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第464話

作者: 雲間探
玲奈が会社から出て、青木家に戻った時、茜はもう居なかった。

智昭と一緒に過ごすために帰ったようだ。

藤田おばあさんの状況が心配で、玲奈は安心できず、その後の数日間も毎日の朝、病院に見舞いに行った。

病院に行く時、たまに智昭がいて、たまに美穂と麗美がいた。

美穂は息子の嫁としての玲奈が好きではなかったが、彼女が藤田おばあさんの見舞いに来ると、美穂は普通に礼儀正しく感謝の意を表した。

麗美も玲奈が好きではなかったが、智昭と玲奈が本当に離婚する準備をしていて、これ以上何を言っても意味がないと思い、最近玲奈に会っても嫌なことは言わなかった。

この日、玲奈は藤田おばあさんを見舞いに、朝病院に行った時、麗美、智昭、悠真の三姉弟と美穂は全員いた。

玲奈が藤田おばあさんの状況を見て、帰ろうとした時、智昭は立ち上がって言った。「送る」

「結構よ」断った後、玲奈は振り返らずに去った。

智昭は一瞬固まったが、それ以上何も言わず引き下がった。

麗美は最近地方に出張していて、今回の老夫人の件までのかなり長い間、玲奈に会っていなかった。

玲奈が振り返らずに去り、智昭に対して前のように未練のある様子が全く見えないから、麗美は振り返って言った。「どうやら、玲奈は本当にあなたを諦めたようだね」

智昭は笑ったが、口を開く前にスマホが鳴った。

その頃。

玲奈は病院を出た後、そのまま藤田グループに向かった。

昼近くになり、玲奈と藤田グループのスタッフは外で食事をとる準備をした。

エレベーターが一階に着いた時、ちょうどエレベーターに向かって歩いてくる優里に会った。

優里が藤田グループに来る回数は頻繁ではないが、合計では少なくもなかった。藤田グループでは彼女を知っている人がかなりいるのだ。

彼女が智昭の恋人であることもほぼ皆知っていた。

優里を見かけると、智昭の恋人という立場から、皆は礼儀正しく挨拶した。「大森さん」

優里は玲奈に会うとは思っていなかった。

玲奈を見かけた時、彼女は無意識に足を止め、その後バッグを握りしめて視線をそらした。

皆が熱心に挨拶するのを聞き、彼女は淡く笑って礼儀正しく頷くと、玲奈たちとすれ違ってエレベーターに入った。

しばらくして、彼女は最上階に着いた。

慎也と和真は彼女を見ると、丁寧に挨拶した。「大森さん」

優里は微笑みながら会釈を返した。

智昭のオフィスに着くと、優里はノックして
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コメント (154)
goodnovel comment avatar
シマエナガ
皆様コメントありがとうございます。 藤田家の女性陣強すぎますよね。 きっと、誰のことも智昭の妻だと認めないんでしょうね。 (義母も義姉も夫婦仲悪そうだしなぁ) 玲奈の従順な感じが嫌いだったなら、玲奈の実力が発揮され、智昭と離婚できたら逆に気に入られたりして笑。 何となく、玲奈の実力を知って媚びるタイプには見えないので。 藤田家の内情も、玲奈の立場が隠され続けてきた背景も早く知れるといいのですが。
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山本山
もう、うろ覚えなんですがね 玲奈が言い返したり、無視したりする時も笑ってた様な。若干自分の妄想と混ざってる気がしてますが(笑)
goodnovel comment avatar
ゆーい
MMM さま。 みんなコメントの勢い凄かったから、コメントだけはそのままにして欲しかったです(笑)
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