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第58話

Author: ラクオン
梨花が車のドアを開けた、そのときだった。

車の前方から、耳に馴染みのある声が届いた。

「梨花、あなたもここに?」

桃子だった。

「まさか、一真が私に車をあげることを知って、わざわざ追いかけてきたの?」

「......」

梨花は眉をひそめ、そっちの方へ目を向けた。

桃子の隣には一真がいた。

鉄灰色のスリーピーススーツを着た一真は、いつものように端正で品のある姿だったが、彼女を見るその目には、どこか不安げな光が混じっていた。

「あなたがここに?どうして?」

「......」

梨花は普段は滅多に怒らないのに、今日だけはどうしても我慢できなかった。

まったく、今日はどうもついてないな。

ただ車を受け取りに来ただけなのに、なんでストーカーみたいに追いかけられなきゃいけないんだろう。

梨花は細い指先でボンネットを軽く叩くと、平然と答えた。

「車を取りに来たの。見れば分かるでしょう?」

「家の車、もう飽きたのか?」

一真はいつもの穏やかな口調で返した。

「言ってくれればよかったのに。何が欲しいか、翼に言えば、すぐ家まで届けさせたよ」

松本翼(まつもと つばさ)、
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