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第11話

Author: 清らかな梔子
松田泰雄がこんな反応をするのも無理はない。

私は彼に、自分が寺で数珠を求めたことだけを伝え、その過程については何も話していなかった。

「もう一度言ってくれないか?」

松田泰雄は一語一語を強調して自分の質問を繰り返した。

生放送のカメラが彼の表情をアップにする。

彼の目は冷たい。

しかし、モニター越しにでも、その目には信じがたい思いと少しの動揺が混じっているのが見て取れた。

記者はスマホを取り出し、松田泰雄の目の前に掲げた。

「松田さんが信じないなら、自分で見てください」

「今、ネットには数珠を求めたときの写真や動画が溢れていて、感動するネットユーザーがたくさんいます!」

記者のスマホには、たぶんその時ネットに投稿された映像が映し出されていた。

松田泰雄は手を伸ばしてそれを受け取った。

彼の指先はわずかに震えているのが見えた。

「私……」

彼はついに口を開き、声がかすれていた。

「知らなかった……ただの普通のものだと思っていた……」

隣で人々に囲まれた宮脇圭織は松田泰雄を見つめ、顔色が青ざめていた。

ここ数日、ネットには二人の結婚のニュースが溢れていたの
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