〜恋愛ゲームのラスボス転生〜

〜恋愛ゲームのラスボス転生〜

last updateDernière mise à jour : 2025-03-08
Par:  おまゆたEn cours
Langue: Japanese
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 前世で有名だった恋愛ゲーム『プリンセス・ジ・グランドハーツ』に登場する悪役──ジセル・エリナスに転生してしまっていた眞(まこと)。  数々の可憐なヒロイン達が登場するこの世界。当然の如くハーレムを満喫できると思っていた眞だが、このまま何もせずに過ごしていると──将来の自分が必ず死んでしまうということに気付いてしまった。  眞は脳内で必死に記憶を辿り、そこに存在する原作知識を隅から隅まで探ってみると、自身が生存できる唯一の方法を発見する。  そしてそれは……このゲームの主人公である勇者と──恋人になるというモノであったッ!!  

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Chapitre 1

第一話

「──思い出したッ!」

 この男──ジセル・エリナスは『雷に打たれた衝撃』でとか『転んだ拍子に!』などではなく、普通に生活して普通に寝て、ある朝──目が覚めたその瞬間に突然、前世の記憶を思い出した”瑠璃川 眞”として生きていた頃の記憶を。

「そうだ……俺は、あの時死んだはず……」

 彼、眞は──日頃から通っている本屋で好きなエロ本を買った後にルンルン気分で自宅向かっている道中、急にトラックが突っ込んできてそのまま轢かれて死んだはずだった。

「っつーかジセル・エリナスって……ラスボスじゃんッ!!」

 ジセル・エリナス──前世で話題になっていた恋愛ゲーム『プリンセス・ジ・グランドハーツ』に登場するキャラクターだ。自身が保有しているその力による恐怖であらゆる人間を操り、世界を混沌に陥れようとする。

 光を反射するほどに美しい白髪に加え、逞しく鍛え抜かれた肉体を持つ彼は、男性向けゲームでありながらも数々の女性プレイヤーを虜にした。

 史上最悪の犯罪者となったジセルだが、最終的に主人公である勇者の力によって魂に存在する力と共に消滅する事となる。まるで救いようのない悪であるかのように見えるが、その実情は『好きになった子を片っ端からかっさらう勇者にイラついたジセルが、ちょっとやり過ぎて世界を滅茶苦茶にしちゃった☆』というモノだ。

「……マジか」

 基本的には勇者がヒロインの内の誰かと恋に落ちた場合、ジセルは力を暴走させてしまい勇者によって討伐される。逆に勇者が誰とも結ばれなかった場合──ジセル自身が保有している力はラスボスという宿命によるものなのか、何らかの理由で必ず暴走してしまうため討伐される。

「──いやだ」

 だが『プリンセス・ジ・グランドハーツ』には唯一、ジセル・エリナスが生存するエンドが存在するッ!

「BLエンドはいやだッ!!」

 BLエンド──主人公である勇者がジセル・エリナス以外の全てのヒロインの好感度をMAXにした場合のみ、何故か自動的にジセルと勇者がイチャイチャし始める。その結果、暴走するはずであったジセルの力は主人公である勇者の力と共にあり続けることで抑制され、史上最悪の犯罪者へと堕ちない代わりに勇者と恋に落ちるという謎エンドに到達できるのだ。

 そして『プリンセス・ジ・グランドハーツ』は男性向けゲームな為、主人公の人間的なパラメータも高い。昨今の異世界チートモノと同様、数々の男性プレイヤー達はイケメンかつ男性的な肉体でヒロイン達を攻略する勇者へと精神をダイブさせることで楽しんでいたッ!

「──クソッ、勇者テメェ! ガタイが良すぎるんだよッ!」

 つまり、ジセル・エリナスは──主人公であるイケメン勇者とBLエンドを迎えなければ死ぬ!

「俺は女性が好きだ……でも」

 もう一度言おう、ジセル・エリナスは──主人公であるイケメン勇者とBLエンドを迎えなければ死ぬ! そう決まっているのだ!

「BLエンドを迎えなければ俺は死ぬ……BLエンドを迎えなければ俺は死ぬ……BLエンドを迎えなければ俺は死ぬッ!!」

 そこまでが前世で恋愛ゲーム『プリンセス・ジ・グランドハーツ』をプレイした”瑠璃川 眞”こと”ジセル・エリナス”が持つ原作知識である。

「……ふぅ、覚悟は決まった。BLがなんだ? 死を選ぶくらいなら俺は──喜んで男を選ぶッ!」

 彼はそう宣言する。まるで、そう在らなければならないと自分に言い聞かせるように。

「でも、具体的にはどうすればいいんだろうか? これといって特別な力とかは感じないな。人を操る力とか使える片鱗すらない。なんだよ魂に存在する力って……最初から自由自在に使えるやつにしてくれよ! ……それか無難に膨大な魔力とかにしておけよッ! ……ん、いや待てよ?」

 ここは魔法も魔物も存在するファンタジーのような世界。そこで弱小ではあるが貴族の家庭に生まれ、前世の知識──死ぬ程読みまくった異世界系小説のモノや、無駄に蓄えられたありとあらゆる雑学、そしてエロ知識ッッ!! そう、特に身体能力が凄いとか、魔力が多いとか、特別なスキルが発現しているとか、そんな物はないが彼には──前世の記憶という、立派な知識チートが備わっていた!

「遂に来てしまったのか、俺の時代ってやつが……」

 何かを悟ったような表情で、部屋の窓から青い空を見上げるジセル。その青い空を見上げるという行為には何の意味も含まれていないが、とりあえず雰囲気を出す為にやっていた。別に出す必要もないのだが、まぁ良いだろう。

「しかしなぁ、前世の記憶が生えてきたからって……今すぐ何か出来る事ってあるか? 別にこの世界って、ステータスを数値化する~みたいな奴ないし……今から魔法の修行ッ!! とか言ってやってみても、成長を感じなくてやる気無くなるだろう」

 一応魔物という生物は存在するが、率先して戦いに行かなくても街には現れないようになっている為、その辺の冒険者にでも任せておけばいい。

「後は……一応俺は貴族だし、領主の息子だし……蓄えた雑学で産業革命でも起こしてみるか……?」

  と考えたものの、この世界は割と文明や化学が進んでいる。先程の魔物が街に現れない事の理由は、化学によって魔物が出現する原因である『魔素集合』という現象を解明し発明された装置が置かれた──周囲一定範囲内の魔素を常にバラバラに散りばめる事で……とかそんな感じで、割と彼の前世の知識が介入する余地がなさそうなレベルなのだ。つまり、雑学知識ももはやほとんど役に立たないであろう。残っているのは──

「──エロ知識だッッ!!」

 そう、エロ知識!! 彼女いない歴=年齢、学生時代は女友達が居た。しかし、社会人になってからはほぼ女性との接点など無く、あったとしても彼氏持ちか既婚女性。その為、不定期に家へと勝手に上がり込んでくる妹を警戒しながらも日々性欲をエロアニメ、エロ小説からエロ漫画まで、様々なジャンルを制覇する事で消化していた。

 それ程にまで体内に燻っていた彼の性欲は今の所、恐らくはあまり無い。だが、大人になったら──なってしまったらきっと! 彼はそれと戦わなければ、闘わなければならないのだろうッ!

 しかし、ここは異世界──化学や文明が発達していると言っても、アニメ文化やネット文化は無い! つまり、このままだと彼はその性欲を消化できずに、最悪犯罪者にでもなってしまう。そうなれば主人公に会うことさえ出来ずに牢屋にぶち込まれ、終身刑やら処刑やらの処罰を受ける羽目になる可能性はそう低くない。

 ジセルはそこまで熟考した後、ふと思う。

 ──ん? 俺は今、何を考えている……その夢は捨てたはずだろ。

 と。

「いや、まだだ……考えろ、俺ッ! 勇者を攻略してBLエンドを迎える為には、勇者がヒロイン達とくっつくことを阻止しなければならないッ!」

 全てヒロイン達による猛攻を阻止したとしても、勇者と恋仲になる可能性のある女性は続々と現れる。

「ならば俺は! この世界に存在する勇者の恋人候補達を……全部まるっと攻略しきってかっさらってやるッ!!」

 これが無い頭で精一杯ひねり出した──天国と地獄を唯一共存させる方法である。

「そう言えば、ウチの領内を回ってた時……平民の家付近で可愛い子を見かけたなぁ。俺じゃなくて前のジセルが……だけど」

 彼は今、|BLというハッピーエンド《バッドエンド》へ向けての|最初の一歩《ナンパ》を踏み出そうとしていた。

「……可愛い? 俺は今何を……相手は子供だろ」

 決して私欲によるものではない。例え魔法や剣術の修行をしたところで性欲を発散する事などできやしないとか、モテる可能性はあるかもしれないが確実性は無いとかでもない断じてないのだッ!

「幼い内に仲良くなって、成長するのを待……勇者の恋人候補は予め潰しておいた方が良い。……これは仕方のないことなんだッ!」

 などとアホ過ぎる結論を出してしまったこの男は、その目的を達成する為の作戦を練り始めた。

「勇者の周りに女性を寄せ付けないようにする為には、そのコミュニティに参加できる女性の仲間が必要不可欠だ」

 ──だが、どうやって?

「計画的に幼馴染になる訳か。幼馴染幼馴染……そういや一時期、幼馴染を依存させちゃう系の漫画とかよく読んでたな。それと同じ事をすれば……これから俺がやる事に全面協力してくれるんじゃないか!? 俺が前世で良く見ていたのは、ハグやら頭ナデナデ等の大変軽めのモノだが……現実でそんなんに惹かれる女性が居るとは思えない」

 ──ならば! 

 そう大袈裟に身体をクねらせながら叫ぶ。これを一人でやっているという事を考えると、ジセルは恐らく世間一般から見て──かなり変人の部類に入るだろう。

 ジセルは再び熟考する。

 ──失敗はあってはならない。合理的に、確実に、相手を惚れさせる手法を、

「ヨシッ! 『べろちゅー』して依存させて、俺無しじゃ生きられない身体にしてしまおう!」

 否──彼は欲望まみれであった。

「そうすれば、魂に存在するとかいう何の役にも立たない力を扱えなくても……ゴホンッ、使わずとも! 仲間に手伝って貰うことで無事|勇者と結ばれるハッピーエンド《バッドエンド》を迎えられるって寸法よっ!」

 そんなことを白目になりながらも宣い切るジセル。最初に思い付いた作戦モノこんなんべろちゅーである彼は果たして正気なのだろうか。

 ──この時のジセルはまだ気付かない。依存というジャンルはフィクションだからこそ良くて、現実で再現しようと試みるのは悪手であるという事に。

***********************

「確かこの辺だったと思うんだけどなぁ……」

 現在ジセルは領主の家じたく付近の民家横に存在する、遊具も何も無い──ただ木や芝が生えているだけの公園のような場所をゆっくりと歩いていた。

 この身体のジセルが前世を思い出す前の記憶にある『めちゃ可愛い子』を見かけた場所を重点的に歩き回っているのだが、全く見つかる気配がない。

「まぁ、毎日ここに居るって訳でもないだろうし……そりゃそうか。もしかしたら、もう引っ越したりしてるかも」

 そもそも──その『めちゃ可愛い子』を初めて見たのがここだからと言って、ここの近くに住んでいるとは限らない。ここはかなり広大な庭園だ。交流の為に領地の端から家族でたまたま遠出していたのかも知れない。

「また明日来ようっと……ん?」

 帰宅しようとしたジセルは、視線の先に一人の少女っぽい人間が居るという事に気付く。茶色がかった黒髪が肩に掛からない程度まで伸びていて、明らかに女性物の服装をしているその人間を注意深く見てみると──どうやら例の『めちゃ可愛い子』の様であった。

(──お? チャンスだッッ! ……いや、チャンスだから何だ? 俺は今から一体何をすればいいんだ!? ──エロ知識とか、んなもんッ! 職場や学校でもない場所で知らん人に話し掛ける時に使える知識じゃねェ!)

 身に残る唯一のエロ知識チートが、クソ程も役に立たない事を理解して頭を抱えるジセル。すると──割と距離があるのにも関わらず、この男の様子がおかしい事に気付いた少女は、下を向いた状態で悩み倒しているジセルの方へと向かった。

「……ん?」

 足元を見ていた彼の視界に、自身のモノとは違う靴が映り込む。その時点で何か色々察してしまったジセルが、恐る恐る顔を上げると──激マブの女の子にガチ恋距離でガン見されていた。

「領主様の……息子?」

 あまりの近さで少女の瞳孔が開いているのが分かり、そのちょこっとホラーな光景に心の準備などしていなかったジセルの心臓がきゅっと縮む。

(──まっずい! 向こうから話し掛けてキタァァァァァァ!!)

 そして無慈悲にも首に死神の鎌がセットされ、いつでも斬首OK状態となってしまったジセルは内心で叫んだ。

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第一話
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第二話
「あなたは、領主様の……息子?」(──まっずい、向こうから話し掛けてキタァァァァァァ! 俺の脳よ、捻り出せ、思い出せ……幼馴染ジャンルのエロ漫画主人公の行動を!) ジセルは脳内に──いや、魂に刻まれている数万冊程の漫画知識を呼び起こし、無駄な数式と共に脳裏を駆け巡るそれらの中から、この状況を打開する為の最善手を捻り出す。わざわざエロ漫画である必要などないのだが、彼は”変態”であるため通常ジャンルからの知識を取り入れようという考えは頭に無い。「う、うん。そうだよ、僕の名前はジセル。ジセル・エリナス。君の名前は何ていうの?」「私はルー……ルーナ・マリウス!」 ──あ、この世界……貴族じゃなくてもラストネームがあるんだぁ。  などと前世の記憶が戻る以前からこの身体は今まで平民の名を聞いたことが無かったが故、その事を知らなかったジセル。今の所は大して重要にはならないであろうその無駄な情報で脳内が圧迫される。「ルーナは今何してるの?」「私はね、今は……魔法の練習をしてるの」「え? 凄いじゃないか! こんなに小さい頃から魔法の練習なんて……努力家なんだね!」 ルーナは少し考える様な仕草をして身体を硬直させた後──思考が纏まったのか、続けて話し始めた。「ううん違うの……家にいても、お母さんが知らない男の人と仲良くしないといけないから、外で遊んできなさいって言うの。それで、一人でもやれることないかなって思ってたらね? できるようになったの!」 ジセルは──これはもしや、俺の苦手な”あのジャンル”か? という様な、訝しげな表情を浮かべる。「えっと……お父さんはその事を知ってるの?」「……お父さんは、ずっと前に死んじゃったんだって」 ”あのジャンル”では無かった為、ホッと安心したのも束の間──、(──ただちっちゃい子の事を褒めただけなのに、気付いたらクッソ重い話飛んできてたアァ!) と、先程ルーナに初めて話し掛けられた時と同様に心で叫び声をあげるジセル。「ジセル……様は」「あ、ジセルでいいよ?」「ジセルは、今何してるの?」「僕は……そうだなぁ。友達になってくれる子を探してるんだ。ルーナが良かったらなんだけど、僕と友達にならない?」「え? ……なる! 私、ジセルと友達になる!」「やった! これから宜しくね!」「うん
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第九話
 ジセルの部屋は、柔らかな午後の日差しが窓から斜めに差し込み、埃がキラキラと舞う中、どこか懐かしく温もりを感じさせる空間になっている。壁には今より幼い頃の写真や思い出の品々が飾られ、木の温もりを感じる床には、日常の静けさと共に、どこかしら不穏な期待が漂っている。  そんなことはさておき──先程からレアの様子がおかしい。「ふんふふーん♪」 ルーナが来るまでの間、ジセルはこの部屋で静かに待機していた。いつも通りの自室、見慣れた風景──だが、今日の空気は普段とは違っている。何故かレアが、部屋の隅々まで目を輝かせながら鼻歌を奏でつつ掃除を始めたのだ。その姿は、部屋に降り注ぐ柔らかな光と相まって、まるで春風に誘われた花びらのように軽やかだった。「お〜お〜随分とルンルンしてるなぁ、レア。めちゃめちゃ上機嫌じゃないか?」「え〜? そうかな? ふふっ」 ──やべぇ……やべぇよぉ! ジセルの胸の中で、どうしてこんなにも異様な空気が漂うのか理解し難く、不安と苛立ちが渦巻いている。 相手の心の奥に何が潜んでいるのか、全く読めない。こんなにも機嫌が良いレアは、決して慣れ親しんだ姿ではない。(一体何がそんなに楽しいんだよ、こいつは! レアがこんなんになっちまう事なんて、今までに無かっただろうがッ!) ジセルの心臓は不規則なリズムを刻みながら、警戒と戸惑いで大きく膨れ上がっていた。「ル、ルーナが家に来る事がそんなに嬉しいのか?」「へ? ふふっ、なんでルーナが来ることで僕が嬉しくなると思うの? あははっ! ジセルったら、面白いこと言うね! あ〜おかし!」(……おかしいのはお前だよバカっ!!) レアの言葉に、ジセルの心の中では怒りと不安が交錯する。(どう考えても、レアは普段この程度事で笑い転げるような奴じゃない。どこも面白くない事で腹抱えてるお前の方がオモ……いや、もはや冗談でもオモロいなんて言えないわ。正直怖い、非常に怖い!) 部屋の窓からは、木々のざわめきと遠くで聞こえる鳥のさえずりが、平穏な午後のひとときを彩っている。しかしその平穏さとは裏腹に、ジセルは今──自分の内側で荒れ狂う感情を抑えきれずにいた。「そ、それにしてもルーナ遅いなぁ? 別れてからもう数時間は経ってるし。あまりにも時間がかかりすぎだと思わないか?」「う〜ん、確かにそうだね。もしかしたら今日
last updateDernière mise à jour : 2025-02-10
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第十話
「ごちそうさま」「あら〜? 今日はジセルの大好きな、えーっと……『チキン南蛮?』なのに、もう食べないのぉ〜?」 父リオネルは今、書斎で仕事に没頭している。その為ジセルが食卓のある部屋に戻ると、母ソフィアはひとり静かに夕食を済ませなければならない。そんな状況を憂うように、ソフィアはどこか寂しげな表情でジセルに声をかける。(確かに俺はチキン南蛮が大好きだ。前世の世界で、赤坂の〇ん〇んでんというお店のチキン南蛮を初めて食べた時の事は……今でも忘れられない。あれはまるで、心の奥底から『食ってみな、飛ぶぞ!!』という熱い衝動が溢れ出すほどだった)「ごめん、ちょっと今日は疲れてて……できれば早めに横になりたいんだ」(だが今日は何故か全然食欲が湧かない。母が食べ終わるまでここで座って待っていてもいいが……起きていると脳内に近頃の様子がおかしいレアの映像が浮かび続けるため、早めに寝たい) ジセルは寂しげな表情を浮かべる母と、皿に残されたチキン南蛮に一度だけ視線を向けると──心の中で小さな葛藤を抱えながらも、後ろ髪を引かれる思いで部屋の入口へと向かう。「そうなの〜? ならしっかり休んで、ルーナちゃんが来る時に備えないとねぇ〜」 ソフィアの温かい声がやや物憂げな夕暮れの空気に溶け込む。そしてジセルは──その言葉だけは聞き流すように、静かに足早に歩き始めた。****** 廊下に出ると、ジセルの足音が硬い床材に響く。夕陽が窓から差し込み、長い影を廊下の壁に映し出している。かすかな風が通り抜け、時計の針の音とともに、彼の心のざわめきを映し出すかのようだった。    心の中では昼間の出来事の記憶が静かに渦巻き、未来への不安とともにじわじわと広がっていた。彼の肩は重くどこか疲れた表情を浮かべながらも、先へ進む決意を秘めているのが感じられる。 ジセルは部屋と部屋の間にある広い廊下を通り抜けた。廊下の先には幼い頃から見慣れた自室のドアが控えており、そのドア越しに静かな光と、どこか安心感を呼び覚ます温もりが漏れている。 ドアの前に立つと、ジセルは一度深く息を吸い込んだ。心の中で今日の出来事を整理しようとするかのように、彼は手でドアノブに触れ、そっと開ける。中に入ると、薄暗い照明が部屋全体に柔らかな影を落とし、机の上には散乱した受験参考書やノートが、今にも彼の思考を吸い込
last updateDernière mise à jour : 2025-02-11
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