中で葛藤していた。心の奥底で好奇心が恐怖を押しのけようとしている。

「あ、ちょっとくらいなら……いいよね。」彼女は勇気を振り絞り、洞窟の中へと一歩を踏み出した。

 洞窟の入り口は低く狭く、子どもの体でなければ通れないほどだった。岩肌には苔がびっしりと生え、湿り気を帯びた冷たい空気が漏れ出している。中を覗くと、ただ黒い闇が広がり、光の届かない奥行きがその存在を威圧的に主張する。静寂が耳を包み込み、ときおり滴る水音がその暗闇の奥深さをより際立たせているようだった。まるでそこには、何か未知なる存在が潜んでいるかのような、不気味な気配が感じられた。

 ひんやりとした空気が彼女の頬をなでる中、小さな足で慎重に進む。薄暗い空間の中、少しずつ目が慣れてきたレティアは、目の前に広がる未知の光景に目を輝かせながら、小さな冒険を始めた。

 入口付近は、薄暗いながらもまだ足元が見える程度の光が差し込んでおり、レティアは慎重に歩みを進めた。しかし奥へ進むにつれ、光は徐々に消え、洞窟の中は漆黒の闇に包まれていった。その静寂と暗闇の深さに、レティアの幼い心は次第に不安に囚われていく。

「やっぱり、怖い……」彼女が振り返ろうとしたその瞬間、闇の中に潜んでいた何かの存在を見つけた。それは、行きには気づかなかった、隠された影の中に潜むものだった。

 闇の奥から、ゆっくりと重く響く息遣いが聞こえた。レティアが目を凝らすと、巨大な漆黒の体が動くのが見えた。荒れた鱗が全身を覆い、その間から漏れ出す瘴気が、まるで命そのものを否定するかのように辺りを蝕んでいる。暗闇の中、赤い瞳が鋭く輝き、彼女を射抜くように見つめていた。まるで憎悪そのものが具現化したかのようなその目に、レティアの全身が恐怖で震えた。

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1話 レティアの両親の英雄譚
 レティアの両親は、王国を代表する冒険者だった。父親は王国内でも数少ない「賢者」の称号を持つ中でも傑出した存在として知られ、母親もまた王国屈指の魔術師として多くの人々から尊敬を集めていた。 そんな両親が活躍したのは、魔王が王国を脅かしていた時代だ。魔王の勢力は日増しに拡大し、人々の生活を圧迫していた。父と母が率いる冒険者パーティは、魔王討伐のために立ち向かい、壮絶な戦いの末、ついに魔王を追い詰め撃退することに成功した。しかし、その代償はあまりにも大きかった。パーティで生きて帰れたのは、元戦士だった一人だけ。彼もまた、負った深い傷が原因で、王への報告を果たした後、命を落としてしまう。この出来事は王国に大きな衝撃を与え、レティアの両親は英雄として語り継がれる存在となった。 両親から受け継いだ能力と魔法の才能は、彼女が幼い頃から顕著に現れた。赤ん坊の頃、感情が高ぶったり恐怖を感じたりするたびに、無詠唱で魔法を放つことがあり、その力は周囲にとって危険なほどだった。祖父母は、彼女を守るため、山奥の静かな村でひっそりと育てることを選ぶ。 物心つくにつれて、レティアは少しずつ感情のコントロールを学び、無意識に魔法を放つことは減っていった。5歳になる頃には、見た目も性格も可愛らしい女の子として、村人たちの愛を一身に受けるようになる。淡いブロンドのツインテールが揺れる姿は人々に癒しを与え、その明るい笑顔は誰もを惹きつける力を持っていた。 山奥の村の朝、陽光が木々の間から差し込み、優しい風が吹き抜ける中、小さな足音が響く。草原を駆ける小さな少女の姿が目に留まった。淡いブロンドのツインテールは風に揺れ、まるで金色の絹糸が光を纏っているかのように輝いている。その瞳は澄み切ったアクアブルーで、朝露の輝きのような清らかさを宿していた。 彼女が村へ降りてくると、住民たちの視線が自然と集まる。「レティアちゃん!」と声が飛び交い、村人たちは彼女に微笑みかける。ふんわりとしたピンクのドレスに、小さなリボンがいくつもつけられた姿は、まるでおとぎ話の小さなお姫様のように愛らしい。嬉しそうに手を振る彼女の姿に、村の人々は心が和む。 彼女の小さな手には、村の花が一輪握られている。「おじさん、これ見て!」と楽しそうに声をかけ、子どもらしい無邪気な笑顔を浮かべる。その一瞬、周囲の空気が彼女によってさら
last updateLast Updated : 2025-06-21
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2話 レティアの特異な成長
 魔王の体は、かつての力を失い衰弱しているはずだった。しかし、その姿にはなおも圧倒的な威圧感があった。鋭い牙は光を受けて鈍く輝き、その巨大な角は洞窟の天井を押しつぶしてしまいそうなほどに屈強で異形だった。傷だらけの体からは黒い蒸気が立ち上り、見る者に抗えぬ恐怖を植えつける。「ひっ……!」レティアの声が震え、幼い手が無意識に動いた。その恐怖に突き動かされるように、無詠唱で次々と火球(ファイアボール)が放たれる。炎が洞窟の闇を一瞬照らし出し、魔王の全貌を浮かび上がらせた。 ――それは、彼女の両親の仇として語られてきた魔王そのものだった。霧のように重く漂う瘴気、弱り果ててはいるもののなおも圧倒的な威圧感。それをひと目見ただけで、レティアはその存在が何であるかを確信した。 しかし、魔王はそのまま力尽きたように倒れ込むと、黒い霧のような体は光の粒子となり、空中に舞い上がりながらキラキラと霧散して消え去った。まるで彼女の存在を嘲笑うかのように、魔王の最期は静かで儚かった。 その瞬間、親の面影や温かな記憶はないものの、両親の仇を討てたという喜びが、レティアの胸に小さな火を灯した。しかしその喜びも束の間だった。突然、頭の中で軽快な音が鳴り響く。『ピロン♪ ピロン♪ ピロン……♪』と、頭の中で繰り返される音に彼女は動揺した。 洞窟を飛び出した頃には、頭の中で鳴り続ける音に気を取られ、先ほどの達成感も喜びも冷めていた。それに、祖父母との「家の周りから出ない」という約束を破ってしまったことを思い出し、この冒険を秘密にしておこうと心に決めた。 家へ帰り、冷静になって考えてみると、幼い頃から育ててくれた祖父母こそが本当の父と母だと感じた。「うぅ〜ん……親の仇を……討てたのは嬉しかったけどなぁ。」と、もやもやした感情を抱えながらも、頭の中の音の正体が気になり始めた。「喜びの邪魔する音がうるさいし……むぅ……。なんなの、この音……。魔王の呪いなのぉ?」と、レティアは小さな拳を握りながら首を傾げる。最初は恐怖や驚きで焦り、怯えていたが、次第にその感情は「うぅ……うるさぁ〜い〜!!」とイライラへと変わっていった。一日中その音は頭の中で鳴り響き、夜も眠れず、耳を塞いでみても、その音が消えることはなかった。 翌朝、耐えかねたレティアは怒られる覚悟で祖父母に相談することにした。 「じぃー
last updateLast Updated : 2025-06-21
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3話 レベルの確認と驚き
「ふっふふ……レティーは、レベルはいくつになったんだい?」じぃーじが優しく微笑みながら問いかけた。 しかしレティアは首を傾げるばかりだった。何しろ、レベルというものの確認方法が分からなかったのだ。「ん? レベルは、どーやってかくにんするの?」彼女は可愛らしく首を傾げながら尋ねる。「ステータスの確認と強く思えば、頭の中で確認できるんじゃよ。」じぃーじは穏やかな声で教えてくれた。 レティアはじぃーじの教えを受け、幼いながらもステータスを確認してみることにした。しかし、その結果に彼女は思わず焦った。先ほど聞いた村人や冒険者のレベルと比べて、あまりにもかけ離れていたのだ。自分の耳がおかしいのか、それとも聞き間違いなのかと疑い始める。 慌てた様子を隠すように、レティアは気を取り直してじぃーじに尋ねる。「ねぇ……じぃーじ、レベル……どれくらい上げれば冒険者で活躍できるのかなぁ?」彼女は冒険者の基準を探るふりをして、実際の数字を確認したかった。 じぃーじは少し考え込んでから答えた。「そうさなぁ……15もあれば活躍できるじゃろうなぁ……」 その答えを聞き、聞き間違いではないことを確信したレティアは、渋々口を開いて言った。「えっと……わたし、3になったみたい……」小さな声で呟くように伝えた。 ばぁーばは驚いた顔をしながらも心配そうに声をかける。「3かい……随分無理して倒したんだね。ケガをしないように注意するんだよ。」 すると、じぃーじは朗らかに笑いながらばぁーばに話しかけた。「あはは……レティーは立派な魔法使いじゃぞ? 魔法が得意な子じゃ。そう心配しなくても大丈夫じゃろ。この辺りには冒険者が多く出入りしておるから、強い魔物は冒険者が討伐してくれることじゃろ。」じぃーじの笑い声につられて、ばぁーばも安心したように微笑んだ。「レティーも、冒険者を目指しているんだねぇ。ゆっくりと頑張ったら良いさね。焦りや無理は禁物だよ。」ばぁーばが、優しく微笑みながら、レティアの頭を撫でてくれた。「うんっ♪」レティアは満面の笑顔で答えた。その瞬間だけは心が軽くなった気がした。 でも―― 『えっと……強さの基準がおかしなことになってる……。わたし……もともと、おかしかったのにぃ。さらにおかしくなっちゃってるよぅ? どーしよー』  心の中では、そんな考えがぐるぐると渦巻いていた。ど
last updateLast Updated : 2025-06-21
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4話 虹色のバリアと遊び心
「攻撃魔法は封印したいなぁ……。驚いたときにはバリアのほうがいいよね。防御なら……被害が出なさそうだしぃ。」レティアはそう独り言をつぶやきながら、自分を包む膜をイメージした。その瞬間、体全体が虹色に輝く膜に覆われた。淡く光る膜は、まるで大きなシャボン玉に包まれているようだった。「なにこれー? こんなので攻撃から守ってくれるのかなぁ? シャボン玉みたいだけど……。でも、とってもきれいだなぁ……♪」レティアは不思議そうに手を伸ばし、虹色の輝きに夢中になりながら手のひらを動かした。さらに彼女は好奇心いっぱいに、小さな球体をイメージしてみる。すると、その手の中には小さな虹色の球体がぽっと浮かび上がった。「わぁ……可愛くて、キラキラ輝いてキレイ♪ イメージ通りに動くんだねー。すごーい♪」彼女は嬉しそうに笑いながら、球体を操り始める。軽やかに宙を舞う球体は、レティアの思い通りに形を変え、ふわふわと浮かびながら踊るように動いた。  ——新たな力の発見 彼女は巨大な岩の粉々になった残骸に腰掛け、その虹色のバリアを楽しそうに動かし始めた。最初は手のひらで転がすように動かしていたが、だんだんと楽しさが増していき、森の中で出会った可愛い動物たちをイメージして虹色の形を作り出してみた。うさぎのような耳を持つ動物や、ふっくらとした小鳥のような姿――それらはレティアのイメージで自由自在に形を変え、森の中にひそかな夢の世界を作り出していった。 レティアのイメージ力はますます鮮明に広がり、動物たちの毛並みや表情までリアルに、まるで本物のように描かれるようになっていた。もはや生き物にしか見えないほど精巧で、虹色に輝くその動物たちはまるで魔法が生命を与えたかのようだった。「うわぁ……すごーい♪ お友達が作れちゃったぁー! ねぇ、ねぇ……いっしょにあそぼっ!」レティアは作り出した動物たちに話しかけると、笑顔いっぱいで駆け出した。虹色の動物たちは、まるで彼女の感情を感じ取ったかのように嬉しそうに後を追った。  ——狼との遭遇、そして支配 しばらく追いかけっこを楽しんでいると、森の奥から異様な気配が漂ってきた。レティアが作り出した小動物たちを、小動物と間違えた狼型の魔物の群れが鋭い目で狙っていたのだ。そして、静けさを突き破るように、森に潜んでいた魔物たちが一斉に襲いかかる。『ガルルゥゥゥ…
last updateLast Updated : 2025-06-22
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5話 オオカミと遊んだ
 オオカミの臭いでレティアが顔をしかめつつも、甘えたがるオオカミたちを受け入れた。彼女の心には、彼らの傷ついた姿を見た時の悲しみが薄れ、ほんの少し喜びが灯る。 その瞬間、レティアの魔法の能力が新たな進化を遂げていた。魔法の最上位魔法とスキルが結びつき、『具現化』という新たなスキルが誕生していたのだ。レティアの魔法は、この世界に存在する全てのものを扱えるようになり、本人が意識することなくスキルが補完し、オリジナルの魔法を自在に作り出せる能力へと変わっていた。 オオカミたちをキレイにしたいと願った瞬間、彼女のスキルはその思いに応じ、新たな浄化の魔法を作り出した。オオカミたちの体が虹色の光に包まれ、汚れや臭いが浄化され、仄かな良い匂いが漂うようになった。「わぁ……きれいになってるね! うん、臭くなーい!」レティアは嬉しそうにオオカミたちを撫でた。彼らはさらに甘える仕草を見せ、和やかな雰囲気が広がった。その後、彼女はオオカミたちと、追いかけっこの続きを楽しんだ。 レティアは虹色の能力と心を通わせた動物たちによって、意思疎通ができるようになっていた。新たに手に入れたその力を活かし、オオカミたちとも遊びを楽しむ日々が始まった。ある日、彼女は笑顔でオオカミたちに無邪気な提案をした。「オオカミさん、オオカミさん。次はねー、かくれんぼしよー♪ オオカミさんが見つけてねー!」その提案を聞いたオオカミたちは、得意げな表情で頷き、森での遊びに意欲を見せた。嗅覚、視覚、聴覚が発達しているオオカミにとって、小動物を探し出すことは容易なはずだった。 しかし、レティアの『虹色の能力』が、その状況を複雑にしていた。彼女の能力は万能で、小動物たちを不可視化し、臭いや物音を完全に消すことができた。レティアが作り出した小動物たちは命令がなければ動くこともなく、音を立てることがなかったため、オオカミたちにとっては手強い挑戦となった。 オオカミたちは必死になり、森中を動き回りながら臭いをたどり、耳を澄ませて音を聞き取ろうとした。しかし、小動物たちを見つけることはできなかった。しばらく隠れ続けても見つからない状況に、レティアは痺れを切らして頬を膨らませた。「ねぇー、ちゃんと探してよぅ……。まじめにやってよぅ!」怒った口調で言いながらも、その表情にはどこか楽しそうな気配が漂っていた。 オオカミたち
last updateLast Updated : 2025-06-22
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6話 お姉さんと出会った
 レティアは小さな一歩を踏み出し、ルシアスの少し上目遣いの視線を捉えながら、にこっと笑った。「わたしね、お友達になるのってすごく楽しいと思うの。だから……きみとも、いっぱいお話ししたいなぁ!」 ルシアスはその笑顔に戸惑いながらも、ほんの少しだけ肩の力を抜いたように見えた。いつものムスッとした顔には変わりなかったが、ほんの一瞬、口元がわずかに緩んだような気がした。「……あんた、変なやつだね。でも、まあ……ちょっとなら、付き合ってあげてもいいけど。」 その言葉を聞いたレティアは、嬉しそうに手を叩いて笑う。「やった!きみ、やっぱりいい人だね!」と無邪気に喜ぶその姿に、ルシアスは思わずため息をつきつつも、心の中に温かい何かが灯るのを感じた。  ——迫りくる「ノクス」 森の中を彩るように、レティアは虹色の小動物たちと無邪気に追いかけっこを楽しんでいた最中だったのを完全に忘れていた。その笑顔には不安の影などなく、むしろ無邪気さで溢れていた。しかし、彼女が遊んでいた相手が**「暗闇の支配者・ノクス」**の群れであることを知る者は、思わず声を失ってしまうだろう。 突然、地を揺るがすような足音が響いた。ノクスの群れが一斉にレティアを追いかけ、猛スピードで駆け寄ってくる。漆黒の毛並みには紫の模様が走り、銀色に輝く目は獲物を捕らえようとする鋭い光を放っていた。口から覗く牙はまるで剣のように鋭く、そこから漏れる唸り声はまるで森を脅かす嵐そのもの。瘴気が彼らの足元を揺らめき、枝葉を枯らしながら彼女に迫っていた。「な、な、な……何あれ!? あんなの、ムリムリムリィィィーーっ!」ルシアスはノクスたちの圧倒的な威圧感に完全に飲み込まれ、その場で硬直した。その目は恐怖に見開かれ、体は小刻みに震えていた。気を取り直すように杖を持ち直したものの、手が震えて力が入らず、呪文を唱えることすらできない。 一方、追いかけられているはずのレティアは、彼らを背後に感じながらも振り返ってにっこりと微笑んだ。「あ、おいつかれちゃったねぇ……あはは♪」その無邪気で平然とした態度は、ノクスたちの恐ろしさとは正反対で、まるで鬼ごっこの延長のようだった。「何言ってるの、レティアーッ!? あの狼たち、完全に危ないやつらだよ! 今すぐ逃げないとーー!」ルシアスはパニックになりながら、彼女に駆け寄ると強引に抱きかかえ
last updateLast Updated : 2025-06-23
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7話 ていまー?
 ルシアスはその異様な光景に足を止め、恐る恐る振り返った。彼女の目に映ったのは、レティアの足元に座り込むような態勢を取るノクスたち。さっきまで彼らの凶暴な姿に怯えていたはずなのに、今はまるで従順な飼い犬のように振る舞っている。その場の状況が全く理解できず、ルシアスは呆然とした表情を浮かべた。「……な、なにこれ!? なんで、こんなことになってるの!?」ルシアスは目を見開いたまま、声を絞り出すように言った。その言葉には恐れと混乱、そして少しの苛立ちが混じっていた。 一方で、レティアはその緊迫した空気を全く意に介さず、無邪気な笑顔を浮かべた。「ほら、オオカミさんたちはいい子なの。ね、いい子でしょ?」彼女がそう言うと、ノクスたちは尻尾を振るような仕草を見せ、レティアにさらに近寄った。「いい子!? あれが!? どうしてこんなことになってるのか、ちゃんと説明してよ!」ルシアスは声を張り上げるも、ノクスたちに対する恐怖心が抜けきらず、その場で固まっている。彼女の強気な口調とは裏腹に、呆然とした姿はどこか無力感を醸し出していた。 レティアはそんな彼女を見て軽く首を傾げながら、笑顔をキープしていた。「えっとねぇ、オオカミさんたち、わたしと遊んでるだけなんだよぉ♪」あまりにもマイペースな説明に、ルシアスはますます混乱を深める。「遊んでる!? あれが遊んでるっていうの!? 信じられない……完全に理解不能だわ……」ルシアスは頭を抱えながらその場に立ち尽くし、まだ状況を飲み込めずにいる自分を必死に奮い立たせようとしていた。「あのね、わたしたち、ただ追いかけっこをしていただけなのっ♪」  レティアはにぱぁっと無邪気な笑顔を浮かべながら、ルシアスを見上げて言った。その天真爛漫な様子に、ルシアスは一瞬言葉を失う。「あ、あっそぅ……」  納得できないという表情で、ルシアスはぷいっと顔を逸らしてつぶやいた。しかし事実として、ノクスたちはレティアの指示に従いきちんと立ち止まり、待機していた。その様子を見て、ルシアスは複雑な心情に陥る。  ——「テイマー」という可能性「……あ、そうか。レティア、あんたテイマーだったのね。それで納得できるわ。うん。きっとそうね……」  ルシアスは自分に言い聞かせるように呟きながら納得した様子を見せるが、その直後、ふと真剣な表情になり、地面をじっと見つ
last updateLast Updated : 2025-06-23
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8話 おともだち
 ——ルーシー、まさかの褒め言葉「あ、あんただって……あんなスゴイ魔物を手懐けてるじゃないの! むしろ、あんたの方がスゴイんじゃないの!」 ルーシーは少しムキになりながらも、頬をほんのり赤らめて、思わず褒め言葉を口にした。 すると、レティアが人懐っこい仕草でルーシーの顔を覗き込みながら、小さく囁いた。「あのね、ルーシーが呼んでくれるなら、わたしも“レティー”って呼んでくれると嬉しいかなぁ……」「は? 私たち、さっき出会ったばっかりじゃない! そんな仲じゃないでしょ!」  ルーシーは一瞬険しい表情を浮かべるも、レティアの無邪気な視線に圧倒され、結局はため息ひとつ。「……あんたがどうしてもっていうなら……仕方ないわね、れ、レティー。」 その言葉にレティアは嬉しそうに手を叩いて笑い、ルーシーの反応をしばらく楽しむようにじっと見つめていた。「な、なに見てんのよ! あんたなんかに構われたくないんだからね!」  ルーシーは強い口調で言い放ちながらも、どこか照れくさそうに顔を逸らした。レティアはまったく動じることなく、にっこり笑顔で返す。 「うふふ、そんなに怒らなくてもいいのに。お友達になろうよ!」 その無邪気な言葉に、ルーシーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにため息をついて。「もお、仕方ないわね。レティーがそこまで言うなら……べつに良いわよ。お友だちかぁ……」  そう言いながら、ルーシーはふと微笑んだ。その笑顔はとても可愛らしく、思わずこちらまで笑顔になってしまうような魅力を感じさせた。「うん。おともだちぃ〜」  レティアが小さく、しかし確かな響きで呟いたその言葉は、隣に座っていたルーシーの耳にしっかり届いていた。 レティアは嬉しさのあまり、ぴょこんと立ち上がると、ルーシーの腕にそっと自分の手を重ねた。ルーシーはビクッと体を震わせ、反射的に腕を引こうとする。「は? え!? ちょ、ちょっと、なにしてるのよ!?」  ルーシーは顔を赤くして、慌てたようにレティアから顔を逸らした。その声には明らかに動揺が混じっている。レティアは、そんなルーシーの様子を気にする素振りも見せず、ルーシーの腕を優しく撫でるように、指先でくすぐった。「ふふっ、ルーシー、あったかいねー。お友達になった記念だよぉ♪」  レティアは満面の笑みでそう言うと、ルーシーの顔を覗き
last updateLast Updated : 2025-06-24
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9話 思わぬお誘いに戸惑いの反応
 ——ルーシーの忠告とレティアの誘い ルーシーは顔色を変えながら、さらに言葉を続けた。 「あのノクスたち、ただのオオカミじゃないのよ。漆黒の毛並みと紫の模様は、瘴気を纏っている証拠。銀色の瞳は、相手の動きを見透かすような鋭さを持ってるし、あの爪と牙は岩を砕くほどの威力があるの。群れで襲いかかれば、普通の冒険者なんてひとたまりもないわ。あれが可愛いなんて、正気の沙汰じゃないわよ!」 ルーシーの声には、ノクスたちの恐ろしさを伝えようとする必死さが込められていた。しかし、レティアはその説明を聞いてもなお、にこにこと笑顔を浮かべていた。「でもね、ルーシー。オオカミさんたち、わたしにはすっごく優しいんだよぅ♪」  レティアの無邪気な言葉に、ルーシーは呆れたようにため息をつきながら、再びノクスたちをちらりと見た。その視線には、まだ警戒心が残っているものの、どこか諦めのような気配も漂っていた。「あーそうなのね……。わたしは今日のノルマを達成させるから……えっと……レティーはどうするのかしら? 家に帰るの?」  ルーシーはちらちらとレティアを気にするように見ながら尋ねた。その仕草には少しの戸惑いと遠慮が感じられた。「あ、そーだぁ! うちに遊びに来る? ちょっと狭くて……オンボロな家だけど……よかったら♪」  レティアは甘えるような笑顔でルーシーを見つめながら、思いつくままに提案した。「え!? それって……わたしを……家に誘っているの?」  ルーシーは驚きの表情を浮かべ、思わず目を見開いて聞き返した。その反応が、レティアにとっては少し不思議だった。『えっと……家に誘ってる以外にどう聞こえるのかなぁ?』  レティアは小首をかしげながらも、再び軽い調子で続けた。「嫌だったら、べつにいいんだけど。それだったらぁ……明日も待ち合わせしてあそぼー?」  家に来るのが抵抗あるならと、彼女なりに譲歩して提案を言い換えた。「ちょ、行かないなんて言ってないし! どうしてもって言うなら……行ってもいいわよ……! 勝手に話を進めないでよねっ!」  ルーシーは顔を赤らめながらも、慌てた様子で声を荒げた。しかし、その目はどこか期待しているようで、心の中ではレティアの提案に少し嬉しさを感じているのが伺えた。 レティアはそんなルーシーの反応に気づくこともなく、ただ満面の笑みを浮か
last updateLast Updated : 2025-06-24
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10話 虹色の能力の新たなる使い方
 ——レティアの無邪気な力「あはは……やっぱり可愛いワンちゃんだよね。おびえちゃってるしぃ……かわいいっ♪」  レティアはノクスたちの怯んだ仕草を見て、微笑みながら呟いた。その無邪気な声に、ノクスたちの緊張した様子がさらに際立つ。 突如として、巨大なイノシシの魔物が咆哮を放った。 「グオォォーーー!!」  その声はまるで地鳴りのように響き渡り、周囲の木々が揺れるほどの威圧感を放っていた。イノシシは鋭い赤い瞳を輝かせながら体勢を低くし、突進の準備に入った。紫色の毒の息をプシューと吹き出しながら、鋭い牙をむき出しにしたその姿は、ただの獣ではない恐怖そのものだった。 その一瞬、ノクスたちはレティアの前に移動し、彼女を守るように同じく戦闘態勢に入った。漆黒の毛並みが逆立ち、鋭い銀色の瞳がイノシシに向けられている。彼らの唸り声が低く響き渡り、緊迫した空気が場を支配した。「ムリしなくてもいいのにぃ……えいっ!」  レティアは無邪気な声を上げながら、手のひらにビー玉ほどの虹色の球体を出現させた。その球体は輝きを放ち、彼女の指先で軽く操作されるように動いた。そして、イノシシの魔物の頭を撃ち抜くイメージを強く思い描くと――『パシュッ……』 音もなく虹色の球体が放たれた。その一瞬の静けさの中、球体はイノシシの頭部に命中し、柔らかい衝撃音だけが静かに鳴り響いた。 巨大なイノシシの動きが止まり、その威圧感は一気に消え去った。レティアは輝く球体の力に驚きながら微笑みを浮かべた。「やっぱり……攻撃にも使えるんだぁ♪ これ、ファイアショットより静かで、目立たなくて良いねっ」  その声には、発見の喜びが込められていた。 彼女が笑顔を浮かべている間、ノクスたちがゆっくりと振り向き、怯えたような瞳で彼女を見つめた。その姿には、彼女の力の恐ろしさに驚いている様子がはっきりと表れていた。  ——レティアの狩り ピロン♪と、嫌な音が頭の中で鳴り響く。その音に、レティアは顔をしかめながら小さく呟いた。 「ううぅ……なんでぇ……」  ため息をつきながら一瞬気落ちするが、すぐに気持ちを切り替えるように目を輝かせた。 「そうだ、ばぁーばにお肉を持って帰れば喜んでくれるかなぁ……?」 レティアは前に座り込むノクスたちに微笑みかけると、明るい声で呼びかけた。「ノクスー! お食事して
last updateLast Updated : 2025-06-24
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