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第4話

Author: 小川
こんなふざけたことを言われて、菜々子の体が悔しさで震えた。

美優の嫁入り道具?冗談じゃない。ここに並んでいるジュエリーは、全部自分が嫁ぐときに母が一つひとつそろえてくれたものなのに!

それが今では、美優のものになっているって?

そして、菜々子の目は、自然と一対の輝く水晶のブレスレットに引き寄せられた。

それは、母が望月家に代々伝わる宝物だと言っていたものだった。

母は、自分がもっとしっかりしたら、このブレスレットと会社を任せるからね、と言っていたのに、今そのブレスレットは美優の手に渡ってしまっているし、会社は翔太の物に。

なのに自分は、両親の死に目にすら会えなかたなんて……

そう思うと、菜々子の心臓は大きな手でぎゅっと鷲掴みにされたかのように痛んだ。

「このブレスレット、欲しいの?」

菜々子がブレスレットを瞬きもせずに見つめているのに気づいた美優は、口の端を少し吊り上げながらそう言った。

そしてブレスレットをひょいと手に取ると、わざと菜々子の目の前でひらひらと振ってみせる。

「これは母の形見なの。欲しい?」

菜々子は今すぐにでも奪い返したかったが、ぐっとこらえて歯を食いしばった。「お母様の形見なら、大切にしてください」

しかし美優は、菜々子を見つめながら、悪意に満ちた笑みでゆっくりと瞬きをしてみせた次の瞬間、彼女はわざとらしく大げさな仕草で、ぱっと手を開いた。

カシャン、と澄んだ音が響く。

二つの水晶のブレスレットが床に落ち、粉々に砕け散った。

菜々子ははっと息を飲み、思わず床にかがみこんで破片を拾おうとした。

しかし美優に手を思いきり踏みつけられる。

菜々子は痛みに小さく悲鳴を上げた。

ハイヒールの踵でぐりぐりと踏みつけられ、手にブレスレットの破片が刺さる。そして、菜々子の手から血が滲むのを確認した美優は、ようやく足を離し、ゆっくりとしゃがみ込んで菜々子の耳元で囁いた。「本当は私もこのブレスレット、気に入ってたの。でも、あなたも好きだったみたいだから……しょうがないわよね?

だから、こうして壊しちゃっても……ね?」

美優の言葉はまだ終わらない。「ねえ、菜々子。この嫁入り道具を見ても、本当に何も思い出さないの?

翔太の愛人でいることに満足してるなんて、あなたにはプライドってもんがないのかしら?」

菜々子は全身の血が凍るような感覚に襲われた。もう、我慢の限界だった。菜々子はありったけの力を込めて、美優の頬をひっぱたいた。

パァン。

乾いた音がウォークインクローゼットに響き渡る。

不意を突かれた美優は床に倒れ込み、頬を押さえながら、菜々子を冷たい目つきで睨みつけた。「あなた何様のつもり!よくも私をぶったわね?」

そう言うと、美優は声を張り上げてボディーガードを呼ぶ。「この女を押さえつけて!」

ボディーガードが来るや否や、菜々子は無理やり美優の前にひざまずかされた。

身動きがとれないでいる菜々子に、美優は手を振り上げる。

パァン。

最初の一発。菜々子の頬は焼けるように痛んだ。

そして二発、三発と、平手打ちが続く。

菜々子は必死にもがき、かすれた声で叫んだ。「こんなことしたら、翔太が黙っていませんからね!」

美優はもう一発、力いっぱい平手打ちを食らわせた。「翔太が、あなたなんかのために私をどうにかするって?この身の程を知らずが何を言ってるの?」

身をかがめ、菜々子の耳元で囁く。「菜々子。翔太が一番愛しているのは、私なんだから」

すると、美優は疲れたとでもいうように、痺れた手のひらを振りながらドレッサーの前に腰掛けると、菜々子の手からはぎ取った血まみれのブレスレットの破片を、いじり始めた。

そして振り返り、今度は大柄なボディーガードの一人へと自分の代わりに菜々子を殴り続けるよう命じる。

バシン、バシン、バシン……

嵐のような平手打ちが、次から次へと菜々子へ降り注ぐ。

菜々子の頬は、痛みと熱さでもう感覚がなくなっていた。

視界は涙で滲んでいたが、それでも美優の得意げな顔だけははっきりと見えた。

何度殴られただろうか。菜々子の意識がふっと飛びそうになったその時、ドアが開けられる音がして、誰かが怒鳴るような声が聞こえてきた。「何をしているんだ!」
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