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第507話
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永遠の毒薬 第522話
「ママ、もし養うのにお金がかかるなら、僕がそのお金を出すよ！僕、すっごくお金持ってるんだ！」晴嵐は手で大きな円を描きながら言った。乃亜は低い声で言った。「もう、言わないで！」もし凌央が、自分が40億円を騙し取られた相手が三歳の子供だと知ったら、絶対に怒りで血を吐くだろう。もしかしたら、晴嵐にお金を返させるかもしれない。凌央は優しい人じゃないから。「うっ、忘れてた！」晴嵐は舌を出して、いたずらっぽく言った。本当にそのことを忘れていた。でも幸い、彼のクズ父親はそれを聞いていなかった。凌央は二人の後ろについてきていた。二人の会話は小さくて、何を話しているのかはっきりとは聞こえなかったが、おそらく自分のことを話しているのだろうと思った。晴嵐は乃亜の手を引いて病床の横に歩いて行き、璃音がじっと見つめていた。ん？璃音はふと、「どうしてこの人、どこかで見たことがあるような気がする」と感じた。「璃音、こっちにおいで。紹介するね。これがママだよ！すっごくすごい弁護士なんだよ！それに、お医者さんでもあるんだ！すっごくすごいよ！」晴嵐は璃音の手を取って、乃亜の手のひらに乗せた。「璃音、ママって呼んで！」乃亜は内心で思った。このガキ、何を言っているんだ。「ママ」璃音はやわらかな声で言い、乃亜を見つめた。璃音は思った。ママの目が、きれいなお姉さんに似ている。でも、きれいなお姉さんじゃない。璃音は少し寂しい気持ちになった。でも、やっぱり目の前のママが好きだ。だって、彼女はお兄ちゃんのママだもの。お兄ちゃんをこんなに愛しているんだから、きっと私のことも愛してくれるよね。「ママ、璃音が呼んでるよ、どうして返事しないの？」晴嵐は乃亜の袖を引っ張り、小さな声で言った。乃亜は唇を噛みながら言った。「晴嵐、もう、ママは怒るよ！」顔は真剣そのものだった。凌央が後ろにいる。もし彼女が本当に「ママ」って言ったら、凌央は璃音を自分の娘だと思うだろう。それに、乃亜は以前、凌央とは一線を引くと言ったばかりなのに、今それを自分で否定してしまうのは嫌だった。「どうせ、ママは私のことが好きじゃないんだ......」璃音は寂しそうに顔を歪め、涙をためて言った。「璃音、そんなことないよ！ママは嫌いじゃないよ、ただ......まだ
永遠の毒薬 第521話
「乃亜、俺を怒らせるとどうなるか、分かっているよね？」凌央は一歩も譲らなかった。彼はよく分かっていた、晴嵐が彼の近くにいれば、乃亜は必ず自分のところに来るだろうと。時間が経つにつれ、二人の関係が深まり、乃亜は自然と彼に惹かれていくはずだ。そうなれば、彼女はまた、彼を心から愛するだろうと思っていた。乃亜は冷ややかな笑みを浮かべて、彼の顔を見つめながら言った。「結果がどうなるか分かっていても、私は晴嵐を連れて行くわ！凌央、もし私が晴嵐を連れて行くのを止めたら、警察を呼ぶわよ！」そう言うと、彼女はすぐに携帯電話を取り出し、警察にかけた。この三年間、彼女は多くのことを学び、さまざまなことを理解した。今の彼女は、もう昔のように凌央のために気を使うことはない。必要なら、彼と関係を断つこともできる。凌央は彼女の携帯を取ろうと手を伸ばした。「警察を呼ぶな！璃音が驚くじゃないか！」璃音という言葉を聞いた乃亜の目には、冷笑が浮かんだ。「あなたは璃音が驚くことを心配しているのね。なら、私の息子があなたに突然連れ去られて怖がっているかもしれないことを、どうして考えないの？」それでも、彼女は携帯をしまった。結局、凌央は自己中心的な人間だった。凌央の心の中で、璃音は自分の娘で、晴嵐は乃亜の息子としてしっかりと分けられている。もし凌央が晴嵐を奪おうとしたら、彼が健やかに育つことは決してないだろう。凌央は目を細めて言った。「怖がるか？あいつ、俺に対してあんな口をきくんだ。舌の回転は誰よりも速いぞ！」あのガキ、度胸がありすぎる！どうして怖がるなんてことがあるんだ？乃亜はその言葉を聞いて、少し気分が晴れた。晴嵐のあの口は、弁護士にぴったりだ！その時、病室の扉が突然開いた。「ママ、来たんだね！」晴嵐は病室から飛び出し、飛び込むように乃亜の腕に抱きついた。「すっごく会いたかった！」お母さんが迎えに来たんだ、やっとおうちに帰れるね。乃亜は晴嵐の顔を見下ろし、手であごを持ち上げた。「怪我してない？」彼女は途中で、凌央が晴嵐を傷つけていないか心配していた。晴嵐は口が達者だから、嫌いな相手には遠慮なく言葉で攻撃するからだ。「怪我なんてしてないよ！」晴嵐は首を振り、乃亜の手を引っ張った。「ママ、行こう！新しいお友達を紹介するよ！
永遠の毒薬 第520話
凌央とは敵になりたくなかった。でも、実際にはもうすでに敵だった。ただ、激しく対立していないだけだ。「もういい、明日告発するね。今日は早く迎えに来て。あの人と一緒にいたくないの！」晴嵐は、彼の顔がいつも険しく、話すとき冷たく感じることを嫌っていた。温かさや親しみを感じることができなかったからだ。彼が凌央を嫌う理由がある。「晴嵐、礼儀を欠いてはいけない！」乃亜の声は厳しく、不満がこもっていた。「でもママ、僕は本当に嫌いなんだ！」晴嵐はしっかりと言い張った。彼は、凌央を嫌う理由は、以前調べた資料にあると感じていた。まだ会ったことはなかったが、先入観があった。そして、凌央が彼に冷たかったので、さらに嫌いになった。子供の世界はとても単純だ。好きなら好き、嫌いなら嫌い、嘘をつかない。「たとえ嫌いでも、表に出してはいけないし、他の人にも言ってはいけないのよ！分かった？」乃亜は優しく言った。「うん、わかった！気をつけて運転してね、安全第一だよ！」晴嵐は、大人のように乃亜に言い聞かせた。乃亜はその言葉に微笑んだ。電話を切った後、晴嵐は璃音に携帯を返した。「ママ、すぐ来るよ！携帯、ありがとう！」璃音は携帯を受け取り、少し羨ましそうに晴嵐を見た。「ママがいて、いいなぁ」彼女も、晴嵐のような素敵なママが欲しかった。乃亜は低いエンジン音を響かせながら車を走らせた。夜の中で、獣のように速さを感じさせた。タイヤの摩擦音が、静寂を一瞬で破った。病院の前で、突然ブレーキを踏み込んだ。車は少し前傾し、静かに止まった。空気は決意の香りを漂わせていた。乃亜は車のドアを開け、動きは決然としていた。ヒールの音が静かな夜に響く。その一歩一歩が、誰も反論できない力強さを感じさせた。彼女の目は冷たく、冬の氷のように硬かった。彼女が進もうとした時、突然現れた影が前に立ちふさがった。凌央だった。暗闇の中から幽霊のように静かに現れ、その顔は通路の灯りで力強さを感じさせた。その目は、揺るぎない光を放っていた。彼は腕を広げ、広い肩で乃亜と晴嵐の間を完全に遮った。「彼を連れて行かせない」彼の声は低く力強く、重い鉄のように乃亜の心に響いた。乃亜は冷笑を浮かべ、その笑顔には軽蔑と挑発が
永遠の毒薬 第519話
「妹ちゃん、起きたの？」晴嵐はその声を聞いて、すぐに元気を取り戻し、凌央を押しながら言った。「早く僕を下ろして！」晴嵐は凌央が乃亜にひどいことをしたことを知っていて、心の中で凌央を嫌っていた。それで、彼に良い顔をする気はまったくなかった。凌央は晴嵐を病院のベッドにおろし、「君たちは少し遊んでいて、俺はちょっと外に出てくるよ」と言って、部屋を出て行った。凌央は二人をわざと二人きりにさせた。遊んでいるうちに、二人の関係が親しくなるかもしれない。そうすれば、誰も二人を引き離せなくなるだろうと考えていた。「二人が兄妹のように仲良くなればいいな」と凌央は思った。そうすれば、二人がケンカする心配もないだろうと。部屋を出た後、彼は医師のオフィスに向かった。病室では、二人の子供が会話をしていた。「どうして病院にいるの？病気なの？」晴嵐はずっと気になっていたことを聞いた。以前、元気にしている彼女を二度見かけたのに、どうして急に入院したんだろう？「私はすごく重い病気で、ママが言ってたんだ。死ぬかもしれないって......」璃音は晴嵐の手を引き、声をひそめて言った。悲しみがにじみ出ている。「死にたくない......」晴嵐はその言葉を聞いて一瞬驚き、すぐに背筋を伸ばして言った。「君が病気なら、うちのママが治してくれるよ！ママを呼んで君を治療させる！」語気に誇りが込められている。「それに、僕のママの愛を君にも分けてあげるよ！」璃音はすぐに涙を拭って、笑顔を見せた。「うん、嬉しい！」「君、携帯電話持ってる？」晴嵐は声をひそめて尋ねた。「持ってるよ、どうしたの？」璃音は不思議そうに彼を見つめた。「ちょっと貸して、ママに電話をかけたいんだ！」今日はパパに携帯とパソコンを取り上げられたから、もしそれがなければ、すぐにでもパパやママに連絡できたのに、今ここにいてもどうしようもない。璃音はベッドサイドの引き出しを指さして言った。「携帯は中にあるよ、兄ちゃん、自分で取ってね」「ありがとう！」晴嵐は感謝の言葉を言い、引き出しを開けて携帯を取り出した。ロックを解除し、通話画面を開く。晴嵐の指が携帯の画面を素早く動かし、心の中の不安と期待を感じながら、すぐに覚えた番号をかけた。電話が数回鳴り、ついに接続された。「
永遠の毒薬 第518話
凌央と晴嵐は血縁関係があるものの、これが初めての正式な対面だった。凌央にとって、晴嵐はまだ見知らぬ人であり、彼は凌央と一緒にいることに乗り気ではなかった。「今日は君を妹に会わせるつもりだ。これから一緒に住んで、俺たちの家は君の家でもある」凌央は晴嵐を抱き上げて言った。「晴嵐、お父さんとお母さん、それに妹と一緒に住むのが嫌か？」晴嵐は大きな目をパチパチさせながら少し考えてから言った。「もし『嫌だ』って言ったら、帰してくれるの？」「帰さないよ！」凌央は迷わず答えた。「じゃあ、あなたは独裁者だね。もし『NO』って言ったら、どうして僕に聞いたんだ？」晴嵐の顔にははっきりと不満が表れていた。凌央は少し目を細めた。この小僧、反応が早く、口も達者だ。乃亜と全く同じだな。晴嵐は凌央の沈黙を見て、少し不安になった。初対面だし、もしかしたら暴力を振るわれるかもしれない。こんなふうに言い返すと、もしかして殴られるかも......そのため、晴嵐はおとなしく口を閉じた。凌央は晴嵐を抱きながら病室へ向かった。璃音は小さなウサギのぬいぐるみを抱えてぐっすり眠っていた。凌央が入っても、気づくことはなかった。晴嵐はベッドの近くに来て、その寝顔を見て驚いた。「この子、さっき会った妹だよね？どうしてこの子を知っているんだ？」嬉しそうに言った。凌央は眉を上げて彼を見た。「君、彼女を知ってるの？」晴嵐は頷いた。「うん、知ってるよ！」「それなら、君たちはこれから兄妹だね。妹と一緒に住むのは楽しいだろう？」凌央は少し安心した様子で言った。彼は二人の関係が良好になることを期待していた。そのことで少し気が楽になった。「でも、妹ちゃんと一緒に、ママと一緒に住んだ方がもっといいよ！」晴嵐は頑固に凌央との同居を拒否した。以前、凌央が母親にひどいことをしていたから、彼は絶対に父親を受け入れたくなかった。凌央の顔が瞬時に険しくなった。「今すぐママに電話して、今夜は一緒に住むことにしろ！」彼は晴嵐を連れてきた以上、もう戻すつもりはなかった。もちろん、璃音を別に送るつもりもなかった。「電話しない！僕もあなたと住まない！」晴嵐はしっかりとした表情で言った。「だって、昔、ママにひどいことしたでしょ？そんなあなたを、今さら父親な
永遠の毒薬 第517話
乃亜は携帯電話を握りしめ、怒りを押し殺しながら言った。「凌央、どうして私の息子を保育園から連れて行ったの？」彼の行動には本当に腹が立った。「彼も俺の息子だ。なぜ連れて行っていけない？」凌央は冷静に反問した。保育園から病院への道中で、彼は確信した。これは間違いなく自分の息子だ！晴嵐は非常に賢い。頭の回転が速い。まるで自分と同じだ。彼は決めた。この子を自分の元に引き寄せ、乃亜に戻らせないようにしよう。乃亜は冷たい声で言った。「彼はあなたの息子じゃない！」乃亜の心は沈んでいくばかりだった。凌央が晴嵐を連れて親子鑑定に行けば、全てが明らかになるだろう。それが怖かった。もし凌央が晴嵐と一緒に親子鑑定に行けば、その結果が......乃亜は深呼吸をして言った。「晴嵐に一言話してもらうだけでも安心できる」電話の向こうで少しの沈黙が続いた。乃亜は凌央が拒否するだろうと思っていたが、突然、息子の柔らかい声が聞こえてきた。「ママ、どこにいるの？早く来て迎えに来て。もう病院に着いたよ！」「病院？」乃亜は思わず冷たい汗をかいた。脳内が真っ白になった。何度も対策を立てていたのに、凌央に晴嵐を奪われるとは予想していなかった。「ママ、早く迎えに来て！怖いよ！」乃亜は拳を握りしめ、低い声で言った。「どんなことをしても、絶対に彼が言うことを聞いてはダメだ。絶対に！覚えておいて」晴嵐は賢い。言われたことをすぐに逆手に取って行動するはずだ。「分かったよ、ママ。早く来てね」晴嵐は電話を切った。乃亜は携帯電話を片付け、すぐに立ち上がって外に向かった。その頃、晴嵐は凌央の横に歩いていた。西洋服を着て、まるで凌央のコピーのようだ。二人が父子でないなら、誰も信じないだろう。「おじさん」息子は顔を上げ、凌央を見上げながら元気に声をかけた。凌央は彼を見下ろし、真剣な顔で訂正した。「俺はお父さんだ」晴嵐はため息をつきながら言った。「ママが言ってたよ、子供は一人のお父さんとお母さんしかいないって。僕にはお父さんがいるから、あなたをお父さんとは呼べないよ！」晴嵐は以前調べた資料を思い出していた。お父さんは大きなクズ男だった。母親を苦しめた。母は彼を産んだ後、重い病気にもかかっていた。そんなお父さんを、彼
