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第372話

Auteur: 雪吹(ふぶき)ルリ
一方、更衣室では、佳子は新しい服を取り出していた。彼女は背中を向けたまま、下着をつけ直していた。

そのとき、ドアのノックの音がした。誰かがドアを叩いている。

真夕がそんなに早く来てくれたの?

佳子は声をかけた。「入っていいよ」

ドアが開き、誰かが中に入ってきた。

しかし、入ってきたのは真夕ではなく、迅だった。

迅が来たのだ。

迅が更衣室に入ったとき、ちょうど佳子は着替えている最中だった。下は制服のスカートを履いたまま、上は新しい下着に替えたばかりで、白くて細い両手を背中に回し、ブラのホックを留めようとしていた。

迅は一瞬固まった。ノックはしたが、まさかこんな場面に遭遇するとは思わなかった。

少女の肌は雪のように白く、まばゆいほどだった。華奢な骨格に長い黒髪が清楚に垂れ下がり、ほっそりとした腕に絡みついている。

その背中は本当に美しかった。なめらかな肌、細い腰、そして完璧なS字ラインが、迅の目に飛び込んできた。

迅は一瞬目を奪われたが、すぐに視線を逸らし、背を向けて出て行こうとした。

そのとき、柔らかい少女の声が響いた。「後ろのホックがうまく留められないの。手伝って」

佳子は数歩後ろに下がり、彼の目の前まで来た。「ここ、留められないの」

迅は動かなかった。

焦った佳子が言った。「早く、手が痛くて……それに体中も痛いの」

彼はふと視線を落とした。少女の雪のように白い肌には、赤い引っかき傷がいくつも刻まれており、痛々しいほどだった。

なぜか心の奥に小さな同情の芽が芽生えた。迅は手を伸ばし、彼女の下着のホックを留め始めた。

とはいえ、女性の下着などつけたことがない彼にとって、それは簡単なことではなかった。三段ホックは思ったよりも難しく、彼は指先が肌に触れないように気をつけながら、慎重に動いた。

「真夕、後ろのホックってこんなに難しかったっけ?なんだかこの下着、前よりきつい気がする。もしかして……私、また胸が成長したのかな?」

自分の胸を見下ろし、佳子は喜びの声を上げた。「だったら嬉しいな。男の人ってやっぱりおっぱいはでかい方が好きだよね?堀田舞はEカップだったっけ?それより私、Dカップだったらいいな」

迅「……」

彼は黙って作業を早め、ようやくホックを留め終わった。

そしてそのまま出て行こうと振り返った。

しかしそのとき、佳子
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