愛を見失った第三側妃の憂鬱

愛を見失った第三側妃の憂鬱

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
Oleh:  月山 歩Tamat
Bahasa: Japanese
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第三側妃のマリアナは王との間に子を授かり懐妊中である。私だけを愛すると言っていたけれど、懐妊がわかると王は一切寝室を訪れなくなってしまった。代わりに他の二人の妃のところに行っているそうだ。世継ぎにすら興味を示さないなんて。もう私への愛などどこにもないのね。

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Bab 1

1.見向きもされない私

「綾瀬様、この婚姻届受理証明書は、偽物でございます」

綾瀬清華(あやせ きよか)は、フロント係が差し出した婚姻届受理証明書を突き返されるのを見た。態度は依然として恭しいものの、その顔にはすでに嘲笑の色が浮かんでいる。

彼女は可笑しそうにそれを受け取る。「どうして私が偽の証明書であなたたちを騙す必要があるっていうの?」

「さあ。当レストランが打ち出しました結婚記念日の割引プランがお目当てだったのでしょうか」フロント係はそう言って唇を歪めた。

清華は言葉を失う。

割引プランなんて、自分は全く知らなかった。

自分と高遠宗司(たかとお そうじ)の結婚三周年記念にこのレストランを選んだのは、ここのガーデンレストランが気に入っていたからというだけだ。

「根拠もなく私の婚姻届を偽物だなんて言わないで。あなたを訴えることもできるのよ」清華は少し態度を硬化させた。

しかしフロント係はその言葉を聞いて、まるで冗談でも聞いたかのように、呆れたように首を横に振った。

フロント係のその態度に、清華は眉をひそめる。「どうしてそんなに確信を持てるの?」

フロント係は俯いてキーボードを数回叩き、それからモニターの画面を清華に向けた。

「先ほど、あなた様のご主人の情報を入力しましたところ、システムにご主人の情報がすでに登録されておりました」

「だから?」

「彼も、当レストランの結婚記念日プランをご予約されています」

その言葉を聞いて、清華は少し驚喜した。「彼も予約を?」

フロント係は、まるで馬鹿を見るような目で清華を見た。「高遠様は確かにご予約されています。ですが、あなた様とは関係ございません」

「どういう意味?」

「つまり、高遠様の奥様は別の方。あなた様ではない、ということでございます」

清華は呆れるやら可笑しいやらで、もう一度確認しようと身を乗り出した。だがその時、彼女は「高遠夫人」の欄に表示されている名前を見てしまう。

白石若菜(しらいし わかな)。

自分の一番の親友、白石若菜。

こ、これは一体どういうことだ?

「それに、高遠様と奥様はただいま屋上のガーデンにいらっしゃいます。結婚三周年をお祝いしている最中でございます……」

フロント係が言い終わる前に、清華はすでに階上へと駆け出していた。

自分の夫と、一番の親友が、結婚三周年を祝っている?

きっと何かの間違いだ。絶対に!

だが屋上へ駆け上がり、抱き合う二人を一目見て、彼女はぴたりと足を止めた。

長身の男はスーツに蝶ネクタイ姿で、落ち着きがあり格好いい。女は赤いイブニングドレスを纏い、可憐で愛らしい。二人は情熱的に見つめ合っている。

背後には大きなスクリーンがあり、音楽が流れ出すと、そこに数文字が浮かび上がった。

『メモリー・オルゴール』。

続いて写真が再生され始めた。最初の一枚は盗撮のアングルだ。若菜がスマホを掲げ、恥ずかしそうな顔で遠くにいる宗司と同じフレームに収まっている。

その後、二人は知り合い、一緒に撮った写真では少しぎこちない。

さらにその後、一緒にディナーをする機会があり、二人ともとても楽しそうだ。

宗司の車の中の写真もある。

若菜は、清華がずっと自分だけのものだと思っていた助手席に座っている。

それから二人は一緒に出張し、旅行に行き、さらには若菜の実家にまで帰省している。

宗司の妻として、そして若菜の一番の親友として、清華はこれらのことを何一つ知らなかった。

二人は夕日の中でキスし、ベッドの上で見つめ合って微笑み、さらには事後の写真まであった。若菜が陶然とした表情で宗司の腕の中に横たわり、二人とも何も身に着けていない……

そして最後の一枚。宗司が若菜の指にダイヤモンドの指輪をはめている。

その映像と共に、男もテーブルの上の大きな薔薇の花束を手に取り、女の前で片膝をついた。

「若菜、今夜のお前、すごく綺麗だ!」

女は薔薇の花束を受け取ると、立ち上がった男の胸に飛び込み、仰け反って彼の顎にキスした。

宗司は優しく若菜の頭を撫で、その目は愛しさに満ちている。

清華はじっとその二人を見つめる。もしかしたら、ただ似ている他人だけかもしれない。そうではないかもしれない。だが……

自分の目は節穴ではない!

遠くない場所にいる二人は、まさしく宗司と若菜だ。一人は自分が心から愛する夫、もう一人は自分が最も信頼する親友!

清華は無理やり自分を冷静させ、それから廊下に出て電話をかけた。

ほどなくして、相手から電話が折り返しかかってきた。

「綾瀬さん、調べた結果、高遠さんは確かに三年前の六月六日に結婚している」

六月六日?

でも、自分と宗司が籍を入れたのは六月十六日だ。

「じゃあ、配偶者の欄は?」

「白石若菜」

清華は喉が締め付けられるようだった。「あ、あなた、見間違えじゃないの?」

「見間違いわけがない」

清華の心は無残に引き裂かれ、砕け散った。

つまり、夫は自分の夫ではなく、自分の「一番の」親友の夫だった……

突然、ヴァイオリンの音が響き、清華は鈍い動きで外に視線を向けた。

星空、花々、そしてヴァイオリンの生演奏。宗司が若菜の手を取り、ロマンチックな音楽に合わせて、二人は優雅に踊り始める。

大きなスクリーンには、また別の写真が映し出された。クルーザーの上で撮ったものだ。

この写真、清華も持っている。ただし、それは彼ら三人の写真だったが、彼女の部分は切り取られていた。

はっ、しかも、その旅行を計画したのは自分自身だ……

なんてことだ!

怒りが清華を飲み込もうとしていた。彼女は拳を固く握りしめ、大股で前に進み出る。

あの二人を問い詰めなければ。なぜ自分にこんな仕打ちをしたのか、二人に言わせなければならない!

その時、若菜が突然バッグから何かを取り出し、宗司の目の前でひらひらと振った。

宗司はぱっと目を見開き、慌ててそれを受け取ってまじまじと見つめ、そして狂喜の色を浮かべた。

清華は足を止めた。若菜の手にあるのは妊娠検査薬だ。彼女も何度か使ったことがあるが、いつも失望に終わっていた。

「俺、父親になるぞ!父親になるんだ!」

いつもは落ち着いている宗司が興奮して大声で叫び、この吉報を全世界に知らせたいとでもいうようだ。

そして清華は、自分が騙される理由が分かってしまった気がした……

二時間後、清華は車で宗司たちの後を追い、高遠家まで来ていた。

若菜が車から降りるとすぐ、宗司の母、高遠慶子(たかとお けいこ)が家から出迎えてきた。

「若菜、私のかわいいお嫁さん。さっき宗司からあなたが妊娠したって電話があったのよ。まあ、なんておめでたいこと!あの時、私が宗司に綾瀬清華との結婚を反対したのはね、彼女が交通事故に遭って、子宮に傷を負い、子供が産めない体だったからなのよ!」

若菜は慶子の手を握る。「私、辛くなんてありませんよ」

「いい子だわ。お義母さん、あなたのそういう物分かりのいいところ、一番好きよ」

いつもは自分に冷たい言葉ばかり浴びせていた義母が、今は満面の愛情で若菜の手を握り、「いいお嫁さん」と呼びながら、彼女を高遠家へと招き入れているのを、清華はただ見つめていた。

やはり、自分が妊娠しにくい体だから、高遠家は自分を疎んだのだ。

だが、自分が重傷を負ったのは、他でもない宗司を助けたからなのに!

高遠家は恩知らずという汚名を着るのを嫌がり、自分に偽の婚姻届受理証明書を渡した……

三年間、彼らは自分を馬鹿扱いして、騙し続けてきたのだ!

その時、清華のスマホが鳴った。相手は、彼女が狂人だと思っていた人物からだった。

清華は力強く深呼吸をした。

「あなたは、私と宗司の結婚が偽物だって、とっくに知っていたのですか?」

金森家(かなもりけ)は雲上市(くもかみし)で最も名高い名門一族であり、彼女に電話をかけてきたのは、その金森家のトップ、金森の当主だった。

以前、天城(あまぎ)グループとの提携があったため、彼女は幸運にもこの金森の当主と一度会ったことがあった。

思いがけず、当主が彼女に会ったのは提携のためではなく、自分の息子と結婚してほしいという話のためだった。

「綾瀬さん、お前が俺の息子に嫁いでくれて、さらに金森家に孫を産んでくれさえすれば、金森家の全財産は将来、すべてお前のものだ!」

初めてその話を聞いた時、彼女は本気で当主が耄碌したのだと思った。

夫のいる身である自分が、どうして彼の息子に嫁ぐというのか。馬鹿げているにもほどがある。

だが今思えば、恐らく当主はこの提案をする前に自分のことを調査し、自分が騙されていることを知っていたのだろう。

「綾瀬さん、この真実がお前を傷つけたのなら申し訳ない。だが、悪意ある欺瞞と残酷な真実、その二択なら、お前は必ず後者を選ぶと俺は思った」

「私を調査したなら知っているはずです。私は交通事故で、妊娠しにくい体ですって」

「俺は一人の名医を知っている。彼女は以前お前を診察し、お前を妊娠させる自信があると言った。俺は彼女を信じている」

清華は当主の言う名医が誰なのか、いつ自分を診察したのか、全く心当たりがなかった。だが、この一件を経て、自分は当主の能力を微塵も疑わなかった。

清華はもう一度、高遠家を見た。そこは煌々と明かりが灯り、かつては彼女が自分の家だと思っていた場所だ。

だが今は……

「いいでしょう。あなたの息子さんと結婚することを承知しました」

「素晴らしい!」

「ですが、盛大な結婚式が必要です。それも、至急でお願いします!」

「もちろんだとも。俺たち金森家が嫁を迎えるんだ。当然、街全体に知らせるほど盛大にやるさ!」

結婚式には準備の時間が必要なため、日取りは一ヶ月後と決まった。
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Molay
Molay
いい話でした。読みやすいです。
2025-02-14 13:56:00
1
0
さくら さくら
さくら さくら
読み始めてすぐ何をしようとしているかわかったけど、結婚する前に片付けておくべきだったなと思う。
2025-07-02 13:15:47
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たらぎん
たらぎん
良き。短くてわかりやすいし、さっくり読めます。
2025-12-08 15:18:19
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8 Bab
1.見向きもされない私
 スタンレー王国のフレデリク王には現在三人の側妃がいる。 いずれも政治的な意味合いで迎えられ、周辺諸国との友好関係を築くための役割を果たしている。 その中の第三側妃マリアナは、今まさに懐妊したばかりだった。 まだ、初期の段階だから、周囲へは伏せているけれど、フレデリク様がこの知らせを聞いて喜んでくれることを期待していた。「フレデリク王はきっと喜んでくれますよ。何しろ初めての御子をマリアナ様は、懐妊したのですから。」「そうよね。何てフレデリク様は言ってくれるかしら?」「それは、いらしてからのお楽しみですね。」 私は侍女のメイベルと一緒に、フレデリク様が、私の寝室に来てくれる日を心待ちにしていた。 けれども、侍医からフレデリク様へ、もう懐妊の知らせが届いているはずなのに、私にその事実を告げられたあの日から、彼は一度も寝室に足を運んでくれなくなった。 まだ、懐妊していることを、公に発表をする時期ではないけれど、彼と一緒にこの喜びを分かち合えると思っていた。「おかしいわ。フレデリク様は、私のところにいらっしゃれないほど、お忙しいのかしら?」「…マリアナ様。このことはいずれ耳に入ってしまうと思うので、お伝えします。」「うん。」 メイベルは意を決したように、顔を固くし話し始める。「フレデリク王は、数日おきにアデラ妃とラモーナ妃の寝室を訪れているそうです。だから、忙し過ぎてこちらに来れないわけではないと思われます。」「えっ、そんな…。」 私は驚きとともに、深い悲しみに包まれ、言葉を失う。 私がフレデリク様の側妃に迎えられてから、彼が他の妃たちのもとに行くことは一度もなかった。 それが、私が懐妊した途端に、フレデリク様は二人のところに通い始めているなんて。 私が懐妊したことで、フレデリク様にとって私は、もうどうでもいい存在になったのだろうか? それとも、実は私を世継ぎ欲しさだけで、求めていたの? 幸せの絶頂から、突然、深い絶望の底につき落とされた気がした。 私はなんて愚かだったんだろう…。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー二年前、スタンレー王国からフレデリク王が、視察のためにコーネル王国に来ると聞いて、王宮は大騒ぎになっていた。 何しろ、スタンレー王国は広大な上に栄えていて、マリアナのいるコーネル王国など、比べ物になら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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2.宴
「マリアナ様、今日は南の王国から、遊学中のロアルド王子が立ち寄るそうで、後ほど歓迎の晩餐会が開かれるそうです。気分転換に出席されては、いかがですか?マリアナ様は、最近ではこの居室に閉じこもってばかりですし。それに、晩餐会では、フレデリク王ともお話できるかもしれませんよ。」 メイベルは、塞ぎ気味の私を心配して、何とか気落ちしている状態から、回復させようと提案してくれている。「そうなの?最近は体調が思わしくないし、気分が沈んでいて、ずっと部屋に閉じこもってしまっていたわね。晩餐会には参加しようかしら。」「はい、それがよろしいかと思います。出席の返事をしておきますね。」「よろしくね。」 私が晩餐会に出ると返事をしたことで、メイベルは早速着ていくドレスなどを準備し始める。 私はフレデリク様が寝室に来てくださらないので、彼と顔を合わせることなく、いくにちも過ごして来た。 大きな王国を治めるフレデリク様は、日々忙しく、昼間は側近や大臣に囲まれているため、私が割り込んで話すことはできないだろうと思い、夜、寝室で彼を待つ日々が続いていたから。 彼が寝室に来てくれなければ、私達にお話する時間などない。 私はフレデリク様と話せる機会があるかもと期待して、晩餐会に出席した。「あら、最近見かけない方がいらしたわね。」 第一側妃のアデラ妃が、会場に足を運んだ私に声をかける。その声に、歓談中の皆の視線が私に集まる。「皆様、ご機嫌よう。」 私は注目されても、何食わぬ顔で部屋を見渡す。フレデリク様と目を合わせようとするが、彼だけはこちらを見てくれはしない。 彼と話したくて、怠い身体を奮い立たせ、ドレスを着たり、髪を整えてもらったりしてここまで来たのに、彼に見てもらえなければ、私の努力は意味を持たない。 今日の晩餐会は、大きなテーブルを皆で囲むスタイルのお食事のようで、案内されたのは、フレデリク様から最も遠い席だった。 フレデリク様の両脇には、先に側妃になったアデラ妃とラモーナ妃がすでに着席しており、その周りに大臣達も並んでいる。 私が彼と話そうとしても、数人越しに大声を出さなければならず、これでは彼と会話ができないと、諦めざるを得ない。 それでも私は妃の一人であるから、遊学中のロアルド王子の隣に座ることになった。「マリアナ妃様、初めまして。今宵、一緒にお食
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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3.アデラ妃
「あら、ご機嫌よう。」 夕暮れ時、日課の散歩中に庭園に差し掛かると、アデラ妃が待ち伏せするように、侍女達を引き連れて立っていた。 アデラ妃は背が高く、吊り目の女性で、原色のドレスを好み、派手な印象をあたえる方である。「こんにちは、アデラ妃様。」「最近、フレデリク様が夜おいでになって、私をいつまでも寝させてくれないの。お肌に良くなくて、困ったものだわ。」 アデラ妃は、自慢気に話す。 そのことを伝えたくて、わざわざ私を待ち伏せしたのね。「そうですか?それは大変ですね。」「ちょっと、マリアナ妃、あなた最近ではフレデリク様に全く構われなくなったそうね。一体何をやらかしたの?」「さぁ、私にもよくわかりません。むしろ私の方が聞きたいくらいです。」「ほんの少し前までは、あちこちでこれ見よがしに仲良くして、見せつけていたじゃない。これで少しは、私の気持ちがわかったかしら?」「アデラ妃様は政略結婚だから、私とフレデリク様が仲良くしていても気になさらないと思っておりました。もし、私の行動で気を悪くされていたなら、申し訳ありません。」「ふん、今更なんなのよ。同じ側妃と言う立場で、私がそれを見て、なんとも思わないと本当に思っていたの?鈍感女。」「すみません、本当にそうですね。」 私はようやく、私に対するアデラ妃の思いを理解した。 フレデリク様は「二人の妃は共に政略結婚だから、それぞれ好きなことをして過ごしており、私は全く気にすることはない。」と言っていた。 フレデリク様のおっしゃっていたこととは、どうやら違うのね。 だとしたら、ラモーナ妃もフレデリク様を慕い、私に嫌悪感を抱いているのだろうか?「伺いたいのですが、ラモーナ妃様も同じようにお考えだったのでしょうか?」「ラモーナ妃のことなんて、知らないわ。」 そう言って、私にするのと同じぐらい眉間に皺を寄せ、腕を組んで私を見下ろす。「ラモーナ妃と仲が良いとばかり思っていたのですが。」「そんなわけないでしょ。私達はフレデリク様を巡るライバルなのよ。表面上、仕方なく話しているだけだわ。」「そうですか。」 私は結婚してから、一年近くここで過ごしているのに、アデラ妃の本音や妃同士の関係について、一切気がつかなかった。 本当に私はフレデリク様と結婚して、浮かれていただけの、どうしようもない女なのだ。「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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4.溢れる贈り物
「マリアナ様、このクローゼットがいっぱいで、扉が閉まりません。収まりきらないドレスを、少し処分してもいいですか?」 私の居室で、溢れかえるドレスや宝石類などを眺めながら、困り顔のメイベルに提案されている。「そうね、でも、せったくいただいたのに、処分してしまうのはもったいないわ。せめて、教会などに寄付したらどうかしら?」「マリアナ様、素晴らしいお考えですが、寄付されたとしても、マリアナ様のドレスを着て行くほどの場所もないし、もらった方が持て余してしまうかと思います。 リメイクするなら、まだ何とか活用できるかもしれませんが。」「そうなのね。寄付するのも、うまくいかないものね。そもそもどうして、私のドレスが急に増えたのかしら?」 今までドレスはきちんとクローゼットに収まっていたはずなのに。「実は、お伝えしていませんでしたが、ドレスが増えたのではなく、減らなくなったのです。以前は洗濯に出すと、ほぼ綺麗な形では戻って来なかったのに、今では戻ってきています。」「なるほど、そうだったのね。」「誰の仕業かわかりませんが、ズタボロにされたドレスをあまりマリアナ様に見せないようにしていましたから、実感がなかったかと思いますが。」 メイベルは洗濯に出したのに、何故か破れたり、汚れて返ってくるドレスを、マリアナの目に入る前に処分していた。 それほどまでに、私はこの王宮の中で嫌われていたのね。そのことも今まで全然気がつかなかった。 私はここの侍女や使用人達とほとんど話したことはないけれど、笑みを交わして挨拶していたから、これほど嫌われているとは思っていなかった。「そうだったの?メイベルに気を使わせてしまったわ。」「私はいいんです。」「それにしても、いつから嫌がらせが終わったの?」「これもまた、お伝え辛いのですが、フレデリク王がこちらにいらっしゃらなくなってからです。」「なるほど。もう彼が私のところに来ないから、私に対する妬みがなくなったということなのね。」「はい、おそらく。」「嫌がらせしていた方の見当はついているの?」「直接手を下しているのは、侍女達ですが、そこに妃様方の指示があったかどうかまではわかりません。」「なるほどね。どちらにせよ、もう嫌がらせを受けなくなったのは良かったわ。ただやっぱり、多すぎるドレスは贅沢すぎるから、クローゼットにも入り
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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5.ラモーナ妃
「あら、やだ、フレデリク様に見捨てられると、急に太るんですね。私も気をつけようっと。」 食堂で一人で食事をしていると、第二妃のラモーナ妃が現れ、私の食事を見て体型を侮辱する。 ラモーナ妃に話しかけられたのも、これまた初めてだ。 ラモーナ妃はニコニコと笑っており、一見人の良さそうな人に思える。 けれども、彼女の言葉は、棘が酷いとメイベルに教えられていた。「お腹が空いているだけです。」 実際、最近は吐き気が治ったせいか、食欲が増している。 二人分だから、普通のことなのかもしれないけれど、食堂で食べる方が料理人が私の食欲に合わせて、量を調節してくれるので、部屋で食べるより満足感を得られる。「あなたが、豚のようになってしまえば、フレデリク様を取り戻せないかもですよ~。」「何故、ラモーナ妃が私を心配してくれるのですか?」「心配しているのではないわ。バカにしているつもりです。」 ラモーナ妃は、はっきりと酷いことを言うが、笑みは崩れない。「そうですか?ラモーナ妃も私が嫌いでしたか?」「そうですね~、後から来て、調子に乗っているところとか気にいらないですね。」「私が来る以前は、フレデリク様はどうしていたのですか?今のように、二人の寝室を行ったり来たりしていたのですか?」「はい、そうです。ある意味、それはそれで公平な方だと思っていたんですよ。ふふ。」「では、私が二人のバランスを崩してしまったということですね。私が来てからは、フレデリク様はラモーナ妃の寝室に行っていなかったですよね?」「そうなんです。あなたのせいで、寂しかったです。」「ならばフレデリク様を横取りしたみたいな形になってすみません。私、政略結婚だから、ラモーナ妃は気にしないと聞いていたんです。 あなたは、私がこちらに来たとしても、フレデリク様との夜を三人で分けるべきと考えていたのですね。」「そうなります。」「私はそれをとても受け入れられません。私は私だけを愛してくれる人でなければ、一緒にはいられない。だから、私はその輪には一生入らないと思います。」「え~、それならそれでいいですけど。生意気なやつってことで。好きなだけ食べて豚になればいいで~す。」 この方、なんだか笑顔と言葉が乖離していて怖い。ある意味、アデラ妃より苦手かもしれない。 でも、もう私にはフレデリク様との未来な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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6.コーネル王国へ
「マリアナ様、至急、荷物をまとめよ。とのことです。」「えっ、何ですって?」 朝ゆっくりと寝ていたら、メイベルによって起こされた。「裏門に馬車が待っているから、誰にも見つからないように、王宮を離れ、コーネル王国に向かうように。とのことです。」「えっ、何故?」「理由はわかりません。でも、フレデリク王からの指示だそうです。急ぎましょう。」 私はメイベルに連れられて、隠すように置かれていた馬車に乗り、王宮を後にした。 急いでいたため、荷物は最低限だし、私は懐妊中だから、馬車の歩みは非常にゆっくりだ。 前後左右に馬に騎乗した護衛が、五十人ぐらいも馬車を取り囲んでいる。 この大規模な護衛は一体どうして? 馬車の前で私を待っていてくれて、その後一緒に馬車に乗り、私達を案内してくれた男性がいる。 今までフレデリク様がお忍びのように昼寝中にやって来た時、見張りをしてくれていたゲレオンと言う男だった。「ゲレオン卿、どうしてこんなにも護衛がつくのかしら?まるで軍隊の移動だわ。」「フレデリク王が、マリアナ妃をお守りしたいと思ったかったからです。」「そうなの?また、フレデリク様はわけのわからないことを始めたのね。」「わけのわからない?」「そうでしょ。これほどの数をつけなくても、もう私は無理にでも王宮に戻ろうとしないから、大丈夫なのに。私をコーネル王国に送り返しているんだから、離縁するのでしょ?」「まさか、フレデリク王がそんなことをするはずがないじゃないですか。なるほど、彼の嘆きもわかる気がします。」「えっ、あなたまでフレデリク様の味方なの?」「僕はフレデリク王の忠実な家臣です。」「そうよね。」 そう言って、今までの柔和な顔つきから、一瞬で抜け目のない男性の顔へと変化させたゲレオン卿を見る。 もし、私がそれほど大事だと言うのならば、彼はフレデリク様にとってとても信頼のおける方なのだろう。 でなければ、フレデリク様が私にこれほどの護衛をつけてまで、彼に託したりはしない。「僕の立場では何も言えませんが、フレデリク王はあなたを大切に思っていると、僕は思います。この一隊を見てください。この隊はすべてあなた一人を守るためにいます。 決してあなたが王宮に戻ろうとするのを、阻止するためではないのです。阻止するためなら、こんなに隊が必要なわけがありません。な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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7.出産
 マリアナがコーネル王国に戻ってから、しばらくの月日が流れていた。 スタンレー王国の護衛達の仮設宿舎もでき、元々穏やかなコーネル王国では、私を狙う者などいるはずもなく、ただ静かに時が流れている。 私はお父様の執務室で、お父様と仕事をしているゲレオン卿を訪ねた。「ゲレオン卿、少しお時間いただいてもよろしいかしら?フレデリク様からの連絡がまだ来ていないのでしょう? ここの国は安全だから、私を狙おうとする者など現れないわ。だから、せめて少しでも護衛達をスタンレー王国に帰らせてあげることはできないかしら?もう随分長いことこちらにいるし、家族が恋しい者もいるかもしれないわ。」「そうですね。そろそろ、交代要員を手配しますね。」「ちょっと待って。そこまでせずに、護衛を減らすだけでいいと思うの。」「それは絶対に無理です。マリアナ妃に何かあってからでは遅いのです。」 「私は大丈夫だと思うのだけど。」「あらゆる想定を考えてのこの人数です。ですから、もうこの話は終わりです。フレデリク王の指示を違えることはありません。」「わかったわ。」 私はゲレオン卿を説得するのを諦めた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそんなある日、もう臨月に差し掛かった私は、ついに陣痛が始まった。 痛むお腹を抱え、もういよいよ子が産まれそうになった時に、何故かフレデリク様の姿が頭に浮かび、彼にそばにいて欲しいと願った。 彼は私を捨て、もしかしたら、命を落とすかもしれないこんな時に、そばにいてくれない人なのに。 この胸が押しつぶされそうな寂しさが湧き上がるのは、何故なのだろう? もちろん、彼がそばにいたとしても、出産時は男性は扉の向こうで待つことになる。 だから、やっぱり一人なのだけど。 それでも、もしもこのまま命を落とすとしたら、せめて最後にフレデリク様の笑顔を見たいと思うのだ。 私を捨て、妃二人に囲まれている人なのに、やっぱり私はフレデリク様が好きなのね。 普段はあんな男なんていない方がいいと、理性が私の心を守ってくれているのに、痛みと不安で抑えていた感情が露わになるのを止められない。 この事実がつらくて、涙が溢れそうになる。 私は心の奥底では、フレデリク様が恋しい。 もう諦めるべきなのに、種火のように燻る想いが消えないのだ。 どうして、この想いはなくならな
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8.スタンレー王国へ
 セレスの首が座る頃、フレデリク様が迎えに来た。 やっぱりスタンレー王国へ戻らないといけないのね、憂鬱だわ。「マリアナ、手を。」「ありがとうございます。」 フレデリク様は上機嫌で、馬車にエスコートしてくれた。 フレデリク様と結婚しようと、ここからスタンレー王国へ旅立ったのが、遠い昔のように感じる。 あの頃は、愛に包まれていて、フレデリク様に大切にしてもらえると疑わなかった。 だから、心が弾んでいた。 でも今は、逆に不安が募るばかり。 なるべく、目立たないように、セレスと二人、王宮の片隅で静かに生きていこう。 そうすれば、二人の妃達から嫌がらせを受けずに済むかもしれない。 個性豊かなあの妃達と共に、フレデリク様に仕えるなんて、考えるだけ気が滅入る。「浮かない顔をしているな。」「…。」 もうスタンレー王国に戻りたくないと、皆の前で言って、ここでいらない怒りは買いたくない。 二人は静かに馬車に乗り込んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 二日後、馬車はスタンレー王国の王宮にたどり着いた。 王宮内に入ってみると、まだ新しい木の香りが漂い、以前住んでいたのとは異なる部屋の造りになっている。「おいで、ここがセレスの部屋だよ。そして向かえがマリアナの居室で、奥が寝室さ。」 フレデリク様に案内された部屋は、セレス用の子供部屋と、新しく作られた明るい私の部屋だ。「フレデリク様、お部屋を新しくしてくれたのですか?ありがとうございます。セレスの部屋まで。」「気分を一新しようと思ってね。マリアナの寝室からは、私達二人の寝室に繋がっているんだ。そして、その先に私の寝室がある。」「えっ。」 新しい部屋に喜んだ次の瞬間、私の笑顔は固まった。 私は今までフレデリク様の寝室には、行ったことがない。 いつも、彼が私の寝室に来ていたのだ。 私とフレデリク様の寝室がこんなに近ければ、彼が二人の妃の寝室に行く時は、物音で気づいてしまうかもしれない。 今ちょうど二人の元へ行っていると思いながら、夜を一人で過ごさないといけないの? どうして、こんなにもフレデリク様は残酷になれるの?そんなの女として辛すぎる。「…どうして私達の寝室をこんなに近くにしたんですか?」「むしろ今までが距離があり過ぎたんだ。これからは、もっと自由に行き来できるよう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-01-24
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