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現実恋愛 図書館
現実恋愛 図書館
Auteur: 武 頼庵(藤谷 K介)

憧れの人はもういない

last update Dernière mise à jour: 2025-05-12 10:49:25

 憧れている女性がいた。

 必死に頑張って、就職氷河期と呼ばれている中、自分が入りたい会社へとどうにか滑り込み入社できた。

 俺は現在24歳会社員。花形と言われる営業職どころか、日陰の庶務管理課という部署で毎日雑務に追われる生活をしている。名前はあまり会社の人にも覚えられてはいないけど、三門徹《みかどとおる》という立派なものを持っている。

 とはいえ、生まれた家は立派な家柄とかじゃなくて、平凡なサラリーマン両親の元に生まれただけの、本当にどこにでもいる一般人。

――こんな会社に入れただけでも、満足しなくちゃいけないんだけどね……。

 などと考えてはいるモノの、仕事の方が順調かと問われると、全然ダメ……とは言わないまでも其れなりにはこなせていると思う。

 そういうのも、この会社に入って既に2年が経過しようとしているのだけど、一向にやる気が上がらない。

 その原因になっているモノは分かっているんだけど、既に自分では対処のしようがないのだ。

「徹君聞いてる?」

「は、はい!! すみません!!」

「まったく!! 昔からそうだったけど、もう2年目なんだからしっかりしなきゃダメよ?」

「……本当にすみません……」

 我が課の中に入って来て、色々な事を頼んできていた1歳年上の先輩、下条楓《しもじょうかえで》さん。

 スーツを着ているからというのもあるけど、体のメリハリがよく分かる上に、少し茶色がかった腰まで伸びた長い髪。小顔と言えるほど小さな顔に整ったパーツを備えている。

もちろん会社の男性陣も彼女の事をみんなが狙っている。所謂会社のマドンナ的存在。それが彼女。容姿だけでは無くて仕事の能力も高いと来ている。所属している開発部の中では次期エースとしてその名が上がるほど、会社の中では有名な人なのだ。

「ちょっと!! 徹君さっき言ったのにまだやってないの!?」

こげ茶色の混じった大きな瞳を俺に向けながら、驚きの声を出す下条さん。

「す、すみません!!」

「まったくもう……あなたは変わって無いわね。高校の時から……」

 そんな事を言いながら大きなため息をついて、くすくすと笑いだした。

 俺と下条さんは同じ高校の先輩後輩。なので知っている仲ではあるのだけど、それだけの関係ともいえる。

――俺には憧れの先輩で有る事は変わらないけどな。

下条先輩との出会いは俺が高校へ入ってすぐの事。

その日、朝いつもの時間に起きることが出来ず、少し遅れて目覚めてしまった俺は、慌てて家を出て急いで学校へ向かっていた。

 そんな道すがら、自分が向かっている先から同じ学校の女子生徒が、学校とは反対方向へと向かっているのを目にした。その隣には大きな荷物を抱えるご老人の男性の姿も見える。

 よく見ると、同じ学校の女子生徒も大きな荷物を持っていて、それが学校へ持って行くものでは無い事に気が付いた。つまりはご老人の荷物を持ってあげていたのだ。

――どうしようか……。見ちゃったからには黙ってそのまま通り過ぎるのもな……。

 瞬間に体が勝手に動いていた。

「あの!!」

「え!?」

 先に声を上げたのは生徒さん。

「何かご用ですかな?」

 その後に男性が返事を返した。

「その荷物を持たせてください!!」

「はぇ!?」

 変な声を出しているのは生徒さんだが、その声を気にする事なく、二人から返事を聞かないうちにひったくるようにしてその荷物を持った。そしてそのまま二人に問いかける。

「どこまで行くんですか? 俺も一緒に行きます」

「おぉ……ありがとう。心遣い感謝する」

 ご老人は深々と頭を下げ、俺に感謝を伝えてくれる。彼女は何も言わずにジッと俺の事を見ていた。

 そのまま行き先を聞いた後、三人揃ってその場所へと一緒に歩いて行く。

 持っている荷物は凄く重かったけど、男性が凄く感謝を伝えてくれるので、弱音をはいてはいられないと頑張った。

「下条楓……」

「はい?」

 どうにか落とさない様にと気を付けていると、ぼそっと声が聞こえて来た。

「私の名前……〇〇高校2年の下条楓。あなたの名前は?」

「あ……俺は1年の三門徹です」

「そう……三門……徹君ね。ありがとう」

「いえいえ。困っている人を見かけて手伝わないわけにはいきませんでしたので」

「優しいんだね……」

 俺の方から顔を背けたまま、下条さんは小さな声でそんな事をつぶやいた。

 そのまま目的地までは、男性の話を聞いたりしながら進んでいき、無事にたどり着くとお礼をという男性の声をどうにか押しとどめ、俺と下条先輩は学校へと向かい歩き出した。

 向かう間に会話したことはほんの二言、三言ぐらい。

 学校に着いてからは行き先が違うのでそれきり別れてしまった。

 それが下条先輩との初遭遇。その後、学校の中でアイドル級に人気の人が居ると、同級生の中で話題になると、俺もその話題の人をこっそりと見に行った。するとそこに居たのは以前一緒に二人きりで歩いたことのある下条さんだった。

 驚きはそれだけじゃなくて、偶然にも委員会という関わり合いたく無いものに割り当てられてしまった物へ顔を出したら、そこにも下条先輩の姿があったり、何かイベントがある度に下条先輩の姿を目にすることが多かった。

 そうなると、彼女の容姿もそうだが、その能力の高さを目の当たりにするようになる。下条先輩に憧れを抱くのに時間はかからなかった。

 先輩が高校を卒業するまで、偶然は重なって、下条先輩と一緒にいる時間は増えたが、その分だけ憧れの情念は増していった。

 大学に進学するときも、下条先輩の後を追う事も考えたのだが、あいにく自分にはそんなスペックは無かったらしく、希望したところはものの見事に惨敗。結局は遠くの大学に進むことになり、引っ越し先で4年を過ごしている間に先輩の事を忘れるかとも思ったが、自分の想いと気持ちは別物だったようで、いつまでたっても消えることが無いまま、就職活動する時期に来ていた。

 偶然にも、大学の先輩が就職した先の話の中に、下条先輩の話が出て来て、俺は迷わずその会社にエントリーシートを送った。

 なんと自分でも驚いてしまったが、すべてをパスした俺は見事に入社することが出来た。喜んで研修を終え初出社を果たした俺は、その大事な初日に絶望することになる。

 関連する部署へとあいさつ回りをしている時に、またも偶然遭遇した下条先輩。久しぶりに合った先輩も俺に気が付いたのかニコッと笑顔を向けて手をちいさく振ってくれた。

 しかし俺はその時に見てしまったのだ。

 彼女の左手薬指できらりと光る指輪の存在を――。

――え……? そんな……。

 そしてその時に気が付いた。先輩に憧れていたと思っていた感情。その感情が憧れではなく恋愛的な感情に変化していたことに。

 それからというモノ、仕事の事に関しては自分ではうまくやれていると思っている。出来る事はまだ少ないけど、今できる事を一所懸命にこなす事は出来ているはず……。

「はぁ~」

「どうしたんだい?」

 思わずついたため息に、同僚である主任が気付いて声を掛けてくれる。

「いやぁ……最近ですけど、気になっていた人がもう結婚していたことに気が付いちゃったんですよ……」

「あぁ……それは残念だったね。でもすぐに切り替えて別な人を探せばいいじゃないか」

「それがですね……。その人とは毎日……というわけじゃないんですけど、顔を合わせる事が多くて、その……」

「どうしても断ち切れない……そういう事?」

「はい。そんな感じです」

 うーんと唸りながら考えこむ主任。

「ならさ、今度合コンとか行く?」

「え?」

「合コン。近々あるんだけどさ、一人くらいならねじ込むことが出来ると思うよ」

「そうなんですか……」

 しばらく考え込む俺。すると声が掛けられた。

「とお……。三門君、合コンに行くの?」

「へ?」

 声のした方を向くと下条先輩が何とも言えない表情をして立っていた。

「行くの?」

「……どうでしょう? 考え中ですね」

「そうなんだ……」

 俺の返事を聞いた下条さんは、しょんぼりとした感じで俺たちの話から離れていった。

「下条さん……どうしたんでしょう?」

「さぁなぁ……。それよりも考えておいてくれよ」

「わかりました」

 主任が俺の肩をバンバンと叩きながら、自分の仕事へと戻っていった。

――なんだったんだろ?

 先輩の事が気になるけど、今の先輩には関係ないはずの事なのにと思いなおし、俺も自分の仕事に集中することにした。

 それから数日が忙しいように過ぎ、街の中も緑と赤色の装飾を目にするのも慣れてきたころ、仕事中に主任が俺に近づいてきて耳打ちする。

「今度の土曜日な」

「はい?」

「だから、この間言ってた合コンだよ」

「あぁ……あれ、本気だったんすね」

「当たり前だろ? もうすぐクリスマスだぜ? ここらで彼女作りたいって思うだろ」

 異様に気合の入っている主任を見て少し引いた。

 一つ大きなため息を吐く。

――そうだな。気持ちのけじめとしてもいいかもしれない。

「わかりました。事前に時間とかの連絡をください」

「おお!! 決心したか!? わかった。じゃぁ後でな!!」

 主任が自分の席へと戻っていく。その背中を見ながら、俺はまた一つ大きなため息をついた。

 予定された土曜日は数日後。それまでに自分の気持ちをどうにか落ち着かせなければと、自分に強く言い聞かせるのだった。

「どうして先輩がここにいるんですか!?」

 目の前に座っていた合コン相手といわれた中の一人。その中に思いっきり見慣れた女性が座って俺の事をじっと見ていた。

 結局気持ちを切り替える事も、先輩を忘れる事もできず中途半端な気持ちのままで、主任に言われていた集合場所へと先にたどり着いた俺は、腕時計で時間を確認しながら、大きなため息をつきつつ主任の到着を待っていた。

「遅くなったな!!」

「主任!!」

 声を掛けられて、主任の方へと顔を向けると、いつも会社の中で見かける人達の顔が見えた。

「さあ行こうぜ!!」

「……はい」

 肩をバンバンと叩かれ、その方をさすりながら主任の後へと付いていく。

 歩きながら、会話をしていると数分で目的の店へとたどり着いた。そして連れられて入った店の中――。

 予約している場所にもう着いて座っていると、主任には連絡が入っていたようで、その場所へと店員さんに案内されると、数人の女性が座っているのが見えた。

 促されるままに席へと移動する俺たち。俺は最後に今回のメンバーになったという事もあって、端の席に座ろうとみんなが座るのを見届け、空いたところに腰を下ろす。

 そして顔を上げると――。

 そこで先ほどの言葉へと繋がる。

「どうしてって……わたしも今回参加者の一人だから? ……かな?」

 そう言いながら首を傾げる下条先輩。

「いやだって……先輩はもう……」

 彼女の左手に光る指輪を見ながら俺は言葉に詰まる。

「あぁ……これ? これは男避けだよ」

「え?」

 俺の視線に気が付いた先輩がニコッと笑いながら答えた。

 そんな会話が合コンの始まりになって、そこからすぐに盛り上がりを見せ始めた合コン。俺は先ほどの言葉が気になって、他の人たちの会話なんて耳に入ってこない。

「ねぇ下条さん、どうして今回参加したの? いつも誘ってるのに断ってたじゃん?」

 主任の質問に周りが一瞬で静かになった。そして視線が先輩の方へと集まる。そんな視線をいっぺんに受けた先輩は、ニコッと笑顔になってそれにこたえる。

「うぅ~ん……。そうね。わたしには心に決めた人がいたのよ」

「決めた人が……いた?」

「そうそう。だからこんな事をして、余計な事を言われない様にして来たんだけど……」

 そう言いながら俺の方へと左手を見せ、視線を向ける先輩。

「その人が何か合コンに行くとか言ってるじゃない? だからね……もう待たないことにしたの」

 いうが早いか、先輩が俺の方へとスッと席を立って移動してきたと思ったら、グイっと俺を席から立たせ、その勢いのままに俺の唇を塞いだ。

――なんだ? 何が起こってる!?

 口を塞がれたまま混乱する思考回路。

ぷふぁっ!!

 そんな言葉と共に、ようやく離れた先輩の顔は凄く朱に染まっていた。

 俺以外の周りがどっと囃し立てる。しかしそんなどよめきにも悲鳴にも似た声は俺には届かない。

「徹君……もう離さないからね」

「え? でも……先輩結婚して……」

「さっきも言ったでしょ? これはあなた以外の人を遠ざけるための男避けだよ」

 そう言うと俺の言葉を塞ぐように、また先輩から口を塞がれた。そしてそのまま俺の背中に先輩の腕が回る。

 宙を浮いたままの俺の腕も、自然と先輩の背中に回って、先輩の体を強く抱きしめていた。

 あの後はどうなったのかよく分からない。合コンをぶち壊した戦犯とまで言われたのだが、どうやら俺たち二人だけの世界に入ってしまった事で、場がしらけてしまい、一次会で解散になったらしい。

 俺と下条さんはというと、その場ではもう何も言う事は出来なかった。その日は解散する人たちとお互いに帰ったのだけど、翌日の日曜日に改めて二人だけで会う時間を作った。

 週明けの会社ではもう大騒ぎ。会社のマドンナが、まだ未婚だったことにも驚きもあったようだが、それ以上に恋人になったのが、今まで目立つ事の無かった部署も違う俺である事。それが一番の衝撃だったようで、会社中の男性陣からの視線が突き刺さる様に痛かったのを覚えている。

「ねぇ……恥ずかしかったんだよ? あの時」

「そうなの?」

「だって……初めてだったし……」

 俺の肩に頭を預けながらつぶやくように小さな声で語る先輩。

 うるさい人のいない昼休憩時間の公園。木陰になっていて少し肌寒い風が通り過ぎていく小さなベンチに、二人で腰を下ろしている。

――いや……もう楓だな……。

「楓……」

 俺は彼女へ視線を向ける。彼女は少しはにかみながら俺の方へと顔を向けた。そっと頬へ手を回し、そのまま今度は俺から彼女の唇へ――。

 憧れの女性はもう居ない。

 いや実際にはまだ憧れているという気持ちがない訳じゃない。だけど気持ちは変わって行くもの。憧れていた人はもう護りたい人になっている。

 その下条先輩《女性》は俺の恋人になったのだから。

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