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4. 「異世界ほのぼの日記2」㉙

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-05-29 06:05:49

-㉙ 初対面-

 新たに真希子を副店長として雇う事になったナルリスは、貝塚財閥の筆頭株主を歓迎して自らシャンパンを注いだ。偶然なのだが、この日お店を昼までの営業にしていたので仕事は終わっている状態だったから・・・。

ナルリス「私もご一緒させて頂けませんか、副店長。」

真希子「真希子って呼んで下さい。」

 真希子は何故かまんざらでもない表情をしている、かなり顔を赤くしていると思ったら知らぬ間にメイクを直していたのだ。

結愛「おば様、貴女人妻なんですから!!」

真希子「何言ってんのかねこの子は、私はいつも通りにしているんだよ。」

 その掛け合いを聞いたナルリスが2人は親戚同士なのかと渚に聞くと・・・。

渚「お決まりの件なのかね・・・、真希子は私の古い友人で貝塚財閥の・・・うぶっ!!」

真希子「私はただのおばちゃんですよ、店長。」

 どうして真希子が渚の言葉を遮ったのか分からなかったが、鼻まで押さえてしまっている真希子の力が強すぎて渚は窒息寸前だ。

 渚が苦しそうな表情で腕を何回もタップしたので真希子は思わず手を離した。

渚「ぷはっ!!何するんだい、死にかけたじゃないか!!」

 すると真希子は耳打ちでぼそぼそと話し始めた。

真希子「貝塚財閥の筆頭株主なんてバレたら雇って貰えないかもしれないじゃないか、暫くの間は秘密にしておこうと思うんだよ。」

結愛「おば様、その心配はありませんわ。」

 小声で話したはずなのに何故返事が出来たのかが分からなくなっている真希子。

真希子「あんた、地獄耳なのかい?!それに何で心配する必要がないのさ?!」

 すると真希子にとって聞き覚えのある女性の声が聞こえた。そう、この世界に来るきっかけとなったあの声だ。

女性「私も働いているからだよ、真希子さん。」

 真希子が声の方を振り向くと青い目をした女性がこちらを向いていた。

真希子「あんたが・・・、まさか・・・。」

 そう、この世界での貝塚財閥の筆頭株主であるドワーフのネスタ林田だ。電話で話した事はあるが会うのは初めてだから少し緊張した。

真希子「あ・・・、貴女がネスタさんかい?いつか会えたらって思っていたんだよ。」

ネスタ「あたしもさ、久しく連絡が出来なかったからどうした物かと心配していてね。無事みたいで良かった。」

 レストランのオーナーシェフはこの光景を見て混乱している。

ナルリス「ネスタさん
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    -㉟ 黒竜将軍の過去- イャンダは拉麵屋の調理場にある業務用の冷蔵庫からこの時の為にこっそりと隠しておいた缶ビールの6缶パックを取り出し、好美に1本渡して自らの分として1本取り出した。これはオーナーとして見逃す訳にはいかない。好美「あら、いつの間に入れてたのかな。」イャンダ「後で家の魔力保冷庫に入れようと思っていたんだよ。」 実は上の階層のマンションには好美の厚意で冷蔵庫を設置していたのだが、この世界の者たちは従来の魔力保冷庫と勘違いしていた。好美「まぁ、今回は奢って貰ったから特別に良しとしましょう。」イャンダ「あはは・・・、悪かったよ。」 2人はゆっくりと缶のプルトップを開け乾杯した。イャンダは先程、肴は自分が作ると言っていたのにまさかの袋から出しただけのバターピーナッツだ。イャンダ「これ好きでさ、ついつい買っちゃったんだ。」 好美は自分もバターピーナッツが好きだったから先程の発言を忘れたかの様に演じて呑み明かす事にした、多分後から何か作るつもりなんだろう。 そんな中、2人だけしかいない調理場のガラス窓からちらりとデルアを見た。イャンダ「実は好美ちゃんを呼んだのは感謝してるという事を伝えたくてね。」好美「私、何かした?」 店長はビールを多めに1口煽った後、1息ついて語った。イャンダ「ふぅ・・・、実はデルアがあんなに笑ったのを見たのは初めてだったんだ。この前本人から聞いた通り、あいつは元々ヴァンパイアで人間に家族を殺された直後に王国軍隊に入隊した。しかし周りはずっと憎んでいた人間ばかり、それに一部の者達に疎まれていたから辛そうな顔をしていたんだよ。食事もろくに摂っていなかった日が多くて、心配になった俺は当時上司だった竜将軍長(アーク・ドラグーン)に相談を持ち掛けると親切にもご家族の方々の事を綿密に調べてくれてね、この国にお兄さんがいるかもしれないって分かったって事さ。まさか好美ちゃんの知り合いだったとは、本当に奇跡だと思ったよ。ただそのお陰でほら、あいつもあんなに笑っているだろ。何処か嬉しそうに、そして楽しそうにしているから俺も安心したんだ。本当に、ありがとうね。」 すると店長の話が聞こえたのか、副店長が調理場に入って来た。デルア「おいおい、さっきからピーナッツだけで呑んでるなと思ったら俺の話をつまみにしてたのか?」イャンダ「お陰

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    -㉞ どんどん採用!!- 思いも寄らなかった奇跡の再会を果たした吸血鬼の兄弟が互いの心に秘めた互いへの想いを語らいながらゆっくりと酒を酌み交わしていた頃、拉麺屋の店長とオーナーはもう1人のナイトマネージャーとアルバイトの採用面接を行っていた。 好美はとある事を決めていた。アルバイトは結愛の依頼で数階層を寮としている魔学校の学生を中心に雇う事にしていた、コンビニも拉麺屋も共通してである。 日本にいた頃、当時県外に住んでいた好美は小遣い稼ぎの為に空いた時間を利用してアルバイトをしながら大学に通っていた。朝早くから混雑する列車に揺られて大学に一番近い駅へと向かう、列車には終着駅まで乗るのだが席は必ずと言って良いほど満席だった。 車内は会社員や私立学校の生徒達など各々の目的の地へと急ぐ人たちで溢れかえっていた、ほぼ息もできなかった位に。好美は必ず降りる方の出入口辺りに立って時間を潰していた。 駅に着いてから小さな商店街を通り抜け、その先に停車しているスクールバスに乗り込み大学に着くと学内にあったコンビニで軽く朝食を摂る。いつも大きなフランクフルトを3本、店員さんが好美の顔を見るなり何も言われなくても必ず用意してくれる程毎日通っていた。 午前中の授業を受けた後、友人と昼食を摂る時いつも実感していた事があった。実は好美はアルバイトを自ら進んで行っていた訳では無かったのだが、親にしつこい位に迫られ渋々行っていたのである。 しかし今思えば食べ盛りだった当時、好きな物を腹いっぱい食べる事が出来ていたのはアルバイトと親のお陰だったのだ。 現役で食べ盛りであるはずの学生たちにも沢山食べて欲しい、その思いからアルバイトは学生中心としていた。月家賃等の従業員割引きもそこから来ている、そしてコンビニと拉麵屋の双方で希望があればだが賄いも用意する事に決めた。オーナーとして譲れない拘り、苦労を知っているが故の配慮だった。 それにこれにより一緒に呑む仲間が出来るかもしれない、そんな一抹の期待を持ちながら面接を行っていた。 コンビニのナイトマネージャーに応募してきた1014号室入居のエルフ、ニーコル・デンバインは即採用となった。ギルドカードによると調理師免許を取得していたので好美個人的には拉麵屋の方を任せたかったのだが、本人がどうしてもと希望するので折衷案を出す事にした。好美「

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    -㉜ 3人の料理人- 元王国軍の将軍たちについてパルライが行っていた事は本当なのだろうか、好美は別に1国の王を信用していない訳では無いのだが先程も記した通り「論より証拠」派なのだ。 それに是非とも王宮の厨房を担当していた将軍達の料理が食べてみたい、その上偶然が重なりお誂え向きにも丁度空腹で腹にたまる物が良い。 これから開くのが拉麵屋が故にどうしても実力を見ておきたい料理がある、そこで初顔合わせも兼ねてナイトマネージャーであるピューアを呼び出し3人に実力を発揮してもらう事にした。 ただ十分な広さや大きな調理台はあるのだがコンロは「2つ穴」で調理道具も見た感じ「2人分」、そんな設備で「3人で料理」だなんて。 料理はパルライとも話し合い、合意の上で決めた。やはり中華の実力と言えばこれと言われる料理。好美「只今より3人には炒飯を作って頂きます、拉麺を含み「中華料理は炒飯に始まり、炒飯に終わる」と言われています。具材や味付けは自由で構いませんので自身のある「1品」を作って下さい。」イャンダ・デルア「押忍!!」ピューア「は・・・、はい・・・。」 はじめてのピューアにとって元竜将軍である2人の威圧はどうしてもビクビクしてしまう物だったが時間が経つに連れて慣れていったらしい、それどころかいつの間にか仲間意識と連携が生まれ始めて物の貸し借りをする位の仲となっていた。 元竜将軍同士はともかく、出逢って間もないのにもうピューアともあだ名で呼び合っている。デルア「ほい、塩と胡椒ね!!」イャンダ「おう、サンキュー。」ピューア「葱と叉焼、お待たせ!!」イャンダ「助かるぜ、ありがとよ!!デル、餡の準備頼めるか?」デルア「勿論だ、ピューちゃん片栗粉頼む!!」ピューア「あいよ、出してくるね!!」 敢えて十分とは言えない設備で調理をさせたのは、各々が自己の役割を果たして「1つの仕事(炒飯)」をこなせるかを見る為だった。実はこれが一番の目的、これからは仕事仲間として共に働く仲間なのだからギスギスしているのは決して良くはない。ピューア「デル、水溶きにしといたよ。」デルア「流石、空気読めるね!!」イャンダ「いやぁ、ピューちゃんと一緒に仕事出来て嬉しいよ。ありがとよ。」ピューア「どういたしまして、イャン。ただ目を離したら焦げちゃうよ。」イャンダ「おう、悪い悪い。」

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   4. 「異世界ほのぼの日記2」㉛

    -㉛ 完成に近づく拉麵屋- 自らの舌で料理の腕を確かめた好美がいち拉麵屋のオーナーとしてピューアを公認した宴の次の日の朝、体をこれからの夜勤に合わせる為に昨日の宴の後すぐベッドに入ってしっかりと夜型人間となり迎えた朝7:00。テレビの電源を入れてニュースを見ながらタッパーに詰めておいたピューアの料理で軽く食事を済ませると、偶々なのだが気が向いたので1階にある拉麵屋の店舗部分へと足を運んだ。 どうやら共同経営者となるシューゴとパルライにより順々と新店の従業員が決定しており、従業員名簿の中に「ナイトマネージャー ピューア・チェルド」の文字を見つけた。 「2人も認めてくれたんだな」と1人笑みを浮かべていると大将のシューゴから『念話』が飛んで来た、先日好美が『付与』したのだが結構使いこなせる様になったらしい。シューゴ(念話)「勿論だよ、オーナーの意向に応えるのも俺達の仕事だからね。」パルライ(念話)「好美ちゃんの意見は僕たちの意見でもあるんだ。それに自身で実力を確認してくれたんだろ、否定なんかしないさ。」 パルライとはこんなにフランクな感じで話していたかどうかが疑わしいが、相手は国王なので否定したら自分の首が飛びかねない。好美(念話)「あ・・・、ありがとうございます。一押しの方なのでどうぞよろしくお願いします。」シューゴ(念話)「そんなに硬くならないでね。これからは君も経営者の1人、オーナーなんだから。」パルライ(念話)「そうだよ、言わば仲間なんだからね。」 好美は緊張しながらも自らも一歩進まねばと思ったので・・・。好美(念話)「は・・・、うん・・・、分かった。」シューゴ(念話)「改めてよろしくね、オーナー。」パルライ(念話)「俺達ももうすぐそっちに行くから詳しくはその時に話そう。」 数分後、2人が1階にやって来た。シューゴは一と渚に店と屋台を、パルライも店を副店長に任せて来たそうだ。 両人の手にも従業員名簿のコピーがしっかりと握られていた、そして好美にとっては初対面の人達が2人の傍らにいた。話の流れからどうやら2人が雇った店長と副店長らしい、あとはもう1人のナイトマネージャーを雇うのみになっていた。シューゴ「好美ちゃん、お待たせ!!新店の店長・副店長になる予定の方々を連れて来たよ。」パルライ「好美ちゃんの希望通り2人共経営学部出身で勿論

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    -㉚ 宴会で出た結果- すぐに起き上がったネスタの横で冷静となっていた渚が思い出したかのように好美に質問をした、渚以外にも気になっている者がいる事だ。渚「そう言えば好美ちゃん、あんた夜勤になったって言ってたけどいつからなんだい?」好美「明後日の夜ですね、王宮の見回りの仕事です。」 どうやら好美の事を聞いた林田が友人のニコフに一言話しておいてくれたらしく、転生してからの生活準備にある程度の期間が必要と考慮してくれたそうだ。 夫である林田署長に番号を聞いていたネスタが好美の雇い主のニコフに電話してみた。ネスタ「もしもし、ニコフさんかい?倉下好美ちゃんの事で確認したい事があるんだけどね、本人の夜勤は明後日の夜からで本当に大丈夫なのかい?」ニコフ(電話)「勿論、本当の話だよ。」 ニコフは本人の結婚式以来、林田家と家族ぐるみでの付き合いをしており、ネスタとも良き友人として呑みに行く程の仲になっていた。ネスタ「それにしてもあんた、結構心が広いんだね。」ニコフ(電話)「可愛い女の子の為なら何でも・・・、がふっ!!」 電話の向こうから嫁のキェルダに大き目の一発を喰らわされた音がした、数年前からパン屋で接客だけではなくパンの製造も行っているので十二分に筋肉がついていた。キェルダ(電話)「今「可愛い女の子」って聞こえたけど何の話をしているんだい?」ニコフ(電話)「し、し、仕事の話だよ。俺を疑おうってのかい?」ネスタ「キェルダ、本当の話だからやめておやり。」 ネスタの一言で電話の向こうで握っていたであろう拳を開いたキェルダ、ニコフ将軍長に何かしらの前科があったのだろうか。 そして最近はずっとネスタの事を「ネスタ姐さん」と呼んでいた。キェルダ(電話)「ネスタ姐さん、甘やかさないでよ。この前この人の制服からスナックの名刺が数十枚も出て来たんだよ、前の日は男と呑むって言ってたのにだよ。」ネスタ「うちの人や息子だってたまにする事だから気にする事ないさね、間違いを起こさない限りは大丈夫だから。私が保証するよ。」キェルダ(電話)「ネスタ姐さんが言うなら良いけど・・・、うん・・・。」 何処か納得のいかない様子で声を小さくしながら電話を切ったキェルダ、一先ず渚達が気になっていた事は解決したので問題なしとしよう。 さて、気を取り直してといった感じでそこにいた者達

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