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初めて見た真実の記憶

Auteur: 吟色
last update Dernière mise à jour: 2025-08-15 09:00:00
指輪の力について知ってから三日が過ぎた。

私は毎夜、指輪を見つめて練習していた。

まだ怖くて、本格的に使う勇気はなかった。

でも、少しずつ感覚を掴めてきたような気がする。

「リア様」

昼食後、ソフィアが私のところに来た。

「カイル様からお手紙です」

またカイルから。

嬉しくて、急いで受け取った。

『リア

最近、こちらで妙な動きがある。

上層部が何かを隠している気がする。

俺たちを別々の場所に送ったのも、何かの計画の一部かもしれない。

君は大丈夫か?

もし危険を感じたら、すぐに逃げてくれ。

俺のことは心配しなくていい。

君の安全が一番大切だ。

何か分かったら、すぐに知らせる。

愛してる。

カイル』

妙な動き……何かが起こっているのね。

私も返事を書いた。

『カイル

心配してくれてありがとう。

私は大丈夫。ソフィアという心強い味方もいるし。

でも、あなたの話を聞いて、私も気になることがあります。

実は、母の指輪に特別な力があることが分かりました。

記憶や真実を見る力です。

もしかしたら、この力で黒幕の正体が分かるかもしれません。

まだ練習中ですが、必要な時が来たら使ってみます。

あなたも気をつけて。

愛してる。

リア』

手紙を書き終えて、ソフィアに渡した。

「お願いします」

「もちろんです」

ソフィアが手紙を受け取った。

「ところで、リア様」

「何ですか?」

「指輪の練習はいかがですか?」

「少しずつ、慣れてきました」

「無理はしないでくださいね」

ソフィアが心配そうに言った。

「危険な力ですから」

「分かっています」

でも、心の中では決めていた。

今夜、本格的に試してみよう。

カイルの手紙で、危険が迫っていることが分かった。

もう、悠長に練習している時間はない。

真実を知らなければ。

黒幕の正体を突き止めなければ。

その夜、私は一人で指輪と向き合った。

部屋を暗くして、ろうそくの光だけにした。

「心を静めて、石に意識を集中」

母の言葉を思い出しながら、深呼吸した。

指輪を手に取って、青い石を見つめる。

最初は何も起こらなかった。

でも、だんだん石が温かくなってきた。

そして、わずかに光り始めた。

「見えて……」

小さく呟いた。

「真実を見せて」

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