An Eye for a Bullet

An Eye for a Bullet

last updateLast Updated : 2023-09-19
By:  Cetus AEOngoing
Language: English
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Synopsis

Raised from an infant in discipline, Reza Kelson has been trained to be a cold-blooded killer. Nothing has stopped him when he's been ordered to an assignment, and nothing probably will. An agent for a secret branch of government, he kills and incinerates anything with the discipline of a sharp knife. But even though he's the best at what he does, tables turn when the government dumps Reza from bureaucracy, albeit with a place to be hidden away in. Now Reza finds himself struggling to integrate into the sleepy town of Lonewood. Raised without any form of love or compassion, he naturally comes off as rude and abrasive, and therefore drawing attention. And with other dumped agents, with some bent on settling scores, the entire situation could not be more risible and outrageous. Not to mention the strange boy, Dane Rochelle, who seems strangely possessive of him, and with Reza balances the life he never should have had.

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Chapter 1

Preface

第520便が着陸した。これまで一度も迎えになんて来たことのない恋人、高城修司(たかしろ しゅうじ)が、空港で私・藤原夏希(ふじわら なつき)を待っていた。

彼は空輸で取り寄せたブルースローズの花束を抱え、ベルベットの箱の中ではダイヤの指輪がきらきらと輝いている。彼が膝をついた瞬間、周囲から信じられないというように息をのむ音が上がった。

付き合って十年。彼が私と結婚したいと言ったのは、これが初めてだった。

私は平静を装いながら、指輪をはめてもらい、震える声で言った。

「修司、私たち……」

けれど彼は、ふっと笑った。

そしてそばにいる誰かへ視線を向け、軽く眉を上げる。

「言っただろ。こいつなら絶対うなずくって。賭けは俺の勝ちだ。絵を寄こせ」

私はその場で固まった。

背後で、悪意のこもった笑い声がどっと起こる。

育ちのよさそうな若い男女の一団が、私の前までやって来た。

先頭にいたのは佐伯伊織(さえき いおり)だった。

修司の、かつての縁談相手。

彼女は涙が出るほど笑っていた。

「だから言ったでしょう?夏希がどうしてこんなに長くあなたのそばにいられるのか不思議だったけど、ここまで言いなりになる犬なら、私だって簡単には手放せないわ。

今回の喧嘩ではずいぶん意地を張ったそうじゃない。澄香邸を出ていったくせに、修司がちょっと手招きしただけで戻ってくるなんてね」

若い男のひとりが、手にしたカメラをほとんど私の顔に押しつけてきた。

「見ろよ。こいつ、本気にしてるぞ。感動して泣きそうじゃん」

「修司さん、これ絶対しがみついてくるって。責任取ってとか言い出すぞ、ははは!」

修司が横目でひと睨みすると、皆はようやく黙った。

彼は珍しく、事情を説明した。

「じいさんの傘寿の祝いに、ちょうどいい贈り物が見つからなかった。

伊織が先週、『青嶺図』を落札したばかりでな。知ってるだろ、じいさんはああいうものが好きだ。だから賭けをした。

お前が俺のプロポーズを受けたら、この絵は俺のものになる」

つまり、ただの賭けだったのだ。

指の付け根がじんじんと痺れていた。

少し大きいその指輪は、薬指に力を入れていなければ、今にも滑り落ちそうだった。

まるで、私と修司の関係そのものだ。

私は力を抜いた。

指輪は床に落ち、乾いた音を立てて、取り繕われた平穏を切り裂いた。

「次に落札できない絵があったら、私に言って。そのくらいのお金なら、私が出せるから。人をからかうために、こんな茶番をする必要はないわ」

手元の絵を弄んでいた修司が、ようやく動きを止めた。

明らかに不機嫌そうだった。

以前なら、彼が少し眉をひそめただけで、私はすぐ感情を引っ込めた。

ほどほどのところで折れて、下手に出た。

けれど今回は、譲らなかった。

重い沈黙の中、伊織が鼻で笑うように言った。

「冗談が通じないなら、そう言えばいいのに。まるで私が悪者みたいじゃない。ちょっとからかっただけで、そんなに大げさにする?

修司、行きましょう。レストラン、予約してあるんでしょう。食事に行くわよ。

みんな、何見てるの。夏希はどうせいつもみたいに自分からすり寄ってくるわ」

初めてそんなことを言われたとき、私はすっかり怯えてしまった。

クリームまみれになった顔で謝り、自分が大げさに受け止めすぎたのだと思った。

怒るべきではなかったのだ、と。

彼らは修司の友人で、誕生日だから私に冗談を言っただけなのだ、と。

たとえそのあと、髪にこびりついたアイシングがあまりにひどくて、仕方なく長い髪を切ることになったとしても。

一行が私のそばを通り過ぎていく。

私は身をかがめて荷物を持ち上げ、彼らとは反対の方向へ歩いた。

澄香邸へ戻ると、前回持ち出せなかったものをすべて荷造りし、執事に発送を頼んだ。

それから修司に、別れのメッセージを送った。

顔を上げると、執事がためらうような顔でこちらを見ていた。

「藤原様……もう、お戻りにはならないのですか。

私には分かります。修司様は、藤原様にだけは、ほかの方とは違うお気持ちをお持ちです。

佐伯伊織様とは、幼い頃からのご縁があるだけでございます」

執事は、今日空港で何があったのかを知らない。

私が前に澄香邸を出たことについて、まだ腹を立てているのだと思っているのだろう。

本当は、もうとっくに怒ってなどいなかった。

修司と過ごした十年。

私たちが喧嘩になるきっかけは、ほとんどいつも伊織だった。

言い合いがこじれると、彼は決まって「好きに思えばいい」とだけ言い残して姿を消した。

メッセージには返事をせず、電話にも出ない。

私が彼の近況を知れる唯一の手段は、伊織のSNSだけだった。

そんな状態は、いつも私が折れて終わった。

今日は、喧嘩のあと、彼が初めて自分から私に会いに来てくれた日だった。

だから、もう何も感じないと思っていた心が、それでも少しだけ揺れた。

それなのに、結局は……

私はその話には触れず、ただ言った。

「この荷物のこと、よろしくお願いします」

澄香邸を出ると、回廊の下にあるブランコが目に入った。

歪んだ木の板からは、思わず苦笑してしまいそうなほど、不器用さがにじんでいた。

その瞬間、私はこらえきれずに涙をこぼした。

あれは、付き合って三年目に、彼が私のために作ってくれたものだった。

修司は意地っ張りで、好きだなんて絶対に素直には言わない。

アプローチするのも、告白するのも、いつも私のほうだった。

それが長く続けば、私だって寂しくなる。

ちょうどその頃、彼は毎日何をしているのか分からないほど忙しく、ほとんど顔も見せなかった。

私は長いこと一人で思い詰め、ある夜、とうとう感情が決壊した。

いつも冷静な彼が、そのときだけは珍しくうろたえていた。

最後に彼は私を澄香邸へ連れていき、自分の手で作ったこのブランコを見せてくれた。

私は彼の帰りを玄関先で待つのが好きだった。

よくしゃがみ込んで待っては足を痺れさせ、数日前には急に立ち上がったせいで転んでしまったこともあった。

そのとき彼は、慰めの言葉ひとつくれなかった。

ただ冷たい顔で、もう待たなくていい、と言っただけだった。

けれど、木工作業で傷だらけになった彼の手を見たとき、私は初めて、彼が滅多に見せない本心をのぞいた気がした。

私は手を伸ばし、右側の結び目に触れた。

あのとき私は、左の縄が短くて右の縄が長いから、座ったら転ぶよ、と彼を笑った。

その後いつの間にか、彼はこっそり右の縄にもうひとつ結び目を作っていた。

それでブランコは、ちゃんと安定するようになった。

執事の言葉は、間違っていない。

最初の頃の修司は、確かに私にだけ、ほかの人とは違っていた。

でもそれは、伊織が帰国する前の話だ。

スマホが震えた。

修司が、ようやく別れのメッセージに返事をしてきたのだ。

【好きにしろ】

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