159.
第八話 雀聖位戦 決勝戦開始!
「じゃあ、応援してるから頑張ってね2人とも!」
「うん! ありがとう!」「がんばります」
マナミとユウは大勢の仲間に送り出されて対局室へと入って行った。
決勝戦は特別な対局室で行われた。スタジオと言った方がいい。準決勝の撮影とは明らかに違う。本格的な設備の整ったステージだった。
「おはよう」
左田純子はもう来ていた。早い。左田の目も充血していた。どうやら寝れなかったのはマナミだけではないようだ。
「左田さん、もし良ければコレ……」
マナミは今朝買った目薬を渡す。
「私も目が腫れちゃって。せっかくの映像対局ですし」
「あはは、情け無いな。緊張で寝れなかったのがバレバレじゃない。ありがとう。使わせてもらうわ」
(左田プロみたいなベテランでも緊張して寝れないことがあるんだなー)
「おはようございます!」
河野プロがやってきた。開始時間25分前だが全員が揃う。
『えー、開始予定時間はまだなのですが、このスタジオは時間で借りていますので準備でき次第スタートしてしまおうと思います。よろしいでしょうか。まだ応援の方が到着していないとか、ありますか?』
選手全員が開始していいと言ったので早めにスタートすることになった。長引き過ぎて別日にまた対局なんてことになったケースも過去にあったので早く始めた方がいい。
『では、これより第30回雀聖位戦決勝戦を行います』
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
『選手の紹介です。準決勝Aグループで勝ち上がったのは若きタイトルホルダー! なんと19歳のアマチュアでありながらプロ選手を相手に第1回UUCコーヒー杯を制した実力の持ち主。女子大生の佐藤優さん!』
「あ、佐藤で
161.第十話 客観視 一回戦はマナミとユウの接戦に河野が食らいつこうとするも失敗。マナミのトップで終わった。ユウとの点差は200点という大接戦であった。「ふう、なんとか勝てたか」「最後、裏の1枚くらい乗らないもんかしらねしかし」『15分間の休憩に入ります。選手のみなさんはお手洗いなどを済ませておいてください』 マナミは椅子で精神統一をしている、と思わせて寝ていた。さっきまでユウと話していたのにあっという間の早業である。 一方、左田は近くのコンビニに行ってエナジードリンクを2本とアイスコーヒーを2本買ってきた。どうやらやる気充分といった所だ。当然だが、初回ラスくらいで諦めたりなんかしてない。(必ず挽回する!)強い決意がそのドリンクから聞こえてくるようだった。普通、残り半荘3回でドリンク4本買うか? 何よりも、左田は負けた時に(眠かった)を言い訳にしたくなかった。寝不足なのは自分の緊張のせいなのだ。それで眠くて負けましたなんてバカとしか言いようがないではないか。 プシュ! まず1缶目の1番大きなエナジードリンクに手をつけるとゴクゴクゴクゴクと一気飲みした。(目覚めろ! 私! 愚形リーチごときで躊躇してるんじゃない!! あいつらは一瞬の反応で読んでくるってわかってたじゃない。それが決勝戦に残るメンツの実力だって。寝てる場合か!)左田はそう自分に言い奮い立たせると眼を大きく開いた。もうさっきまでのダウンしていた左田じゃない。『はい、時間ですので選手のみなさんは二回戦開始の準備をしてください!』「ふう、スッキリした!」 多少であれ睡眠をとったマナミは回復していた。二回戦開始――座順
160.第九話 チャンピオン決勝一回戦座順東家 佐藤優南家 左田純子西家 財前真実北家 河野勇一郎立会人 富士山賢太郎 決勝戦は半荘4回勝負。一回戦東1局の西家マナミの配牌は凄まじかった。マナミ手牌三三四四四伍伍六七七八①2 ドラ二 チンイツチャンス! しかもかなり簡単に出来そうな並びである。 第一ツモを持ってくる。ツモ4打①次巡⑨ツモ切り次次巡ツモ3(あれ? もうテンパイした。七切って三四伍待ちリーチ? 三切って六九? 打八は手替わり待ちでダマかな。カンチャンだし。…いやいや、まだ3巡目。この素材からはマンガン以上が欲しいから……) そう思ってマナミが手をつけた牌は4索だった。しかし、牌を掴んだその瞬間!ビビビビビ!!「痛った!」 マナミの指先から脳にかけてかつてないほどの電流が流れた。最近はもう全然出てなかったあのミスしようとするとピリッときて間違いに気付かせてくれる電流だ。その電圧はマナミに(何寝ぼけているんですか! おきなさい!)と言っているようであった。 マナミは4索を戻す。(ええ? 序盤だよ? チンイツそんなだめ?)と思って見直してみるとマナミは見落としに気がついた。「リーチ」
159.第八話 雀聖位戦 決勝戦開始!「じゃあ、応援してるから頑張ってね2人とも!」「うん! ありがとう!」「がんばります」 マナミとユウは大勢の仲間に送り出されて対局室へと入って行った。 決勝戦は特別な対局室で行われた。スタジオと言った方がいい。準決勝の撮影とは明らかに違う。本格的な設備の整ったステージだった。「おはよう」 左田純子はもう来ていた。早い。左田の目も充血していた。どうやら寝れなかったのはマナミだけではないようだ。「左田さん、もし良ければコレ……」 マナミは今朝買った目薬を渡す。「私も目が腫れちゃって。せっかくの映像対局ですし」「あはは、情け無いな。緊張で寝れなかったのがバレバレじゃない。ありがとう。使わせてもらうわ」(左田プロみたいなベテランでも緊張して寝れないことがあるんだなー)「おはようございます!」 河野プロがやってきた。開始時間25分前だが全員が揃う。『えー、開始予定時間はまだなのですが、このスタジオは時間で借りていますので準備でき次第スタートしてしまおうと思います。よろしいでしょうか。まだ応援の方が到着していないとか、ありますか?』 選手全員が開始していいと言ったので早めにスタートすることになった。長引き過ぎて別日にまた対局なんてことになったケースも過去にあったので早く始めた方がいい。『では、これより第30回雀聖位戦決勝戦を行います』パチパチパチパチパチパチパチパチ!!『選手の紹介です。準決勝Aグループで勝ち上がったのは若きタイトルホルダー! なんと19歳のアマチュアでありながらプロ選手を相手に第1回UUCコーヒー杯を制した実力の持ち主。女子大生の佐藤優さん!』「あ、佐藤で
158.第七話 いざ、決戦の地へ! 決勝戦前日。その日の夜、財前マナミは寝れないでいた。(緊張する…… 明日は決勝戦。映像対局の決勝戦に残ってしまった…… どうしよう、寝れない。私の人生で一番の大舞台になる可能性すらある日。それが明日なんだ。みんなが応援してくれてる。ミスは出来ない。早く寝てコンディションを整えて行かないといけないのに…… 緊張で寝れないよ! そういえば昔、中学の理科の先生が寝れない時は何も考えずに目を閉じて横になっているだけでいい。それだけでも回復はするからって言ってたっけ。ようし無心だ無心。……………………………………………………………………………………………… いや…… ムリよ! どうしても何か考えちゃうわよ。それが出来たら苦労しないわー)チュンチュンチュンチュン(朝んなっちゃった)「…あーーもう! 今さら眠いし!」「ど、どーしたのマナミ。目え真っ赤よ?」
157.第六話 地味が一番 決勝戦に進んだのは以下の選手。準決勝Aグループからタイトルホルダーシード佐藤優プロA1リーグシード河野勇一郎(こうのゆういちろう)準決勝Bグループからプロ予選通過財前真実 雀聖位シード左田純子この4名であった。 やはりシード権が貰えると上がって来やすいのか。それとも、強いからシード権があるのか。そのどちらもだと思われた。マナミだけが最も低い位置から勝ち上がっている。その辺はさすがの麻雀部部長といったところか。 決勝戦が行われるのはまだ先だ。季節は冬になりもうすぐで今年も終わる。アンたち3年生ももうあと僅かで高校卒業となる。財前姉妹にとっての10代が終わりに近付き完全に大人になろうとしていた。「……なんか、カオリはこの1年くらいでもうすっかり大人ね。マナミはあんまり見た目の変化ないけど、カオリは段々とミサトみたいになってきたわ。なんか、雰囲気がキリッとしてて凛々しくて。最初の印象が子供だっただけに、成長したわねえ」とメグミが言う。そうなんだろうか? 自分ではわからない。マナミがとくに変化してないのは分かるけど。 マナミって変わらない。最初会った時から可愛いくてキラキラしててキレイで元気で良い子。髪色が明るくなったくらいしか見た目の変化はしてないんじゃないかしら。でももうマナミもあとほんの数ヶ月で二十歳なのよね。信じられない。 ハタチって言うともっと大人だと思っていたけど、高校2年の出会った頃とあまりにも同じだ。でもマナミはそれでいいの。ずっと元気で可愛いままでいい。
156.第伍話 準決勝終了 二回戦は全員が佐々木剛太を倒すことだけを考えて攻めていた。この点差なら1位を下に落とせば混戦になり結果として2位通過にもなりやすいという考えだ。 竹田慎一は単騎選択で山にありそうな牌よりも佐々木が持っていそうな牌に照準を合わせて七対子リーチ。不発に終わるも佐々木はそれを使い切れず、出すこともできずでノーテン。 左田純子はピンフを捨ててまでノベタンの佐々木が捨ててる牌待ちでリーチをしてこれも佐々木は掴んでノーテン。 さらに、佐々木の親番、左田から当たり牌が打たれるも竹田は見逃し。そしてツモ切りリーチ。それでも佐々木は放銃しなかったが……。「ツモ」竹田手牌一一四四四222345中中 一ツモ ドラ3 中ドラ1の3200を見逃してのツモり三暗刻で裏も1枚乗せての跳満! 親の佐々木は6000失点。 佐々木は一萬も中も止めていたが最後の1枚をツモられてしまった。こんな事なら一萬を捨ててしまえばよかった。まあ、そんなわけにもいかないのだが。しかし、戦っている最中にはそんなに冷静に(仕方ない)とは思えないことが多いのが人というものだ。 この時、佐々木は正直言って(ぐっ、最悪だ)と思った。そうして前局の一萬を止めたこと、切っても良かったのではないか? などの反省会を脳内でしていたら……「ロン!!」 突然のロンが左田からかかる。まだ4巡目だ。しかしこの発声の勢い。そして捨て牌は……左田捨て牌六八53 特殊な切りだ、嫌な予感がする。バサッと倒されたその手牌は。左田手牌①①①②③④⑤⑥⑦⑧⑨南南 南ロン