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chapter63

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-07-21 08:49:41

「はい。 もし先輩が俺のものになれば、課長だって文句は……言えないですよね?」

「……え?」

「俺はずっと先輩が好きなんです。 ずっと先輩が、俺の恋人になればいいなって思ってました」

 英二……どうしてそんな顔をするの? どうして……。

「先輩が課長が好きだって知ってるから、何回も諦めようとしました。……でも、ムリですよ」

「……ごめん」

 やっぱり、無理だよ……。

「やっぱり俺には、諦めることなんてムリです。 先輩が本当に好きなんです。……自分でも思ったより、愛してるんです」

「……英二の気持ちは、わかってる。でも私にはやっぱり、それは出来ない。 私が好きなのは、課長だけなの。本当に……ごめん」

 申し訳なさから、思わず英二から目を逸らす。

「……じゃあどうしたら、俺の気持ちに応えてくれますか?」

「……え?」

「教えてください。 どうしたら、俺の気持ちに応えてくれますか?」

 そんな悲しそうな顔で見つめられても、私は英二の気持ちには応えることは出来ない……。出来ないの……。

「……英二がどうやっても、私の気持ちは絶対に変わらない。それだけは……言える」

「っ……なんで。なんで俺じゃダメなんですか? どうして……俺じゃダメなんですか?」

 英二はそっと、掴んでいる腕を緩める。

「英二は……私にとって、大切な部下だから。 英二は私にとって、弟みたいな人なの」

「……弟?」

「確かに英二のことは好きだよ。……でもそれは異性としてじゃない。人としてなの」

「人として……ですか」

 英二はかわいい部下。私にとっては、それ以上になることはないんだ。

「そう。英二は私にとって……部下以上にはなれない」

「……じゃあ俺はこれからもずっと、"弟"のままですか?」

「うん……本当に、ごめんね」

「そうですか。……わかりました」

 そう言われてゆっくりと離された両腕には、掴まれた赤い跡が付いている。

「……英二?」

 ジッと見つめていた英二の瞳(め)からは、涙が浮かんでいた。

 それは今にも泣き出しそうなくらいで、英二の涙を初めて見る瞬間でもあった。

「俺は……俺はやっぱり、課長には勝てないんですね」

「英二……泣いてるの……?」

 英二の涙が、本気度を表しているように見える。

「っ……すいません」

 英二の瞳(め)からは、見たことのないくらいの大粒の涙が溢れだしている。

「英二、
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