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第12話

Author: こふまる
「悠斗、早く宇宙要塞を取り出して!」

藤宮楓は手を伸ばし、悠斗はすぐに段ボール箱を閉じ、慌てて藤宮楓に向かって首を振った。

「だめだ!出せない!」

「出せ!」藤宮楓は低く命じた。「やっと作った宇宙要塞を、こんなに隠すなんて、恥ずかしいじゃないか!」

悠斗はそのまま体を使って段ボール箱を押さえ、藤宮楓が開けられないようにした。

藤宮楓が悠斗を引き離そうとすると、悠斗は必死に段ボールを抱え込んだ。

突然、段ボールがひっくり返った。

中に入っていたプラスチックストローがすべて散らばった。

紙ストローと一緒に散らばったのは、ピンク色のメモ用紙だった。

そのメモ用紙に書かれた文字が、カメラを通して大画面に映し出された。

そこにはこう書かれていた:「6000円で、夜遅くまで宇宙要塞を作らせるなんて、馬鹿にしてるのか!」

悠斗はその場に崩れ落ち、舞台に転がるストローを見つめていた。

中村先生は台下で立ち尽くし、驚いた様子で尋ねた。「悠斗、君は本当に宿題をしていなかったのか?」

「違う、僕は作ったんだ!」

悠斗の小さな口は震えていて、目の中には涙が溜まっていた。

中村先生はメモ用紙を手に取り、悠斗に尋ねた。「じゃあ、このメモはどういうことなの?お金を払って、誰かに宿題を作らせたの?先生は、みんなが自分の親と一緒に宿題をすることを望んでいるのに、どうして先生を欺いたんだ?」

「うぅ!!」悠斗はこんなに大きな屈辱を受けたことがなかった。ステージはとても広く、彼はその上で崩れ落ち、小さな体がまるで捨てられた雛鳥のようだった。

「僕は思ってたんだ…」でも、悠斗はもう分かっていた。「思ってた」では何も変わらないことを。

悠斗は藤宮夕月が座っている方向に目を向けた。

もし、藤宮夕月が橘家を離れなければ、彼はプラスチックストローで作られた、美しくて壮大な宇宙要塞を手に入れることができたのだろう。

でも、その未完成の宇宙要塞は、藤宮楓によって壊されてしまった。

藤宮楓は彼を騙した。この大きな段ボールの中には、ただの廃棄されたプラスチックストローしか入っていなかった。

そして、彼と藤宮楓は、先生を騙し、みんなを騙してしまった。

屈辱の涙が悠斗の頬を伝って流れ落ちた。

こんな大勢の前で恥をかいた悠斗を見て、中村先生は少し気の毒に思った。

彼女は怒りを抑
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千恵
双子だから、賢いのが全部女の子の方にいっちゃったのね。 馬鹿な子
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