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第78話 謎の小部屋に響く声

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-05-08 06:00:52

ロンデールに着くといつも通り『夜の調べ』に宿を取ってから、冒険者ギルドに向かった。

ダンジョンは冒険者ギルドの管轄であり、ダンジョンの管理や素材の買い取りなども冒険者ギルドで扱っていた。ただし、内部で見つかった宝物、武具、道具類は商人ギルドの方へ提携する仕組みになっているようだ。

俺達は上層の討伐系のクエストを受けてダンジョンに向かうことにした。

パーティ募集などもあったが、今回は肩慣らしのつもりなので三人で十分だろう。

それにパーティが必要な中層以降に行くとしても、パーティ選びは慎重に対応しなければならない。俺やカサネさんのスキルのこともそうだし、ロシェを同行させるか、させる場合メンバーに打ち明けるかなど色々問題が出てくるからだ。

(考えてみれば皆が秘密を抱えてるってこのパーティもなかなか問題があるな。まぁカサネさんのは才能があったで誤魔化せそうだけど)

ダンジョンの入り口まで来ると何人かが並んで列を作っていた。

ロンデールのダンジョンは街近くの丘の上に入り口が作られており、ギルドに寄って入場管理がされていた。これは未帰還者を把握するためのもので、入場時に名前の記入かギルド証を提示するようだ。

俺達もギルド証を提示して中に入ると、入ってすぐのところに大きめの広場があった。広場は円形で等間隔に奥へ進むための道が八か所も暗闇をのぞかせていた。

俺達より前に入ったパーティは既に先に進んでいったらしく一人も残っていない。

「最初からこんなに分かれ道が多いとどこから入るか迷っちゃいますね」

「そうだな。慣れてる人は正解の道を知ってるんだろうけど、俺達は今日が初めてだしな」

『風の流れがある道がいくつかあるからどれかが正解だと思うけど、まぁ最初だし運試しも兼ねて好きなところから入ってみれば良いんじゃない?』

ロシェは風の流れからヒントを掴んだようだが特に教える気はなさそうだった。

確かに、別に急ぐ理由もないしな。カサネさんもどこでも良さそうだったので、適当に選んだ道から奥に進んでみる。

その後も数回、分かれ道や行き止まりに当たりながら進んでいくと、ある小部屋に辿り着いた。見た感じ色々朽
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