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4. 「異世界ほのぼの日記2」㉝

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-06-01 08:12:12

-㉝ 副店長の思い出-

 好美は気になっていた事を1つずつ片付けていく事にした、まずはオーナーとして気になっていた事。

好美「パルライさん、「ビル下店」っていつの間に名前を決めてたの?」

パルライ「シューゴと2人で呑みながら話していく内に満場一致で決まったんだ、ダメだった?」

好美「いや、知らない内に話が進みすぎてるから頭が追いつかなくなって。それだけなんだけど。」

パルライ「ごめんね、ちゃんと言わなきゃと思っていたんだけど。」

好美「分かりやすくていいじゃん、これコンビニにも使って良い?」

パルライ「勿論、許してくれてありがとうね。」

好美「それは良いとして・・・。」

 今度は個人的に気にしていた事を聞いてみる事にした、「あの人」のいち友人として。正直、店名などどうでも良い位にこっちがメインだと言えよう。ただ決して相手を傷つけない様に間接的にやんわりと・・・、それとなく・・・。

好美「デル、子供の時何が好きだったの?」

デルア「ガキん時か・・・、そうだな・・・。ポテトサラダかな、死んだお袋がよく作ってくれてたんだ。マヨネーズがたっぷりで、それでいてじゃが芋がほくほくで、食感のアクセントにピクルスが入ってた。」

好美「思い出の味なんだね。」

デルア「ああ、それでお袋がいない時は兄貴が作ってくれてたんだよ。兄貴のはピクルスじゃなくていぶりがっこだったな、サラダに入れるためにわざわざ大根から作ってたんだよ。

 そんな折、お袋はヴァンパイアを毛嫌いしていた奴らに殺されちゃってな。俺は何とかその場から逃げて皆と離れ離れに・・・。

 それで最近、実は俺に似た奴がこの国にいるって知り合いに聞いてな。「生き別れたあいつなんじゃないか」って言ってて、俺も兄貴かもと思って確かめにこの国に来たんだ。あいつ・・・、幸せになってるかな・・・。」

 意外な位にあっさりと簡単に過去を語ってくれたデルア、これから一緒に働く仲間として力になってあげたい一心で会話を続けた。あの人に『念話』で現状を飛ばしながら。

好美「優しいお兄さんだったんだね。」

デルア「ああ・・・、そのお袋と兄貴の影響でヴァンパイアである事を隠して料理を習い始めたんだ。」

 デルアの背後に男性の人影を確認した好美。

好美「ねぇ、お兄さんに会えたら何て言いたい?」

デルア「そうだな・・・。「生きててくれて、ありがとう」かな。」

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    -㊵ 夜勤初日- 内線電話を切った瞬間に現れた好美の姿を見たデルアは焦っていた、悪いのは好美なのだが。デルア「いくら何でも早すぎるよ、まだ弁当箱も取り出していないのに!!」好美「ごめんごめん、焦り過ぎた。」 未だ焦っている様子の好美を見かけたイャンダが気を利かせてお冷を手渡した。イャンダ「好美ちゃん、ちょっとは落ち着きなよ。でないと初日から印象悪くなるよ。」好美「ごめんごめん、助かる。」 受け取ったお冷を一口飲んでやっと落ち着いた好美を見かけたイェットが咄嗟に声を掛けて来た。イェット「こっちも余っていたら渡すべきだったね、契約上売れ残ったら結局オーナーの好美ちゃんが買い取る事になるから。ただ今日は全部売り切れになっちゃったよ、ごめんなさいね。」好美「ちゃんと売れた事は嬉しい知らせだから私は嬉しいですよ、明日もお願いします。」デルア「ほら、これでいいか?」 そうこうしている内にデルアが色々詰め込んだ数段の弁当箱を持って来た、醤油ダレで煮込まれた叉焼と豚キムチ、そして白飯の香りがたまらなくて好美は持って行かずに今すぐ食べたいと思ってしまった。好美「ありがとう、行ってきます!!」女性「ちょっと待った!!」 夜が更けて真っ暗になった街中へと消えようとした好美を聞き覚えのある女性声が引き止めた、先程までの弁当の香りをかき消す様に芳しい匂いがそこら中を包んだ。 声のする方向へと振り替えると鍋の入った袋を持った光がそこにいた。光「ごめんね、これをニコフさんに渡しておいてくれる?「いつものお供え物」って言えば分かると思うから。」好美「分かりましたけど、鍋が「お供え物」ですか?」光「本人に渡せば分かるって。」 光から袋を受け取った好美は弁当と一緒に『アイテムボックス』へと入れ、王宮手前まで『瞬間移動』した。 突然現れた好美の姿を見るや否や、金の鎧に身を纏う守衛の大隊長(パラディン)が怪しい者を見る目で好美を睨みつけた。守衛「貴様、誰だ!!」好美「私、こういう者です!!」 昼間の守衛の者とは違う人間だったので、咄嗟に入場許可証を提示する好美。一応、許可証は偽装不可能なはずなのだが。守衛「待て、アポはあるか。それとギルドカードか身分証明書を出せ。」 すると男性の声が守衛の向こうから聞こえた。男性「お前ら何をやっているんだ。その方は今日

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