お義母さん、助けて！母の暴走と夫の誤解

母が十津川章彦の浮気を疑っていると告げたとき、私の最初の反応は「騙されているのでは？」だった。

彼が浮気するより、幽霊が現れる方がまだ信じられる。

別に私は盲目に恋しているわけじゃない。単純に、章彦の頭の中にはプログラムしかないからだ。

義母の十津川真弓はよく言う。「栞がいなかったら、この子はパソコンと結婚するつもりなんじゃないかって思うくらいよ」

「何呆然としてるの？早く離婚しに行きなさいよ！」

母の近藤晴美は私の手首を掴み、眉をひそめながら急かしてくる。

「章彦が仕事から帰ったら、話をしようと思って......」

「何を話す必要があるの？」

晴美は私の耳をぐっと引っ張り、その痛みに耐えきれず顔が歪む。「前から言ってたでしょ？章彦みたいな金持ちの二代目は一番信用ならないって。あんたなんて、顔も良くないし、無口で面白味もない。大卒でもないし、そんなあんたを彼が本気で好きになるわけないでしょ？

私はあんたの母親よ、嘘をつくわけがないでしょ？」

耳の痛みと熱さが一気に襲ってきて、まるで今にもちぎれそうな感覚だった。

私はどうにか彼女の手から逃れ、距離を取って冷静に言った。

「私は母さんが嘘をついているとは言ってない。ただ、章彦が本当に浮気しているなら、ちゃんと対峙して、自分の権利を守る必要があるわ。

それに、今日は私の個展の初日だから、仕事に戻らないといけない」

正直、章彦が浮気するとは思えない。でも、とりあえず母さんを宥めるために、今は時間を稼ぐしかない。

もしこのまま個展で騒ぎを起こされたら、私の努力がすべて水の泡になる。

私は完璧な言い訳をしたつもりだったが、予想に反して、晴美はまだ私の手を離さず、憤慨したように言った。

「栞、私は苦労してあんたを育ててきた。だからと言って、あんたが男の金をたかるために育てたわけじゃない！

少しは恥を知りなさい！彼はあんたを愛していないのに、なんでそんなにしがみつくの？自分の顔を泥に塗って歩き回りたいの？」

彼女の大声が画廊の中に響き、周りの客たちが一斉に私に注目してきた。

顔が熱くなるのを感じながら、私は彼女の腕を掴んで静かに言った。「お母さん、お客さんがいるんだから、話があるなら中で話そう......」

だが、彼女は私の手を振り払い、私の鼻先に指を突きつけて言った。「皆さん、聞いてください！私は間違ったことを言ってますか？彼があんたを愛していないのに、なんで彼からお金をもらおうとするの？どれだけ恥知らずな行動だと思います？」

周りの客たちは眉をひそめ、私を軽蔑する視線で見つめ始めた。

母は大きくため息をつき、私に向き直りながら言った。「栞、あんたは女だってことはわかるけど、だからって男に頼らずに自立しなさいよ。男に頼って展覧会を開いたり、金を稼ぐのと、外で身を売って稼ぐのと、何が違うの？」

「仮にあんたが皿洗いの仕事をしてたとしても、私は恥だなんて思わないよ。それはあんたが自分の力で頑張った結果だから。でも、今のあんたには恥ずかしくてたまらないよ！

母さんの言うことを聞きなさい、今すぐ彼と別れて。私はあんたの母親だ、あんたのために言ってるんだから間違いない」

彼女の言葉は本当に巧妙だ。一つ一つの言葉がまるで、私のこの展覧会が男の金で開かれたかのように聞こえる。

しかも、まるでその男が私の法的な夫じゃなく、外の愛人であるかのような口ぶりだ。

周りの客たちは事情を知らず、次々に頷き始めた。せっかちな人はすでに口を開いて助け舟を出し始めた。

「十津川さん、あなたの絵はいつも太陽に向かっているように見えるのに、やってることはどうしてこんなに違うんですか？」

「若い人が間違いを犯すのは仕方ないことですが、早く正すことが大事です」

「お母さんの言うことを聞いたほうがいいですよ。母親が悪いことを言うはずないじゃないですか？」

画廊の客たちは直接的な非難は避けたが、一言一言が私のプライドを切り裂き、私を土の中に埋めるような感覚だった。

私は母をじっと見つめ、その目に一瞬現れた得意げな表情を見逃さなかった。

彼女はいつもこうだ。歪んだ言葉を使って周囲を味方にし、私を無知で反抗的な娘に仕立て上げるのが得意なのだ。