The Forgotten Bride

The Forgotten Bride

last updateLast Updated : 2025-08-31
By:  DeedeeWritesOngoing
Language: English
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He lost his memory. She lost her heart. Now, the past wants them both dead. When Amara Kane pulls a wounded stranger from a burning car, she doesn’t expect him to be Liam Steele—billionaire tech heir, missing CEO, and the man with a target on his back. With no memory of who he is or who wants him dead, Liam finds himself hiding in the one place no one would expect: her tiny apartment. What starts as survival quickly turns into something deeper. Secrets unravel. Passion ignites. And just when Liam proposes and Amara dares to believe in love again… he vanishes without a word—leaving her pregnant and alone. But Liam didn’t just leave. He was taken. Now, Amara must face the truth: she’s not just protecting their unborn child—she’s holding the key to a conspiracy worth killing for.

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Chapter 1

CHAPTER 1 – THE STORM

 結婚三周年まで、あと一か月。その日を思うだけで、胸の奥が少しくすぐったくなる。

 宮坂澪は勤務先の研究所で時計を見上げ、小さく息を吐いた。

「よし」

 今日は、午後から半休を取っている。仕事を早めに切り上げ、更衣室で白衣を脱いで、大切にしまっていた紙袋をロッカーから取り出した。

 中には、淡いアイボリーのワンピース。三周年の記念写真を撮るために、何度も店を巡って選んだ一着だった。

 派手ではない。けれど、裾に咲く小さなレースの花が可愛らしくて、鏡の前で袖を通したとき、「これなら智也さんも喜んでくれるかな」と自然に笑みがこぼれた。

(──きっと、似合うって言ってくれるはず)

 三年前、学生時代から付き合っていた御子柴智也と結婚した。起業したばかりの智也は、休みらしい休みもないほど忙しかった。それでも、記念日だけは決して忘れない人だった。

 一年目の結婚記念日には、大きな花束を抱えて帰ってきた。

「こんなの買ったことないから、店員さんに全部選んでもらった」

 照れくさそうに笑う智也が、少しだけ可愛かった。

 二年目は、仕事帰りに人気店のケーキを買ってきてくれた。

 普段も帰宅が遅くなる日は必ず連絡をくれたし、どんなに疲れていても澪の職場まで迎えに来てくれた。

 派手な愛情表現をする人ではない。それでも、ちょっとした気遣いの一つひとつが嬉しかった。だから澪は、自分は大切にされているのだと信じて疑わなかった。 

(ふふっ、ワンピース姿を見せたら、智也さんはどんな顔をするだろう?)

 今年は自分が少し驚かせてあげようと、ささやかな計画を立てていた。照れくさそうに笑うだろうか。それとも「似合ってる」と素直に褒めてくれるだろうか。

 そんな想像をするだけで、自然と帰りの足取りが軽くなる。

 研究所を出る頃には、夏の日差しが少しだけ傾き始めていた。途中で花屋に寄り、リビングへ飾る小さなブーケを買う。

 夕食の材料も少しだけ奮発した。今日は智也も早く帰れると言っていた。せっかくだから、彼の好きなビーフシチューを作ろう。

 信号待ちの間、スマートフォンを取り出す。画面には、昨夜届いた智也からのメッセージが残っていた。

『最近忙しくてごめん。記念日はちゃんと空けてある』

 その一文を読み返すだけで、疲れが少し軽くなる。

 忙しい人だ。それでも約束を忘れないところが、澪は好きだった。

 マンションに着くと、エレベーターの鏡に映る自分を見て髪を整える。今日、ワンピースを着るわけではない。それでも、帰宅した智也に紙袋を見せながら、「実はね」と笑ってみせる自分を想像してしまう。

(――きっと驚くだろうな)

 その反応を見るのが楽しみだった。

 胸を弾ませながら、玄関の鍵を静かに差し込む。中に入ると、リビングから誰かと話す智也の声が聞こえてきた。どうやら電話中らしい。

「……そうそう、その件は――」

 スピーカー越しに響く会話――漏れ聞こえてくる内容から、仕事の話かもしれない。

 邪魔をしてはいけないと考え、澪は足音を立てないようにそっと廊下を歩き、寝室へ向かった。そして、紙袋をベッドの上に置き、クローゼットを開ける。

 ワンピースに合わせるなら、ネイビーのスーツが似合うだろうか。それとも、あのグレーのスーツのほうが並んだとき映えるだろうか。

 そんなことを思いつつ、ハンガーに掛かったスーツへ手を伸ばしたそのときだった。手前にかけてあるジャケットのポケットから、一枚の紙が音もなく床へ滑り落ちた。

 白い紙切れは、澪の足元で音もなく止まる。何気なく手を伸ばした彼女は、まだ知らなかった。この一枚の紙が、自分の人生を静かに、しかし決定的に変えてしまうことを。

 床に落ちた紙を拾い上げた澪は、印字された文字に視線を落とした。

 それは地方銀行の振込票で、三年前の日付だった。振込金額、五千万円。送り主は御子柴智也。受取人は――白石琴葉。

「……え?」

 息が止まった。その名前は、大学時代の後輩だった。裕福な家庭に生まれ、成績優秀で卒業後は海外に渡ったと聞いていた。

(どうして智也さんが、彼女に五千万円も送金したの? しかも、この日付は――)

 指先が小さく震える。

 三年前、それは忘れることのできない日だった。養父が突然倒れ、病院から「今夜が峠です」と言われた夜、澪は藁にもすがる思いで智也に電話をかけた。

『智也さんお願い……百万円だけ貸して』

 返ってきたのは、申し訳なさそうな声と五十万円だった。

『あぁ、悪い。実は会社を立ち上げたばかりで、資金繰りがかなり厳しいんだ。これしか出せない。本当にごめん』

 起業したばかりだから仕方ない。そう信じていた。むしろ、あの五十万円も無理をして工面してくれたのだと思った。だからこそ、彼に感謝した。

 それでも養父を救えなかったことだけが、ずっと心残りだった。

「……どうして」

 掠れた声が漏れ出たそのとき、リビングから智也の笑い声が聞こえてきた。電話はまだ続いている。

 澪は振込票をポケットに戻そうとして、指が止まった。耳が自然と、声の方へ向く。

『そういえば、白石が帰国したんだろ?』

『ああ』

『じゃあどうする? 奥さん、いるじゃないか』

 軽い調子の問いかけ。友人はきっと、笑いながら話しているのだろう。

 澪は苦笑する。

(――どうするも何も、そんなの答えは決まっている)

『お前が奥さんに優しいのは、業界でも有名だからな』

 友人の言葉に、澪は少し照れくさくなった。智也はそんなふうに見られていたのか。自分だけがそう感じていたわけではないのだと、頬が自然と緩んだ。

 嬉しい。

 そう思った、次の瞬間だった。

『彼女は、ただ責任上の存在だ』

 澪の心臓が、大きく跳ねた。

『俺は男勝りな宮坂澪なんて、最初から好きじゃない』

 智也の声は、驚くほど冷たかった。それは温度のない口調――仕事の話をするときとも違う。澪が知らない男の声だった。

『俺が好きなのは、琴葉みたいな穢れのない女だからさ』

 頭の中が真っ白になる。

「マジか、それ!」と笑いながら言った友人が、言葉を続ける。

『じゃあ離婚するのか?』

(智也さん、お願い。違うと言って。冗談だと言って――)

 澪は両手の拳を握りしめながら、祈るような気持ちで息を潜めた。

 短い沈黙が流れた後、智也が静かに口を開いた。

『いや、今のところはしない』

 澪はわずかに息を吐いた。けれど、その安堵は一瞬で砕け散る。

『好きじゃないが、傷つけるつもりもない』

 その一言は、刃物よりも鋭く胸へ突き刺さった。

 好きではない。でも離婚もしない――それが智也にとって、自分という存在価値なのだ。

 耳鳴りがして、不意に足元が揺れた。

 澪は振込票を元のポケットにそっと戻し、クローゼットの扉を静かに閉める。

 この部屋に、もう一秒もいたくなかった。

 ベッドの上ではアイボリーのワンピースが、さっきまでの幸せをそのままに、静かに残されていた。

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Swiwi
Swiwi
niceeee read...
2025-10-09 02:03:52
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