かつて王国を救った英雄、「賢者」の父と「魔術師」の母。その偉業は王国中で語り継がれ、多くの人々に尊敬されていた。しかし、その代償として彼らは命を失い、唯一の娘であるレティアは、祖父母に守られながら山奥の静かな村で育てられることとなる。 幼い頃から魔法の才能を発揮していたレティアは、その力ゆえに周囲に恐れられつつも、無邪気で愛らしい性格から村人たちに愛されていた。黄金色のツインテールを風に揺らし、澄んだアクアブルーの瞳で笑顔を振りまく彼女は、村の小さな光であり、人々の癒しでもあった。
view moreレティアの父親と母親は共に王国を代表する冒険者だった。父親は王国内でも数少ない「賢者」の称号を持つ者の一人で、その中でも飛び抜けて有能とされていた。母親もまた王国屈指の魔術師として知られ、その実力は多くの人々から敬意を集めていた。
そんな両親が活躍したのは、魔王が王国を脅かしていた時代。魔王の勢力は日に日に広がり、人々の生活を圧迫していた。父と母が率いる冒険者パーティは魔王を討伐すべく立ち向かい、壮絶な戦いの末、ついに魔王を追い詰め撃退することに成功した。しかし、その戦いの代償はあまりにも大きかった。パーティに生き残ったのは、かつて戦士だった一人だけ。しかし、その戦士も負った深い傷が原因で、王に報告を果たした後命を落としてしまった。この出来事は王国に大きな衝撃を与え、レティアの両親は英雄として語り継がれる存在となった。
両親から引き継がれた能力と魔法の才能は、彼女の幼いころから顕著に現れた。赤ん坊の頃、感情が高ぶったり恐怖を感じたりする度に、無詠唱で魔法を放つことがあり、その力は周囲にとっても危険なものだった。祖父母は、彼女を守るため、山奥の静かな村でひっそりと育てることを選んだ。
物心がつくにつれて、レティアは少しずつ感情のコントロールを学び、無意識に魔法を放つことは減っていった。5歳になった頃には、見た目に性格もかわいらしい女の子として村人たちの愛を一身に受けるようになった。淡いブロンドのツインテールが揺れる姿は人々に癒しを与え、その明るい笑顔は誰もを惹きつける力を持っていた。
山奥の村の朝、陽光が木々の間から差し込み、やさしい風が吹き抜ける中、小さな足音が響く。草原を駆ける小さな少女の姿が目に留まる。淡いブロンドのツインテールは風に揺れ、まるで金色の絹糸が光を纏っているかのように輝いている。その瞳は澄み切ったアクアブルーで、朝露の輝きのような清らかさを宿していた。
彼女が村へ降りてくると、住民たちの視線が自然と集まる。「レティアちゃん!」という声が飛び交い、村人たちは彼女に微笑みを送る。ふんわりとしたピンクのドレスに、小さなリボンがいくつもつけられた姿は、おとぎ話の小さなお姫様のように愛らしい。嬉しそうに手を振る姿に、村の人々は心が和む。
彼女の小さな手に、村の花が一輪握られている。「おじさん、これ見て!」と楽しそうに声をかけ、子どもらしい無邪気な笑顔を浮かべる。その一瞬、周囲の空気が彼女によってさらに明るく温かなものになり、自然と笑顔が溢れる。
しかし、レティアは好奇心旺盛であるだけでなく、両親から能力だけでなく冒険心も引き継いでいた。その血筋は彼女の幼い心の奥底に息づいており、平穏な村での生活にもかかわらず、未知への憧れをかき立てていた。
村へ降りない日は、家の周りを自分だけの「冒険」として探検し、新たな発見に胸を躍らせるのが日課だった。そんなある日、レティアは草むらに覆われ、大人の目では気づかないほど小さな入口を発見する。それは、どこか秘密めいた空気を漂わせる洞窟への通路だった。
「うぅ~ん……なんだろ? わくわくするなぁ……でも、くらくて、こわーい……」レティアは洞窟の入り口をじっと見つめながら、胸の中で葛藤していた。心の奥底で好奇心が恐怖を押しのけようとしている。
「あ、ちょっとくらいなら……いいよね。」彼女は勇気を振り絞り、洞窟の中へと一歩を踏み出した。
洞窟の入り口は低く狭い、子どもの体でなければ通れないほどだった。岩肌には苔がびっしりと生え、湿り気を帯びた冷たい空気が漏れ出している。中を覗くと、ただ黒い闇が広がり、光の届かない奥行きがその存在を威圧的に主張している。静寂が耳を包み込み、ときおり滴る水音がその暗闇の奥深さをより際立たせているようだった。まるでそこには、何か未知なる存在が潜んでいるかのような、不気味な気配が感じられた。
ひんやりとした空気が彼女の頬をなでる中、小さな足で慎重に進む。薄暗い空間の中、少しずつ目が慣れてきたレティアは、目の前に広がる未知の光景に目を輝かせながら、小さな冒険を始めるのだった。
入口付近は、薄暗いながらもまだ足元が見える程度の光が差し込んでおり、レティアは慎重に歩みを進めた。しかし奥へ進むにつれ、光は徐々に消え、洞窟の中は漆黒の闇に包まれていった。その静寂と暗闇の深さに、レティアの幼い心は次第に不安に囚われていく。
「やっぱり、こわい……」彼女は振り返ろうとしたその瞬間、闇の中に潜んでいた何かの存在を見つけた。それは、行きには気づかなかった、隠された影の中に潜むものだった。
闇の奥から、ゆっくりと重く響く息遣いが聞こえた。レティアが目を凝らすと、巨大な漆黒の体が動くのが見えた。荒れた鱗が全身を覆い、その間から漏れ出す瘴気が、まるで命そのものを否定するかのように辺りを蝕んでいる。暗闇の中、赤い瞳が一対、鋭く輝き彼女を射抜くように見つめていた。まるで憎悪そのものが具現化したかのようなその目に、レティアの全身が恐怖で震えた。
「あ、あんただって……あんなスゴイ魔物を手懐けてるじゃないの! むしろ、あんたの方がスゴイんじゃないの!」 ルシアスは少しムキになりながらも、褒め言葉を口にした。その顔にはほんのりとした赤みが差していた。 すると、レティアが人懐っこい仕草でルシアスの顔を覗き込みながら囁くように言った。「あのね、ルーシーが呼んでくれるなら、わたしも“レティー”って呼んでくれると嬉しいかなぁ……」「は? 私たち、さっき出会ったばっかりじゃない! そんな仲じゃないでしょ!」 ルシアスは一瞬険しい表情を浮かべるも、レティアの無邪気な視線に圧倒される。そしてため息をつきながら少しおどけたように言った。「……あんたがどうしてもっていうなら……仕方ないわね、れ、レティー。」 その言葉にレティアは嬉しそうに笑みを浮かべ、ルシアスの反応をしばらく楽しむようにじっと見つめていた。「な、なに見てんのよ! あんたなんかに構われたくないんだからね!」 ルーシーは強い口調で言い放ちながらも、どこか照れくさそうに顔を逸らした。その態度に、レティアはまったく動じることなく、にっこりと笑顔を浮かべて返す。「うふふ、そんなに怒らなくてもいいのに。お友達になろうよ!」 その無邪気な言葉に、ルーシーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにため息をつきながら返事をした。「もお、仕方ないわね。レティーがそこまで言うなら……べつに良いわよ。お友だちかぁ……」 そう言いながら、ルーシーはふと微笑んだ。その笑顔はとても可愛らしく、思わずこちらまで笑顔になってしまうような魅力を感じさせた。「うん。おともだちぃ〜」 レティアが小さく呟いたその言葉は、隣に座っていたルーシーの耳にしっかり届いていた。「は? え!? ……う、うるさいわよっ。喜んでなんかいないんだからね! ふんっ」 ルーシーはそっぽを向きながらも、
ルシアスはその異様な光景に足を止め、恐る恐る振り返った。彼女の目に映ったのは、レティアの足元に座り込むような態勢を取るノクスたち。さっきまで彼らの凶暴な姿に怯えていたはずなのに、今はまるで従順な飼い犬のように振る舞っている。その場の状況が全く理解できず、ルシアスは呆然とした表情を浮かべた。「……な、なにこれ!? なんで、こんなことになってるの!?」ルシアスは目を見開いたまま、声を絞り出すように言った。その言葉には恐れと混乱、そして少しの苛立ちが混じっていた。 一方で、レティアはその緊迫した空気を全く意に介さず、無邪気な笑顔を浮かべた。「ほら、オオカミさんたちはいい子なの。ね、いい子でしょ?」彼女がそう言うと、ノクスたちは尻尾を振るような仕草を見せ、レティアにさらに近寄った。「いい子!? あれが!? どうしてこんなことになってるのか、ちゃんと説明してよ!」ルシアスは声を張り上げるも、ノクスたちに対する恐怖心が抜けきらず、その場で固まっている。彼女の強気な口調とは裏腹に、呆然とした姿はどこか無力感を醸し出していた。 レティアはそんな彼女を見て軽く首を傾げながら、笑顔をキープしていた。「えっとねぇ、オオカミさんたち、わたしと遊んでるだけなんだよぉ♪」あまりにもマイペースな説明に、ルシアスはますます混乱を深める。「遊んでる!? あれが遊んでるっていうの!? 信じられない……完全に理解不能だわ……」ルシアスは頭を抱えながらその場に立ち尽くし、まだ状況を飲み込めずにいる自分を必死に奮い立たせようとしていた。「あのね、わたしたち、ただ追いかけっこをしていただけなのっ♪」 レティアはにぱぁっと無邪気な笑顔を浮かべながら、ルシアスを見上げて言った。その天真爛漫な様子に、ルシアスは一瞬言葉を失う。「あ、あっそぅ……」 納得できないという表情で、ルシアスはぷいっと顔を逸らしてつぶやいた。しかし事実として、ノクスたちはレティアの指示に従いきちんと立ち止まり、待機していた。その様子を見て、ルシアスは複雑な心情に陥る。「……あ、そうか。レティア、あんたテイマーだったのね。それで納得できるわ。うん。きっとそうね……
レティアは小さな一歩を踏み出し、ルシアスの少し上目遣いの視線を捉えながら、にこっと笑った。「わたしね、お友達になるのってすごく楽しいと思うの。だから……きみとも、いっぱいお話ししたいなぁ!」 ルシアスはその笑顔に戸惑いながらも、ほんの少しだけ肩の力を抜いたように見えた。いつものムスッとした顔には変わりなかったが、ほんの一瞬、口元がわずかに緩んだような気がした。「……あんた、変なやつだね。でも、まあ……ちょっとなら、付き合ってあげてもいいけど。」 その言葉を聞いたレティアは、嬉しそうに手を叩いて笑う。「やった!きみ、やっぱりいい人だね!」と無邪気に喜ぶその姿に、ルシアスは思わずため息をつきつつも、心の中に温かい何かが灯るのを感じた。 森の中を彩るように、レティアは虹色の小動物たちと無邪気に追いかけっこを楽しんでいた最中だったのを完全に忘れていた。その笑顔には不安の影などなく、むしろ無邪気さで溢れていた。しかし、彼女が遊んでいた相手が「暗闇の支配者・ノクス」の群れであることを知る者は、思わず声を失ってしまうだろう。 突然、地を揺るがすような足音が響いた。ノクスの群れが一斉にレティアを追いかけ、猛スピードで駆け寄ってくる。漆黒の毛並みには紫の模様が走り、銀色に輝く目は獲物を捕らえようとする鋭い光を放っていた。口から覗く牙はまるで剣のように鋭く、そこから漏れる唸り声はまるで森を脅かす嵐そのもの。瘴気が彼らの足元を揺らめき、枝葉を枯らしながら彼女に迫っていた。「な、な、な……何あれ!? あんなの、ムリムリムリィィィーーっ!」 ルシアスはノクスたちの圧倒的な威圧感に完全に飲み込まれ、その場で硬直した。その目は恐怖に見開かれ、体は小刻みに震えていた。気を取り直すように杖を持ち直したものの、手が震えて力が入らず、呪文を唱えることすらできない。 一方、追いかけられているはずのレティアは、彼らを背後に感じながらも振り返ってにっこりと微笑んだ。 「あ、おいつかれちゃったねぇ……あはは♪」 その無邪気で平然とした態度は、ノクスたちの恐ろしさとは正反対で、まるで鬼ごっこの延長のようだった。「何言ってるの、レティアーッ!? あの狼たち、完全に危ないやつらだよ! 今すぐ逃げないとーー!」 ルシアスはパニックになりながら、彼女に駆け寄ると強引に抱きかかえた。その顔には冷や汗が流れ
「オオカミの臭いでレティアが顔をしかめつつ、甘えたがるオオカミたちを受け入れた。彼女の心には、彼らの傷ついた姿を見た時の悲しみが薄れ、ほんの少し喜びが灯る。 その瞬間、レティアの魔法の能力が新たな進化を遂げていた。魔法の最上位魔法とスキルが結びつき、『具現化』という新たなスキルが誕生していたのだ。レティアの魔法は、この世界に存在する全てのものを扱えるようになり、本人が意識することなくスキルが補完し、オリジナルの魔法を自在に作り出せる能力へと変わっていた。 オオカミたちをキレイにしたいと願った瞬間、彼女のスキルはその思いに応じ、新たな浄化の魔法を作り出した。オオカミたちの体が虹色の光に包まれ、汚れや臭いが浄化され、仄かな良い匂いが漂うようになった。「わぁ……きれいになってるね! うん、臭くなーい!」 レティアは嬉しそうにオオカミたちを撫でた。彼らはさらに甘える仕草を見せ、和やかな雰囲気が広がった。その後、彼女はオオカミたちと、追いかけっこの続きを楽しんだ。 レティアは虹色の能力と心を通わせた動物たちによって、意思疎通ができるようになっていた。新たに手に入れたその力を活かし、オオカミたちとも遊びを楽しむ日々が始まった。ある日、彼女は笑顔でオオカミたちに無邪気な提案をした。「オオカミさん、オオカミさん。次はねー、かくれんぼしよー♪ オオカミさんが見つけてねー!」 その提案を聞いたオオカミたちは、得意げな表情で頷き、森での遊びに意欲を見せた。嗅覚、視覚、聴覚が発達しているオオカミにとって、小動物を探し出すことは容易なはずだった。 しかし、レティアの『虹色の能力』が、その状況を複雑にしていた。彼女の能力は万能で、小動物たちを不可視化し、臭いや物音を完全に消すことができた。レティアが作り出した小動物たちは命令がなければ動くこともなく、音を立てることがなかったため、オオカミたちにとっては手強い挑戦となった。 オオカミたちは必死になり、森中を動き
「攻撃魔法は封印したいなぁ……。驚いたときにはバリアのほうがいいよね。防御なら……被害が出なさそうだしぃ。」 レティアはそう独り言をつぶやきながら、自分を包む膜をイメージした。その瞬間、体全体が虹色に輝く膜に覆われた。淡く光る膜は、まるで大きなシャボン玉に包まれているようだった。「なにこれー? こんなので攻撃から守ってくれるのかなぁ? シャボン玉みたいだけど……。でも、とってもきれいだなぁ……♪」 レティアは不思議そうに手を伸ばし、虹色の輝きに夢中になりながら手のひらを動かした。さらに彼女は好奇心いっぱいに、小さな球体をイメージしてみる。すると、その手の中には小さな虹色の球体がぽっと浮かび上がった。「わぁ……可愛くて、キラキラ輝いてキレイ♪ イメージ通りに動くんだねー。すごーい♪」 彼女は嬉しそうに笑いながら、球体を操り始める。軽やかに宙を舞う球体は、レティアの思い通りに形を変え、ふわふわと浮かびながら踊るように動いた。 彼女は巨大な岩の粉々になった残骸に腰掛け、その虹色のバリアを楽しそうに動かし始めた。最初は手のひらで転がすように動かしていたが、だんだんと楽しさが増していき、森の中で出会った可愛い動物たちをイメージして虹色の形を作り出してみた。うさぎのような耳を持つ動物や、ふっくらとした小鳥のような姿――それらはレティアのイメージで自由自在に形を変え、森の中にひそかな夢の世界を作り出していった。 レティアのイメージ力はますます鮮明に広がり、動物たちの毛並みや表情までリアルに、まるで本物のように描かれるようになっていた。もはや生き物にしか見えないほど精巧で、虹色に輝くその動物たちはまるで魔法が生命を与えたかのようだった。「うわぁ……すごーい♪ お友達が作れちゃったぁー! ねぇ、ねぇ……いっしょにあそぼっ!」 レティアは作り出した動物たちに話しかけると、
「ふっふふ……レティーは、レベルはいくつになったんだい?」じぃーじが優しく微笑みながら問いかけた。 しかしレティアは首を傾げるばかりだった。何しろ、レベルというものの確認方法が分からなかったのだ。「ん? レベルは、どーやってかくにんするの?」彼女は可愛らしく首を傾げながら尋ねる。「ステータスの確認と強く思えば、頭の中で確認できるんじゃよ。」じぃーじは穏やかな声で教えてくれた。 レティアはじぃーじの教えを受け、幼いながらもステータスを確認してみることにした。しかし、その結果に彼女は思わず焦った。先ほど聞いた村人や冒険者のレベルと比べて、あまりにもかけ離れていたのだ。自分の耳がおかしいのか、それとも聞き間違いなのかと疑い始める。 慌てた様子を隠すように、レティアは気を取り直してじぃーじに尋ねる。「ねぇ……じぃーじ、レベル……どれくらい上げれば冒険者で活躍できるのかなぁ?」彼女は冒険者の基準を探るふりをして、実際の数字を確認したかった。 じぃーじは少し考え込んでから答えた。「そうさなぁ……15もあれば活躍できるじゃろうなぁ……」 その答えを聞き、聞き間違いではないことを確信したレティアは、渋々口を開いて言った。「えっと……わたし、3になったみたい……」小さな声で呟くように伝えた。 ばぁーばは驚いた顔をしながらも心配そうに声をかける。「3かい……随分無理して倒したんだね。ケガをしないように注意するんだよ。」 すると、じぃーじは朗らかに笑いながらばぁーばに話しかけた。「あはは……レティーは立派な魔法使いじゃぞ? 魔法が得意な子じゃ。そ
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