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第173話

Author: 冷凍梨
「部外者は立入禁止です」

「唐沢さんに一声お伝えいただけますか、私たちは――」

警備員は機械のように同じ言葉を繰り返した。「部外者は立入禁止です」

その返答が先ほどよりも鋭く響き、屋内で跪いていた男の肩が僅かに動いた。

私たちに気づいた良辰の虚ろな瞳に、一瞬だけ殺意が閃いた。そして、彼はゆっくりと立ち上がり、私たちの方へと歩み寄った。

だが、二歩ほど手前の、日本刀の掛け台のところで立ち止まった。

「よくも来られたな」

掠れた、陰鬱な声。その声音に、胸の奥がひやりと震えた。

――殺気を帯びている。

浩賢もそれを感じ取ったのだろう。すぐに一歩前へ出て、説明した。「唐沢さん、まずは落ち着いてください。こんなことになって、俺たちも本当に残念に思っています。ですが、関係部署はすでに調査を――」

「調査?それで何になる?」良辰は浩賢の言葉を荒々しく遮った。「凛はもう戻ってこない!お前たちみたいなヤブ医者のせいでな!」

「シャッ」という鋭い音が響いた。私と浩賢が息をのむ間もなく、良辰は前の刀を抜き放ち、真っ直ぐに突き出してきた。

私は思わず一歩踏み出し、浩賢の前に立った。煌めく刃が喉元に迫る。距離、わずか半寸。

呼吸が止まり、心臓が喉まで跳ね上がった。

良辰の声が冷たく突き刺さった。「無断でここに踏み込んだんだ、強盗罪で通報しても構わないんだぞ」

刃先がかすかに揺れ、あと一歩でも近づけば、私の喉を裂くだろう。

「……唐沢さんはそんなこと、しないはずです」私は必死に落ち着きを装い、遺影に目をやりながら言った。「唐沢さんは奥様を心から愛していた。彼女を悲しませるようなことは、しないでしょう?」

凛の話を聞いた瞬間、良辰の険しい表情がわずかに緩んだ。私はポケットから一枚の紙を取り出し、静かに手を上げた。「唐沢さん。病院で話したこと、私はでたらめを言ったわけじゃありません」

良辰は私を不思議そうに見つめ、視線を私の手にある紙切れに移して尋ねた。「それは……何だ?」

「奥様の病室のゴミ箱から拾った紙です」私は正直に言った。「唐沢さんの好物や、アレルゲンが書かれていました。おそらく、奥様の手書きです」

その話を聞いて、良辰の目に迷いが浮かんだ。信じたいが、信じきれない表情。

「ピーナッツ」私は紙を差し出した。「唐沢さんのアレルゲンです」

彼は少し驚
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