ANMELDEN皇太子の夫と、親友に裏切られ、娼婦に堕とされた私を優しく抱きしめるのは… 訳あって、手袋を外せないはずの最強の魔術師団長だった。 ……そんな彼がついに!私、今夜こそ? 傷ついた彼女が手に入れる、極上の愛。 どんでん返しの溺愛ラブストーリー。 ※裏切られた孤高の元皇太子妃×女嫌いの魔術師団長
Mehr anzeigenそれなのに…… 「え?まだあの消えたお二人を探してるの? エドウィン様。 きっと大丈夫ですよ。怖くなって逃げ出したに決まっています。 そんなことまでいちいち気にしていたら、私たちの生まれてくる子供の世話なんて、できませんよ?」 すっかりロベリアの部屋となってしまった、皇太子妃宮。 そこを訪れた私は、いつものようにロベリアの膝に横たわり、彼女に髪を撫でてもらう。 すでに彼女の腹は膨らみ始めている。 あの二人の事を除けば、全てうまくいっている。 とは言え、リーリエを追い出した時期とかぶるので、周辺に悟られないよう気をつけないと。 「そうかな。私があまりに神経質になりすぎなのか?」 「リーリエ様だって大人しく娼館にいるんですよね?だったら何も問題ないではありませんか。怖がりなんですから、もうっ。」 えいっ、とロベリアに悪戯っぽく頬をつねられるが、なぜだかうまく笑えない。 そうだ。ロベリアはアイザック・バロンズが本当は私の兄だという事を知らないし、私がかつて彼の記憶を塗り替えさせて、リーリエを略奪した、という事実も知らない。 知らせるつもりもないが。 それにしても、まさかリーリエと兄が接触していたとは。 どうやら兄さんはまだリーリエに真実を話してないようだったが…… いずれはバラしてしまう可能性もある。 あの時、窓のそばで横並びに立ち、笑っていた二人。 あれこそ美男美女。本当にお似合いで……。 「違う!一体私は何を。」 「エドウィン様?」 「あ、なんでもないよ、ロベリア。」 私は甘えるように彼女に抱きついた。彼女の桜色の横髪を掴み、その匂いを嗅いだ。 「はあ。安心する。」 ロベリアを抱きたい。 しかし、買収した医者に言われてしまったのだ。 妊娠中の情事は、頻繁にするのは避けるようと。 このなんとも言い難い不安を解消したいのに。 それには、頭が真っ白にな
たいして期待もせず、父は兄を死地へ送り出そうとしたのだろう。 しかも、兄に追い打ちをかけるような出来事が降りかかる。 なんと、リーリエが『兄』の記憶だけすっかり忘れてしまったのだ。 彼は見た事もない顔で泣いていたが、これはチャンスだと思った。 「兄さん。万が一リーリエが、兄さんにされた愚かな行為を思い出して傷つかないよう、記憶を変えてください。 魔力で、できるんでしょう?」 リーリエのためだと、私は全ての記憶を塗り替えるように兄に頼んだ。 そう、私は知っていた。 彼がどんな魔力を使い、一体どんなことができるのかを。 ずっと見ていたから。彼が妬ましかったから。 哀れな兄はその提案を受け入れた。 こうやって私は、リーリエが兄と培った記憶全てを塗り替えさせる事に成功した。 卑怯だと罵られようとかまわない。 リーリエが欲しかったんだから仕方ない。 彼女を愛していたから……。 「あの気持ち悪い子がいなくなって、安心したわね、エドウィン。」 「エドウィン。お前が皇太子だ。 期待しているぞ。」 父も母も、兄を追い出して満足気に笑っていた。 もちろん私も自然と笑顔が溢れてしまっていた。 リーリエだけでなく、帝国の皇太子の座まで手に入れたのだから。 「はい、その通りですね。」 この時に、私は分かったのだ。 彼らは『平凡』を愛しているのだと。 『非凡』な兄は父にその才能を妬まれた。 皇帝というものは、常に自分が一番でなければならない。息子にその地位を脅かされるのが、我慢ならない。 それは、母も同じ。皇帝に疎まれた皇子は可愛がる利点がない。可愛い我が子は、皇帝に愛されなければならない。 確かに兄は頭もよく賢かったが、不気味な魔力を持ち、皇帝に嫌われた彼を、彼女もまた愛せなかったのだろう。 彼らが私を選んだのは『平凡』だからという理
ロベリアと幸せを築くはずだったのに。 彼女との結婚が近づくにつれ、あることが私の頭を支配し続けた。 リーリエに姦通の罪を着せるため、嘘の証言をさせたあの下級騎士。 それに、リーリエを不妊にするためのワインを作っていた魔術師。 この二人が失踪した…… こんな偶然があるだろうか? カディス帝国の第二皇子として生まれた私は、とにかく父や母によく愛された。 「本当に若い頃の陛下にそっくり!」 「お前は自慢の息子だ。」 父も母も、何より平凡を愛する人達だった。優秀な兄よりも。 兄のフェリクス・カディスは常に冷静で頭も良かったが、不気味な魔力を持っていたために、母親に化け物扱いされていた。 「近寄らないで!行きましょう、エドウィン!」 母が兄を避け、私だけ可愛がるのも。 「不気味なやつだ。頭がいいのを自慢するな。」 冷たい父の眼差しも。 いつもそれを受けるのは兄で、私だけは何をしても愛されて、正直、気分は良かった。 兄はいつも一人寂しく夜を過ごしたが、何も言わずに耐えていた気がする。 やがてそんな彼が笑顔を見せるようになる。 皇室主催のパーティーの夜。気になって彼の跡をつけた。すると——— 世にも美しい少女が兄の前にいた。 見事な白銀の髪に、サファイアのように青い瞳。 華奢で色白。まるで妖精みたいだ。 私は一瞬でリーリエに目を奪われてしまう。 「好きだよ、リーリエ。 将来は必ず結婚しようね。」 しかも、あの兄がはにかみ笑いをし、甘いプロポーズまでしていたのだ。 「はい。私もフェリクス様が好きです。 ぜったいに結婚しましょう。」 彼女が花のような笑顔を浮かべれば、周囲が月光でキラキラと輝いて見える。 あの子、リーリエっていうんだ。 可愛い……でも、あの子、兄と結婚するのか。
ユディト達が私の肩を組み、ためらいもなく肯定する。 「確かに皇太子妃っていうのは驚いたけど、さっき私がした推理は、間違ってないんでしょ?」 「ええ。その通りよ。 私は彼に裏切られ、罪を着せられて、ここへ来たわ。」 ずっと誰かに話を聞いてもらいたかった。 「やっぱり!先に皇太子が浮気したのね! それに子供まで作っておいて、リリーに罪を着せたのね!本物の悪党じゃない!」 ずっと誰かに私は無実だと知って欲しかった。 「許せないな!そのクソ皇太子!死んでしまえ!」 「権力者にろくな奴はいないわね!」 「悔しかったね、リリー!でも私たちはちゃんと、あんたのことが分かってるから! あんたが本当に男を知らないってことも!」 ただ一人でもいいから、私を信じて欲しかった。 だから、これは……ご褒美なの? 皆一斉にエドウィン様の悪口をいうので、面白くなり、思わず口元に手を当てて微笑した。 「ありがとう。本当に……っ、ありがとう。」 どれだけ感謝してもしたりない。また思いもかけずに涙が溢れる。 人の優しさに触れて。 忘れていた、誰かの温かさ。 少しだけ、すっかり折れていた自尊心を取り戻せた気がした。 きっと私は、何もできないわけじゃない。 諦めなければ大切な人達を守ることも、また誰かを信じたり、愛したりすることもできるのだ。 ………愛? え?私———まさか本当に、アイザック様を? 「さあ、みんな、主人が戻ってくる前に、焦げた床を片付けるよ! 分からないよう絨毯を敷いて、椅子とテーブルで隠そう!」 「了解!」 皆の息ピッタリの掛け声と笑い声が、娼館いっぱいに広がった。ふわふわと羽のように体が軽い。 私も箒を
戸惑う私にアイザック様はどこか可笑しそうに微笑された。 「さあ。リーリエ様。私と共にベッドへ。」 「なぜ私の名前を………」 先程男主人から私には「リリー」という商売名が与えられたばかりだというのに。 それに対してアイザック様は微笑されるのみ。 優しく誘われるように手を差し出され、ドキッと心臓が跳ねる。 何馬鹿な事を。エドウィン様に裏切られてもう男など懲りたはず。 単にこの人は商品である私を買い、欲の発散に抱くだけなのだから。
*** 「貴方の、1095日分を私が買いました。」 「え……………?」 この方は、今一体何と言ったの? 辺境にある娼館に送られてから私は、そこの男主人に色々と説明を受け、風呂に入り、薄い衣服を着用するようにと命令された。 まさにピンク色のシュミーズのような。 「いきなりだが、今夜客を取るからな。」 先に部屋で待機するようと、半ば背中を押される形で押し込まれた。 彼は私が元皇太子妃なのを知っているようだが扱いは雑だった。 狭くて薄
ロベリア!一体何を企んでるの? すぐに追い払おうとしたが、逆に腕を強く掴まれてしまう。 「ロベリ———」 「可哀想なリーリエ。 まさか娼館送りだなんて。 あんな所に送られて、本当に惨めね。 私…………ずっと貴方が嫌いだったの。 いつも偉そうに上から人に物を言ってくる貴方が。単に高貴な家に生まれたというだけで。 感謝してよね?皇太子妃の座は私が継いであ・げ・る。 貴方と違ってエドウィン様に愛されながら、彼の子をたくさん産んであげるから!ふふ!」 イタズラ好きな子供の様に、ロベリアは私の耳元で小さく囁いた。 ………………この女は悪魔だ。 親友だからと、ロベリアには二人き
*** 「皇太子殿下を裏切って、下級騎士と姦通したんですって。」 「まあ!なんて淫乱な。確かになんか冷たい方だとは思っていたよ! それにあの見た目だもの。白銀の髪に豊満な胸。あの妖艶な青い瞳なんて、いかにも浮気しそうよねえ。 元皇太子妃のリーリエ様って。」 あの忌まわしい事件から流れる様に時が過ぎ、今日私は裁判で決められた通り【娼館】に送られる。 「不貞を犯した皇族が罰で娼館送りになるのはまだマシな方だよ! 処刑じゃなかっただけでも良しとしないと」 「元皇太子妃がねえ。御愁傷様。」 気づいたら帝国中に私の悪い噂が広まっていた。 これはエドウィン様が意図的に流したものと思