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第5話

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慎之介は、正気を失ったかのようにヨットの中を隈なく探し回った。

キッチン、機械室、倉庫、救命ボートの台座まで、ありとあらゆる場所をひっくり返した。

だが、どこにも私の姿はなかった。

額には青筋が浮かび、胸は激しく上下していた。

「ありえない……そんなはずはない……」

まるで自分に言い聞かせるかのように、同じ言葉を繰り返している。

莉奈は、部屋の扉にもたれかかって腕を組んでいた。その表情は異常なほど落ち着いていた。

「お兄ちゃん、落ち着いて。

お姉ちゃんはきっと、お金で別の船を呼び止めて、先に港に戻ったのよ。

あの人の性格なら、なんでもやりかねないでしょう?

前に大喧嘩した時だって、ヘリをこっそり呼んで帰ったじゃない」

慎之介の手が止まった。

デッキの真ん中に立っていると、降り注ぐ雨が彼の顔を濡らしていた。

彼は考えていた。

必死に自分を納得させようとしていた。

そう、加奈子ならそれくらいやりかねない。

わがままで、面倒で、後先を考えない性格だ。

きっと俺たちが油断している隙に、船を呼んだんだ。

俺を焦らせて、後悔させて、膝をつかせて謝らせたいんだ。

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